アルプス技研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルプス技研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルプス技研は東京証券取引所プライム市場に上場し、機械・電気等の設計技術者派遣や受託を行うアウトソーシングサービス事業を主力としています。近年は農業や介護分野へも進出しています。直近の業績は、技術者派遣の堅調な需要を背景に売上高および経常利益ともに増加し、安定した増収増益の成長を続けています。


※本記事は、株式会社アルプス技研の有価証券報告書(第45期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルプス技研ってどんな会社?


アウトソーシングサービス事業とグローバル事業を主に展開する技術系人材サービス企業です。

(1) 会社概要


アルプス技研は1968年に松井設計事務所として開業し、1971年に設立されました。2004年に東京証券取引所第一部に上場を果たしています。近年は第二創業として新規事業の創出に注力しており、2018年には農業分野へ、2021年には介護分野へと進出し、社会課題解決型の事業展開を積極的に推進しています。

同社グループの従業員数は連結で6,265名、単体で4,909名です。筆頭株主は従業員の資産形成を目的としたアルプス技研従業員持株会で、第2位および第3位は資産管理業務等を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
アルプス技研従業員持株会 10.75%
日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口) 6.94%
日本マスタートラスト信託銀行(投資信託口) 4.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は須藤泰志氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
須藤泰志 代表取締役社長 2001年デジタル・スパイス代表取締役社長、2020年同社入社、2021年取締役、2023年DОNKEY代表取締役社長、2024年常務取締役を経て、2025年3月より現職。
渡邉信之 代表取締役会長 2013年三井住友銀行自由が丘法人営業部長、2015年同社入社、2018年常務取締役、2021年専務取締役、2024年取締役会長を経て、2025年3月より現職。
松本喜代一 常務取締役人事部長 2018年三菱UFJ銀行高田馬場支店長、2021年同社入社、2022年中日本事業部長、2024年業務執行役員人事部長、2025年取締役人事部長を経て、2026年1月より現職。
今村篤 取締役相談役 1990年同社入社、2006年技術部長、2009年東海事業部長、2014年取締役営業推進部長、2015年代表取締役社長を経て、2025年3月より現職。
太田秀幸 取締役 1995年同社入社、2010年人事部長、2012年総務部長、2015年南関東事業部長、2024年アルプスケアハート代表取締役社長を経て、2025年3月より現職。


社外取締役は、野坂英吾(トレジャー・ファクトリー代表取締役社長)、呉雅俊(TNPオンザロード代表取締役社長)、四條たか子(執筆活動家)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アウトソーシングサービス事業」「グローバル事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) アウトソーシングサービス事業


機械・電気・情報処理設計等の設計技術者の派遣ならびに技術プロジェクトの受託を中心に行っています。また、事務派遣や受託、さらに農業分野への派遣や訪問介護など、技術系人材サービスを軸に幅広い領域で顧客のニーズに応えるサービスを提供しています。

収益源は、顧客企業からの派遣料金やプロジェクトの受託料金などです。運営は主にアルプス技研が行うほか、ビジネス教育等を担うアルプスビジネスサービス、農業分野を担うアルプスアグリキャリア、介護分野を担うアルプスケアハートなどの子会社が各事業を展開しています。

(2) グローバル事業


海外においてプラント設備や機械・設備機器等の設計、製作、据付およびメンテナンスを行っています。また、現地での人材サービスならびに人材育成事業も展開しており、アジア圏における製造業各社のグローバル戦略をサポートしています。

収益源は、海外の顧客企業からの設備工事やメンテナンスの請負代金、および人材サービスの提供対価です。運営は、台湾のALPSGIKEN TAIWAN CO.,LTD.や中国のALTECH SHANGHAI CO.,LTD.などの海外子会社が行っています。

(3) その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、サービス付き高齢者向け住宅の運営や、宴会事業・宿泊事業などを展開しています。既存事業の枠を超え、社会的課題の解決に資する新規事業分野の拡大を進めています。

収益源は、施設の入居者や利用者からの利用料などです。運営は主にアルプスケアハートなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の直近5年間の業績は、売上高が継続して右肩上がりで推移しており、堅調な成長を示しています。経常利益も概ね増加傾向にあり、安定した収益力を維持しています。当期純利益についても高水準を保ちながら推移しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 393億円 436億円 462億円 499億円 527億円
経常利益 46億円 46億円 51億円 53億円 55億円
利益率(%) 11.7% 10.4% 10.9% 10.7% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 34億円 35億円 31億円 35億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も共に増加しています。売上総利益率および営業利益率は前年度と同等の水準で安定して推移しており、効率的な事業運営が行われていることが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 499億円 527億円
売上総利益 116億円 121億円
売上総利益率(%) 23.2% 23.0%
営業利益 52億円 54億円
営業利益率(%) 10.3% 10.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が15億円(構成比約22%)、減価償却費が2億円(同約3%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のアウトソーシングサービス事業は、先端技術分野や環境分野の技術教育強化とチーム派遣等の営業施策が奏功し、増収となっています。グローバル事業についても海外での需要が堅調に推移し増収を記録しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
アウトソーシングサービス事業 458億円 479億円
グローバル事業 40億円 46億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 499億円 527億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の優良企業といえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 46億円 34億円
投資CF -37億円 -24億円
財務CF -25億円 -25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も69.5%で市場平均を上回っています。いずれも良好な水準を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「社会や企業の発展も技術開発も、人と人との心のつながりが基本である」との意味をこめた「Heart to Heart」の経営理念を掲げています。技術者の派遣やプロジェクト受託を通じて、日々高度化・多様化する顧客の「技術要請」に的確に応えることを社会的意義としています。

(2) 企業文化


技術者が高い志をもって自らの技術力を向上させることが企業価値の源泉であると考え、技術者教育に注力する文化があります。「チームアルプス」というビジョンのもと、営業担当者と技術者が連携し、迅速な対応と付加価値の高いサービスを提供する組織風土が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


2023年7月に第12次5ヵ年計画「技術を活用し共創社会のパートナーへ挑戦」を策定しています。継続的な成長および収益の向上を実現させるため、以下の指標を重要な経営指標と位置づけています。

・自己資本利益率(ROE)
・親会社株主に帰属する当期純利益

(4) 成長戦略と重点施策


既存のアウトソーシング事業の強化に加え、社会的課題を解決する新規分野への挑戦を成長戦略として掲げています。AIやロボティクスなどの先端技術分野への対応を進めるとともに、農業、介護、ものづくり、グローバル事業を新たな収益の柱として育成し、持続可能で豊かな社会の創生に貢献していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人が未来である」という考えのもと、人的資本への積極的な投資を行っています。国籍や性別を問わず多様な人材の採用を推進しており、外国籍人材の育成にも長年の実績があります。また、技術者のキャリア開発を支援するESS(エンジニアサポートシステム)を導入し、継続的なスキル向上を後押ししています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.7歳 9.9年 5,579,071円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全従業員) 98.7%
男女賃金差異(正規) 96.4%
男女賃金差異(非正規) 52.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員に占める外国籍社員の割合(8.9%)、管理職に占める中途採用者の割合(30.8%)、定期健康診断の受診率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保や育成


少子高齢化や労働人口の減少により、中長期的には優秀な人材の確保が難しくなるリスクがあります。同社は採用専門部署を中心に国内外での人材確保を継続し、教育と人事ローテーションを組み合わせた人材育成に努めることで対応しています。

(2) 労働者派遣法改正による影響


働き方改革に関連した改正労働者派遣法の施行など、法規制の変更が事業に影響を及ぼすリスクがあります。同社は無期雇用による技術者派遣事業というビジネスモデルを継続し、技術者の安定した雇用と待遇の確保を図ることでリスクを低減しています。

(3) 情報セキュリティー・機密情報管理


第三者による不正アクセスや社員の不正により機密情報が漏洩するリスクがあります。同社はファイヤーウォールによる社内ネットワークの保護やPCの暗号化を行うとともに、全社員への啓発と教育を継続的に実施して周知徹底を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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