キーコーヒー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キーコーヒー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するキーコーヒーは、コーヒー製品の製造・販売を行うコーヒー関連事業と、カフェなどの飲食店を運営する飲食関連事業を展開しています。直近の業績は、業務用・家庭用市場での価格改定や販売促進策が奏功し、売上高・各段階利益ともに大きく伸長する増収増益を達成しました。


※本記事は、キーコーヒーの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キーコーヒーってどんな会社?


コーヒーの製造・販売から飲食店の運営まで、コーヒービジネスを幅広く展開しています。

(1) 会社概要


1920年に横浜市でコーヒー商「木村商店」として創業し、1952年に会社を設立しました。1989年に現在の社名に変更し、1997年に東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。近年では、2005年にイタリアントマトを連結子会社化し、2025年には老舗喫茶のイノダコーヒをグループに迎え入れています。

同社グループは連結従業員数1,019名、単体従業員数618名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業会社の博友興産有限会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位にはキーコーヒー取引先持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
博友興産有限会社 10.47%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.66%
キーコーヒー取引先持株会 2.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は柴田裕氏が務めています。社外取締役比率は約33%です。

氏名 役職 主な経歴
柴田裕 代表取締役社長 1987年同社入社。マーケティング本部長等を経て、2002年より現職。
川股一雄 取締役会長 1983年同社入社。マーケティング本部長等を経て、2023年より現職。
小澤信宏 取締役副社長執行役員 1982年同社入社。広域営業本部長等を経て、2023年より現職。
安藤昌也 取締役専務執行役員 1984年同社入社。経営企画部長等を経て、2023年より現職。
中野正崇 取締役常務執行役員 1996年同社入社。マーケティング本部長等を経て、2023年より現職。
渡部聡 取締役(監査等委員) 1990年日本たばこ産業入社。2019年同社入社。2025年より現職。


社外取締役は、中川幸三(中川幸三公認会計士事務所代表)、柴本淑子(元たまごクラブ編集長)、東志穂(第一芙蓉法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コーヒー関連事業」「飲食関連事業」および「その他」事業を展開しています。

コーヒー関連事業


業務用、家庭用、原料用の各市場に向けて、多様なコーヒー製品等を消費者、飲食店、食品問屋、飲料メーカーなどに提供しています。高付加価値商品の拡販や、カフェ開業支援事業の展開などにも注力しています。

収益は顧客や取引先からの商品販売代金として得ており、主に同社が事業を運営しています。

飲食関連事業


カフェやレストランなどの飲食店事業を展開するとともに、洋菓子などの製造・販売を行っています。直営店の運営に加え、フランチャイズ展開も推進しています。

収益は一般顧客からの飲食代金や、加盟店からのロイヤリティ、食材販売代金から得ています。運営は主にイタリアントマト、イノダコーヒ、アマンドが担当しています。

その他


コーヒーや飲食事業に付随する多様なビジネスを展開しています。飲料を中心とした食品の製造・受託加工や、オフィスサービス、通信販売、運送物流、保険代理店事業などを含みます。

各事業の収益はサービス提供や製品販売の対価として得ており、ニック食品、キーコーヒーコミュニケーションズ、キョーエイコーポレーションなどの子会社が運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が557億円から931億円へと着実に成長を続けています。利益面では原材料価格の高騰などの影響で一時的に伸び悩む時期もありましたが、直近期には価格改定の効果などにより、経常利益が13億円まで大幅に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 557億円 633億円 738億円 778億円 931億円
経常利益 10億円 3億円 9億円 6億円 13億円
利益率(%) 1.8% 0.6% 1.2% 0.8% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 1億円 -0.1億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、売上総利益も前期間から順調に拡大しています。事業拡大にともなって販売費及び一般管理費も増加していますが、利益率の改善に成功しており、営業利益は倍増する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 778億円 931億円
売上総利益 145億円 166億円
売上総利益率(%) 18.7% 17.9%
営業利益 5億円 11億円
営業利益率(%) 0.6% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が39億円(構成比25%)、荷造運搬費が22億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力事業のコーヒー関連事業が売上高の大部分を牽引しており、各セグメントで価格改定が浸透したことで利益も改善しています。飲食関連事業は企業買収による効果もあり、売上が大きく増加しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
コーヒー関連事業 699億円 836億円 9億円 16億円 1.9%
飲食関連事業 42億円 56億円 0.3億円 0.6億円 1.1%
その他 37億円 39億円 3億円 3億円 6.6%
調整額 -億円 -億円 -7億円 -8億円 -%
連結(合計) 778億円 931億円 5億円 11億円 1.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -14億円 -34億円
投資CF -11億円 -53億円
財務CF 28億円 88億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.5%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「コーヒーを究めよう。お客様を見つめよう。そして、心にゆたかさをもたらすコーヒー文化を築いていこう。」という企業理念を掲げています。また、「キーコーヒービジョン」として、コーヒーに関して信頼度No.1の会社であること、お客様から最初に選ばれるコーヒー会社であることを目指しています。

(2) 企業文化


「品質第一主義」に基づき、コーヒーを栽培・加工し、安心・安全にお客様に届けるバリューチェーンを担う文化を重んじています。また、「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を掲げ、環境負荷の低減や小規模コーヒー生産者の支援など、サステナビリティの実現に向けた取り組みを事業活動を通じて推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、収益力強化を喫緊の課題と認識し、目標とする経営指標を「営業利益額」としています。これに向けて、不採算取引の見直しやサプライチェーンの効率化を進め、創出した資金を成長投資へと最適配分することで、中長期的なROEの向上を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


当面の経営戦略として「収益力強化」「経営基盤強化」「グループ総合力強化」の3本柱を掲げています。主力事業で培った強みを発揮できる領域への進出や、アジア市場におけるブランド認知と販売網の拡大などの新規事業展開を推進します。また、気候変動への対応や食の安全性強化など、経営基盤の堅牢化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長には人的資本の最大化が重要との認識から、「人財育成方針」「社内環境整備方針」「健康経営方針」を定めています。従業員との対話を通じて共に成長し、専門性の高いコーヒーのプロを育成するとともに、誰もが働きやすい職場環境を整備し、健康と働きがいを両立する組織集団への進化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 16.6年 5,432,882円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 50.9%
男女賃金差異(正規労働者) 70.5%
男女賃金差異(非正規労働者) 77.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(57.3%)、社内資格『キーコーヒーコーヒースペシャリスト』取得率(17.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料等の価格高騰及び為替相場の変動


コーヒー生産国の政情や気候変動、病害虫被害によるコーヒー生豆価格の高騰、為替相場の変動、資源エネルギー価格の上昇等が売上原価を押し上げるリスクがあります。これに対し、調達先の分散化や適正在庫水準の維持に努めています。

(2) サプライチェーンの分断


コーヒー原料生豆のすべてを輸入に依存しているため、輸入先の社会情勢や自然災害、紛争等によって供給不足が発生するリスクがあります。原材料の基準在庫の見直しやサプライヤーとの連携強化を通じて、商品の安定供給を図っています。

(3) 消費市場と環境ニーズの変化


消費者ニーズの多様化や、環境負荷の低減に対する社会的な関心の高まりへの対応が遅れた場合、商品の販売価格低下や販売数量の減少につながるリスクがあります。市場環境の変化を先取りした研究開発体制の強化などを進めています。

(4) 競合他社との競争激化


価格やサービスを巡る競合他社との競争や、シェア拡大に向けた過当競争が発生した場合、ブランド価値が毀損し売上高が減少するリスクがあります。付加価値を付与した商品やサービスの提供、新商品の開発などにより差別化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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