キーコーヒー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キーコーヒー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するコーヒーの総合メーカーです。コーヒー関連事業を主力とし、飲食関連事業や海外事業も展開しています。当連結会計年度は、価格改定や業務用市場の回復等により増収となりましたが、コーヒー生豆相場の高騰や円安によるコスト増の影響を受け、営業利益および経常利益は減益となりました。


※本記事は、キーコーヒー株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キーコーヒーってどんな会社?


レギュラーコーヒーの製造販売を主力とし、農園からカップに至るまでのバリューチェーンを手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1920年に横浜で創業した「木村商店」を起源とし、1952年に株式会社木村コーヒー店として設立されました。1989年に現社名へ変更し、1996年に東証二部、翌1997年に東証一部へ上場しました。2005年にはイタリアントマトを連結子会社化し飲食事業を拡大、2020年には創業100周年を迎えています。

同社グループの従業員数は連結916名、単体642名です。筆頭株主は資産管理会社の博友興産有限会社で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は取引先持株会です。大株主には代表取締役社長の柴田裕氏や、取引先である三井物産も名を連ねており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
博友興産有限会社 10.47%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.91%
キーコーヒー取引先持株会 2.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は柴田裕氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
川 股 一 雄 取締役会長 1983年入社。経営企画本部長、マーケティング本部長などを経て、2019年取締役副社長執行役員。2023年6月より現職。
柴 田  裕 代表取締役社長 1987年入社。広域営業本部副本部長、マーケティング本部長などを歴任。2002年7月より現職。
小 澤 信 宏 取締役副社長執行役員 1982年入社。広域営業本部長、イタリアントマト社長などを経て、2023年6月より現職。
安 藤 昌 也 取締役専務執行役員 1984年入社。経営企画部長、最高財務責任者、ニック食品社長などを経て、2023年6月より現職。
中 野 正 崇 取締役常務執行役員 1996年入社。マーケティング本部長、SCM本部長などを経て、2023年6月より現職。
渡 部  聡 取締役(監査等委員) 1990年日本たばこ産業入社。2019年同社入社。品質保証部長兼監査室長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、中川幸三(公認会計士・税理士)、柴本淑子(元「毎日が発見」編集長)、東志穂(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コーヒー関連事業」、「飲食関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) コーヒー関連事業


同社が主体となり、業務用、家庭用、原料用市場に向けてコーヒー製品等を製造・販売しています。飲食店やホテル、食品問屋、飲料メーカー等が主な顧客です。また、パッケージカフェ「KEY'S CAFÉ」の展開や、「リプトン」ブランドの家庭用紅茶製品の販売も行っています。

収益は、主に顧客への製品販売による対価から得ています。業務用市場ではコーヒーに加え食材やドリンク等の提案を行い、家庭用市場では卸売業や小売業を通じて消費者に商品を届けています。原料用市場では相場連動での取引を行っています。運営は主にキーコーヒーが行っています。

(2) 飲食関連事業


国内外においてカフェやレストラン等の飲食店経営、および洋菓子等の販売を行っています。「イタリアン・トマト」等のブランドを展開し、一般消費者を主な顧客としています。

収益は、直営店における飲食サービスの提供対価や、フランチャイズ加盟店への食材・洋菓子等の販売、ロイヤリティ収入等から得ています。運営は、株式会社イタリアントマトおよび株式会社アマンドが行っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない事業として、飲料製品の製造・受託加工、オフィスコーヒーサービス、通販事業、運送物流事業、保険代理店事業等を行っています。

収益は、飲料製造受託加工費、オフィス向けサービス利用料、通販での商品販売代金、運送料、保険代理店手数料等から得ています。運営は、ニック食品株式会社、キーコーヒーコミュニケーションズ株式会社、株式会社キョーエイコーポレーション、honu加藤珈琲店株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は778億円に達しています。一方、利益面では経常利益が2022年3月期をピークに減少傾向にあり、利益率は1%前後で推移しています。当期純利益は黒字を維持していますが、低水準での推移が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 526億円 557億円 633億円 738億円 778億円
経常利益 -32億円 10億円 3億円 9億円 6億円
利益率(%) -6.0% 1.8% 0.6% 1.2% 0.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -33億円 2億円 2億円 1億円 -0.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高が増加する一方で、売上総利益および営業利益は減少しています。売上総利益率は約1ポイント低下し、営業利益率は0.6%まで低下しました。原材料価格の高騰などが利益率を圧迫している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 738億円 778億円
売上総利益 152億円 145億円
売上総利益率(%) 20.6% 18.7%
営業利益 8億円 5億円
営業利益率(%) 1.0% 0.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が46億円(構成比33%)、その他が28億円(同20%)、荷造運搬費が21億円(同15%)を占めています。売上原価においては、原材料費等のコスト増が影響しています。

(3) セグメント収益


コーヒー関連事業は売上が伸長しましたが、利益は減少しました。飲食関連事業は売上が微減したものの黒字転換しました。その他事業は減収ながら増益を確保しました。全体として売上の大半を占めるコーヒー関連事業の利益率低下が連結業績に影響しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コーヒー関連事業 657億円 699億円 12億円 9億円 1.3%
飲食関連事業 42億円 42億円 -0.1億円 0.3億円 0.6%
その他 39億円 37億円 2億円 3億円 6.9%
調整額 - - -6億円 -7億円 -
連結(合計) 738億円 778億円 8億円 5億円 0.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**パターン:勝負型**
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 -14億円
投資CF -17億円 -11億円
財務CF 17億円 28億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.7%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.6%でプライム市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「コーヒーを究めよう。」「お客様を見つめよう。」「そして、心にゆたかさをもたらすコーヒー文化を築いていこう。」という企業理念を掲げています。また、「キーコーヒービジョン」として、信頼度No.1の会社であること、コーヒーの可能性を追求し価値を提供できること、お客様から最初に選ばれるコーヒー会社であることを目指しています。

(2) 企業文化


「品質第一主義」に基づき、コーヒーの栽培・加工から顧客に届けるまでのバリューチェーン全体に責任を持つ文化があります。また、サステナビリティの実現に向け、「地球温暖化への対応」「環境負荷の低減」「責任ある調達」等を重要項目として特定し、日々の活動を通じて企業価値の向上に努めています。

(3) 経営計画・目標


収益力強化を喫緊の課題と認識し、目標とする経営指標を「営業利益額」としています。収益力の強化、経営基盤強化、グループ総合力強化に取り組み、社会的価値と経済的価値を高めることを中期目標に掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


2030年のありたい姿として「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を掲げ、「収益力強化」「経営基盤強化」「グループ総合力強化」を3つの柱として取り組みます。収益力強化では顧客ニーズに応じた商品提供や新規事業拡大、経営基盤強化では業務効率改善や人的資本経営の加速、グループ総合力強化では事業ポートフォリオの選択と集中を行います。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のため、従業員の能力を最大限引き出すことを重視しています。企業と従業員が相互に価値を認め合い共に成長すること、主体的なアップスキリングの機会を提供しプロフェッショナルを育成すること、多様性を受け止め活躍を促すマネジメント人材を育成することを方針としています。また、柔軟な働き方の促進や生活基盤の安定確保による職場環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 17.2年 5,289,849円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 54.5%
男女賃金差異(全労働者) 51.5%
男女賃金差異(正規) 73.0%
男女賃金差異(非正規) 73.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社内資格『キーコーヒーコーヒースペシャリスト』取得率(16.7%)、年次有給休暇取得率(57.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料等の価格高騰及び為替相場の変動


コーヒーの原料生豆は全量海外からの輸入に依存しており、国際相場商品であるため、生産国の政情や気候変動、病害虫被害等により価格が高騰するリスクがあります。また、為替相場の変動や資源エネルギー価格上昇に伴う資材・物流費等のコスト増が、売上原価の上昇を招き、価格転嫁が遅れた場合には利益が減少する可能性があります。

(2) サプライチェーンリスク


コーヒー原料生豆や製造資材の一部を海外から調達しているため、各国の政治・経済情勢、自然災害、紛争等の影響を受けやすくなっています。これらにより原材料や資材の手配が困難になった場合、商品の販売ができず売上高が減少する可能性があります。同社は在庫の見直しやサプライヤーとの連携強化等の対策を講じています。

(3) 消費市場の変化


消費者ニーズの多様化やデジタル化に対応するため、D2Cビジネスや海外ビジネス、環境配慮型商品の開発に注力していますが、変化への対応が遅れた場合、消費者の支持を得られず販売数量の減少や価格低下を招く恐れがあります。また、脱プラスチック等の環境負荷低減への取り組みも重要視されています。

(4) 競合他社との競争激化


人口減少等により市場全体の伸長が難しい中、価格やサービスを巡る競争が激化しています。同社は付加価値商品の提供等で差別化を図っていますが、優位性の確保が困難な場合、シェア拡大に向けた過当競争によりブランド価値が毀損し、売上高が減少する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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