※本記事は、ユーグレナの有価証券報告書(第21期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ユーグレナってどんな会社?
微細藻類の大量培養技術を中核とし、ヘルスケアや次世代エネルギーの事業化に挑む企業です。
■(1) 会社概要
2005年に微細藻類ユーグレナの研究開発などを目的として設立されました。同年、世界で初めてユーグレナの食品用途屋外大量培養に成功し、ヘルスケア事業へ参入しました。2014年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たし、近年はキューサイやサティス製薬などを連結子会社化し、事業基盤を拡大しています。
現在の従業員数は連結で793名、単体で171名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の出雲充氏で、第2位は綺麗創造ホールディングス、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 出雲充 | 9.08% |
| 綺麗創造ホールディングス | 8.37% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長の出雲充氏をはじめ、以下の役員が経営を牽引しています。社外取締役の比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 出雲充 | 代表取締役社長 | 東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。2005年に同社代表取締役社長に就任し、以来現職。 |
| 若原智広 | 取締役代表執行役員Co-CEO 兼 財務担当 | UBSウォーバーグ証券等を経て2013年入社。CFiOなどを歴任し、2026年1月より現職。 |
| 植村弘子 | 取締役代表執行役員Co-CEO 兼 人事担当 兼 ヘルスケア BtoB国内営業・新規領域担当 | エスビー食品や一休でのCHROなどを経て2023年入社。2026年1月より現職。 |
| 岡島悦子 | 取締役 | 三菱商事、マッキンゼー等を経てプロノバ代表取締役社長。2024年1月より指名報酬委員会委員長。 |
社外取締役は、琴坂将広(元マッキンゼー・慶應義塾大学教授)、清水誠(弁護士)、望月愛子(元中央青山監査法人)、村上未来(元中央青山監査法人)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ヘルスケア事業」「バイオ燃料事業」および「その他事業」を展開しています。
■ヘルスケア事業
微細藻類ユーグレナをはじめとする独自素材の研究開発力と商品企画力を基盤に、健康食品および化粧品の開発・製造・販売を展開しています。一般消費者向けに自社ブランド「からだにユーグレナ」や「CONC」などを提供するほか、企業顧客向けにはOEM製品の供給や機能性素材の原料販売を行っています。
収益源は、自社ECサイトや電話等を通じた直接販売による商品代金のほか、ドラッグストア等の小売店舗での卸売代金、製薬会社や食品メーカーからの原料販売代金およびOEM供給代金です。事業の運営はユーグレナのほか、子会社のキューサイ、エポラ、MEJ、サティス製薬などが行っています。
■バイオ燃料事業
微細藻類ユーグレナから抽出した藻油や廃食油などのバイオマス資源を活用し、持続可能なバイオジェット燃料(SAF)や次世代バイオディーゼル燃料(HVO)の研究開発・製造・販売を行っています。また、大規模かつ低コストな生産技術の確立に向けた微細藻類の培養技術開発も推進しています。
収益源は、運送事業者や航空会社などの顧客に対するバイオ燃料の販売代金です。現在は商業化フェーズへの移行段階にあり、ユーグレナが国内外のパートナー企業と連携しながら事業を推進するほか、海外の合弁会社などを通じて商業規模のバイオ燃料製造プラントの建設および運営を進めています。
■その他事業
微細藻類ユーグレナを活用したアグリ領域(肥料・飼料分野)、バイオインフォマティクス領域、およびソーシャルビジネス領域を展開しています。有機肥料や機能性飼料原料の研究開発・販売のほか、一般消費者向けの遺伝子解析サービス、バングラデシュにおける農業事業などを手掛けています。
収益源は、農家や畜産業者などに対する有機肥料や飼料の販売代金、遺伝子解析サービスの利用料などです。事業の運営はユーグレナのほか、有機肥料の製造販売を行う大協肥糧、遺伝子解析サービスを手掛けるジーンクエスト、ソーシャルビジネスを行うGrameen euglenaなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は一貫して拡大を続けており、成長基調を維持しています。経常利益についても収益構造の改善が進み、直近2期間では連続して黒字を計上し、利益率も大きく向上しています。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は特別損失の計上などの影響により赤字が続いています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 344億円 | 444億円 | 465億円 | 476億円 | 504億円 |
| 経常利益 | -64億円 | -25億円 | -14億円 | 4億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | -18.5% | -5.6% | -3.1% | 0.9% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -24億円 | -27億円 | -32億円 | -7億円 | -8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、高い売上総利益率を維持しています。さらに、グループ横断での費用構造の徹底的な見直しや物流費などの低減が進んだ結果、営業利益は前期から大幅に拡大し、収益性の向上が顕著に表れています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 476億円 | 504億円 |
| 売上総利益 | 333億円 | 350億円 |
| 売上総利益率(%) | 69.9% | 69.6% |
| 営業利益 | 3億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 0.6% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が111億円(構成比35%)、荷造運搬費が34億円(同11%)、給与手当が31億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のヘルスケア事業は、主力製品の価格改定やECモールの販売強化、子会社の業績寄与などにより直販および卸売ともに好調に推移し、堅調な増収を牽引しました。バイオ燃料事業も製品・原料の取引先開拓などが進み増収となった一方、その他事業は前期比で横ばいの水準となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ヘルスケア事業 | 443億円 | 470億円 |
| バイオ燃料事業 | 9億円 | 11億円 |
| その他事業 | 23億円 | 23億円 |
| 連結(合計) | 476億円 | 504億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.7%となっており、プライム市場の製造業平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人と地球を健康にする」というパーパスのもと、ヘルスケアやバイオ燃料などの様々な領域において事業を展開してきました。そして、創業15周年を迎えた2020年に、同社グループのありたい姿として「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げ、サステナビリティを軸とした事業を展開し、持続的な成長を図っています。
■(2) 企業文化
「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を企業理念とし、持続的成長の源泉として長年培ってきた独自の研究開発力と、新機軸に挑むベンチャー精神を重視しています。また、既存事業の深化と新規事業の探索を両立させる「両利きの経営」を実践し、ポートフォリオの健全性と成長性を確保する経営方針を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
2026年12月期においては、売上高520億円、調整後EBITDA70億円、営業利益32億円を見込むとともに、当期純利益の黒字転換を目指しています。さらに、2028年度には売上高550〜600億円、2030年度には商業プラントの本格稼働を前提として売上高1,000億円規模の実現を目標として掲げています。
* 2026年度目標:売上高520億円、調整後EBITDA70億円、営業利益32億円
* 2028年度目標:売上高550〜600億円、調整後EBITDA80〜90億円前後
* 2030年度目標:売上高1,000億円規模、調整後EBITDA160億円相当
■(4) 成長戦略と重点施策
中期的なトップライン拡大に寄与する収益基盤の拡充に重点を置き、既存領域の「深化」と新規領域の「探索」を同時に強化します。ヘルスケア事業では投資効率の最適化や新たな顧客層へのアプローチを進め、バイオ燃料事業ではマレーシアでの商業プラント稼働を見据えた供給体制の構築と、藻油の大規模・低コスト生産技術の開発に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営方針の実現に必要なグループらしい組織ケイパビリティを担保するため、戦略的に人的資本投資を行っています。成長軌道をさらに加速させ、サステナブルな成長を実現できる組織づくりに向けて、人材開発・組織開発・組織文化開発への積極的な投資を行うことで、組織ケイパビリティの更なる向上に取り組んでいく方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 44.3歳 | 5.7年 | 7,027,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.6% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社は従業員規模等により法定開示の公表義務の対象ではないため、一部の項目において有報に記載がありません。
また、同社は人的資本等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、日本以外の国籍を有する従業員比率(連結5.0%)、障がい者雇用率(単体1.12%)、平均有給取得日数(連結10.2日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 特定の外部委託先への依存
食品や化粧品の最終製品の製造等において、外部の委託先に業務を依存している部分があります。これにより設備投資や固定費を抑え、研究開発に資源を集中できるメリットがある一方で、委託先における取引方針の変更や供給能力の低下、品質問題などが発生した場合には、製品の安定供給に支障をきたし、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) バイオ燃料の商業化に向けた投資
バイオ燃料の商業生産に向け、マレーシアでのプラント建設・運営等のプロジェクトを海外パートナーと共同で推進しています。しかし、プラントの建設遅延や計画の見直し、資本的支出や運転資金の増大が生じた場合、追加の資金負担が発生するリスクがあります。また、稼働後に設備トラブルや原料価格の変動等が起きた場合、想定通りの収益が得られない可能性があります。
(3) 特定の培養技術への依存と陳腐化
同社グループは、微細藻類ユーグレナの光従属栄養培養などの様々な培養技術をコア技術として事業を展開しています。今後、競合他社が同等以上の優れた技術や、より安価に大量培養できる代替技術を開発した場合、同社の保有する技術が陳腐化するリスクがあります。技術改良への対応が遅れた場合には、競争力の低下につながり業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。