※本記事は、株式会社アルトナーの有価証券報告書(第64期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アルトナーってどんな会社?
設計技術者の人材派遣に特化した技術者派遣事業と、設計開発を受託する請負・受託事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1962年9月に大阪技術センターとして設立され設計業務を開始。1986年に特定労働者派遣事業を開始し、1998年に現在のアルトナーへ商号変更しました。2007年の上場を経て、2018年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2025年にはクリップソフトや情報技研を子会社化しています。
従業員数は連結1,623名、単体1,474名です。筆頭株主は関口興業社で、第2位はアルトナー従業員持株会、第3位はベンチャーキャピタル業務等を行う大阪中小企業投資育成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 関口興業社 | 20.00% |
| アルトナー従業員持株会 | 7.74% |
| 大阪中小企業投資育成 | 4.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は関口相三氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 関口 相三 | 代表取締役社長経営戦略本部管掌兼エンジニア事業本部管掌 | 1988年同社入社。1998年取締役副社長を経て、2002年代表取締役社長に就任。2025年5月より経営戦略本部管掌兼エンジニア事業本部管掌を務める。 |
| 張替 朋則 | 常務取締役管理本部管掌兼エンジニアエージェンシー事業本部管掌 | 1982年同社入社。2007年常務取締役を経て、2025年5月より常務取締役管理本部管掌兼エンジニアエージェンシー事業本部管掌を務める。 |
| 奥坂 一也 | 取締役能力開発本部管掌 | 1978年同社入社。2004年常務取締役、2011年取締役などを経て、2025年5月より取締役能力開発本部管掌を務める。 |
社外取締役は、野村龍一郎(元みずほ不動産販売専務執行役員)、寺村泰彦(元マブチ専務取締役)、森井眞一郎(元タカラスタンダード常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「技術者派遣事業および請負・受託事業」を展開しています。
■(1) 技術者派遣事業
同社はソフトウェア、電気・電子、機械などの専門的な設計技術を提供する技術者派遣事業を行っています。主な顧客は自動車関連メーカーや半導体製造装置メーカーなどの製造業で、顧客企業の設計開発部門を支援しています。
収益は、派遣契約に基づいて顧客企業から受け取る派遣料金が主な源泉です。技術者は派遣先の指揮命令のもとで業務に従事し、同社が雇用主として管理を行います。事業の運営は同社および連結子会社のクリップソフト、情報技研が行っています。
■(2) 請負・受託事業
同社は、顧客企業から直接設計開発業務を受託する請負・受託事業も併せて展開しています。技術者派遣から請負・受託への戦略的なシフトを進め、OJTを活用したプロジェクトの配属業務レベル引き上げに注力しています。
収益は、顧客企業と請負契約等を締結し、成果物の納品や業務遂行の完了によって対価を受け取るモデルです。業務遂行の指示や労務管理は同社グループが責任を負い、運営は同社やクリップソフト、情報技研が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社は当期より連結財務諸表を作成しています。旺盛な技術者需要を背景に稼働率が高水準で推移し、成長分野への戦略的配属により技術者単価が上昇した結果、当期の売上高は約120億円、経常利益は約18億円と堅調な業績を記録しています。
| 項目 | 2026年1月期 |
|---|---|
| 売上高 | 120億円 |
| 経常利益 | 18億円 |
| 利益率(%) | 15.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 |
■(2) 損益計算書
当期の損益構成を見ると、技術者の稼働人員増加と技術者単価の上昇により、売上総利益率は38.0%を確保しています。採用やIT投資などのコストを増収効果で吸収し、高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2026年1月期 |
|---|---|
| 売上高 | 120億円 |
| 売上総利益 | 46億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.0% |
| 営業利益 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 15.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比31.0%)、支払手数料が5億円(同19.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
技術者派遣事業は稼働率の高水準維持や単価上昇により売上が堅調に推移しています。また、請負・受託事業は積極的な営業展開やプロジェクト変更の推進により、売上構成比が上昇しています。
| 区分 | 売上(2026年1月期) |
|---|---|
| 技術者派遣事業 | 104億円 |
| 請負・受託事業 | 16億円 |
| その他の事業 | 1億円 |
| 連結(合計) | 120億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アルトナー社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動により資金を得ており、これは主に税金等調整前当期純利益によるものです。投資活動では、子会社株式の取得等により資金を使用しました。財務活動では、長期借入れによる収入があったものの、配当金の支払い等により資金を得ています。
| 項目 | 2026年1月期 |
|---|---|
| 営業CF | 14億円 |
| 投資CF | -14億円 |
| 財務CF | 1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「エンジニアサポートカンパニー。私達は技術者の夢をサポートします」という経営理念を掲げています。技術者の成長と自己実現をサポートし、顧客企業の持続的な成長に貢献する「テクニカル・パートナー」として活動することで、企業価値の最大化と社会課題の解決を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、モノづくりを支える人をつくる「人づくり」、従業員がやりがいを持って働ける職場環境を整備する「全従業員の幸福(しあわせ)」、ステークホルダーとの良好な関係維持発展に努める「コーポレート・ガバナンス」、事業を通じて社会に貢献する「社会貢献」を基本方針として重視し、企業活動を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年1月期を最終年度とする中期経営計画「Make Value for 2025 to 2029」において、「持続的成長および次世代成長のための基盤を構築する」という基本方針を掲げています。客観的な指標として営業利益率を経営目標数値に位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の基本施策として、カーボンニュートラル対応を中核に据えたハイエンド領域の人員拡大や、請負・受託プロジェクトへの戦略的シフトを推進しています。また、シニアや女性、外国人労働者の活用を図るとともに、M&Aやアライアンスによる総合技術サービス会社への進化を模索しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を最大の経営資本と捉え、独自の教育システムを通じてエンジニアの成長と自己実現をサポートしています。採用基準の改善や多様な人材の確保に努めるとともに、定期的な面談や専属カウンセラーによるメンタルヘルスケアを実施し、モチベーションと定着率の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 30.7歳 | 6.8年 | 4,638,691円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 90.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 95.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 58.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員(技術系)一人あたりの年間平均研修時間(86.6時間)、離職率(技術系)(8.9%)、女性社員(技術系)の割合(4.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製造業の業績動向による影響
同社は製造業を主要顧客としており、自動車関連メーカーなどの顧客企業が景気後退により設備投資や研究開発を削減し、外部技術者の活用を減少させた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 理工系・キャリア技術者の確保難
少子化に伴う理工系学生の減少や、製造業の活発化によるキャリア採用競争の激化により、優秀な技術者の確保が困難となった場合、事業拡大の要件が満たせず、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 教育研修の効果と適切な派遣先の確保
独自の研修によるスキルアップが顧客評価や単価上昇に寄与しない場合や、技術者に対して適切な派遣先が見つからず稼働率の維持・向上が図れない場合、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 労働工数の規制動向
同社の技術者の労働工数は派遣先の業務状況に応じて確定します。関係諸法令の改正等により長時間労働に対する是正の動きが強まり、技術者の労働工数が大幅に減少した場合、収益に影響を及ぼす可能性があります。



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