※本記事は、ローツェの有価証券報告書(第41期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ローツェってどんな会社?
ローツェは、半導体・FPD工場における無塵搬送ロボットや細胞培養装置などの開発・製造を行うグローバル企業です。
■(1) 会社概要
1985年に設立され、モータ制御機器の開発を開始しました。1986年にクリーンロボットの製造・販売を始め、その後台湾、ベトナム、米国、韓国などに子会社を設立してグローバル展開を推進しています。2004年のジャスダック上場を経て、2022年には東京証券取引所プライム市場へ移行しました。直近では細胞培養装置分野への参入や海外企業のM&Aなど、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で4,435名、単体で259名です。筆頭株主は創業者の崎谷文雄氏で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は同じく信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 崎谷 文雄 | 35.72% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.91% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は藤代祥之氏が務めています。社外取締役比率は30.0%(10名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤代 祥之 | 代表取締役社長 | 2006年同社入社。ソフトウエアソリューション部長、専務取締役を経て、2015年5月より現職。ベトナム子会社取締役なども兼務。 |
| 中村 秀春 | 取締役 | 1989年同社入社。半導体装置部製造課長等を経て、1997年5月より現職。ベトナム子会社代表取締役会長も兼務。 |
| 早﨑 克志 | 取締役 | 1998年同社入社。海外事業部長、海外事業本部長等を経て、2003年5月より現職。ローツェイアス代表取締役社長も兼務。 |
| 崎谷 文雄 | 取締役相談役 | 1985年の同社設立時に代表取締役社長に就任。代表取締役会長を経て、2017年5月より現職。 |
社外取締役は、羽森寛(オー・エイチ・ティー社長)、森下秀法(アドテックプラズマテクノロジー社長)、青砥なほみ(元エルピーダメモリ執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体・FPD関連装置事業」および「ライフサイエンス事業」を展開しています。
■半導体・FPD関連装置事業
半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造工程において、製品の歩留まりに大きく影響する発塵を防ぐ無塵搬送ロボットや搬送システムを提供しています。大気用・真空用のウエハ搬送装置や大型ガラス基板搬送装置のほか、半導体製造工程向けの金属汚染分析前処理装置などを開発・製造し、世界の半導体・装置メーカーに提供しています。
顧客である半導体デバイスメーカーや製造装置メーカーへの製品販売、および関連部品や保守サービスから収益を得ています。運営は同社のほか、台湾、韓国、米国、ベトナム、中国などの海外子会社が連携して行い、製品の開発・製造から販売・サポートまで強固なグローバル体制で展開しています。
■ライフサイエンス事業
創薬のための研究開発や再生医療、iPS細胞をはじめとする細胞培養に携わる研究者向けに、細胞培養処理を自動で行うインキュベータ(細胞培養装置)や関連ソフトウェアを提供しています。また、組織染色分野における劇毒物に依存しない代替試薬の開発や、手作業の自動化・最適化に向けた研究開発も推進しています。
研究機関や医療関連企業に対して、細胞培養装置などの製品や自動化ソリューション、ソフトウェアパッケージを販売して収益を得ています。本事業の運営は、主に子会社であるローツェライフサイエンスが行っており、ジェノスタッフ等の子会社とともに研究プロセス全体の効率化・自動化に貢献しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はデータセンター向けなどの半導体需要に支えられ、直近5年間で約1.9倍に成長し、一貫して増収基調を維持しています。経常利益率も20%台後半から30%台の高水準で推移しており、高い収益力を誇ります。当期は特許訴訟に伴う訴訟損失引当金の計上があり純利益は減少しましたが、本業は安定して推移しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 670億円 | 945億円 | 932億円 | 1244億円 | 1288億円 |
| 経常利益 | 178億円 | 303億円 | 271億円 | 355億円 | 326億円 |
| 利益率(%) | 26.6% | 32.1% | 29.0% | 28.5% | 25.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 92億円 | 97億円 | 132億円 | 147億円 | 83億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は堅調な設備投資需要を取り込み、前期比で増収となりました。売上総利益率も40%前後の高い水準を維持しており、付加価値の高い製品展開が奏功しています。のれん償却額や研究開発費などの先行投資が増加した影響で、営業利益率はわずかに低下したものの、依然として20%台の高収益を確保しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1244億円 | 1288億円 |
| 売上総利益 | 496億円 | 527億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.9% | 40.9% |
| 営業利益 | 320億円 | 312億円 |
| 営業利益率(%) | 25.7% | 24.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が45億円(構成比21%)、のれん償却額が31億円(同15%)、研究開発費が19億円(同9%)を占めています。技術力強化に向けた人的資本投資や研究開発への積極的な資金投下が見て取れます。
■(3) セグメント収益
主力の半導体・FPD関連装置事業は、台湾顧客向けの需要増や、生成AIの普及に伴うデータセンター向け投資を背景に増収を確保しました。一方のライフサイエンス事業も、創薬・再生医療向けの引き合いにより売上を順調に伸ばしていますが、全体に占める割合は限定的です。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 半導体・FPD関連装置事業 | 1233億円 | 1276億円 |
| ライフサイエンス事業 | 11億円 | 12億円 |
| 連結(合計) | 1244億円 | 1288億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業のパターンです。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 368億円 | 312億円 |
| 投資CF | -65億円 | -33億円 |
| 財務CF | -92億円 | -155億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世の中にないものをつくる」を合言葉に、半導体・FPD業界において独自の技術と経験をもとに最先端技術への貢献を続けることを経営方針として掲げています。「Co-innovation(共創という独創)」という発想をベースに、グローバルなネットワークを活用して顧客に寄り添い、最高のソリューションの提供を目指しています。
■(2) 企業文化
創業より培ってきた技術力とアイデアを重んじ、社会の発展に貢献する姿勢を大切にしています。また、事業環境の変化が激しい最先端のグローバル環境において、意思決定の迅速化を図り、変化に的確に対応していく組織文化を重視しています。顧客とのコミュニケーションを密にし、きめ細やかなサポートを提供する文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は企業価値の向上を目的とし、売上高および経常利益の成長を目標としています。また、中期的に資本・資産効率をより意識した経営を進めていく方針です。さらに、気候変動への対応として温室効果ガスの排出量削減にも明確な目標を掲げています。
* 2030年度までに自社の温室効果ガス排出量(Scope1,2)を2019年度比で50%削減
* 2050年度までにカーボンニュートラルを実現
■(4) 成長戦略と重点施策
半導体市場の中長期的な成長を見据え、「技術力強化」「グローバルサポート体制の強化」「生産体制の強化」の3つを重点施策としています。付加価値の高い新製品開発や特許取得を進め、海外拠点網を通じた迅速なサポート体制を構築します。また、ベトナムや韓国を中心とした生産体制の自動化やサプライチェーンの強化を図り、競争力を高めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員一人ひとりの幸せ」と「企業理念の実現」の両立を経営基盤とし、持続可能な企業価値の向上を目指しています。技術力に加え、創造性・課題解決力・グローバル連携力を持つ人材を重視し、資格取得支援や特許報奨制度、FA制度などで社員の挑戦と成長を支援しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンや働きがいのある職場づくりも推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 42.6歳 | 15.5年 | 10,391,228円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.1% |
| 男性育児休業取得率 | 125.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.8% |
| 男女賃金差異(正規・管理職) | 91.1% |
| 男女賃金差異(正規・管理職以外) | 85.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 39.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(11.8%)、男性管理職比率(12.7%)、中核人材における女性比率(8%)、外国人比率(36%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体およびFPD業界における設備投資への依存
同社の主力製品は半導体やFPDの生産ライン向け装置であり、デバイスメーカーや製造装置メーカーの設備投資動向に強く依存しています。顧客の投資計画が急激に変更されたり設備投資サイクルが変動した場合、受注や稼働率が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 地政学リスク・輸出管理・関税政策の影響
グローバルに事業を展開しているため、米国を中心とする先端半導体関連の対中輸出規制や関税率引き上げなどの通商政策の変更、ならびに国際紛争等の地政学的リスクが、海外での販売やサプライチェーンを通じた部品調達、エネルギーコストに影響を与えるリスクがあります。
■(3) 材料・部品調達の逼迫と価格変動
装置製造に必要なアルミなどの素材や各種部品を多岐にわたって調達しており、急激な需要変動や物流の混乱、特定サプライヤーの生産障害などにより、部品の納期遅延やコスト上昇が発生した場合、製品の安定供給や収益性に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティおよびサイバーリスク
事業上の様々な技術情報や顧客情報を保有しており、ランサムウェアや委託先経由のサイバー攻撃、脆弱性の悪用などにより情報流出やシステムの操業停止が発生した場合、多額の費用負担や社会的信用の失墜が生じ、業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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