※本記事は、オンワードホールディングスの有価証券報告書(第79期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オンワードホールディングスってどんな会社?
繊維製品の企画・製造・販売を主力とし、コスメやウェルネス領域にも展開するアパレル企業です。
■(1) 会社概要
1927年に樫山商店として創業し、1947年に樫山(現オンワードホールディングス)を設立しました。1964年に東証・大証・名証の各第一部へ上場指定替えを果たしました。2007年の純粋持株会社化と商号変更を経て、直近では2024年にウィゴーの株式を取得し子会社化するなど、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で6,527名、単体で117名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は奨学事業を行う公益財団法人、第3位は取引先持株会となっています。各事業会社を統括するホールディングス体制により、機動的な経営判断と事業の多角化を推進しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) | 11.70% |
| 公益財団法人樫山奨学財団 | 6.40% |
| オンワードホールディングス取引先持株会 | 3.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は保元道宣氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 保元道宣 | 代表取締役社長 | 2006年同社入社。2011年常務執行役員などを経て、2015年より現職。 |
| 池田大介 | 常務取締役人財・総務担当 | 1991年同社入社。経営企画・法務担当の執行役員などを経て、2023年より現職。 |
| 樋口剛宏 | 常務取締役マーケティング・プロダクト担当 | 1990年同社入社。宣伝・マーケティング担当の常務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 吉田昌平 | 取締役財務・経理・IR担当、戦略企画室長 | 2001年アクティー二十一入社。同社経理・IR部長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、川本明(慶應義塾大学経済学部教授)、小室淑恵(ワーク・ライフバランス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」および「海外事業」を展開しています。
■(1) 国内事業
紳士服・婦人服等の繊維製品に加え、ダンス用品、カタログギフト、ペットファッション、化粧品などの企画・製造・販売を国内で展開しています。個人顧客向けのアパレル販売や、法人向けのユニフォーム・制服の企画なども手がけています。
主に実店舗やECサイトでの商品販売代金を顧客から受け取るモデルです。運営は中核事業会社であるオンワード樫山をはじめ、ウィゴー、大和、オンワードコーポレートデザイン、チャコットなどが行っています。
■(2) 海外事業
ヨーロッパ、アメリカ、アジアの各地域において、衣料品等の企画・製造・販売事業を展開しています。欧州発祥のデザイナーズブランドや米国発祥のトラディショナルブランドなどを、現地およびグローバル市場に向けて提供しています。
海外の実店舗やECサイトを通じた商品の販売代金を主要な収益源としています。事業の運営は、ジョゼフLTD.、ジェイプレスINC.、恩瓦徳時尚貿易(中国)有限公司などの海外子会社が各地域を分担して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間を通じて売上高は着実に拡大を続けており、消費者のライフスタイル変化に的確に対応しています。経常利益も成長軌道を描いており、戦略強化ブランドの伸長や在庫管理の徹底が奏功し、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1685億円 | 1761億円 | 1896億円 | 2084億円 | 2368億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 53億円 | 101億円 | 101億円 | 112億円 |
| 利益率(%) | 0.3% | 3.0% | 5.3% | 4.8% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 85億円 | 25億円 | 71億円 | 51億円 | 65億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益も順調に増加しています。プロモーションや人的資本への積極的な投資を実施しつつも、在庫管理の徹底等による粗利率の改善が利益水準の押し上げに寄与しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2084億円 | 2368億円 |
| 売上総利益 | 1136億円 | 1294億円 |
| 売上総利益率(%) | 54.5% | 54.6% |
| 営業利益 | 102億円 | 116億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当等が353億円(構成比30%)、賃借料が322億円(同27%)を占めています。
■(3) セグメント収益
連結売上の大部分を占める国内事業が大きく伸長し、全体の増収を牽引しています。主力ブランドやEC事業の好調が主な要因です。海外事業についても、EC売上の拡大や生産受注の増加等により、堅調な推移を見せています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 国内事業 | 1899億円 | 2179億円 |
| 海外事業 | 185億円 | 189億円 |
| 連結(合計) | 2084億円 | 2368億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業活動や資産売却等で得た資金を用いて借入金の返済を進める改善局面にあると評価できます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 82億円 |
| 投資CF | -54億円 | 64億円 |
| 財務CF | 36億円 | -86億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
1927年の創業から「人々の生活に潤いと彩りをご提供すること」を経営理念に掲げています。これに地球環境を大切にするサステナブル経営の視点を加え、「ヒトと地球(ホシ)に潤いと彩りを」というミッションステートメントを制定し、人々の豊かな生活づくりへの貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「社員の多様な個性をいかしたお客さま中心の経営」を重視し、地球と共生する「生活文化創造企業」として事業を推進しています。働き方改革やダイバーシティの推進を通じて、社員一人ひとりが主体的かつ生き生きと働ける環境を整え、多様な個性を尊重する企業風土を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、積極的な成長投資を含めた成長戦略を推進し、中長期的な収益性の向上を目指しています。財務レバレッジを活用した資本効率重視の財務戦略を実行し、以下の数値目標を掲げています。
* 2027年2月期 当期純利益:100億円以上
* 2027年2月期 ROE:10%以上
* 2027年2月期 ROIC:7%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期経営ビジョン「ONWARD VISION 2030」に基づき、多様なブランド・商品・流通戦略を推進しています。生活者の価値観変化に合わせたウェルネス領域の成長加速や、OMO型店舗・PLMなどのデジタル技術を活用したDX戦略により、事業モデルの進化とサプライチェーンの効率化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員の多様な個性を活かしたお客さま中心の経営」への進化に向け、変革を担う人材の内部育成と外部採用を推進しています。組織・人材プラットフォームの改革を進め、ダイバーシティ推進や仕事と育児の両立支援など、多様で個性的な人材が長期的に活躍できる制度整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 45.9歳 | 19.3年 | 6,572,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 58.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(57.0%)、障がい者雇用比率(2.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 消費者ニーズ・トレンドの変化
景気変動による個人消費の低迷や他社との競合、ファッショントレンドの急激な変化により、当初計画した収益を確保できない可能性があります。同社グループでは、顧客ニーズを適時に収集し、即座に商品企画に反映させて商品化する体制の強化により対応しています。
■(2) 気象状況による売上機会の逸失
主力となるファッション商品は天候に売上が左右されやすく、天候不順の長期化や台風の到来などにより最盛期の売上機会を逃すリスクがあります。短サイクルでの企画・生産体制の強化や調達先の分散、生産拠点におけるバックアップ体制の構築、適正在庫の確保等で影響の最小化に努めています。
■(3) 製品の品質に関するリスク
適切な品質管理基準を設けていますが、予期せぬ製品事故が発生した場合、ブランドイメージの低下や多額の費用負担が生じる可能性があります。製造物責任にかかる保険への加入や「オンワード認定工場制度」を通じた協力工場の労働環境改善等で事前に対策しています。
■(4) 海外事業に関するリスク
海外拠点における政変、経済情勢の変化、為替レートの変動、伝染病等の発生により、事業継続が困難になるリスクを内在しています。これに対し、生産拠点の複数国への分散や現地の情報収集を密に行い、迅速かつ適切な対応が可能な体制を整えています。



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