※本記事は、株式会社オンワードホールディングス の有価証券報告書(第78期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年05月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オンワードホールディングスってどんな会社?
アパレル大手として「23区」等のブランドを展開し、ウェルネスやペット関連などライフスタイル事業も手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1927年に樫山商店として創業し、1947年に樫山株式会社を設立しました。1964年には東証一部へ上場を果たしています。2007年に純粋持株会社体制へ移行し、現商号である株式会社オンワードホールディングスに変更しました。直近では2024年9月に株式会社ウィゴーの株式を取得し、完全子会社化しています。
同社グループは連結従業員数6,253名、単体118名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は創業家関連の公益財団法人樫山奨学財団、第3位は株式会社日本カストディ銀行(信託口)となっており、信託銀行や財団法人が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) | 12.21% |
| 公益財団法人樫山奨学財団 | 6.41% |
| 日本カストディ銀行 (信託口) | 3.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は保元道宣氏が務めています。社外取締役比率は33.3%(取締役6名中2名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 保元 道宣 | 代表取締役社長 | 2006年同社入社。2015年3月より代表取締役社長。2022年3月よりオンワード樫山代表取締役社長執行役員を兼務。 |
| 池田 大介 | 常務取締役人財・総務担当 | 1991年同社入社。経営企画・法務担当執行役員、取締役経営企画・人財・総務担当などを経て2023年3月より現職。 |
| 樋口 剛宏 | 常務取締役マーケティング・テクノロジー・プロダクト担当 | 1990年同社入社。オンワード樫山執行役員、同社常務執行役員などを経て2025年5月より現職。 |
| 吉田 昌平 | 取締役財務・経理・IR担当 | 2001年アクティー二十一入社。同社経理・IR部長、執行役員などを経て2024年5月より現職。オンワード樫山取締役執行役員を兼務。 |
社外取締役は、川本明(元通商産業省審議官)、小室淑恵(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」および「海外事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 国内事業
日本国内において、紳士服・婦人服等の衣料品のほか、ダンス用品、ペットファッション、化粧品、ギフト関連、リゾート施設運営など幅広いライフスタイル関連事業を展開しています。顧客は一般消費者が中心です。
収益は主に消費者への商品販売やサービス提供による対価から得ています。運営は、株式会社オンワード樫山、株式会社ウィゴー、チャコット株式会社、株式会社クリエイティブヨーコ、株式会社大和などが担っています。
■(2) 海外事業
欧州、米国、アジア地域において、衣料品等の企画・製造・販売を行っています。グローバルな市場において、「JOSEPH」や「J.PRESS」などのブランドを展開し、現地の消費者を主な顧客としています。
収益は商品販売による売上収益が中心です。運営は、英国のジョゼフLTD.、米国のジェイプレスINC.、中国の恩瓦徳時尚貿易(中国)有限公司などが各地域で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年2月期以降、回復・増加傾向にあり、当期は2,000億円台に達しました。利益面では、2021年2月期に大きな赤字を計上しましたが、その後黒字転換し、経常利益率は5%前後で推移しています。当期純利益も回復基調にあります。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,759億円 | 1,685億円 | 1,761億円 | 1,896億円 | 2,084億円 |
| 経常利益 | -202億円 | 5億円 | 53億円 | 101億円 | 101億円 |
| 利益率(%) | -11.5% | 0.3% | 3.0% | 5.3% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -232億円 | 86億円 | 31億円 | 66億円 | 85億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は低下しています。一方で、販売費及び一般管理費は増加したものの、売上高に対する比率は改善しており、営業利益は前期比で減少しました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,896億円 | 2,084億円 |
| 売上総利益 | 1,058億円 | 1,136億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.8% | 54.5% |
| 営業利益 | 113億円 | 102億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が315億円(構成比30.4%)、賃借料が284億円(同27.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業は、株式会社ウィゴーの連結化やOMO型店舗の拡大により大幅な増収となりましたが、在庫調整等の影響で減益となりました。海外事業は、欧州やアジア地域での好調により増収となり、利益面でも赤字幅が縮小し改善傾向にあります。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| 国内事業 | 1,720億円 | 1,899億円 |
| 海外事業 | 177億円 | 185億円 |
| 連結(合計) | 1,896億円 | 2,084億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金と財務活動による調達資金を合わせて、投資活動に充てている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 40億円 | 31億円 |
| 投資CF | -43億円 | -54億円 |
| 財務CF | 3億円 | 36億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人々の生活に潤いと彩りをご提供すること」を経営理念として掲げています。さらに、地球環境への配慮を加えた「ヒトと地球(ホシ)に潤いと彩りを」をミッションステートメントとし、サステナブル経営の理念を重ね合わせています。
■(2) 企業文化
「社員の多様な個性をいかしたお客さま中心の経営」により、地球と共生する生活づくりに貢献する「生活文化創造企業」を目指しています。多様性を歓迎し、自由闊達な議論ができる風土の醸成や、社員が自発的に働き方を変えていく「働き方デザイン」などを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営ビジョン「ONWARD VISION 2030」の実現を目指しています。
* 2027年2月期 当期純利益:100億円以上
* ROE:10%以上
* ROIC:7%以上
* 配当性向:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「ファッション領域」での多様な戦略推進に加え、「ウェルネス領域」の成長加速や「コーポレートデザイン領域」の創造を進めています。また、実店舗とECを融合したOMO型店舗の拡大や、商品企画から物流までのプロセス改革を行うDX戦略、海外事業の成長基盤強化などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員の多様な個性をいかしたお客さま中心の経営」への進化に向け、変革を担う人財の内部育成や外部採用を進めています。多様で個性的な人財が活躍できる企業を目指し、ダイバーシティ推進や働き方改革プロジェクト「働き方デザイン」による生産性向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 45.8歳 | 19.4年 | 6,777,000円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 16.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 48.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 54.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | - |
※労働者の男女の賃金の差異(非正規)について、同社は該当する従業員がすべて女性で男性が不在のため男女差を算出していません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(55.7%)、障がい者雇用比率(2.6%)、育児休暇取得者比率(女性)(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 消費者ニーズの変化
ファッション商品における消費者ニーズに的確に対応するため商品開発に努めていますが、景気変動による個人消費の低迷、他社との競合、ファッショントレンドの急激な変化などにより、当初計画した収益を確保できず、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 気象状況の影響
主力となるファッション商品は天候により売上が変動しやすいため、短サイクル生産等で対応していますが、冷夏暖冬などの天候不順や度重なる台風の到来などによって、最盛期の売上機会を逸するおそれがあり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 品質問題の発生
品質管理基準を遵守していますが、製造物責任に関わる製品事故が発生した場合、企業・ブランドイメージの低下や多額の費用負担を招くおそれがあります。これに対し、製造物責任にかかる保険を付保するなどの対応を行っています。



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