エービーシー・マート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エービーシー・マート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エービーシー・マートは東京証券取引所プライム市場に上場し、靴を中心とした商品の販売や自社商品の企画開発を主たる事業として展開しています。国内の直営店やオンラインサイトに加え、海外市場にも進出しています。直近の業績では国内外での店舗展開やデジタルコマースの強化が寄与し、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社エービーシー・マートの有価証券報告書(第41期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エービーシー・マートってどんな会社?


靴の小売チェーン「ABC-MART」を全国・海外で展開し、自社商品の企画開発も行う小売企業です。

(1) 会社概要


1985年に靴や衣料の輸入販売を目的に設立され、1990年に靴小売の「ABC-MART」1号店をオープンしました。2000年に店頭登録を行い、2002年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。近年では台湾やベトナムのほか、2025年にはフィリピンに合弁会社を設立するなど海外展開を加速させています。

同社グループの従業員数は連結で9,101名、単体で3,977名です。筆頭株主は主要株主である合同会社イーエム・プランニングで、第2位は同じく主要株主の三木正浩氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
合同会社イーエム・プランニング 49.89%
三木 正浩 9.54%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は服部喜一郎氏が務めており、社外取締役比率は50%です。

氏名 役職 主な経歴
野口 実 代表取締役会長 1988年シヤチハタ入社後、1991年に同社へ入社。営業本部長等を経て2007年に代表取締役社長へ就任。2026年3月より現職。
服部 喜一郎 代表取締役社長 1999年に同社入社。海外事業担当や米国子会社のPresidentを歴任し、常務取締役営業本部長を経て、2026年3月より現職。
勝沼 清 取締役 アミックスを経て1996年に同社入社。人事や店舗開発部門を担当し、2022年12月に総務人事・店舗開発・財務経理・物流担当として現職。
菊池 孝 取締役 ブティック武生を経て1991年に同社入社。商品開発部長等を歴任し、2025年3月に販売促進担当および生産管理担当として現職。
石井 寧大 取締役 イトキンを経て2001年に同社入社。店舗店長や経理部長などを経て、2022年12月に経営企画室長として現職。


社外取締役は、鈴木浩子(ファッション誌専属モデル)、佐々木加奈子(俳優・元飲食店経営)、松岡正(元コンバースフットウエア取締役)、菅原泰男(プロモーション代表取締役会長)、小早川英樹(元日医リース代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内」および「海外」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 国内


全国各地に展開する小売店「ABC-MART」や「ABC-MART GRAND STAGE」等を通じて、自社ブランドやナショナル・ブランド商品の販売を行っています。靴を中心にライフスタイルに合わせたアパレル等のトレンドアイテムも提供しており、幅広い顧客層のニーズに応えています。

収益源は、直営店舗や自社オンラインサイトにおける商品の販売代金です。国内での小売運営は、エービーシー・マートやオッシュマンズ・ジャパンが主体となって行っています。

(2) 海外


韓国、台湾、ベトナム、フィリピンに「ABC-MART」を展開し、靴や衣料品の企画・仕入販売を行っています。また米国では、高品質なレザーブーツブランドの企画から製造、販売までを一貫して手がけ、世界市場に向けたトレンドの発信拠点として事業を拡大しています。

収益源は、海外の小売店での販売代金および製造した商品の販売代金です。運営は、韓国のABC-MART KOREA、台湾のABC-MART TAIWAN、米国のLaCrosse Footwearなどの各現地法人が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において、売上高および経常利益ともに一貫して増加傾向にあります。特に売上高は順調に拡大しており、経常利益率も年々改善し、継続して高い収益力を発揮しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 2,439億円 2,901億円 3,442億円 3,722億円 3,786億円
経常利益 283億円 434億円 578億円 646億円 672億円
利益率(%) 11.6% 14.9% 16.8% 17.4% 17.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 165億円 245億円 329億円 379億円 413億円

(2) 損益計算書


売上高および各段階利益は増加しており、安定した高い売上総利益率と営業利益率を維持しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 3,722億円 3,786億円
売上総利益 1,878億円 1,919億円
売上総利益率(%) 50.5% 50.7%
営業利益 626億円 633億円
営業利益率(%) 16.8% 16.7%


販売費及び一般管理費(合計1,286億円)のうち、地代家賃が272億円(構成比21.1%)、役員報酬及び給料手当が219億円(同17.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内セグメントの売上は堅調に推移し、全体の成長を牽引しています。一方、海外セグメントは米国の関税政策の影響などにより、前期と比較してわずかに減少しました。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
国内 2,580億円 2,721億円
海外 1,142億円 1,066億円
連結(合計) 3,722億円 3,786億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状態となっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 561億円 418億円
投資CF -151億円 -154億円
財務CF -171億円 -184億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「世界共通の品質を世界共通の価格で」を企業理念に掲げ、品質の良いファッショントレンドアイテムをリーズナブルな価格で提供することを目指しています。「ライフスタイル創造企業」として、顧客に満足と感動を与える世界共通のサービスを提供し、人々の幸せを実現していくことを基本方針としています。

(2) 企業文化


対面販売による現場での経験を重視し、「教育=共育」をテーマに、OJTによるコーチングを実務スキル教育の軸としています。また、現場経験豊富な先輩スタッフとの共育環境のもとでライバル心を育てることで、販売力の最大化を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


目標とする経営指標として、連結営業利益率を二桁水準で維持することを掲げています。また、多様な働き方を推進する中で女性管理職比率の向上を図り、2030年度までに17.7%を達成するという人材面の数値目標も設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の中長期的経営戦略として、国内トップのシェア拡大や国内外での年間100店舗の新規・改装出店、自社オンラインサイト等のデジタルコマースの推進を掲げています。さらに、東南アジア等への海外展開の拡大に加え、既存ブランドの拡充と新規ブランドの取得・育成を通じて収益性の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


マルチステークホルダーとの協働に取り組み、販売力の源泉となるスタッフ一人ひとりの育成を重視しています。ライフスタイルの変化に対応し、ショートタイム社員や地域限定社員の登用など雇用形態の多様化を進めることで、ワークライフバランスの充実と中長期的な労働力の確保を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 32.7歳 9.3年 4,413,809円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.5%
男性育児休業取得率 76.8%
男女賃金差異(全労働者) 66.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 107.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がいのある社員の雇用率(2.43%)、外国籍社員の在籍人数(298名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 感染症の拡大による営業制限リスク


新たな感染症の拡大に伴い営業制限や外出自粛が生じた場合、店舗の一斉休業やインバウンド需要の減少により、売上高が著しく減少するリスクがあります。これに対し、オンライン販売の強化や生活圏への出店拡充等でリスク軽減を図っています。

(2) 大規模災害等の自然災害リスク


大地震や台風などの自然災害により、全国の店舗や物流倉庫、生産工場が被災し、固定資産や商品に損害が生じるリスクがあります。この対策として、基幹業務のクラウド化やサテライトオフィスの設置による本社機能の分散を進めています。

(3) 海外情勢の変動とサプライチェーンリスク


売上の約3割を占める海外市場における政治・経済情勢の変動や、米国での関税政策の変更、海外委託工場での操業停止が商品供給に影響を及ぼすリスクがあります。これに対して生産国の分散や調達先の変更によりリスク回避を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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