乃村工藝社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

乃村工藝社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場し、商業施設やイベント等の空間創造を担うディスプレイ事業を主力とする企業です。直近の業績では、インバウンド需要の拡大や都市再開発需要の回復を背景に売上が堅調に推移し、利益面でも大幅な増収増益を達成しており、安定した成長と高収益を実現しています。


※本記事は、株式会社乃村工藝社の有価証券報告書(第89期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 乃村工藝社ってどんな会社?


同社は、商業施設やイベント、博物館などの空間創造において総合的なサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1892年に香川県高松市で芝居の大道具方として創業し、1945年に設立されました。1970年の日本万国博覧会をはじめとする大型展示やパビリオンの受注で成長し、1989年に店頭登録、2005年に東京証券取引所第一部に上場しました。近年は国内全域やアジアに拠点を設け、多様な空間創造を担っています。

現在、同社グループの従業員数は連結で2,154名、単体で1,587名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位と第3位にはそれぞれ有限会社乃村、有限会社蟻田といった同社の関係会社や創業家に関連するとみられる資産管理会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.73%
有限会社乃村 9.38%
有限会社蟻田 9.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は奥本清孝氏が務めています。また、取締役9名のうち社外取締役は4名となっており、高い社外取締役比率を確保しています。

氏名 役職 主な経歴
奥本清孝 代表取締役 社長執行役員 1989年同社入社。事業統括本部長、常務取締役などを歴任し、2021年取締役専務執行役員を経て、2023年より現職。
林田吉貴 取締役 常務執行役員 国内事業担当 1987年同社入社。九州支店長、営業推進本部長などを歴任し、2023年に取締役就任。2026年より現職。
前島隆之 取締役 常務執行役員 コーポレート担当 2002年同社入社。人事部長、人事総務本部長などを経て、2024年に取締役就任。2026年より現職。
原山麻子 取締役 上席執行役員 事業開発、海外事業、イノベーション担当 1997年同社入社。東京五輪開発センター長、ビジネスプロデュース本部長などを歴任し、2024年に取締役就任。2026年より現職。
安宅騎一郎 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。リスクマネジメント部長、経営企画本部長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、君島達己(元任天堂社長)、松富重夫(元駐ポーランド特命全権大使)、伏見泰治(元大蔵省主税局総務課長)、金井千尋(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ディスプレイ事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

同社グループは、商業施設、ホテル、テーマパーク、企業PR施設、博物館などの集客環境づくりにおいて、調査・コンサルティングから企画・デザイン、設計、制作施工、運営管理までを総合的に提供しています。主な顧客は専門店や複合商業施設を運営する企業、ならびに官公庁やイベント主催団体など多岐にわたります。

収益源は、各施設の企画・設計・施工の請負代金や、施設完成後の運営管理・メンテナンス業務による継続的な手数料などです。事業の運営は主に同社が中心となり、専門店や複合商業施設市場はノムラアークス、博物館や余暇施設市場はノムラメディアスや六耀社、その他の施設運営や人材派遣等はシーズ・スリーが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響を受けた時期を経て順調に回復・拡大し、直近では1,627億円に達しています。経常利益も売上の拡大と利益率の改善に伴って着実に増加しており、継続的な増収増益のトレンドが確認できます。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 1111億円 1109億円 1341億円 1503億円 1627億円
経常利益 56億円 32億円 54億円 91億円 130億円
利益率(%) 5.0% 2.9% 4.0% 6.0% 8.0%
当期利益 35億円 12億円 33億円 59億円 81億円

(2) 損益計算書


当期は前期と比較して売上高が堅調に増加する中で、売上総利益率が18.2%から20.1%へと改善しました。これにより営業利益も大きく伸び、営業利益率は5.9%から7.9%へと高水準をマークしています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 1503億円 1627億円
売上総利益 274億円 328億円
売上総利益率(%) 18.2% 20.1%
営業利益 89億円 128億円
営業利益率(%) 5.9% 7.9%


販売費及び一般管理費(当期合計199.5億円)のうち、給与及び手当が88億円(構成比約44%)、賞与引当金繰入額が12億円(同約6%)を占めています。また、売上原価(当期1,299億円)の多くは、材料費や外注費などの制作費用で構成されています。

(3) セグメント収益


同社グループはディスプレイ事業の単一セグメントであるため、事業全体の売上高の推移を記載します。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
ディスプレイ事業(連結合計) 1503億円 1627億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た十分な資金を元手に借入金の返済や投資活動を行っており、「健全型」のパターンを示しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 17億円 109億円
投資CF 0.5億円 -10億円
財務CF -31億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.1%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人間尊重に立脚し 新しい価値の創造によって 豊かな人間環境づくりに貢献する」という経営理念を掲げています。また、「空間創造によって人々に『歓びと感動』を届ける」ことをミッションとし、社会環境や都市環境の最適化に向けた研究を通じて、人の集まる環境整備を通じた社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループで働くすべての人材が共有する価値観として「ノムラマインド」を定めています。社員一人ひとりのクリエイティビティを起点とすることを重視し、自ら学び成長する自律的なキャリア形成を支援する文化があります。また、多様な価値観を受け入れ、挑戦を推奨するオープンな風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2028年度までの新中期経営計画では、「空間創造のあらゆるシーンを担う乃村工藝社グループ -ディスプレイ業の枠を超え、オンリーワンの企業集団へ-」をありたい姿としています。2028年度の目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:1,900億円以上
* 連結営業利益:161億円以上
* ROE:16.5%以上
* 純資産配当率(DOE):7.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


目標達成のため、事業戦略として空間創造のサイクルを回し、商品・サービスを進化させて多様なビジネスモデルを開発することに注力します。また、これらの実行を支える基盤戦略として、多様な人材の育成や柔軟な生産体制の確立、全員参加のサステナビリティ対応を進め、グループの成長と連動した海外事業の展開を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財」を企業成長の最大の源泉と位置づけ、「ノムラマインド」の浸透をベースに成長ステージに応じた教育プログラムを提供しています。性別や国籍に関係なく能力や経験を重視した採用を行い、働き方改革と連動した健康経営を推進することで、社員が最良のパフォーマンスを発揮できるウェルビーイングの実現に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 40.9歳 10.3年 9,535,205円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断受診率(100.0%)、有給休暇取得率(64.3%)、障がい者雇用率(2.63%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資の抑制等による景気変動

同社グループは幅広い顧客からの受注を確保し安定した取引基盤を有していますが、景気の動向によっては顧客の設備投資や広告宣伝費の抑制が進み、計画されていたプロジェクトの延期や中止が発生することで、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 建設業法等の法的規制

事業活動を行う上で、建設業法や建築士法などさまざまな法規制の適用を受けています。今後これらの法規制が改廃された場合や、何らかの事情により法律に抵触する事態が生じた場合には、業務遂行に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 制作物の品質・環境・安全管理

現場工事における品質・工程管理を徹底していますが、制作物に品質上の欠陥が生じた場合や、廃棄物の不法投棄、施工現場における事故等が発生した場合には、同社グループの社会的信用が低下し、受注や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 大規模災害等による工事中断・遅延

自然災害や感染症の発生に備えて事業継続計画(BCP)を策定していますが、大規模災害等によってライフラインの停止や資材・人員の不足が生じ、工事の中断・遅延や顧客の出店計画の延期が発生した場合、営業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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