乃村工藝社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

乃村工藝社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、商業施設や博物館、イベント空間等のディスプレイ事業を主力としています。直近の業績は、売上高が12.0%増、営業利益が70.7%増と大幅な増収増益を達成しました。人流回復やインバウンド需要、大型イベント関連の受注が好調に推移しています。


※本記事は、株式会社乃村工藝社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 乃村工藝社ってどんな会社?


空間創造のプロフェッショナルとして、調査・企画から設計・施工・運営までを一貫して手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1892年に創業し、1942年に設立されました。1970年の日本万国博覧会(大阪万博)でのパビリオン展示制作などで実績を重ね、ディスプレイ業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立しました。2005年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結で2,039名、単体で1,498名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位は創業家等の資産管理会社と思われる有限会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.06%
有限会社乃村 9.38%
有限会社蟻田 9.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役 社長執行役員は奥本 清孝氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
奥本 清孝 代表取締役 社長執行役員 1989年入社。執行役員、取締役、事業統括本部長などを歴任し、2023年3月より現職。
林田 吉貴 取締役 常務執行役員 1987年入社。商環境事業本部支店長や事業部長などを経て、2023年3月より営業推進本部長を務める。
原山 麻子 取締役 上席執行役員 1997年入社。東京五輪開発センター長などを経て、2023年3月よりビジネスプロデュース本部長を務める。
前島 隆之 取締役 上席執行役員 2002年入社。人事部長や経営企画本部長などを経て、2024年3月よりコーポレート本部長を務める。
安宅 騎一郎 取締役(常勤監査等委員) 1984年入社。経営企画本部長や事業管理本部長などを歴任し、2024年5月より現職。


社外取締役は、君島 達己(元任天堂代表取締役社長)、松富 重夫(元駐ポーランド特命全権大使)、伏見 泰治(元ツネイシホールディングス代表取締役会長)、金井 千尋(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ディスプレイ事業」を展開しています。

(1) ディスプレイ事業


商業施設、文化施設、イベント空間などの集客環境づくりにおいて、調査・コンサルティングから企画・デザイン、設計、制作施工、運営管理までをトータルに提供しています。顧客は小売店、百貨店、ショッピングセンター、博物館、テーマパーク、一般企業、官公庁など多岐にわたります。

収益は、顧客からの空間づくりに関する請負工事代金や業務委託料、施設運営管理費などから得ています。運営は主に乃村工藝社が中心となり、専門店市場や複合商業施設市場の一部をノムラアークスが、広報・販売促進市場や博物館・余暇施設市場の一部をノムラメディアスや六耀社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響を受けた時期を経て回復傾向にあり、特に直近では1,500億円台に達しています。経常利益もV字回復を見せ、直近では90億円を超える水準となりました。利益率も改善傾向にあり、当期純利益は過去最高水準を記録しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 1,077億円 1,111億円 1,109億円 1,341億円 1,503億円
経常利益 50億円 56億円 32億円 54億円 91億円
利益率(%) 4.7% 5.0% 2.9% 4.0% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 35億円 12億円 33億円 59億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大し、利益率も向上しています。営業利益は前期比で大幅に伸長しており、収益性が高まっていることがわかります。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 1,341億円 1,503億円
売上総利益 223億円 274億円
売上総利益率(%) 16.6% 18.2%
営業利益 52億円 89億円
営業利益率(%) 3.9% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が83億円(構成比45%)、賞与引当金繰入額が10億円(同5%)を占めています。売上原価においては、労務費や外注費などが主な内訳となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、市場分野別の売上高を見ると、博覧会・イベント市場や専門店市場が大きく伸長し、全体の増収を牽引しました。一方で、百貨店・量販店市場などは減少しており、市場ごとの明暗が分かれています。利益面では、採算性重視の受注活動へのシフトにより収益性が改善しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期)
ディスプレイ事業 1,341億円 1,503億円
連結(合計) 1,341億円 1,503億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラスを維持し、投資CFも有価証券の売却等によりプラスとなりました。財務CFは配当金の支払い等によりマイナスとなっており、営業利益と資産売却で資金を確保しつつ株主還元を行っている「改善型」のキャッシュ・フロー構造と言えます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 61億円 17億円
投資CF -2億円 0.5億円
財務CF -29億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人間尊重に立脚し 新しい価値の創造によって 豊かな人間環境づくりに貢献する」という経営理念のもと、空間創造によって人々に「歓びと感動」を届けることをミッションとしています。一人ひとりのクリエイティビティを起点に、空間のあらゆる可能性を切り拓くことをビジョンに掲げ、事業価値と社会的価値の向上を通じて企業価値を高めることを目指しています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりの「個の力=専門性」を発揮し、社内外と積極的に連携・協創できる「働きがい」のある会社を目指しています。多様性を受け入れ、創造力と実行力を発揮できる人財を育成するとともに、健康的な働き方を追求し、自律した自由な働き方を推奨する文化があります。また、サステナビリティ方針のもと、企業の社会的責任や持続可能性への取り組みも重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度の財務目標として、以下の数値を掲げています。既存事業の洗練や新規事業領域への挑戦、社会価値の向上を通じて、これらの目標達成を目指しています。

* 連結売上高:1,550億円
* 連結営業利益:95億円
* 連結売上高営業利益率:6.1%
* 自己資本利益率(ROE):10.0%以上
* 自己資本比率:50.0%以上
* 純資産配当率(DOE):6.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業においては市場別の専門性を高度化し、連携体制を充実させることで総合力を発揮する戦略です。また、空間を活用した新しいビジネスや事業のプロデュースにより新規事業領域に挑戦し、事業領域の拡大を図ります。さらに、働き方改革や業務改善、人財育成、R&Dへの投資を通じて、クリエイティビティの醸成と組織力の強化を推進しています。

* 成長投資:3カ年合計で70億円以上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の財産と捉え、「ノムラマインド」の浸透をベースにプロフェッショナル人材の育成に取り組んでいます。職種別スキルやマネジメントスキルなどを網羅した「ノムラ育成プログラム」を導入し、自律的なキャリア形成を支援しています。また、多様な人材が能力を発揮できるよう、柔軟な働き方の実現や適切な評価・処遇、健康経営の推進など、社内環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 41.2歳 10.9年 8,898,446円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 63.4%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規雇用) 69.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、「ノムラ育成プログラム」の利用状況(84.0%)、有給休暇取得率(57.6%)、ハラスメント研修の開催(受講率100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動による受注影響


特定の取引先に依存しない安定した取引基盤を有していますが、景気動向による顧客の設備投資や広告宣伝費の抑制により、プロジェクトの延期や中止が発生する可能性があります。これにより、同社グループの業績に影響が及ぶリスクがあります。

(2) 資材価格・労務単価の変動


昨今の物価上昇に伴い、資材価格や労務単価が上昇傾向にあります。請負契約締結後にこれらが著しく上昇し、請負金額への転嫁が困難な場合、採算が悪化し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 災害等による事業活動への影響


自然災害やパンデミックの発生により、工事の中断・遅延や資材・人員不足が生じる可能性があります。また、地域経済の停滞に伴う顧客の出店やイベント計画の変更により、受注規模が縮小するなど、営業活動や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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