※本記事は、株式会社イートアンドホールディングスの有価証券報告書(第49期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イートアンドホールディングスってどんな会社?
イートアンドホールディングスは、「大阪王将」をはじめとする外食チェーンと冷凍食品の製造販売を展開しています。
■(1) 会社概要
1969年に大衆中華料理専門店の「大阪王将」第1号店を開店したのが同社の始まりです。1977年に設立され、1993年には生協向けの冷凍食品販売を開始し食品事業を拡大しました。2011年に株式上場を果たし、2020年には持株会社体制へ移行してイートアンドホールディングスに社名変更しました。
同社グループの従業員数は連結で564名、単体で39名となっています。筆頭株主は文野屋で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社代表取締役会長CEOの文野直樹氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 文野屋 | 23.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.51% |
| 文野 直樹 | 2.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長CEOは文野直樹氏、代表取締役社長COOは仲田浩康氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 文野 直樹 | 代表取締役会長CEO | 1980年同社入社。1985年に代表取締役、2017年に代表取締役会長を経て、2020年より現職。 |
| 仲田 浩康 | 代表取締役社長COO | 2000年同社入社。2017年に代表取締役社長を経て、2022年より現職。イートアンドフーズ代表取締役社長を兼任。 |
| 山本 浩 | 常務取締役 | 2007年同社入社。商品本部長などを歴任し、2024年より現職。イートアンドフーズ取締役専務執行役員を兼任。 |
| 植月 剛 | 取締役 | 1995年同社入社。大阪王将代表取締役社長などを経て、2024年より現職。イートアンドインターナショナル代表取締役社長を兼任。 |
| 椎木 孝 | 取締役 | 2010年同社入社。経理部ゼネラルマネジャー、取締役経営管理本部長などを経て、2026年より現職。 |
| 柿原 聡 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 2010年同社入社。人事総務部法務グループマネジャーを経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、林恭子(グロービス経営大学院教授)、錦見光弘(錦見光弘公認会計士事務所代表)、池田佳史(弁護士法人栄光代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品事業」および「外食事業」を展開しています。
■食品事業
「大阪王将」ブランドの認知度向上と二次活用を主目的とし、全国の生活協同組合や一般量販店向けに冷凍餃子などの中華惣菜や常温調味料を販売しています。また、インターネット通販を通じて一般消費者へ直接販売も行っています。
卸売業者や一般消費者からの商品販売代金を収益源としています。事業の運営は主にイートアンドフーズが行い、インターネット通信販売等のEC事業はナインブロックおよびオーパスが担当しています。
■外食事業
大衆中華料理業態の「大阪王将」を中心に、ラーメン業態の「よってこや」「太陽のトマト麺」、ベーカリーカフェ業態の「R Baker」、中華業態「一品香」などの外食店舗を国内外で展開しています。
直営店では一般顧客からの飲食代金、加盟店からは食材や機器の販売代金、ロイヤリティ、加盟金などを収益源としています。運営は大阪王将、アールベイカー、イートアンドインターナショナルなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。一方で、経常利益は一定の水準を維持しているものの、特別損益等の影響により当期利益は年度によって変動が見られ、黒字と赤字が交錯する推移となっています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 309億円 | 330億円 | 359億円 | 373億円 | 405億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 11億円 | 11億円 | 10億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 3.2% | 3.0% | 2.6% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.1億円 | -5億円 | 4億円 | -1億円 | -0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益は前期から増加し、増収となっています。売上総利益率も改善傾向にあり、営業利益も堅調に推移しています。これは、工場の完全復旧による製造量の伸長や価格改定、外食事業での店舗運営の効率化などが寄与した結果とみられます。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 373億円 | 405億円 |
| 売上総利益 | 156億円 | 171億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.8% | 42.2% |
| 営業利益 | 11億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が44億円(構成比約28%)、運賃が23億円(同約14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
食品事業は、新商品の投入や価格改定、工場の完全復旧による安定供給体制の確立が寄与し、売上が増加しました。外食事業についても、直営店への調理ロボット導入による効率化や新モデル店舗の展開が進み、順調な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 食品事業 | 215億円 | 232億円 |
| 外食事業 | 159億円 | 173億円 |
| 連結(合計) | 373億円 | 405億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」のキャッシュ・フロー状況にあります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | 47億円 |
| 投資CF | -52億円 | -59億円 |
| 財務CF | 11億円 | 5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も34.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は企業理念の上位概念として「パーパス」を制定し、「食を通じて、持続可能な社会の実現に貢献し、+&の発想で、ワクワクする未来を生み出し続けます。」と掲げています。食品ロスや地球温暖化などの社会課題に直面する中、環境と社会の持続的な発展に独自の「+&の発想」で貢献し、すべてのステークホルダーの幸せを創造し続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は創業以来、「+&の発想」という独自の価値観を大切にしています。これは、ふとした気づきやちょっとした工夫を積み重ねることで、食シーンに新しい価値を生み出すという考え方です。この文化をグローバルに展開し、世界中の人々に新しい食の体験を提供し続けることを目指しており、挑戦する姿勢を重視する風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は長期ビジョン「Eat&チャレンジ2030」において、グローバル売上高1,000億円を目指しています。また、中期経営計画では2026年度(2027年2月期)の経営目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:430億円
* 営業利益:12.5億円
* 売上高営業利益率:2.9%
* ROE:4.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
事業ポートフォリオマネジメントを強化し、食品事業と外食事業の両輪を深化させる戦略を描いています。次世代の柱となる新規事業として、海外アジアへの出店拡大や外食ECの展開、M&Aによる事業補完を積極的に進めます。具体的には、食品事業での九州新工場建設による生産体制強化や、外食事業での調理ロボット活用とドミナント出店による収益性向上に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を「財」と捉え、従業員一人ひとりの能力を最大化する方針を掲げています。職位や職能に応じた専門知識の習得だけでなく、自律的なキャリア構築を支援する多彩な教育研修制度を導入しています。さらに、挑戦する姿勢を称える企業文化を醸成するため、成果に応じてキャリアプランや報酬等の処遇に反映できる人事制度を構築し、人材の育成と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 40.2歳 | 4.4年 | 6,624,000円 |
※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 52.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 33.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体における管理職に占める女性労働者の割合(15.5%)、グループ全体における男性労働者の育児休業取得率(40.0%)、外国人従業員数(535名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料・エネルギー価格の高騰
為替変動や天候不順、疫病の流行、国際的な紛争などによる需給変動により、原材料価格や光熱費などのエネルギー価格が高騰するリスクがあります。複数の仕入先や契約農場の確保、省エネルギー化に努めていますが、著しい価格高騰が生じた場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) フランチャイズ展開と店舗運営
外食事業において直営店や加盟店の出店を進めていますが、好条件の物件確保や加盟店開拓が計画通りに進まないリスクがあります。また、加盟店の店舗運営において指導の及ばない範囲で苦情等が発生し、ブランドイメージが毀損した場合は業績や出店政策に影響を与える可能性があります。
■(3) 食品の安全性と風評被害
食品事業や外食事業において、HACCPに基づく衛生管理や国際規格ISO22000の取得など安全確保に努めています。しかし、想定を超える異物混入等の品質問題が発生した場合や、インターネット上の掲示板・SNS等への不適切な書き込みによる風評被害が拡散した場合は、社会的信用や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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