※本記事は、株式会社メディアドゥ の有価証券報告書(第26期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メディアドゥってどんな会社?
電子書籍流通の国内最大手として、著作物の健全な創造サイクル実現を目指す企業です。
■(1) 会社概要
1999年に設立され、携帯電話販売やインターネットサービスを開始しました。2006年に電子書籍配信サービスを開始し、現在の主力事業の基盤を築きます。2013年に東証マザーズへ上場し、2016年には東証一部へ市場変更しました。2017年に出版デジタル機構を子会社化して持株会社体制へ移行した後、2020年に子会社を吸収合併し、現在の商号となりました。
同社グループの従業員数は連結558名、単体272名です。筆頭株主は創業者で社長の藤田恭嗣氏であり、第2位は株式会社FIBCです。第3位には通信大手企業の光通信が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 藤田 恭嗣 | 16.39% |
| FIBC | 11.42% |
| 光通信 | 7.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表取締役社長CEOは藤田恭嗣氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤田 恭嗣 | 代表取締役社長CEO | 1996年フジテクノ設立。1999年同社設立し社長就任。2017年出版デジタル機構会長等を歴任し、2019年より現職。徳島イノベーションベース代表理事等も兼任。 |
| 苅田 明史 | 代表取締役副社長CFO | UBS証券、フロンティア・マネジメントを経て、フライヤー設立に関与。2018年同社入社。経営企画室長、CSO等を歴任し、2024年より現職。 |
| 花村 佳代子 | 取締役COO | フォーサイド・ドット・コム取締役等を経て、2015年同社入社。ライセンスビジネス部長、CBO等を歴任し、2024年より現職。 |
| 関谷 幸一 | 取締役 | 角川書店(現KADOKAWA)入社後、同社常務、専務執行役員等を歴任。グループ会社社長等を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、金丸絢子(弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)、宮城治男(NPO法人エティック代表理事)、杢野純子(元円谷プロダクション執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子書籍流通事業」および「戦略投資事業」を展開しています。
■(1) 電子書籍流通事業
国内出版社等のコンテンツホルダーから電子書籍コンテンツを預かり、電子書店向けに取次を行う事業です。また、自社運営の電子書店「まんがセゾン」や、電子書籍ストアシステムの提供も行っています。電子書籍流通のインフラとして、コンテンツのデジタル化、配信、販売促進、売上管理などをワンストップで支援しています。
主な顧客は電子書店を運営する事業者です。収益は、電子書店に対する電子書籍コンテンツの卸売による販売代金や、システム提供に伴う利用料等から構成されています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 戦略投資事業
出版バリューチェーンの拡大を目指し、インプリント事業、IP・ソリューション事業、国際事業、FanTop事業を展開しています。具体的には、出版社「日本文芸社」による出版、書籍要約サービス「flier」、NFTマーケットプレイス「FanTop」、海外向けの出版DX支援サービスなどを提供しています。
収益源は多岐にわたり、出版物の販売収入、サービスの月額利用料、NFTコンテンツの販売手数料、システム利用料などを受け取ります。運営は、日本文芸社、フライヤー、Media Do International, Inc.などの子会社および同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移です。売上高は1,000億円前後で推移しており、第26期は過去最高に近い水準まで回復しました。利益面では第25期に赤字を計上しましたが、第26期にはV字回復を果たし、黒字転換しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 835億円 | 1,047億円 | 1,017億円 | 940億円 | 1,019億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 28億円 | 23億円 | 20億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 2.7% | 2.3% | 2.1% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 15億円 | 13億円 | -3億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加しました。販管費の抑制も進み、営業利益率は改善しています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 940億円 | 1,019億円 |
| 売上総利益 | 109億円 | 111億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.5% | 10.9% |
| 営業利益 | 21億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が36億円(構成比42%)、支払手数料が12億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電子書籍流通事業は新規商流の獲得等により増収となり、利益も安定して推移しました。戦略投資事業は、一部事業の黒字化や赤字縮小が進み、セグメント損失が改善しました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電子書籍流通事業 | 864億円 | 938億円 | 49億円 | 50億円 | 5.3% |
| 戦略投資事業 | 74億円 | 77億円 | -13億円 | -10億円 | -12.9% |
| その他 | 2億円 | 5億円 | - | - | - |
| 調整額 | - | - | -16億円 | -15億円 | - |
| 連結(合計) | 940億円 | 1,019億円 | 21億円 | 25億円 | 2.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 39億円 |
| 投資CF | -7億円 | 1億円 |
| 財務CF | -16億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「著作物の健全なる創造サイクルの実現」をミッションに掲げ、著作物を公正な利用環境のもとで広く頒布し、著作者に収益を還元することを目指しています。また、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」をビジョンとし、日本における文化の発展と豊かな社会づくりに貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、社是として「成長と可能性」を掲げています。これは、互いの可能性を信じ尊敬し合い、成長を喜び合う良好な信頼関係を築くことを重視する価値観です。また、「私たちを育んでくれた環境を感謝でき、敬意を持って自ら動く」人材を求める人材像とし、社会やステークホルダーとの信頼構築を大切にする文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年2月期を初年度とする5カ年の中期経営計画を策定しています。中長期的には、事業の収益創出力の強化と規律あるキャッシュ・フローマネジメントにより、持続的な成長サイクルの実現を目指しています。
* 2026年2月期:売上高1,060億円、営業利益27.2億円
* 2028年2月期:売上高1,150億円、営業利益32.2億円
* 2030年2月期:売上高1,250億円、営業利益40.0億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「書籍の流通ソリューション企業としての進化」を掲げ、マンガだけでなく文字ものコンテンツの電子化や、多言語翻訳システムを活用した海外展開を推進します。また、SC(Sustainability Creation)事業として、地域コンテンツの創出やプロバスケットボールチーム運営を通じた社会貢献と収益化の両立を図ります。財務面では、資本効率を重視し、投資後3年でROIC15%以上を目標としたM&Aを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、価値創造の根幹は「人材」であるとし、「メディアドゥらしい人材の育成・獲得」をマテリアリティの一つに掲げています。人事ポリシーを「役割を意識した貢献、貢献に応じた処遇」と定義し、新人事制度を運用開始しました。社員一人ひとりが役割を意識し、挑戦できる環境を整備するとともに、地域社会での人材活躍を推進する「地域のエンパワーメント」にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 36.0歳 | 6.0年 | 6,146,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 71.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 41.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員サーベイ「働きがい」(4.3%減)、1人当たり研修時間(87%増)、採用リードタイム(6.9%減)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 電子書籍業界の競争環境
主力事業である電子書籍流通事業は、市場拡大に伴い競合他社の参入や新たな形態のコンテンツ伸長が予想されます。ユーザー嗜好の変化への対応遅れや取引慣行の変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海賊版サイトの影響
不正に複製された海賊版の流通は、出版社や著作権者等に不利益をもたらします。大規模な侵害行為が長期化した場合には、機会損失により同社グループの収益に悪影響が生じる可能性があります。
■(3) 特定取引先への依存
電子書籍コンテンツの仕入において、大手出版社への依存度が高い状況です。これら取引先との協力体制維持に努めていますが、取引条件の変更等があった場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) システム・情報セキュリティ
サービス提供においてシステム障害やサイバー攻撃等が発生した場合、サービス停止や情報漏洩のリスクがあります。これによる損害賠償や社会的信用の低下は、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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