※本記事は、株式会社バロックジャパンリミテッド の有価証券報告書(第26期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バロックジャパンリミテッドってどんな会社?
MOUSSY等のブランドを展開する女性向けアパレルSPA企業です。
■(1) 会社概要
2000年に「MOUSSY」の展開を開始し、2007年に事業会社3社の統合により旧BJLが設立されました。その後、2008年に現法人がグループを吸収合併して商号を変更し、2016年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。直近では2025年に中国合弁事業の株式譲渡を決定するなど、事業構造の改革を進めています。
同社グループは連結従業員1,381名、単体1,321名の体制で事業を展開しています。筆頭株主はBELLE INTERNATIONAL HOLDINGS LIMITEDの100%子会社であるMUTUAL CROWN LIMITEDで、第2位はオリックス、第3位は代表取締役社長の資産管理会社である村井資本です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| MUTUAL CROWN LIMITED | 20.11% |
| オリックス | 18.81% |
| 村井資本 | 7.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長最高経営責任者は村井博之氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村井 博之 | 代表取締役社長最高経営責任者 | キヤノンを経て数社の社長を歴任。2008年バロックジャパンリミテッド代表取締役社長最高経営責任者に就任。2014年より現職。 |
| 深澤 哲人 | 取締役副社長社長補佐 | 2001年フェイクデリック入社。SHEL'TTER事業部長、海外事業部長、営業統括本部長などを経て、2019年取締役副社長に就任。2025年より現職。 |
| 趙 珊 | 取締役常務執行役員中国・アジア地区統括 | 2006年フェイクデリックホールディングス入社。中国現地法人の総経理などを経て、2018年常務執行役員に就任。2025年より現職。 |
社外取締役は、松﨑曉(元良品計画代表取締役社長)、奥村萬壽雄(元警視総監)、盛放(Belle Fashion Group CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「衣料品等の企画販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ファッションビル・駅ビル系アパレル事業
「MOUSSY」「SLY」「rienda」等のブランドを展開し、個性的でファッション性に富んだカジュアルウェアや服飾品を提供しています。主な顧客層は20代から30代の女性で、都市部のファッションビルや駅ビルを中心に店舗を展開しています。
収益は、主に直営店やFC店での一般顧客への商品販売から得ています。運営は主にバロックジャパンリミテッドが行っています。
■(2) ショッピングセンター系アパレル事業
「AZUL BY MOUSSY」「RODEO CROWNS WIDE BOWL」「STYLE MIXER」等のブランドを展開し、ファミリーカジュアルウェアを提供しています。10代後半から40代のファミリーやカップルを主要顧客とし、郊外のショッピングセンター等に出店しています。
収益は、一般顧客への商品販売代金等です。運営は主にバロックジャパンリミテッドが行っており、創業当初からの主力事業に次ぐ第2の成長ドライバーと位置付けられています。
■(3) 百貨店系アパレル事業
「ENFÖLD」「någonstans」「RIM.ARK」等のブランドを展開し、大人レディースウェアを提供しています。30代から40代のファッション感度の高い女性をターゲットとし、大都市の百貨店を中心に展開しています。ドメスティックコンテンポラリー市場を開拓しています。
収益は、一般顧客への商品販売代金等です。運営は主にバロックジャパンリミテッドが行っています。
■(4) 靴事業・その他
「STACCATO」ブランドによるレディースシューズの販売や、自社ブランド編集型ストア「SHEL'TTER」の運営を行っています。また、観葉植物等を扱う「SHEL'TTER GREEN」などの新業態も展開しています。ECサイト「SHEL'TTER WEB STORE」を通じた販売も行っています。
収益は、商品販売代金やフランチャイズ店への卸売による売上等です。運営は主にバロックジャパンリミテッドが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2022年2月期以降600億円前後で推移していましたが、直近の2025年2月期は減収となりました。利益面では、2022年2月期に高い利益率を記録したものの、その後は低下傾向にあり、直近では経常利益が赤字に転落しています。当期純利益も同様に損失となっており、業績の立て直しが課題となっています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 506億円 | 591億円 | 588億円 | 603億円 | 582億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 28億円 | 12億円 | 20億円 | -17億円 |
| 利益率(%) | 2.3% | 4.8% | 2.1% | 3.4% | -2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 11億円 | 7億円 | 11億円 | -5億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると売上高が減少し、売上総利益も減少しました。一方で販売費及び一般管理費は横ばい圏で推移したため、営業利益は大きく減少しました。営業利益率は低下しており、収益性の改善が必要な状況です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 603億円 | 582億円 |
| 売上総利益 | 343億円 | 331億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.8% | 56.9% |
| 営業利益 | 20億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 1.4% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料(家賃及び手数料)が130億円(構成比40.2%)、給与手当が58億円(同18.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは衣料品等の企画販売事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの詳細な増減分析はありませんが、全体として国内店舗の整理や中国事業の調整等が影響し、売上高は減少しました。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 22億円 |
| 投資CF | -29億円 | -18億円 |
| 財務CF | -14億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-14.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「挑戦」を企業理念とし、「BAROQUE発の文化を世界へ発信する」という目標に向けて、世界中のお客様から支持されるグローバル企業を目指しています。小売業の未来を変えることをミッションに掲げ、イノベーションを通じて新しい社会の姿を提案しています。
■(2) 企業文化
「挑戦」を具現化するために、“Enjoy life more.”「もっと人生を楽しもう。」をコーポレートスローガンに掲げています。このスローガンのもと、従業員や顧客の人生をより豊かにすることを目指し、アパレル事業にとどまらず様々なコンテンツを発信する価値提案企業としての姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標としての経営計画は記載されていませんが、重点強化・改廃ブランドの明確化や、戦略的な店舗スクラップアンドビルド、作りすぎないものづくり、ニューリテールの取り組みなどを通じて、事業の立て直しと成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内ではブランドを「旗艦」「成熟」「成長」「新規」に分類し、資源を集中投下します。MOUSSYの更なる進化やデータに基づく在庫管理、OMO強化を推進します。中国事業は合弁会社の株式譲渡によりリスクを解消し、ライセンス契約による展開を継続します。米国では日本製デニムを武器にラグジュアリー市場でのシェア拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を新たな価値創造の源泉と捉え、多様な人材が共鳴する企業文化の醸成を目指しています。リモートワークやスライドワークの導入、階層別研修やキャリアサポート体制の整備、公募制度によるキャリア形成支援などを行っています。また、エンゲージメントモニタリングを通じてモチベーション管理と職場環境の改善に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 30.8歳 | 7.1年 | 3,596,945円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおり、臨時従業員分は含んでおりません。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 46.6% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 58.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコアポイント(7.75/10.00)、eラーニング稼働率(77.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 商品企画・商品開発に関するリスク
アパレル専門店業界は競争が激しく、流行の変化が速いため、顧客の嗜好変化に対応した商品を提供できない場合や、景気悪化により消費者の購買意欲が減退した場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、EC会員データの分析や現場でのコミュニケーションを通じてニーズを把握することに努めています。
■(2) 商品調達に関するリスク
商品は中国を中心としたアジア諸国で生産されており、生産国の政治・経済情勢の変化、為替変動、自然災害等が調達に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。生産拠点の分散による安定供給体制の構築や、為替ヘッジによるリスク軽減に取り組んでいます。
■(3) 情報システム・インフラに関するリスク
基幹システムやECサイト等がサイバー攻撃等により不具合を起こし、事業運営が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。セキュリティ対策の強化や重要情報の保護、社員教育を通じてリスクの低減を図っています。
■(4) Belle社との資本業務提携に関わるリスク
Belle社の100%子会社が大株主となっており、業務提携の方針に変更があった場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。円滑な関係維持に努めており、ブランドライセンス等の契約についても継続的な対応を行っています。



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