※本記事は、株式会社バロックジャパンリミテッドの有価証券報告書(第27期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バロックジャパンリミテッドってどんな会社?
女性向け衣料・服飾品の製造小売業(SPA)として、多様なブランドを展開するアパレル企業です。
■(1) 会社概要
同社は2000年に設立され、女性向けアパレルブランド「MOUSSY」の展開を開始しました。2007年にはマネジメント・バイ・アウト(MBO)を通じて現体制の基盤となるバロックジャパンリミテッドへの組織再編を進め、2008年にはショッピングセンター向けブランド「AZUL BY MOUSSY」を立ち上げました。その後、2016年に東京証券取引所市場第一部への上場を果たし、2025年には事業見直しの一環で中国合弁会社の全株式を譲渡しています。
同社グループの連結従業員数は1,266名、単体では1,242名が在籍しています。筆頭株主は香港の事業会社であるMUTUAL CROWN LIMITEDで、第2位は総合金融サービスのオリックス、第3位は代表取締役の資産管理会社である村井資本です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| MUTUAL CROWN LIMITED | 20.11% |
| オリックス | 15.49% |
| 村井資本 | 7.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長最高経営責任者は村井博之氏が務めています。社外取締役比率は37.5%(8名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村井博之 | 代表取締役社長最高経営責任者 | 1985年8月キヤノン入社。日本航空香港現地法人社長等を経て、2008年2月より現職。 |
| 趙珊 | 取締役常務執行役員中国・アジア地区統括 | 2006年10月フェイクデリックホールディングス入社。巴羅克(上海)貿易有限公司General Manager等を経て、2025年5月より現職。 |
社外取締役は、松﨑曉(元良品計画社長)、奥村萬壽雄(元警視総監)、盛放(元Belle Fashion Group Chairman & CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「衣料品等の企画販売事業」を展開しています。
■衣料品等の企画販売事業
同事業では、主に女性向け衣料や服飾雑貨の企画および販売を行っています。10代から40代以上の幅広い顧客層に向け、「MOUSSY」や「AZUL BY MOUSSY」「ENFÖLD」などのアパレルブランドのほか、シューズブランド「STACCATO」を展開し、都市部のファッションビルや郊外のショッピングセンター等を主要販路としています。
収益は、直営店やフランチャイズ店舗での実店舗販売、自社ECサイト等を通じたオンライン販売、および百貨店やセレクトショップ向けの卸売などから得ています。事業の運営は主にバロックジャパンリミテッドが行うほか、海外における商品の仕入や卸事業などをバロックエイチケーリミテッド等の子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は500億円台後半で推移していましたが、直近の期間では一部主力ブランドの客数減少や中国合弁会社の株式譲渡に伴う連結除外等の影響により減収となりました。一方、利益面では在庫の適正化や販売費等の抑制策が奏功し、前期間の赤字から黒字に回復しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 591億円 | 588億円 | 603億円 | 582億円 | 515億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 12億円 | 20億円 | -17億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 2.1% | 3.4% | -2.9% | 0.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 2億円 | 9億円 | -26億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が減少したことに伴い売上総利益や営業利益も減少していますが、計画的な仕入コントロールの厳格化などにより売上総利益率は改善傾向にあります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 582億円 | 515億円 |
| 売上総利益 | 331億円 | 309億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.9% | 60.1% |
| 営業利益 | 8億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.4% | 0.6% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料(家賃及び手数料)が125億円(構成比41%)、給与手当が54億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
売上の大部分を占める国内の実店舗販売およびオンライン販売がともに前年を下回りました。さらに、中国合弁会社の株式を譲渡して連結対象から除外したことにより、卸販売の売上も大きく減少する結果となりました。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 衣料品等の企画販売事業 | 582億円 | 515億円 |
| 連結(合計) | 582億円 | 515億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
直近のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」の傾向を示しています。営業利益や資産売却等で得た資金を用いて借入金の返済等を進める改善局面にあります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 8億円 |
| 投資CF | -18億円 | 6億円 |
| 財務CF | -14億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「挑戦」を企業理念とし、「バロック発の文化を世界へ発信する」という目標に向けて、世界中のお客様から支持されるグローバル企業を目指しています。さらに、その「挑戦」を具現化するためのコーポレートスローガンとして「もっと人生を楽しもう。(Enjoy life more.)」を掲げ、小売業の未来を変えることを使命として新しい社会の姿を提案しています。
■(2) 企業文化
同社は、多様な人材に対して成長の機会を与えるとともに、その人材同士が共鳴・共感する企業文化を醸成することで、新たな価値を創造し、豊かな社会の実現を目指すという価値観を重視しています。「サステナブルな取り組みとは、環境配慮型素材で服を作る事だけでなく、持続可能な社会、会社を作るための取り組みである」という意識のもと、環境・社会・人の3つの側面からサステナブルな経営に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、直近の業績を踏まえ、2年間の「業績の回復・新規事業の創出期間」と位置付けた「新中期経営計画 2027-2028」を策定し、筋肉質な経営体質への転換と収益性の高い新たな成長事業の創出を目指して事業運営を行っています。具体的な数値目標として以下を掲げています。
* 売上高100億円超の新規ブランドの開発
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は成長戦略として、国内では高収益ブランドへの経営資源の集中と成長期待のあるブランドの出店拡大、海外では米国での日本製高級デニムを主とした収益性の高い卸売に注力する方針を掲げています。さらに、合弁会社を通じた異業種への進出や、組織のスリム化および事業部運営の集約型転換による効率的な経営体制の構築を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を新たな価値創造の源泉と捉え、多様な人材の積極的な採用と能力開発を推進しています。働き方の改革としてリモートワークやスライドワーク制度を導入するほか、若手から専門職、管理職までの階層別・職種別研修の実施、資格取得支援や文化活動への補助を通じて従業員のキャリア自律とエンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 30.5歳 | 7.1年 | 3,615,976円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 49.4% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 59.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 92.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコアポイント(8.25/10.00)、eラーニング稼働率(68.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 商品企画・商品開発に関するリスク
流行や嗜好の変化が速く商品のライフサイクルが短いアパレル専門店業界において、顧客のニーズに対応した商品を提供できない場合や、景気悪化による購買意欲の減退が発生した場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はEC会員データの分析等を通じて商品提供に努めています。
■(2) 商品調達に関するリスク
同社の商品は主に中国等のアジア諸国で生産されており、生産国の政治経済情勢、為替レートの変動、自然災害等が発生した場合、商品の調達や業績に悪影響を与えるリスクがあります。同社は生産拠点の複数国への分散や適切な為替ヘッジ対策の検討によりリスク軽減を図っています。
■(3) 情報システム・インフラに関するリスク
サイバー攻撃等により基幹システムやECサイト等の情報システムに不具合が生じ、事業運営の継続が困難となった場合、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。同社はセキュリティ対策の強化や情報の暗号化・バックアップ、社員への情報セキュリティ教育の徹底を進めています。



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