古河機械金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

古河機械金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。産業機械、削岩機、ユニッククレーン等の機械事業と、銅等の素材事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が2,012億円で増収、親会社株主に帰属する当期純利益は186億円で増益となりました。


#記事タイトル:古河機械金属転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社古河機械金属 の有価証券報告書(第158期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 古河機械金属ってどんな会社?

創業150年の歴史を持ち、鉱山開発を起源とする機械・素材メーカーです。削岩機やユニッククレーンで高いシェアを誇ります。

(1) 会社概要

1875年に創業者が草倉銅山の経営を開始し、1918年に古河鉱業を設立しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、1989年に現在の社名へ変更しています。2005年には主要6事業部門を分社化して事業持株会社体制へ移行し、各事業の専門性を高めてきました。

連結従業員数は2,908名、単体では205名です。大株主は、資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭で、第2位は朝日生命保険、第3位は不動産賃貸等を行う清和綜合建物です。清和綜合建物は同社グループとも取引関係や資本関係の歴史を持つ企業です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.43%
朝日生命保険相互会社 6.70%
清和綜合建物 5.46%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長は中戸川稔氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宮川 尚久 代表取締役会長 1975年入社。人事部長、人事総務部長を経て、古河電子社長を務める。2013年より同社代表取締役社長、2021年より現職。
中戸川 稔 代表取締役社長 1983年入社。古河ユニック社長を経て、2021年より現職。
荻野 正浩 取締役副社長執行役員 1982年入社。古河メタルリソース社長、古河ロックドリル社長などを歴任し、2023年より現職。
酒井 宏之 取締役常務執行役員 1982年入社。財務部長、不動産本部長などを歴任。2023年より現職。
名塚 龍己 取締役常務執行役員 1981年入社。研究開発本部技術研究所長、古河シンチテック社長などを歴任。2023年より現職。
今野 光一郎 取締役上級執行役員経営企画部長 1985年入社。財務部長を経て、2023年より現職。


社外取締役は、迎陽一(元通商産業省大臣官房商務流通審議官)、西野和美(一橋大学副学長)、中村裕明(元東京製綱社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「産業機械」「ロックドリル」「ユニック」「金属」「電子」「化成品」「不動産」および「その他」事業を展開しています。

(1) 産業機械

ポンプ、破砕機、粉砕機、ベルトコンベヤ、環境機器、鋼構造物、橋梁等の製造販売および各種工事の請負を行っています。公共事業や民間設備投資に関連するインフラ整備などが主な需要先です。

製品の販売代金や工事請負代金が主な収益源です。運営は中核事業会社である古河産機システムズが行っています。

(2) ロックドリル

油圧ブレーカ、油圧圧砕機、ブラストホールドリル、トンネル工事・鉱山用機械等を製造販売しています。国内外の土木・建設現場や鉱山開発現場に向けて製品を提供しています。

製品の販売代金や部品・サービス料が収益源です。運営は中核事業会社である古河ロックドリルが行っています。

(3) ユニック

ユニッククレーン、ミニ・クローラクレーン、船舶用クレーン等を製造販売しています。トラックへの架装クレーンとして物流や建設現場で広く利用されています。

製品の販売代金が主な収益源です。運営は中核事業会社である古河ユニックが行っています。

(4) 金属

原料鉱石を海外から買い入れ、委託製錬して生産された電気銅、金、銀、硫酸等の供給を受け販売しています。

地金製品等の販売代金が収益源です。運営は中核事業会社である古河メタルリソースが行っています。

(5) 電子

高純度金属ヒ素、結晶製品、コア・コイル、窒化アルミセラミックス、光学部品等を製造販売しています。半導体や電子部品業界が主な顧客です。

製品の販売代金が収益源です。運営は中核事業会社である古河電子が行っています。

(6) 化成品

硫酸、ポリ硫酸第二鉄水溶液、亜酸化銅、酸化銅等の製造販売を行っています。化学工業や塗料メーカー等が主な顧客です。

製品の販売代金が収益源です。運営は中核事業会社である古河ケミカルズが行っています。

(7) 不動産

不動産の賃貸、売買および仲介を行っています。主力ビルである室町古河三井ビルディング(COREDO室町2)などを保有しています。

テナントからの賃貸料収入などが収益源です。運営は古河機械金属が行っています。

(8) その他

上記の部門に分類できない運輸業、金属粉体事業、鋳物事業等を含みます。

運送料や製品販売代金が収益源です。運営は古河運輸や古河C&Fなどが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は2,000億円前後で推移しています。2024年3月期は減収となりましたが、2025年3月期は再び2,000億円台を回復しました。利益面では、2024年3月期以降、営業利益率が5%前後で推移しており、当期純利益も高水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,597億円 1,991億円 2,142億円 1,883億円 2,012億円
経常利益 68億円 90億円 93億円 104億円 97億円
利益率(%) 4.2% 4.5% 4.4% 5.5% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 74億円 30億円 31億円 126億円 161億円

(2) 損益計算書

2025年3月期は、前期比で増収増益(営業利益ベース)となりました。売上原価率、販管費率ともに大きな変動はなく、安定した収益構造を維持しています。特別利益として投資有価証券売却益が計上されたことなどから、最終利益は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,883億円 2,012億円
売上総利益 282億円 296億円
売上総利益率(%) 15.0% 14.7%
営業利益 85億円 98億円
営業利益率(%) 4.5% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が85億円(構成比43%)、運賃諸掛が24億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益

産業機械部門は、プラント工事の追加原価減少などで大幅な増益となりました。金属部門は価格変動の影響等で増益です。一方、ロックドリル部門は北米向けの出荷減等により減益、ユニック部門も海外の一部地域での出荷減により減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
産業機械 155億円 222億円 4億円 22億円 9.9%
ロックドリル 387億円 350億円 41億円 28億円 8.0%
ユニック 279億円 291億円 12億円 10億円 3.4%
金属 847億円 924億円 19億円 24億円 2.6%
電子 68億円 65億円 2億円 1億円 1.9%
化成品 89億円 98億円 6億円 6億円 6.4%
不動産 19億円 21億円 5億円 7億円 33.1%
その他 39億円 41億円 -3億円 0.2億円 0.4%
調整額 - - -1億円 -1億円 -
連結(合計) 1,883億円 2,012億円 85億円 98億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローはプラスですが僅少です。投資活動によるキャッシュ・フローは投資有価証券の売却等によりプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは借入金の返済や自己株式の取得等によりマイナスです。これらは「改善型」に分類されます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 105億円 0.1億円
投資CF 19億円 151億円
財務CF -84億円 -92億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「鉱山開発に始まり社会基盤を支えてきた技術を進化させ、常に挑戦する気概をもって社会に必要とされる企業であり続けます。」を経営理念として掲げています。社会課題の解決に役立つ製品・技術・サービスを提供し、社会価値と企業価値の両立を目指しています。

(2) 企業文化

創業者である古河市兵衛の「運・鈍・根」の精神を心に刻み、「変革・創造・共存」を行動指針としています。「運・鈍・根」とは、運も大切だが、重要なことを成し遂げるには愚鈍さと根気が必要であるという意味です。この精神のもと、絶えざる自己革新と信頼されるモノづくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標

2025年ビジョン「FURUKAWA Power & Passion 150」において、「カテゴリートップ・オンリーワンを基軸として成長する企業グループの実現」を目指しています。
* 連結営業利益:130億円程度(2025年度目標)
* ROE:8%程度(2025年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策

機械事業をコア事業と位置づけ、インフラ整備や防災・減災などの社会課題解決に貢献する製品・サービスを提供することで成長を図ります。また、PBR1倍超の早期実現に向け、資本コストを意識した経営、政策保有株式の縮減、株主還元の強化などを進めています。
* 機械事業:設備投資の70%を投下し、連結営業利益の80%以上を占めることを目指す。
* 政策保有株式:2025年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満まで縮減(達成済み)。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「社員一人ひとりが能力を最大限に発揮して新たな価値を創造することができ得る働きがいのある会社の実現」を基本戦略としています。挑戦する気概を持ち自律的に行動できる多様な人材の育成と、安全で効率的に業務を遂行できる働きやすい環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 18.2年 8,229,248円


※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 80.6%
男女賃金差異(全労働者) 72.6%
男女賃金差異(正規) 73.6%
男女賃金差異(非正規) 24.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、企画職群の新卒採用者に占める女性の割合(17.9%)、管理社員層、企画職群の新規採用者に占める経験者採用の割合(72.7%)、障がい者雇用率(1.9%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替の変動について

同社グループは海外での生産・販売を行っており、製品輸出や原材料輸入において為替変動の影響を受けます。為替予約等でリスク軽減を図っていますが、急激な変動は経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 非鉄金属市況の変動について

主製品である電気銅等の価格は、LME(ロンドン金属取引所)価格に連動します。ヘッジ取引を行っていますが、相場の大きな変動は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 金利について

借入金が総資産の約2割を占めており、金利上昇によるコスト増加のリスクがあります。固定金利の活用などで備えていますが、市場金利の大幅な変動は影響を与える可能性があります。

(4) カントリーリスクについて

グローバルに事業展開しているため、現地の政情不安、経済減速、法制度の変更等の影響を受ける可能性があります。特に米国の通商政策の変更や地政学的リスクによる原材料価格の高騰などが懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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