鹿島建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鹿島建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場、名証プレミア市場に上場するスーパーゼネコンです。土木、建築、開発事業に加え、国内・海外の関係会社を通じて多様な事業を展開しています。当連結会計年度は、海外関係会社の売上増加などが寄与し、売上高は前期比9.3%増、経常利益は7.0%増の増収増益となりました。(139文字)


※本記事は、鹿島建設株式会社 の有価証券報告書(第128期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鹿島建設ってどんな会社?


1840年創業のスーパーゼネコンで、超高層ビルやダム等の大規模建設に加え、海外事業や開発事業も展開しています。

(1) 会社概要


同社の創業は1840年、鹿島岩吉が「大岩」の屋号で店を構えたことに遡ります。1930年に株式会社鹿島組を設立し、1947年に現在の鹿島建設へ改称しました。1961年には東京・大阪証券取引所に株式を上場。建設事業を中心に発展し、2022年には東証等の市場区分見直しに伴い、プライム市場等へ移行しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は21,029名(単体8,854名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は同じく資産管理を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位は個人の鹿島公子氏です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.14%
日本カストディ銀行(信託口) 9.47%
鹿島公子 3.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は17.6%です。代表取締役社長は天野裕正氏です。取締役12名のうち5名が社外取締役で、その比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
天野裕正 代表取締役社長社長執行役員 1977年同社入社。横浜支店次長、建築管理本部副本部長、中部支店長、東京建築支店長、副社長執行役員などを歴任し、2021年6月より現職。
押味至一 代表取締役会長 1974年同社入社。横浜支店長、建築管理本部長、関西支店長、代表取締役社長などを歴任し、2021年6月より現職。
越島啓介 代表取締役副社長執行役員海外事業本部長 1978年同社入社。カジマ ユー エス エー インコーポレーテッド社長、同社執行役員、海外事業本部長、専務執行役員などを経て、2021年6月より現職。
風間優 代表取締役副社長執行役員土木管理本部長安全担当 1981年同社入社。土木管理本部副本部長、東京土木支店長、専務執行役員、土木管理本部長などを経て、2023年6月より現職。
石川洋 取締役副社長執行役員営業担当 1985年西武百貨店入社。1989年同社参与。営業本部副本部長、営業本部長などを経て、2016年4月より現職。
勝見剛 取締役副社長執行役員総務管理本部長 1980年同社入社。関連事業部長、経営企画部長、総務管理本部長などを経て、2024年4月より現職。
熊野隆 取締役常務執行役員財務本部長 1983年同社入社。監査部長、常勤監査役を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、齋藤聖美(ジェイ・ボンド東短証券参与)、鈴木庸一(元駐フランス大使)、斎藤保(IHI特別顧問)、飯島彰己(三井物産顧問)、寺脇一峰(元大阪高等検察庁検事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」「開発事業等」「国内関係会社」「海外関係会社」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 土木事業


同社が主体となり、ダム、トンネル、橋梁、道路などの社会インフラ整備を中心とした土木工事全般の請負・施工を行っています。官公庁や民間企業などが主な顧客です。

収益は、発注者である官公庁や民間事業者等から受け取る工事請負代金が主な源泉です。運営は主に鹿島建設が行っています。

(2) 建築事業


同社が主体となり、オフィスビル、工場、商業施設、病院、学校などの建築工事全般の請負・施工を行っています。民間企業や官公庁などが主な顧客です。

収益は、発注者である民間事業者や官公庁等から受け取る工事請負代金が主な源泉です。運営は主に鹿島建設が行っています。

(3) 開発事業等


同社が主体となり、不動産開発事業や建築物の設計、エンジニアリング事業を行っています。オフィスビルや物流施設等の開発・賃貸・売却、および意匠・構造・設備設計などのサービスを提供しています。

収益は、不動産の売却益や賃貸料、および設計・エンジニアリング業務の受託料等が主な源泉です。運営は主に鹿島建設が行っています。

(4) 国内関係会社


日本国内において、建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業など、建設事業に関連する多様な事業を展開しています。

収益は、資機材の販売代金、専門工事の請負代金、リース料、賃貸料などが主な源泉です。運営は、大興物産、鹿島道路、鹿島リース、鹿島建物総合管理などの国内関係会社が行っています。

(5) 海外関係会社


北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域において、建設事業および不動産開発事業を展開しています。現地の民間企業や公共機関などが主な顧客です。

収益は、海外における工事請負代金、不動産開発による売却益や賃貸料などが主な源泉です。運営は、カジマ ユー エス エー、カジマ ヨーロッパ、カジマ アジア パシフィックなどの海外現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に増加傾向にあり、直近では2兆9000億円を超えています。利益面でも経常利益、当期純利益ともに安定して黒字を確保しており、特に当期は増収増益となりました。利益率は5%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 19,072億円 20,797億円 23,916億円 26,652億円 29,118億円
経常利益 1,397億円 1,521億円 1,567億円 1,501億円 1,607億円
利益率(%) 7.3% 7.3% 6.6% 5.6% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 985億円 1,039億円 1,118億円 1,150億円 1,258億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は11%前後で推移しており、営業利益率も5%台を維持しています。増収効果により、営業利益も増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26,652億円 29,118億円
売上総利益 2,065億円 2,293億円
売上総利益率(%) 7.7% 7.9%
営業利益 1,362億円 1,519億円
営業利益率(%) 5.1% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が665億円(構成比39%)、調査研究費が178億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで黒字を確保しています。特に海外関係会社セグメントは売上高が1兆円を超え、大幅な増収増益となりました。土木事業も増収増益で、開発事業等は売上・利益ともに伸長しています。建築事業は減収減益となりましたが、依然として最大の利益規模を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木事業 3,633億円 4,041億円 233億円 357億円 8.8%
建築事業 11,029億円 10,529億円 533億円 512億円 4.9%
開発事業等 820億円 980億円 184億円 278億円 28.4%
国内関係会社 2,575億円 2,425億円 242億円 164億円 6.8%
海外関係会社 8,594億円 11,144億円 169億円 201億円 1.8%
調整額 - - 1億円 6億円 -
連結(合計) 26,652億円 29,118億円 1,362億円 1,519億円 5.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で創出したキャッシュと財務活動による資金調達を合わせ、投資活動に充当する「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,237億円 306億円
投資CF -629億円 -1,048億円
財務CF -96億円 617億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、より高い収益力と企業価値の向上を目指し、豊かな社会の実現に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社グループは、目指す方向性を表現した「ステートメント」と、それを実現するための「大切にしたい価値観」から構成されるビジョンを定めています。これには、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意が込められており、グループを木に見立てて大きく成長させるという視点に基づいています。

(3) 経営計画・目標


同社は「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)」を策定しています。2027年3月期までに親会社株主に帰属する当期純利益1,300億円以上、ROE10%以上の継続を目標としています。また、長期的な目標として2031年3月期に当期純利益1,500億円以上を目指しています。

* 2027年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益:1,300億円以上
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中核をさらに強化し、未来を開拓する」をテーマに、国内建設事業の深化、成長領域の拡大、技術立社としての価値創造、サステナビリティの4つを柱としています。国内では生産性向上やデジタル化を推進し、海外では米国やアジアでの事業展開を加速させています。また、人的資本やデジタル領域への投資を強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は中期経営計画において、「高いエンゲージメントのもと多様な人材が個性を発揮する」「一人ひとりが主体性をもって新しいことに挑戦し続ける」ことをありたい姿として掲げています。人材確保、人材開発・育成、エンゲージメント向上の3つを柱とし、これらを有機的につなぐ人材戦略を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 16.4年 11,847,369円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 91.2%
男女賃金差異(全労働者) 57.9%
男女賃金差異(正規雇用) 59.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 49.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職女性採用比率(23.2%)、鹿島エンゲージメントスコア(17.65)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化に関わるリスク


景気悪化による建設需要の減少や不動産市場の縮小など、著しい環境変化が生じた場合、受注高や不動産収入が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。また、競合他社との競争激化により競争力を維持できない場合も業績悪化の恐れがあります。

(2) 建設コストの変動リスク


工事期間が長期にわたる中で、資機材価格や労務単価が急激に上昇し、そのコスト増を請負契約金額に反映できない場合、工事採算が悪化する可能性があります。早期調達や物価スライド条項の活用などの対策を講じています。

(3) 保有資産の価格・収益性の変動リスク


販売用不動産の収益性低下や、賃貸不動産・投資有価証券等の時価下落が発生した場合、評価損や減損損失により業績に影響を与える可能性があります。開発事業資産については総量管理を実施し、政策保有株式は縮減を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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