※本記事は、株式会社関電工の有価証券報告書(第112期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 関電工ってどんな会社?
同社は設備工事業を主力とし、社会インフラと顧客設備の構築を支える総合エンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
同社は1944年に関東電気工事として設立され、電気工事業を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1970年には同市場第一部へ指定されました。1984年に関電工へ商号を変更し、その後も関連会社の設立や資本参加を重ねて事業領域を拡大し、2012年からは発電事業も開始しています。
現在、従業員数は連結で10,850名、単体で8,110名規模の体制となっています。筆頭株主は事業会社である東京電力パワーグリッドであり、資本提携を通じて電気工事の受注や有償支給材料の購入等の取引関係があります。第2位および第3位の株主は、資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東京電力パワーグリッド | 34.46% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.08% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役会長は文挾誠一氏、代表取締役社長社長執行役員は田母神博文氏が務めています。社外取締役は4名在籍しています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 文挾誠一 | 代表取締役会長 | 東京電力ホールディングス代表執行役副社長などを経て、2022年に関電工入社。2023年より現職。 |
| 田母神博文 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1986年入社。東関東営業本部長、取締役専務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 飯田暢浩 | 代表取締役副社長副社長執行役員営業統轄本部長 | 1985年入社。南関東・東海営業本部長兼神奈川支店長、取締役副社長などを経て、2026年より現職。 |
| 榎木博幸 | 取締役専務執行役員社会インフラ統轄本部長 | 1986年入社。常務執行役員社会インフラ統轄本部長などを経て、2026年より現職。 |
| 中人浩一 | 取締役専務執行役員グリーンイノベーション本部長兼 社会インフラ統轄本部本部長代理 | 東京電力パワーグリッド東京総支社長などを経て2020年入社。2026年より現職。 |
| 竹内賢 | 取締役常務執行役員北関東営業本部長兼 埼玉支店長 | 1991年入社。常務執行役員北関東・北信越営業本部長兼埼玉支店長などを経て、2026年より現職。 |
| 上田裕司 | 取締役 | 東京電力エナジーパートナー常務取締役などを経て2017年入社。代表取締役副社長等を経て2026年より現職。 |
| 藤井満 | 取締役 | 1985年入社。社会インフラ統轄本部配電ユニット長、取締役専務執行役員などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、田中幸二(元日立製作所代表執行役執行役副社長)、須藤実和(プラネットプラン代表取締役)、加藤孝明(元カヤバ代表取締役副社長執行役員)、奈良橋美香(TH総合法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「設備工事業」および「その他」事業を展開しています。
■設備工事業
同セグメントでは、電気工事、管工事、情報通信工事など幅広い設備工事の施工や、設計・積算、工事現場の警備業務等を提供しています。官公庁や民間企業に加え、東京電力グループからも送配電設備関連の工事を請け負うなど、インフラから建築設備まで一貫したエンジニアリングを担っています。
収益源は、顧客からの工事請負代金や設計・積算業務等の委託料です。運営は主に関電工が行うほか、川崎設備工業、関工ファシリティーズ、タワーライン・ソリューションなどの多数の連結子会社が事業を分担して展開しています。
■その他
同セグメントでは、工事施工に伴う電気機器や資材の販売、事業用不動産の賃貸、車両等のリース、太陽光や風力などを活用した再生可能エネルギーによる発電事業などを提供しています。販売先には東京電力グループへの電力販売も含まれています。
収益源は、電気機器の販売代金、不動産や車両の賃貸・リース料、および発電した電力の売電収入です。運営は関電工が不動産事業や発電事業を行うほか、関工商事が電気機器販売を、ケイアセットマネジメントがリース業などをそれぞれ手掛けています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は安定して拡大を続けており、約5,000億円から7,400億円規模へと大きく成長しています。また、経常利益も右肩上がりで増加し、直近では利益率が11%台に乗るなど、収益性の大幅な向上が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,956億円 | 5,416億円 | 5,984億円 | 6,719億円 | 7,420億円 |
| 経常利益 | 318億円 | 341億円 | 426億円 | 595億円 | 850億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 6.3% | 7.1% | 8.9% | 11.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 179億円 | 182億円 | 206億円 | 373億円 | 565億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い、売上総利益・営業利益ともに大幅な増益を達成しています。特に営業利益率は8.7%から11.2%へと大きく改善しており、AIや半導体分野等の成長市場への積極的なアプローチや、生産性向上の取り組みが奏功していることが窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,719億円 | 7,420億円 |
| 売上総利益 | 929億円 | 1,207億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.8% | 16.3% |
| 営業利益 | 583億円 | 831億円 |
| 営業利益率(%) | 8.7% | 11.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が161億円(構成比43%)、退職給付費用が4億円(同1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の設備工事業が全社売上の大半を占めており、当期は民間建設投資の堅調な推移や電力設備投資の計画的な実施により、大幅な増収を記録しました。その他のセグメントも安定した収益基盤として機能しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 設備工事業 | 6,608億円 | 7,316億円 |
| その他 | 111億円 | 104億円 |
| 連結(合計) | 6,719億円 | 7,420億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、本業で創出した潤沢な資金を設備投資や有利子負債の返済、株主還元へとバランス良く振り向けている健全型です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 183億円 | 895億円 |
| 投資CF | -102億円 | -48億円 |
| 財務CF | -126億円 | -656億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
株主、顧客、地域社会との共存を目指すことが自社の存立意義であるとし、「人間第一」を社是に掲げています。「豊かな人間環境づくりに貢献すること」「最高のサービスと設備を提供すること」「未来指向型の企業を目指すこと」の3つを理念とし、社会を支える企業としての責任を遂行しています。
■(2) 企業文化
人間尊重の精神を基盤として、企業の社会的責任を果たすことを重視しています。また、顧客のニーズを先取りして技術革新を図ることや、絶えざる自己革新によってステークホルダーの期待に応えることを行動の指針としており、変化に柔軟に対応しながら挑戦を続ける文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「さらにかわる。より豊かな未来をつくる」というスローガンのもと、2026年度を最終年度とする中期経営計画の目標を前倒しで達成しました。現在はこれを上方修正し、新たな目標達成に向けて邁進しています。
* 連結売上高:7,800億円
* 連結営業利益:900億円
* ROE:16%程度
* ROIC:14%程度
* 配当性向:40%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
地域本部・支店の再編によりエリア特性に応じた営業を展開し、グループ会社との協業や協力会社とのパートナーシップ構築により施工力を強化します。また、プレハブ化やAIを活用した設計自動化など、DXによる業務プロセス改革で生産性を向上させるとともに、環境負荷低減を図り「グリーンイノベーション企業」を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社会を支える“100年企業”」の実現に向け、人的資本、知的資本、心的資本を融合した「ひといち力」の向上に取り組んでいます。社会や顧客から信頼されるプロフェッショナル人材やマネジメント人材の継続的な育成を図るとともに、多様な働き方と休み方の改革、健康経営の実践を通じて、社員が活き生きと働ける環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.4歳 | 19.3年 | 10,123,347円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 75.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.6%)、DXリテラシー研修受講率(88%)、専門資格保有者数(8,826人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 工事施工に関するリスク
工事施工において、重大な人身災害や品質上の不具合、事故が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、安全・品質部がリスクマネジメントを強化し、中央安全委員会等での分析や安全品質研修を通じて、重大災害の撲滅と施工品質の確保を図っています。
■(2) 取引先の信用リスク
建設業においては請負代金が大きく、工事目的物の引渡時に多額の代金が支払われる契約が多いため、代金受領前に取引先が信用不安に陥った場合、業績に影響を及ぼす懸念があります。これに対し、取引先の信用状況確認を徹底し、不良債権の発生防止に努めています。
■(3) 情報流出のリスク
サイバー攻撃による情報の窃取やシステムデータの改ざん・喪失により、多額の損害賠償が発生するリスクがあります。対策として、情報システムのセキュリティ強化や従業員への教育を実施するとともに、組織内CSIRTを設置し、インシデント発生時の対応体制を明確にしています。



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