関電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合設備企業。東京電力グループの中核として電力供給設備や建築設備工事、再生可能エネルギー事業などを展開しています。2025年3月期は、民間建設投資の堅調な推移や電力設備投資の増加を背景に、売上高・利益ともに伸長し、増収増益かつ過去最高業績を達成しました。


※本記事は、株式会社関電工 の有価証券報告書(第111期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 関電工ってどんな会社?

国内最大級の総合設備企業です。電気・空調・管・情報通信などの設備工事を柱に、社会インフラの構築から維持管理までを一貫して手掛けています。

(1) 会社概要

1944年、電気工事業整備要綱により関東電気工事として設立されました。1970年に東京証券取引所市場第一部に指定され、土木工事や空調管工事の営業を開始。1984年には現社名の関電工へ商号変更しました。2012年には風力発電事業へ参画するなど事業領域を拡大し、総合設備企業としての基盤を築いています。

現在、同社グループは連結従業員10,558人、単体7,856人の体制で事業を展開しています。筆頭株主は、一般送配電事業を行う東京電力パワーグリッドで、発行済株式の46.35%を保有するその他の関係会社です。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は株式会社日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
東京電力パワーグリッド 46.35%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.68%
日本カストディ銀行(信託口) 5.06%

(2) 経営陣

同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表者は取締役会長の文挾誠一氏と取締役社長の田母神博文氏です。社外取締役比率は23.5%です。

氏名 役職 主な経歴
文挾 誠一 取締役会長(代表取締役) 東京電力ホールディングス代表執行役副社長、東京電力リニューアブルパワー代表取締役社長を経て、2022年同社入社。2023年より現職。一般社団法人日本電設工業協会会長。
田母神 博文 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1986年同社入社。常務執行役員東関東営業本部長、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員を経て、2025年より現職。
仲摩 俊男 取締役副会長 1982年同社入社。取締役常務執行役員、代表取締役副社長を経て、2020年代表取締役社長。2025年より現職。
飯田 暢浩 取締役副社長(代表取締役)副社長執行役員営業統轄本部長[海外事業 担当] 1985年同社入社。常務執行役員南関東・東海営業本部長、取締役常務執行役員を経て、2023年代表取締役副社長。2025年より現職。
上田 裕司 取締役副社長(代表取締役)副社長執行役員グリーンイノベーション本部長 東京電力エナジーパートナー常務取締役を経て、2017年同社入社。取締役常務執行役員を経て、2023年代表取締役副社長。2025年より現職。
藤井 満 取締役専務執行役員最高リスク管理責任者(CRO)兼 最高安全・品質管理責任者(CSQO) 1985年同社入社。常務執行役員社会インフラ統轄本部配電ユニット長、取締役常務執行役員を経て、2025年より現職。
榎木 博幸 取締役専務執行役員社会インフラ統轄本部長[海外事業 担当] 1986年同社入社。常務執行役員社会インフラ統轄本部長、取締役専務執行役員を経て、2024年より現職。
中人 浩一 取締役常務執行役員グリーンイノベーション本部本部長代理兼 社会インフラ統轄本部本部長代理 東京電力パワーグリッド東京総支社長を経て、2020年同社入社。常務執行役員を経て、2024年より現職。


社外取締役は、安東 美和子(元最高検察庁検事)、田中 幸二(元日立製作所代表執行役執行役副社長)、須藤 実和(プラネットプラン代表取締役)、加藤 孝明(元KYB代表取締役副社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「設備工事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 設備工事業

屋内線・環境設備工事、情報通信工事、配電線工事、送電・変電・地中線工事などのインフラ構築・維持サービスを、官公庁や民間企業、東京電力グループなどの顧客に提供しています。企画から設計、施工、メンテナンス、リニューアルまでを一貫して手掛けるエンジニアリング事業です。

工事の施工請負による工事代金を主な収益源としています。運営は主に関電工が行うほか、川崎設備工業、関工ファシリティーズ、関工パワーテクノ、タワーライン・ソリューションなどの連結子会社が、電気・管工事やその他設備工事の施工、設計・積算業務などを分担して行っています。

(2) その他

不動産事業、発電事業、電気機器販売業、リース業などを展開しています。具体的には、不動産の賃貸、再生可能エネルギーによる売電、電気機器や材料の販売、車両や建設機械等のリースサービスを提供しています。

不動産の賃料収入、電力会社への売電収入、機器販売代金、リース料などを収益源としています。運営は主に関電工が不動産・発電事業を行うほか、関工商事が電気機器販売、ケイアセットマネジメントが不動産・リース業、銚子風力開発などが発電事業を行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近では大幅な増収となっています。利益面でも、経常利益率が上昇傾向にあり、収益性が改善しています。当期は過去最高の売上高と利益を達成しており、堅調な成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,560億円 4,956億円 5,416億円 5,984億円 6,719億円
経常利益 310億円 318億円 341億円 426億円 595億円
利益率(%) 5.6% 6.4% 6.3% 7.1% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 175億円 179億円 182億円 206億円 373億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が拡大しています。売上総利益率は前年から改善しており、利益率の向上が見られます。営業利益についても増益となっており、本業の収益力が強化されていることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,984億円 6,719億円
売上総利益 712億円 929億円
売上総利益率(%) 11.9% 13.8%
営業利益 409億円 583億円
営業利益率(%) 6.8% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が147億円(構成比43%)、退職給付費用が7億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力の設備工事業が売上高の大半を占めており、当期は民間建設投資や電力設備投資の増加により大幅な増収増益となりました。その他の事業も売上高は微増しましたが、利益は横ばい圏内で推移しています。設備工事業の好調が全体の業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
設備工事業 5,876億円 6,608億円
その他 109億円 111億円
調整額 - -
連結(合計) 5,984億円 6,719億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 198億円 183億円
投資CF -191億円 -102億円
財務CF 6億円 -126億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

株主、顧客、地域社会との共存を目指すことが存立の意義であるとの考えから、「人間第一」を社是としています。人間尊重のもと企業の社会的責任を遂行し、豊かな人間環境づくりに貢献すること、顧客ニーズを先取りし最高のサービスを提供すること、絶えざる自己革新により未来指向型の企業を目指すことを理念としています。

(2) 企業文化

経営理念に基づき、社員一人ひとりが能力を発揮し、活き生きと働くことができる環境づくりを重視しています。また、安全・品質の確保とコンプライアンスの遵守を経営の最優先事項と位置づけ、公正かつ適正な事業活動の遂行に努める姿勢が浸透しています。

(3) 経営計画・目標

中期経営計画のスローガン「さらにかわる。より豊かな未来をつくる」のもと、2026年度を最終年度とする数値目標を設定しています。業績目標の上方修正を行い、新たな目標達成に向けて取り組んでいます。

* 連結売上高:7,160億円
* 連結営業利益:670億円
* ROE:10%超
* ROIC:10%超
* 配当性向:40%程度
* 温室効果ガス排出量(Scope1,2):2020年度比△18%

(4) 成長戦略と重点施策

成長分野への営業活動やソリューション営業の展開、産業空調分野への参入等による受注拡大を目指しています。また、業務のデジタル化やプレハブ化・ユニット化の推進などDXによる生産性向上、脱炭素コンサルティングの事業化などのグリーンイノベーション推進、人的資本経営の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

人材力・組織力を「ひといち力」と定義し、その向上に取り組んでいます。人事・賃金制度の見直しや柔軟な勤務・研修体系の整備、海外人材の採用拡大やシニア社員の活躍促進など、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進し、魅力的な職場づくりと社会を支える人づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 19.5年 9,060,371円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 37.5%
男女賃金差異(全労働者) 79.1%
男女賃金差異(正規雇用) 79.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DXリテラシー研修受講率(80%)、専門資格保有者数(8,421人)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 工事施工等のリスク

重大な人身災害や品質上の重大な不具合、事故が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。安全・品質統括ユニットを設置し、中央安全委員会や中央品質委員会において分析と対策の立案を実施するなど、安全および施工品質の確保を図っています。

(2) 取引先の信用リスク

建設業では請負代金が大きく、引渡時に多額の代金が支払われるため、代金受領前に取引先が信用不安に陥った場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。取引先に対する信用状況確認の徹底により、不良債権の発生防止に努めています。

(3) 情報流出のリスク

サイバー攻撃による情報の窃取やシステムデータの改ざん・喪失等により多額の損害賠償が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。組織内CSIRTの設置や社内規程の整備、従業員教育等により対策を講じています。

(4) 非常災害のリスク

大規模地震や台風等の自然災害の発生に伴い、事業活動の中断や遅滞が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。社内規程の整備や従業員への周知、事業所停電対策、非常用備蓄品の確保等の対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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