※本記事は、株式会社サイゼリヤ の有価証券報告書(第53期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サイゼリヤってどんな会社?
リーズナブルな価格でイタリア料理を提供するレストランチェーン『サイゼリヤ』を運営する企業です。
■(1) 会社概要
1973年、千葉県市川市にて株式会社マリアーヌ商会として設立され、レストラン経営を開始しました。1992年に株式会社サイゼリヤへ商号変更し、1999年に株式を店頭登録、2000年には東証一部へ上場しました。2000年にオーストラリアに食材製造子会社を設立し、2003年の上海子会社設立を皮切りにアジア展開を加速させています。
連結従業員数は4,868名、単体では2,215名です。筆頭株主は創業者の正垣泰彦氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は資産管理会社と思われる株式会社バベットです。創業者が現在も大株主として影響力を持っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 正垣 泰彦 | 28.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.31% |
| 株式会社バベット | 8.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役会長は正垣泰彦氏、代表取締役社長は松谷秀治氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 正垣 泰彦 | 代表取締役会長 | 1968年レストランサイゼリヤ創業。1973年マリアーヌ商会(現サイゼリヤ)設立し社長就任。2009年より現職。 |
| 松谷 秀治 | 代表取締役社長 | 1984年入社。資材部長、店舗運営本部長、マーチャンダイジング本部長、総務本部長などを歴任。2022年より現職。 |
| 長岡 伸 | 取締役海外事業本部長 | 1986年入社。商品部長、第2事業部長、組織開発本部長などを経て2018年より海外事業本部長。広東省薩莉亜餐飲管理有限公司董事長を兼務。 |
| 益岡 伸之 | 取締役(常勤監査等委員) | 1983年入社。取締役、常務取締役、海外事業部長、執行役員、理事業務監査室長などを歴任。2024年より現職。 |
社外取締役は、松田道春(松田公認会計士事務所所長)、荒川隆(一般財団法人食品産業センター理事長)、江口真理恵(祝田法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「豪州」「アジア」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内においてイタリアンワイン&カフェレストラン『サイゼリヤ』を1,053店舗運営しています。また、国内5工場にて店舗で使用する食材の製造および物流業務を行っています。
収益は主に一般顧客からの飲食代金によって構成されています。運営はサイゼリヤが行っています。
■(2) 豪州
オーストラリアにおいて、同社グループで使用する食材(肉製品・ソース類等)の製造を行っています。また、レストラン『サイゼリヤ』の開店に向けた準備も進めています。
グループ内への食材供給が主な役割ですが、今後の店舗展開も見据えています。運営はSAIZERIYA AUSTRALIA PTY.LTD.等の現地法人が行っています。
■(3) アジア
上海、広州、台湾、北京、香港、シンガポール、ベトナムにおいてレストラン『サイゼリヤ』をチェーン展開しています。また、広州には食材製造工場を有しています。
収益は現地顧客からの飲食代金等です。運営は上海薩莉亜餐飲有限公司、広州薩莉亜餐飲有限公司、台湾薩莉亜餐飲股份有限公司、SINGAPORE SAIZERIYA PTE.LTD.などの現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで推移しており、コロナ禍の影響からの回復と成長が顕著です。利益面でも、第49期には赤字を計上していましたが、その後は黒字転換し、第52期以降は高い水準で安定して推移しています。当期利益も増加傾向にあり、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,265億円 | 1,443億円 | 1,832億円 | 2,245億円 | 2,567億円 |
| 経常利益 | 35億円 | 108億円 | 79億円 | 156億円 | 158億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 7.5% | 4.3% | 6.9% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -11億円 | 46億円 | -6億円 | 126億円 | 74億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率はほぼ横ばいですが、営業利益は増加しており、本業での稼ぐ力が維持・向上されていることがわかります。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,245億円 | 2,567億円 |
| 売上総利益 | 1,321億円 | 1,491億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.8% | 58.1% |
| 営業利益 | 149億円 | 155億円 |
| 営業利益率(%) | 6.6% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与が585億円(構成比43.8%)、賃借料が196億円(同14.6%)、減価償却費が151億円(同11.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは売上高が大きく伸長し、営業利益も大幅に増加しました。アジアセグメントも売上高は増加しましたが、営業利益はやや減少しています。豪州セグメントは売上高が微増、営業利益は減少しました。全体としては日本の好調が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,465億円 | 1,729億円 | 27億円 | 50億円 | 2.9% |
| 豪州 | 3100万円 | 200万円 | 5億円 | 3億円 | 16250.0% |
| アジア | 781億円 | 838億円 | 116億円 | 101億円 | 12.1% |
| 連結(合計) | 2,245億円 | 2,567億円 | 149億円 | 155億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金を使って投資を行い、借入金の返済や株主還元も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 241億円 | 263億円 |
| 投資CF | -89億円 | -187億円 |
| 財務CF | -148億円 | -101億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界中の人々においしくて健康的なイタリアの家庭料理を、店舗で便利に楽しく食べられるようにすること」をロマン(目指す姿)として掲げています。また、「世の中の人にとってなくてはならない店舗を10,000店つくること」をビジョン(目標)とし、豊かな食を享受する幸せを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「La Buona Tavola(おいしくて楽しい食卓)」をコンセプトとして掲げ、「誠実さ」「つながり」「本物」「便利さ」「楽しさ」の5つの要素を重視しています。また、「人のため」「正しく」「仲良く」を基本理念とし、法令遵守と社会倫理を守る企業行動を徹底する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社はロマンとビジョンを掲げ、持続的な成長のための事業基盤の確立に取り組んでいます。具体的な数値目標としては、ビジョンの中で「店舗数10,000店」を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、国内では店舗マネジャーの育成による生産性向上や積極的な店舗修繕、DX推進によるオペレーション効率化に取り組みます。また、グローバル視点での生産・物流・購買の再構築を行い、コスト競争力を高めます。
海外展開においては、アジア地域での新規出店を継続するとともに、ベトナムやマレーシアなどの新規国への進出や、豪州での店舗展開準備を進めるなど、戦略的な出店により事業拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材の多様性確保、人材育成、社内環境の整備を重要テーマとして掲げています。店舗マネジメントを行えるストアマネジャーの育成や、研修体系とインターン受け入れ態勢の確立により若手社員の定着率向上を図っています。また、多様な働き方に応じた制度導入や各種休業取得支援を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 40.4歳 | 14.8年 | 6,999,460円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.6% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 110.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、非正規雇用労働者の正規雇用化人数(42人)、人材開発・研修の費用(306,500千円)、新卒採用人数(149人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出店政策について
新規出店に際しては賃料や商圏人口等を勘案していますが、条件に合う物件が見つからない場合は計画を達成できず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 売上高の変動について
外食事業は、天候不順、景気後退、競合との競争、消費者の嗜好変化などの影響を受けやすく、これらの要因により売上計画が未達となった場合、業績が悪化する可能性があります。
■(3) 仕入価格の変動について
食材の多くを海外から調達しているため、世界情勢の変化による食材価格の高騰や円安の進行などが、仕入コストの上昇を招き、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 人材の確保について
事業拡大には優秀な人材の確保が不可欠ですが、少子高齢化による人手不足や採用難、想定以上の退職者の発生などにより計画通りに人員を確保できない場合、成長の妨げとなり業績に影響する可能性があります。



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