良品計画 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

良品計画 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、「無印良品」ブランドの企画開発・製造・販売を行う製造小売業です。直近の業績は、国内外での積極的な出店や既存店売上の伸長により、営業収益は前期比18.6%増、営業利益は31.5%増と大幅な増収増益を達成し、過去最高益を更新しています。


※本記事は、株式会社良品計画 の有価証券報告書(第47期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 良品計画ってどんな会社?


「無印良品」ブランドで衣料品、生活雑貨、食品等を企画・開発・製造・販売する製造小売業(SPA)です。

(1) 会社概要


同社は1989年6月、西友ストアー(現西友)から独立する形で設立されました。1990年には西友から「無印良品」の営業を譲り受けて小売事業を開始し、翌1991年にはロンドンに出店して海外展開をスタートさせました。その後、2000年に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ上場を果たしています。近年ではフィンランドやベトナムなど新規国への進出も進めています。

連結従業員数は13,912名、単体では4,039名です。筆頭株主は信託銀行の日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家が多く保有しています。また、三菱商事も主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 19.03%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 9.41%
株式会社日本カストディ銀行(信託E口) 4.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は清水智氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
堂前 宣夫 取締役会長 マッキンゼー、ファーストリテイリング上席執行役員等を経て、2019年同社入社。専務取締役営業本部長等を経て、2021年代表取締役社長就任。2024年11月より現職。
清水  智 代表取締役社長 1996年同社入社。東アジア事業部長、中国大陸事業部長、専務取締役等を歴任。2024年11月より現職。MUJI HOUSE取締役を兼任。
高橋 広隆 取締役 セブン-イレブン・ジャパン取締役執行役員商品本部長等を経て、2022年同社入社。執行役員食品部管掌等を経て、2024年11月より現職。


社外取締役は、柳生昌良(元デンソー常務役員)、吉川淳(元野村ホールディングス取締役)、伊藤久美(元GEヘルスケア・ジャパンCMO)、加藤百合子(エムスクエア・ラボ社長)、山崎繭加(華道家・IKERU主宰)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内事業」「東アジア事業」「東南アジア・オセアニア事業」「欧米事業」および「その他」事業を展開しています。

国内事業

日本国内において「無印良品」ブランドの衣料品、生活雑貨、食品等の販売を行っています。また、飲食事業やキャンプ場の運営、住宅販売なども手掛けています。店舗販売に加え、オンラインストアでの販売も行っています。
主な収益源は、一般消費者への商品販売による売上です。また、ライセンスドストア(提携店)への商品供給も行っています。運営は主に良品計画が行い、住宅販売は子会社のMUJI HOUSEが担当しています。

東アジア事業

中国大陸、香港、台湾、韓国において「無印良品」商品の販売および飲食事業を展開しています。この地域は同社の海外事業における主要な収益柱となっています。
現地の一般消費者への商品販売が主な収益源です。運営は、MUJI (HONG KONG) CO.,LTD.、無印良品(上海)商業有限公司、台湾無印良品股份有限公司、MUJI Korea Co.,Ltd.などの現地法人が行っています。

東南アジア・オセアニア事業

シンガポール、マレーシア、タイ、オーストラリア、インド、ベトナム、フィリピン等において「無印良品」商品の販売および飲食事業を行っています。成長市場として出店を拡大しています。
現地の一般消費者への商品販売が主な収益源です。運営はMUJI (SINGAPORE) PRIVATE LTD.、MUJI Retail (Thailand) Co.,Ltd.、MUJI RETAIL (VIETNAM) LIMITED LIABILITY COMPANY等の現地法人が担っています。

欧米事業

イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガル、フィンランド、アメリカ、カナダ等において「無印良品」商品の販売を行っています。欧州および北米地域でのブランド展開を推進しています。
現地の一般消費者への商品販売が主な収益源です。運営はMUJI Europe Limited、MUJI U.S.A. Limited、MUJI CANADA LIMITED等の現地法人が行っています。

その他

「MUJI」の商品に関する調査および品質管理、商品の調達業務などを行っています。
グループ会社間でのサービス提供や商品調達業務に伴う収益が主となります。運営は愛姆吉斯(上海)貿易有限公司や各国のグローバルソーシング会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで成長を続けています。特に第47期は売上高が大幅に伸長し、経常利益、当期利益ともに過去最高を記録しました。コロナ禍の影響を受けた時期もありましたが、その後は回復・成長基調にあり、利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上収益(または売上高) 4,537億円 4,962億円 5,814億円 6,617億円 7,846億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 454億円 372億円 362億円 558億円 723億円
利益率(%) 10.0% 7.5% 6.2% 8.4% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 394億円 179億円 224億円 374億円 438億円

(2) 損益計算書


前期から当期にかけて、売上収益は約1,230億円増加し、大幅な増収となりました。売上総利益率も改善しており、利益体質が強化されています。営業利益は前期比で約32%増加し、高い成長率を示しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 6,617億円 7,846億円
売上総利益 3,364億円 4,030億円
売上総利益率(%) 50.8% 51.4%
営業利益 561億円 738億円
営業利益率(%) 8.5% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が943億円(構成比29%)、借地借家料が569億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての報告セグメントにおいて増収増益を達成しました。特に国内事業は商品力強化やマーケティング効果により大幅な増益となりました。東南アジア・オセアニア事業も出店拡大により売上が大きく伸長しています。欧米事業は不採算店の閉鎖など構造改革が進み、収益性が向上しました。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
国内事業 3,889億円 4,701億円 397億円 521億円 11.1%
東アジア事業 1,946億円 2,222億円 355億円 428億円 19.3%
東南アジア・オセアニア事業 391億円 501億円 46億円 56億円 11.1%
欧米事業 390億円 421億円 55億円 69億円 16.4%
その他 0億円 0億円 0億円 1億円 5.2%
調整額 - - -293億円 -336億円 -
連結(合計) 6,617億円 7,846億円 561億円 738億円 9.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で獲得した資金を用いて投資活動や借入金の返済を行っており、**健全型**のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 585億円 734億円
投資CF -277億円 -409億円
財務CF -234億円 -221億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定めています。誠実な品質と倫理的な視点から開発した商品を適正価格で提供すること、および店舗が地域のコミュニティセンターとして地域課題に取り組むことを使命としています。

(2) 企業文化


「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社員一人ひとりが地球環境や社会課題に敏感に呼応し、行動することを重視しています。店舗や個人の活動が公益に寄与する「公益人本主義経営」を掲げ、自律的・自発的に行動する風土を目指しています。

(3) 経営計画・目標


100年後の未来を見据え、2030年までのビジョンを策定しています。2030年に向けて「ESG経営のトップランナー」となることを目指し、GHG排出量の削減やサステナブルな原料調達などの非財務目標も設定しています。

* グループ全体のGHG排出量(スコープ1,2):2030年までに2021年8月期比50%削減
* 自社店舗・物流拠点等への再生可能エネルギー導入:2030年までに100%

(4) 成長戦略と重点施策


「第二創業」を進化させ、世界での更なる成長に挑戦するために、8つの成長ドライバーを掲げています。商品開発においては、日常生活の基本商品群を強化し、環境配慮型素材の活用を進めます。また、店舗が地域のコミュニティセンターとして機能することを目指し、地域課題解決や町づくりに貢献する活動を推進しています。グローバル展開においては、各地域の特性に合わせた出店や事業モデルの構築を進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「公益人本主義経営」の実現に向け、「社会や人の役に立ちたい」という情熱と志を持つ人財を育成することを目指しています。多様な社員が個性を発揮し、自律的に考え行動できる企業風土の醸成、および安心して働き続けられる職場環境づくりを推進しています。リーダー人財の育成や、社員の挑戦意欲を後押しする人事制度の運用にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 36.9歳 7.5年 6,703,071円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.2%
男性育児休業取得率 64.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.4%
男女賃金差異(正規雇用) 66.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 98.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人権に関するリスク


同社グループは商品を自ら生産せず、世界各地の生産パートナーに委託しています。サプライチェーン全体での人権尊重や労働環境の確保を最重要責務と捉え、行動規範の共有や監査を行っていますが、万が一深刻な人権侵害が発生した場合には、社会的信用の低下や不買運動等により、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済状況、消費動向について


国内外の気候状況、景気後退、海外での治安悪化などに伴う消費縮小は、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、持続的な成長基盤の強化や顧客創造、外部環境の変化に柔軟に対応できる仕組み作りや生産性向上を図ることで、収益性の改善に努めています。

(3) 海外の事業展開について


アジア、欧州、北米など広範な地域で事業を展開しており、予期しない法規制の変更、為替変動、政治的・経済的不安、テロや戦争などのリスクが存在します。これらが顕在化した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。予防措置として委員会でのモニタリングや対応体制の整備を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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