※本記事は、オーエスジー株式会社 の有価証券報告書(第113期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オーエスジーってどんな会社?
精密機械工具の総合メーカーです。主力製品のタップで高い世界シェアを誇り、世界33カ国に拠点を展開するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
1938年に大沢螺子研削所として創立し、タップ・ダイスの製造販売を開始しました。1963年に現在の社名へ変更し、1970年に東証二部に上場、1981年には東証一部へ指定替えとなりました。その後、米国や台湾、欧州などに現地法人を設立して海外展開を加速させ、2015年以降も海外メーカーの買収を進めるなど、グローバルな事業基盤を拡大しています。
2025年11月30日時点で、連結従業員数は7,563名、単体では1,854名です。筆頭株主は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行、第2位は日本カストディ銀行です。第3位のオーエスジーエージェント会は同社代理店による持株会であり、上位株主には創業家関連の財団法人や従業員持株会も名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.64% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.50% |
| オーエスジーエージェント会 | 4.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は石川則男氏です。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石川 則男 | 取締役会長(代表取締役)最高経営責任者(CEO) | 1983年5月OSG Tap and Die, Inc.出向。2007年2月代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)等を経て、2021年2月より現職。 |
| 大沢 伸朗 | 取締役社長(代表取締役)最高執行責任者(COO) | 1997年11月Norman Taps and Dies Limited出向。2014年1月OSG Europe S.A.代表取締役会長等を経て、2021年2月より現職。 |
| 富吉 剛弘 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年4月野村證券入社。2016年10月同社入社。執行役員新規事業開発担当、経営企画室担当等を経て、2022年2月より現職。 |
社外取締役は、高橋明人(高橋・片山法律事務所代表・指名・報酬委員会委員長)、原邦彦(元デンソー取締役)、山下佳代子(山下公認会計士事務所代表)、林良嗣(元名古屋大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州・アフリカ」「アジア」および「その他」事業を展開しています。
**(1) 日本**
切削工具、転造工具、測定工具、工作機械などを製造・販売しています。主力製品のタップやドリル、エンドミルなどを自動車産業や航空機産業などの顧客に提供しています。収益はこれらの製品販売による対価です。運営は主にオーエスジー、大宝産業、日本ハードメタル、オーエスジーコーティングサービスなどが行っています。
**(2) 米州**
米国、カナダ、メキシコ、ブラジルにおいて、切削工具や転造工具の製造・販売を行っています。航空機関連やエネルギー関連産業向けに製品を展開し、製品販売による対価を得ています。運営は主にOSG USA, INC.、OSG Canada Ltd.、OSG Royco, S.A. de C.V.などが行っています。
**(3) 欧州・アフリカ**
ドイツ、英国、ベルギー、南アフリカなどにおいて、切削工具の製造・販売を行っています。自動車産業や航空機産業向けの需要に対応し、製品販売による収益を得ています。運営は主にOSG Europe S.A.、OSG GmbH、OSG UK Limited、Somta Tools (Pty) Ltdなどが行っています。
**(4) アジア**
中国、台湾、韓国、タイ、シンガポールなどにおいて、切削工具や転造工具の製造・販売を行っています。現地の製造業向けに製品を供給し、販売対価を得ています。運営は主に大宝精密工具股份有限公司、欧士机(上海)精密工具有限公司、OSG THAI CO., LTD.、韓国OSGなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益は2022年11月期に大きく伸長した後、一時減少しましたが、当期は再び増加に転じています。利益率は12〜16%台で推移しており、安定した収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,262億円 | 1,425億円 | 1,477億円 | 1,555億円 | 1,606億円 |
| 経常利益 | 161億円 | 236億円 | 214億円 | 198億円 | 224億円 |
| 利益率(%) | 12.8% | 16.6% | 14.5% | 12.7% | 13.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 51億円 | 104億円 | 75億円 | 91億円 | 115億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、売上総利益率は約41%と高い水準を維持しています。営業利益も増加し、営業利益率は12%台後半へ向上しました。販管費の増加を売上総利益の増加が上回り、本業の収益性が改善しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,555億円 | 1,606億円 |
| 売上総利益 | 635億円 | 658億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.8% | 41.0% |
| 営業利益 | 189億円 | 203億円 |
| 営業利益率(%) | 12.1% | 12.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料賞与が180億円(構成比40%)、減価償却費が24億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりました。日本はAブランド製品等が好調で、アジアも中国やタイの回復により伸長しました。欧州・アフリカは為替影響もあり増収となりましたが、米州は微増にとどまりました。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 505億円 | 517億円 |
| 米州 | 345億円 | 350億円 |
| 欧州・アフリカ | 365億円 | 376億円 |
| アジア | 339億円 | 363億円 |
| 連結(合計) | 1,555億円 | 1,606億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 286億円 | 264億円 |
| 投資CF | -217億円 | -140億円 |
| 財務CF | -80億円 | -150億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地球会社」という企業理念を掲げています。持続可能な社会の発展に向け、株主、顧客、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーと健全な関係を維持・発展させ、社会とのより良い調和を図ることを目指しています。企業は社会の公器であることを自覚し、顧客に喜ばれる製品供給を通じて世界的企業への発展に努めています。
■(2) 企業文化
同社は「Beyond the Limit」をスローガンに、従来の常識にとらわれず、自らに限界を設けることなく挑戦する姿勢を重視しています。また、社員のウェルビーイングを追求し、働きがいと働きやすさを両立させることで、社員と会社が共に成長し、企業価値の向上を実現する文化の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2025年11月期より3ヶ年の中期経営計画「Beyond the Limit 2027」を策定しています。カーボンニュートラル時代に向けて、世界のモノづくり産業に貢献するエッセンシャル・プレーヤーとなることを長期ビジョンとしています。2027年11月期の経営目標として以下を掲げています。
* ROE:10%超
* 営業利益率:16%超
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では「事業成長戦略」と「経営基盤強化」を掲げています。主力事業のタップでは、高付加価値製品の拡販により世界シェア40%を目指します。転造工具はグローバル展開を加速させ、売上倍増と利益率改善を図ります。注力事業として、微細・精密工具やコーティングビジネスの拡大を進め、航空機やエネルギー、医療などの成長分野を開拓します。また、デジタル技術によるオペレーション効率化や人的資本経営の推進により、強固な事業基盤を構築します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財の尊重と活躍できる環境の整備」をマテリアリティに掲げ、適材適所の人員配置や自主性を高める人財育成を推進しています。社員一人ひとりの価値を最大化するため、働きがいのある職場環境を整備し、エンゲージメントの向上を図ります。また、多様な人財が能力を発揮できるよう、女性や障がい者の活躍推進にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 44.5歳 | 19.7年 | 7,015,490円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 38.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 80.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(82.1%)、障がい者雇用率(2.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品需要に関連する市場の経済状況に係るリスク
同社グループの製品は自動車、航空機、IT関連など幅広い産業で使用され、販売先は世界各地にわたっています。特定の業種や地域への集中を避けリスク分散を図っていますが、関連業界の需要減少や、世界的な景気減退が生じた場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 為替変動に係るリスク
世界各国で製品の製造・販売を行っており、現地通貨建ての項目は円換算時に為替レートの影響を受けます。また、輸出入取引においても為替変動の影響を受けます。為替予約や外貨預金口座を通じた決済等でヘッジを行っていますが、為替相場の変動により業績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 原材料価格の変動に係るリスク
主要製品の原材料にはレアメタルを含む超硬合金などが使用されています。これらは産地や供給者が限定され、市況により価格が急変動する可能性があります。販売価格への転嫁努力を行っていますが、タイムラグや転嫁困難な場合があり、原材料価格の高騰は業績や財政状態に影響を与える可能性があります。



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