大日本印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大日本印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する総合印刷会社です。スマートコミュニケーション、ライフ&ヘルスケア、エレクトロニクスの3分野で多角的に事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比2.3%増、営業利益が24.1%増となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社大日本印刷 の有価証券報告書(第131期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大日本印刷ってどんな会社?


印刷技術(Printing)と情報技術(Information)を融合し、多彩な事業を展開する世界最大規模の総合印刷会社です。

(1) 会社概要


同社は1876年に秀英舎として創業し、1935年に日清印刷と合併して大日本印刷となりました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2000年代には丸善や図書館流通センター等を子会社化して教育・出版流通事業を強化しました。近年は持株会社制への移行検討や事業ポートフォリオの再構築を進めています。

連結従業員数は36,890名、単体では9,785名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には事業会社である第一生命保険が名を連ねており、機関投資家や金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.79%
日本カストディ銀行(信託口) 6.49%
第一生命保険 3.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表取締役社長は北島義斉氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
北島 義斉 代表取締役社長 1987年富士銀行入行。1995年同社入社。常務、専務、副社長を経て2018年代表取締役社長に就任。2022年よりサステナビリティ推進委員会委員長を兼務。
宮 健司 代表取締役副社長 1978年同社入社。人事部長、常務、専務を経て2024年より代表取締役副社長。スマートコミュニケーション部門、人的資本部門、コーポレート部門を統括。
山口 正登 代表取締役副社長 1975年同社入社。生産総合研究所研究開発第1部長、常務役員ファインエレクトロニクス事業部長、専務執行役員等を経て2024年より代表取締役副社長。
黒柳 雅文 専務取締役 1983年同社入社。経理本部経理第1部長、経理本部長、常務執行役員等を経て2024年より専務取締役。経理本部、法務部、監査室を担当。
杉田 一彦 専務取締役 1982年同社入社。市谷事業部企画管理部長、常務執行役員コーポレートコミュニケーション本部担当等を経て2024年より専務取締役。IR・広報等を担当。
三宅 徹 常務取締役 1982年同社入社。研究開発・事業化推進本部長、執行役員購買本部長等を経て2023年より現職。購買本部を担当。
宮間 三奈子 常務取締役 1986年同社入社。人材開発部長、執行役員ダイバーシティ推進室長等を経て2024年より現職。人財開発部、ダイバーシティ&インクルージョン推進室を担当。
金沢 貴人 常務取締役 1984年同社入社。DNPデータテクノ社長、情報システム本部長等を経て2024年より現職。ABセンター長、情報システム本部を担当。


社外取締役は、宮島司(元慶應義塾大学教授・弁護士)、田村良明(元AGC専務執行役員)、白川浩(元大成建設取締役専務執行役員)、杉浦宣彦(中央大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スマートコミュニケーション部門」「ライフ&ヘルスケア部門」「エレクトロニクス部門」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

スマートコミュニケーション部門


書籍・雑誌の印刷や電子書籍、デジタルマーケティング支援、BPOサービス、ICカード、証券印刷などを提供しています。また、フォト関連製品や証明写真機事業も展開しており、出版社や一般企業、金融機関、生活者など幅広い層を顧客としています。

収益は、製品・サービスの販売対価や業務受託料などが主な柱です。運営は同社のほか、丸善CHIホールディングス、インテリジェント ウェイブ、DNPアイディーシステムなどのグループ会社が担っており、多角的なサービスを提供しています。

ライフ&ヘルスケア部門


食品・飲料・医療品用の包装材料や、住宅・車両用内外装材、リチウムイオン電池用部材などを製造・販売しています。また、北海道コカ・コーラボトリングによる飲料事業も含まれ、食品メーカーや住宅メーカー、自動車関連企業などが主な顧客です。

収益は、包装資材や産業用部材、飲料製品の販売から得ています。運営は同社のほか、DNPテクノパック、北海道コカ・コーラボトリング、DNP高機能マテリアルなどのグループ会社が行っています。

エレクトロニクス部門


ディスプレイ用光学フィルムや有機EL用メタルマスク、半導体用フォトマスクなどの精密電子部材を提供しています。エレクトロニクスメーカーや半導体メーカーが主な顧客であり、世界トップシェアを誇る製品も有しています。

収益は、各種電子部材や精密部品の販売によって得ています。運営は主に同社が行っていますが、DNPファインオプトロニクスやディー・ティー・ファインエレクトロニクスなどのグループ会社も製造・販売に関わっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな右肩上がりで推移しており、堅調に事業規模を拡大しています。利益面では、経常利益率が4%台から7%台へと改善傾向にあり、収益性が向上しています。当期利益も安定して確保されており、全体として安定した成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 13,354億円 13,441億円 13,732億円 14,248億円 14,576億円
経常利益 599億円 812億円 837億円 987億円 1,159億円
利益率(%) 4.5% 6.0% 6.1% 6.9% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 251億円 972億円 857億円 1,109億円 1,107億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、利益率も23%台で安定的に推移しています。販管費も増加していますが、売上総利益の伸びが上回っているため、営業利益率は向上し、本業の収益力が強化されていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14,248億円 14,576億円
売上総利益 3,137億円 3,383億円
売上総利益率(%) 22.0% 23.2%
営業利益 755億円 936億円
営業利益率(%) 5.3% 6.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が729億円(構成比30%)、研究開発費が376億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで黒字を確保しています。スマートコミュニケーション部門は減収ながらも大幅な増益を達成し、利益率が改善しました。ライフ&ヘルスケア部門は増収増益で、特に利益の伸びが顕著です。エレクトロニクス部門は増収ですが若干の減益となりましたが、依然として高い利益率を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
スマートコミュニケーション 7,173億円 7,140億円 262億円 347億円 4.9%
ライフ&ヘルスケア 4,722億円 4,959億円 133億円 238億円 4.8%
エレクトロニクス 2,353億円 2,478億円 582億円 574億円 23.1%
その他 - - - - -
調整額 △23億円 △18億円 977億円 1,158億円 -
連結(合計) 14,248億円 14,576億円 755億円 936億円 6.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 726億円 1,327億円
投資CF 184億円 △367億円
財務CF △1,187億円 △874億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。この理念に基づき、持続可能なより良い社会と心豊かな暮らしを実現するため、長期を見据えて自らがより良い未来をつくり出す事業活動を展開することを「経営の基本方針」としています。

(2) 企業文化


同社グループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらを「あたりまえ」のものにしていく姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、自らが「欠かせない存在」になることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画を実行中です。市場成長性・魅力度と事業収益性を基準にポートフォリオを明確化し、持続的な価値創出を目指しています。

* 営業利益:850億円(当期実績936億円で達成済み)
* ROE:8%以上(当期実績9.6%で達成済み)

(4) 成長戦略と重点施策


「事業戦略」では、「成長牽引事業」と「新規事業」を注力事業領域と位置付け、経営資源を集中的に投入しています。一方、収益性の高い「基盤事業」では効率向上によるキャッシュ創出を図り、「再構築事業」では最適化を進めています。「財務戦略」では、創出したキャッシュを成長投資と株主還元に配分し、「非財務戦略」では人的資本・知的資本の強化や環境への取り組みを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本ポリシー」に基づき、「人への投資」を企業価値向上に結びつける好循環を目指しています。社員一人ひとりが自律した個として成長し、自己実現を図れるよう、複線型のポスト型処遇やキャリア自律支援、健康経営を推進しています。また、多様な個を活かすダイバーシティ&インクルージョンを重要課題とし、多様な人材が活躍できる風土醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 20.9年 8,298,269円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.4%
男性育児休業取得率 96.4%
男女賃金差異(全労働者) 81.2%
男女賃金差異(正規) 80.6%
男女賃金差異(非正規) 65.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントサーベイスコア(4.5%向上)、DXリテラシー標準基礎教育受講完了者数(25,473名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人権に関するリスク


国内外のサプライチェーン全体において、強制労働やハラスメント等の人権侵害が発生した場合、社会的信用の失墜や法的制裁を受ける可能性があります。同社は人権方針に基づくデュー・ディリジェンスや通報窓口の設置等の対策を講じていますが、対応が不十分とみなされた場合、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 労働安全に関するリスク


多様化する労働環境において、労働災害やメンタルヘルス問題が発生した場合、生産活動の停滞や損害賠償請求等のリスクがあります。同社は安全衛生憲章に基づき、リスクアセスメントや設備安全対策を強化していますが、重大な事故が発生した場合には、業績や社会的評価に影響を与える可能性があります。

(3) 製品・サービスの安全と品質に関するリスク


提供する製品やサービスに欠陥や品質不良が発生した場合、大規模な回収費用や損害賠償、ブランドイメージの毀損を招く恐れがあります。同社は品質マネジメントシステムを運用し、設計段階からのリスク低減に努めていますが、予期せぬ品質問題が発生した場合には、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


サイバー攻撃や不正アクセスによる情報漏洩やシステム停止が発生した場合、顧客の信頼失墜や損害賠償責任、事業停止等の深刻な被害が生じる可能性があります。同社は専門組織による対策や社員教育を徹底していますが、技術の高度化に伴う新たな脅威により被害が発生した場合、事業運営に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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