京セラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京セラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。ファインセラミック技術を核に、半導体部品、電子部品、複合機や通信機器などのソリューション事業をグローバルに展開しています。当連結会計年度は、半導体関連市場でのAI需要拡大や円安効果があったものの、構造改革費用や減損損失の計上により、売上高はほぼ横ばい、利益面では減益となりました。


※本記事は、京セラ株式会社 の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 京セラってどんな会社?


ファインセラミック技術を基盤に、部品からデバイス、機器、サービスまで多角的に展開するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1959年に京都セラミックとして設立され、1972年に株式を上場しました。1982年に現社名へ変更し、1984年には第二電電企画(現KDDI)を設立するなど事業を拡大しました。その後もM&Aを積極的に進め、2020年には米国の電子部品メーカーAVX Corporation(現Kyocera AVX Components Corporation)を完全子会社化するなど、グローバル展開を加速しています。

同社グループの連結従業員数は77,136人、単体では20,976人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位には地元京都の地方銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 21.96%
日本カストディ銀行(信託口) 8.86%
京都銀行 4.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.0%です。代表取締役社長執行役員社長は谷本 秀夫氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 悟郎 代表取締役会長 1978年入社。執行役員常務を経て2013年代表取締役社長兼執行役員社長に就任。2017年より現職。京都パープルサンガ等のグループ会社会長も兼務。
谷本 秀夫 代表取締役社長執行役員社長 1982年入社。執行役員常務、取締役兼執行役員常務を経て2017年4月より現職。
伊奈 憲彦 取締役執行役員専務 1987年三田工業(現京セラドキュメントソリューションズ)入社。同社社長を経て2017年京セラ執行役員常務。2025年4月より現職。
触 浩 取締役 1984年入社。半導体部品有機材料事業本部長、コアコンポーネントセグメント担当等を歴任。2025年4月より部品QMS戦略本部担当として現職。
嘉野 浩市 取締役執行役員常務 1985年入社。関連会社統括本部長等を経て2016年取締役兼執行役員常務。2023年4月より電子部品セグメント担当として現職。
青木 昭一 取締役 1983年入社。経営管理本部長、コーポレート担当兼関連会社統括本部長などを歴任。2025年4月より現職。
垣内 永次 取締役 1981年大日本スクリーン製造(現SCREENホールディングス)入社。同社代表取締役会長を経て2025年6月より同社特別顧問。2021年6月より現職。
前川 重信 取締役 1976年日本新薬入社。同社代表取締役社長を経て2021年6月より同社代表取締役会長。2023年6月より現職。
須永 順子 取締役 1983年日本電気入社。クアルコムジャパン合同会社代表社長、同社アドバイザリーチェアマンを経て2024年6月より現職。
古家野 晶子 取締役 2008年弁護士登録。弁護士法人古家野法律事務所社員。2019年6月より現職。


社外取締役は、古家野 晶子(弁護士)、垣内 永次(元SCREENホールディングス会長)、前川 重信(日本新薬会長)、須永 順子(元クアルコムジャパン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コアコンポーネント」「電子部品」「ソリューション」および「その他」事業を展開しています。

(1) コアコンポーネント


半導体製造装置用部品などの各種ファインセラミック部品、車載カメラモジュール、電子部品やICを保護するパッケージなどを提供しています。主な顧客は半導体、産業機械、自動車、情報通信関連のメーカーです。

収益は、製品の販売による対価です。運営は主に京セラが担うほか、自動車用部品などは中国のDongguan Shilong Kyocera Co., Ltd.などが製造し、海外販売会社を通じて展開しています。

(2) 電子部品


コンデンサ、水晶部品、コネクタ、パワー半導体などの各種電子部品やデバイスを提供しています。これらは情報通信機器、産業機械、自動車、民生機器などに幅広く搭載されています。

収益は、電子部品の販売による対価です。運営は京セラに加え、米国のKyocera AVX Components Corporationなどが開発・製造・販売を行っています。

(3) ソリューション


機械工具事業では切削工具等を、ドキュメントソリューション事業ではプリンターや複合機を、コミュニケーション事業では通信端末やICTソリューションを提供しています。顧客は自動車産業、オフィス、法人企業など多岐にわたります。

収益は、製品販売に加え、ドキュメント機器の保守サービスやソリューション提供による対価などです。運営は京セラ、京セラインダストリアルツールズ、京セラドキュメントソリューションズ、京セラコミュニケーションシステムなどが担っています。

(4) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、スマートエネルギー関連の製品・サービスや、ディスプレイ、プリンティングデバイスなどを展開しています。

収益は、製品やサービスの提供による対価です。運営は京セラおよび各国の販売・製造子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2兆円規模で推移しており、直近ではほぼ横ばいとなっています。一方、利益面では税引前利益が減少傾向にあり、特に当期は部品事業の低迷や減損損失の計上により利益率が低下しました。当期利益も前期比で大きく減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 1兆5,269億円 1兆8,389億円 2兆253億円 2兆42億円 2兆145億円
税引前利益 1,176億円 1,989億円 1,762億円 1,361億円 636億円
利益率(%) 7.7% 10.8% 8.7% 6.8% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 902億円 1,484億円 1,280億円 1,011億円 241億円

(2) 損益計算書


売上高は微増したものの、売上原価の増加などにより売上総利益の伸びは限定的でした。さらに、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は前期比で大幅に減少しました。営業利益率は1.4%まで低下しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2兆42億円 2兆145億円
売上総利益 5,531億円 5,592億円
売上総利益率(%) 27.6% 27.8%
営業利益 929億円 273億円
営業利益率(%) 4.6% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が2,787億円(構成比52%)、減価償却費が498億円(同9%)を占めています。売上原価においては、原材料費が5,233億円(売上原価に対し36%)、人件費が2,991億円(同21%)となっています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高を見ると、コアコンポーネントは半導体関連の需要減により微減、電子部品は円安効果もあり微増、ソリューションはドキュメント事業の増収が寄与し微増となりました。全体としては大きな変動はなく、安定的な推移となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
コアコンポーネント 5,691億円 5,671億円
電子部品 3,523億円 3,546億円
ソリューション 1兆1,016億円 1兆1,110億円
その他の事業 177億円 171億円
調整及び消去 -365億円 -354億円
連結(合計) 2兆42億円 2兆145億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金の範囲内で投資を行い、借入金の返済も進めていることから、健全な財務運営が行われている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2,691億円 2,379億円
投資CF -1,584億円 -1,505億円
財務CF -826億円 -649億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念として掲げています。この理念の追求のため、「人間として何が正しいか」を判断基準とする企業哲学の実践を通じて、持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化


「人間として何が正しいか」を判断基準とする「京セラフィロソフィ」と、独自の経営管理システムである「アメーバ経営」を実践する文化があります。全部門、全従業員が経営に参画し、採算意識を持って業務に取り組むことで、組織の活性化と高い収益性の実現を図っています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定していましたが、部品事業の低迷により遅れが生じています。引き続き高収益企業の実現に向け、二桁の税引前利益率の達成と持続的な向上、ROEの改善を目指しています。

* 売上高 2兆5,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


高収益企業への回帰を喫緊の課題とし、2026年3月期を構造改革期と位置付けています。事業ポートフォリオの再編を進め、コア事業への経営資源集中を図ります。また、政策保有株式の縮減を進め、得られた資金を注力分野へのM&Aや設備投資等の成長投資に活用する資本戦略の改革も実施します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「京セラフィロソフィ」の継承と実践を人材育成の根幹に据えています。グローバルな教育展開や経営幹部との対話セッションに加え、専門知識・技術の習得支援にも注力しています。また、多様な人材が活躍できる職場環境の整備や、従業員エンゲージメントの向上、女性管理職比率の向上などに積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 15.7年 6,936,702円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 34.2%
男女賃金差異(全労働者) 55.7%
男女賃金差異(正規雇用) 73.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 38.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際的な事業活動に関するリスク


世界各国で事業を展開しているため、政治的・地政学的・経済的要因による予期せぬ規制変更や関税引き上げ等のリスクがあります。これに対し、カントリーリスクのモニタリングや重要技術情報の流出防止、グローバルな生産体制の構築によりリスク回避と影響の最小化に努めています。

(2) 人権に関するリスク


サプライチェーンを含めた人権問題への配慮が求められており、関連法規制の変更やレピュテーションリスクが存在します。同社は人権デューディリジェンスの実施や「京セラグループ人権方針」の改定、RBAへの加盟などを通じ、人権リスクの特定と軽減に取り組んでいます。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


重要情報や個人情報の漏洩、サイバー攻撃によるシステム停止等のリスクがあります。これに対し、情報セキュリティ管理体制の整備、従業員教育、システム監視等の対策を講じています。また、AI利用に関しては倫理原則を策定し、適正な利用を推進しています。

(4) 優れた人材の確保が困難となるリスク


技術・販売・管理面での優秀な人材の獲得競争が激化しており、人材の確保・維持が困難になる可能性があります。これに対し、給与水準の見直しや柔軟な勤務体系の導入、DEIの推進等により、多様な人材が活躍できる職場環境の実現に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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