※本記事は、株式会社ニチダイ の有価証券報告書(第59期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニチダイってどんな会社?
ニチダイは、自動車部品向けの精密鍛造金型や精密部品、各種産業用フィルタの製造と販売を行う企業です。
■(1) 会社概要
同社は1967年に冷間鍛造金型などの製造・販売を目的に設立されました。1974年に焼結金網フィルタ、1988年に自動車用鍛造部品の製造・販売を開始し事業を拡大しました。2000年に株式を店頭登録し、2022年の市場区分見直しにより東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。
従業員数は連結で596名、単体で344名です。大株主の状況としては、筆頭株主が有限会社ジャスト、第2位が個人の田中克尚氏、第3位が同社従業員持株会という構成になっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社ジャスト | 9.78% |
| 田中 克尚 | 5.26% |
| ニチダイ従業員持株会 | 4.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は伊藤直紀氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 直紀 | 代表取締役社長執行役員 | 2016年4月同社入社。経営企画室長、取締役副社長、管理統括本部長などを歴任し、2021年4月より現職。 |
| 中村 篤人 | 取締役 | 2014年8月ニチダイフィルタ入社。同社代表取締役社長、海外子会社社長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 山根 隆義 | 取締役(監査等委員) | 2003年11月同社入社。経理部長、執行役員管理本部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、竹田千穂(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)、黒田健(黒田健公認会計士・税理士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金型」「精密部品」「フィルタ」の各報告セグメントを展開しています。
■金型
自動車部品メーカーを中心とした、主に冷間鍛造に使用される精密鍛造金型などを提供しています。
製品の販売による収益が主であり、顧客からの製品代金が主な収益源です。事業運営は主に同社および海外子会社のNICHIDAI(THAILAND)LTD.等が行っています。
■精密部品
ディーゼルやガソリンエンジン向けのターボチャージャー部品、エアコン用スクロールコンプレッサー部品、各種ギアなどの自動車部品を提供しています。
こちらも製品販売が中心の収益モデルとなっており、同社およびNICHIDAI(THAILAND)LTD.によって生産・販売が行われています。
■フィルタ
石油化学、医薬品、食品、原子力などの幅広い分野で使用される焼結金属フィルタなどを製造し、提供しています。
製品販売が主な収益源となっています。運営は主に子会社のニチダイフィルタやNICHIDAI(THAILAND)LTD.が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期の業績を見ると、売上高は110億円台で推移していましたが、当期は主要顧客業界である日系自動車産業での在庫調整などの影響を受け減収となりました。利益面でも、減収による売上総利益の減少に加え、固定資産の減損処理を行ったことなどから、当期は大幅な赤字を計上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 113.2億円 | 116.0億円 | 109.9億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 | 1.9億円 | -4.5億円 |
| 利益率(%) | 0.6% | 1.6% | -4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | 0.6億円 | -7.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も悪化しています。売上総利益率は20.0%から16.4%へと低下し、営業利益は赤字に転落する厳しい結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 116.0億円 | 109.9億円 |
| 売上総利益 | 23.2億円 | 18.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.0% | 16.4% |
| 営業利益 | 1.5億円 | -4.1億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | -3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8.0億円(構成比36%)、荷造運搬費が1.7億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに前期に比べて減収となっています。特に金型事業と精密部品事業は顧客の在庫調整などの影響により赤字を計上しています。フィルタ事業は黒字を確保しているものの、タイ子会社再編に伴う一時的な需要減などの影響で大幅な減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金型 | 48.6億円 | 44.7億円 | 1.3億円 | -2.9億円 | -6.5% |
| 精密部品 | 43.6億円 | 42.4億円 | -1.2億円 | -2.2億円 | -5.2% |
| フィルタ | 23.8億円 | 22.8億円 | 1.7億円 | 0.7億円 | 3.1% |
| 連結(合計) | 116.0億円 | 109.9億円 | 1.9億円 | -4.5億円 | -4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益は赤字ですが、減価償却費等の非資金項目の影響もあり営業CFはプラスを確保しています。この資金を活用して投資と借入金の返済を進める、健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.6億円 | 6.1億円 |
| 投資CF | -8.9億円 | -6.5億円 |
| 財務CF | -3.8億円 | -5.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
顧客満足度(Customer Satisfaction)、株主満足度(Investor Satisfaction)、社員満足度(Employee Satisfaction)を最大限に実現し、永続的に向上させていくことで新たな価値を創造し、社会に貢献できる企業を目指しています。「他社ではできない製品と他社の追随を許さない高い技術力」を追求するオンリーワン企業を標榜しています。
■(2) 企業文化
「VSOP精神(Vitality:活気・生命力、Specialty:専門性・技術、Originality:独創性・創意、Passion:情熱)」を創業から受け継がれる精神として経営ビジョンに含めています。挑戦を歓迎する仕組みづくりや組織風土改革に取り組み、多様性を受け入れて社員が誇れる企業への成長を図る文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営戦略「CHANGE ~ニチノベーション 2026~」を推進しており、経営の基本方針のもとで以下のような数値目標を掲げています。
* 売上高営業利益率 10%
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車産業における電動化シフトなどの変革期に対応するため、コア技術の応用と進化による提案力を推進し、QDC(品質・納期・コスト)への対応を強化して付加価値の最大化を図ります。また、グローバル市場への積極的展開や新たな事業・製品領域(鍛造DX等)への進出など成長戦略を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員の成長と会社の成長が相互に高め合う関係のもと、主体的に考え行動する自律型人材の育成を基本方針としています。目標達成状況を振り返る評価制度やキャリア自律を支援する研修制度を整備し、心身ともに健康で安心して働き続けられる職場環境の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.3歳 | 17.6年 | 5,491,901円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.2% |
| 男性育児休業取得率 | 90.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 26.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(6.3%)、有給休暇取得率(61.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車関連産業への依存
同社グループの金型事業と精密部品事業の主たる販売先は自動車関連産業向けであり、売上高の7割以上を占めています。そのため、自動車メーカーの技術動向や生産体制の見直し、海外現地調達等の動向により、業績が影響を受ける可能性があります。
■(2) 特定顧客(三菱重工グループ)への依存
同社の売上高のうち、三菱重工グループが4分の1程度を占めています。そのため、同グループの受注や生産動向、外注施策などが大きく変動した場合、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料および部品の調達リスク
原材料や部品等について複数の供給元から調達していますが、市況の変化による価格高騰や品不足、供給元の災害等により調達に支障をきたし、生産停止や利益率の悪化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) サイバー攻撃等の情報セキュリティリスク
外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、コンピューターウイルス感染などの防止に努めていますが、不測の事態により情報システムに障害が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。



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