※本記事は、株式会社ニチダイ の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニチダイってどんな会社?
独立系の金型メーカーとして創業し、独自の精密鍛造技術を核に自動車部品やフィルタ製品へ事業領域を拡大する「オンリーワン企業」です。
■(1) 会社概要
1967年に大阪府寝屋川市で設立され、1988年には自動車用鍛造部品の製造・販売を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。2024年3月には、タイの現地法人NICHIDAI(THAILAND)LTD.を完全子会社化するなど、グローバル展開を進めています。
同グループの連結従業員数は639名(単体338名)です。大株主の構成は、筆頭株主が有限会社ジャスト(9.78%)、第2位が個人株主の田中克尚氏(5.27%)、第3位がニチダイ従業員持株会(4.19%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社ジャスト | 9.78% |
| 田中 克尚 | 5.27% |
| ニチダイ従業員持株会 | 4.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名、計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は伊藤直紀氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 直紀 | 代表取締役社長執行役員 | 2016年4月同社入社。経営企画室長、取締役副社長、管理統括本部長などを歴任し、2021年4月より現職。 |
| 中村 篤人 | 取締役ニチダイフィルタ㈱代表取締役社長THAI SINTERED MESH CO.,LTD 社長 | 2014年ニチダイフィルタ入社。同社代表取締役社長、THAI SINTERED MESH CO.,LTD社長を経て、2023年6月より同社取締役を兼務。 |
| 山根 隆義 | 取締役(監査等委員) | 2003年同社入社。経理部長、執行役員管理本部長などを経て、2023年6月より現職(常勤)。 |
社外取締役は、陰地弘和(公認会計士・税理士)、竹田千穂(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金型」「精密部品」「フィルタ」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 金型事業
自動車部品メーカーを中心とした顧客向けに、主に冷間鍛造に使用される精密鍛造金型などを提供しています。独自の精密鍛造技術を活かし、他社にはできない製品づくりを追求しています。
製品の販売による対価を主な収益源としています。運営は、主にニチダイ、NICHIDAI(THAILAND)LTD.、NICHIDAI U.S.A. CORPORATIONなどのグループ各社が行っています。
■(2) 精密部品事業
ディーゼル・ガソリンエンジン向けのターボチャージャー部品や、エアコン用スクロールコンプレッサー部品、各種ギア等の自動車部品を製造・販売しています。
製品の販売による対価を収益としています。運営は、主にニチダイおよびNICHIDAI(THAILAND)LTD.が行っています。
■(3) フィルタ事業
石油化学、医薬品、食品、原子力などの幅広い分野で使用される焼結金属フィルタ等を製造・販売しています。独自の拡散接合(焼結)技術をコアとしています。
製品の販売による対価を収益源としています。運営は、主にニチダイフィルタ株式会社およびTHAI SINTERED MESH CO.,LTD.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は110億円前後で推移しています。利益面では第54期から第56期にかけて経常損失や当期純損失を計上していましたが、第57期に黒字転換し、当期(第58期)は増益となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 123億円 | 108億円 | 113億円 | 116億円 |
| 経常利益 | -1.7億円 | 2.6億円 | -0.7億円 | 0.6億円 | 1.9億円 |
| 利益率(%) | -1.6% | 2.2% | -0.6% | 0.6% | 1.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.7億円 | -6.2億円 | -4.8億円 | 0.4億円 | 0.6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は微増し、売上総利益率も改善しています。営業利益は前期の赤字から黒字に転換しました。販売費及び一般管理費の抑制も寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 113億円 | 116億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.3% | 20.0% |
| 営業利益 | -0.4億円 | 1.5億円 |
| 営業利益率(%) | -0.4% | 1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8.2億円(構成比38%)、荷造運搬費が1.9億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は精密部品事業とフィルタ事業が増収となり、全体を牽引しました。一方、金型事業は減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 金型 | 51億円 | 49億円 |
| 精密部品 | 39億円 | 44億円 |
| フィルタ | 23億円 | 24億円 |
| 連結(合計) | 113億円 | 116億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、自己資金による充当を基本としつつ、必要に応じて金融機関からの借入やリース取引による資金調達を実施しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは増加しており、事業活動を通じて安定的に資金を生み出しています。投資活動では、設備投資等により資金を使用していますが、これは将来の成長に向けた投資と捉えられます。財務活動では、借入や返済、子会社株式の取得等により資金を使用しました。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は減少しましたが、経営の安全性は確保されていると考えています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.4億円 | 7.6億円 |
| 投資CF | -4.9億円 | -8.9億円 |
| 財務CF | -11.3億円 | -3.8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、顧客満足度・株主満足度・社員満足度を最大限に実現し、永続的に向上させることで新たな価値を創造し、社会に貢献する企業を目指しています。「他社ではできない製品と他社の追随を許さない高い技術力」を追求するオンリーワン企業を目指すとともに、従業員の自己実現と健全な成長を持続できる「3E(エクセレント・エキサイティング・エクスパンド)カンパニー」の実現を掲げています。
■(2) 企業文化
同社の創業から受け継がれている精神として「VSOP」があります。これは、Vitality(活気・生命力)、Specialty(専門性・技術)、Originality(独創性・創意)、Passion(情熱)の頭文字をとったもので、経営ビジョンにも含まれています。この精神のもと、顧客価値の創造に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、目標とする経営指標として、売上高営業利益率10%の達成を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営戦略「CHANGE ~ニチノベーション 2026~」に基づき、コア技術の応用と進化による提案力強化や、グローバル戦略の強化を進めています。具体的には、自動車産業の電動化シフトやサプライチェーンの変化に対応するため、技術営業の推進やQDC(品質・納期・コスト)対応の強化、海外拠点の改革に取り組んでいます。また、鍛造DXなどの新事業領域への展開や、自動車業界以外への拡販も強化しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員が輝き続ける会社づくり」を掲げ、社員と会社の成長を喜び合う相互関係の構築を目指しています。具体的には、挑戦を歓迎する仕組みづくりや組織風土改革、ダイバーシティの推進、健康経営の実現に取り組んでいます。また、人的資本経営への取り組みとして、IT活用を含めた社員の成長支援の拡充や、働きやすい職場づくりの施策を強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.9歳 | 17.4年 | 5,590,007円 |
※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与が含まれています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 10.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 25.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(5.10%)、有給休暇取得率(63.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定業界への依存について
金型事業と精密部品事業の主な販売先は自動車関連産業であり、当連結会計年度における同産業向けの売上高は全売上高の76%を占めています。そのため、自動車メーカーの技術・生産動向や部品の新規開発、共通化等の影響を受ける可能性があります。
■(2) 特定顧客への依存について
当連結会計年度における売上高の26.1%を三菱重工グループが占めています。同グループの受注・生産動向や外注施策が大きく変動した場合、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 生産拠点の集中について
国内生産拠点は京都府下(宇治田原町、京田辺市)、海外生産拠点はタイ国(チョンブリ県、ランプーン県)に集中しています。不測の自然災害等が発生した場合、生産に大きな支障が生じ、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 原材料や部品の調達について
原材料・部品等は複数の供給元から調達していますが、市況変化による価格高騰や品不足、供給元の災害・倒産等により調達に支障をきたした場合、製品利益率の悪化や生産停止等により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。



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