小松製作所(コマツ) 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小松製作所(コマツ) 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小松製作所は東京証券取引所プライム市場に上場しており、建設機械・車両、リテールファイナンス、産業機械他事業を展開しています。直近の業績は、建設機械の需要変動や為替の影響を受けつつも、売上高4兆1044億円(前期比6.2%増)、税引前利益6048億円(同5.1%増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社小松製作所 の有価証券報告書(第156期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は US GAAP です。

1. 小松製作所ってどんな会社?


同社は、建設・鉱山機械や産業機械などの製造・販売を行う世界的メーカーです。グローバルな生産・販売体制を構築し、建設現場のDX化や環境対応技術の開発にも注力しています。

(1) 会社概要


1921年5月、竹内鉱業より小松鉄工所を分離独立し設立されました。1949年5月に東京、大阪の両証券取引所に株式を上場しています。その後、海外展開を加速させ、2017年4月には米国ジョイ・グローバル社(現、コマツマイニング)を買収し鉱山機械事業を強化しました。2021年7月にはスマートコンストラクション事業をEARTHBRAINに承継するなど、ソリューションビジネスの展開も進めています。

同社グループは連結従業員数66,697名、単体12,344名の体制で事業を行っています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位はカストディアン(資産管理機関)となっており、機関投資家や信託口が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 18.15%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 7.45%
THE BANK OF NEW YORK MELLON AS DEPOSITARY BANK FOR DEPOSITARY RECEIPT HOLDERS 3.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表者は代表取締役社長CEOの今吉 琢也氏です。取締役9名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
今吉 琢也 代表取締役社長CEO 1987年同社入社。財務部長、経営管理部長、中国総代表などを歴任。2024年専務執行役員、取締役を経て、2025年4月より現職。
小川 啓之 取締役会長 1985年同社入社。生産本部各工場長、調達本部長、生産本部長などを経て、2019年代表取締役社長兼CEOに就任。2025年4月より現職。
堀越 健 代表取締役 1985年同社入社。財務部長、管理部長を経て、2018年CFOに就任。2024年4月より現職。
大橋 徹二 取締役 1977年同社入社。生産本部長などを経て2013年代表取締役社長兼CEO。2019年代表取締役会長、2022年取締役会長を経て、2025年4月より現職。
横本 美津子 取締役 1985年同社入社。総務部長、サステナビリティ推進本部長などを歴任。2025年4月より常務執行役員(人事、教育、安全・健康管理、サステナビリティ管掌)。


社外取締役は、國部 毅(三井住友フィナンシャルグループ取締役会長)、アーサー M. ミッチェル(ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所 外国法事務弁護士)、齋木 尚子(元外務省経済局長・国際法局長)、澤田 道隆(元花王代表取締役社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設機械・車両」「リテールファイナンス」「産業機械他」事業を展開しています。

建設機械・車両事業


油圧ショベル、ホイールローダー、ブルドーザーなどの建設機械や、ダンプトラックなどの鉱山機械、フォークリフト、林業機械、地下建設機械などを製造・販売しています。また、無人ダンプトラック運行システム(AHS)やスマートコンストラクションなどのソリューションビジネスも提供しており、建設・鉱山現場の安全性や生産性向上を支援しています。

収益は、製品や補給部品の販売、およびメンテナンス等のサービス提供に伴う対価として顧客から受け取ります。運営は、親会社である小松製作所のほか、コマツアメリカ、コマツマイニング、コマツドイツ、コマツインドネシアなどの各地の子会社が行っています。

リテールファイナンス事業


建設・鉱山機械の購入者に対し、製品の販売金融を提供しています。具体的には、顧客が機械を購入する際の資金負担を平準化するためのリースや割賦販売などが含まれます。

収益は、顧客からのリース料や割賦販売に伴う金利収入などです。運営は、親会社である小松製作所のほか、コマツビジネスサポート、コマツフィナンシャルパートナーシップ、コマツオーストラリアコーポレートファイナンスなどの子会社が行っています。

産業機械他事業


鍛圧機械(サーボプレス等)、板金機械(レーザー加工機等)、工作機械などの産業機械に加え、防衛関連製品(弾薬、装甲車)、半導体製造用温度制御機器、半導体露光装置用エキシマレーザーなどを製造・販売しています。

収益は、これらの製品の販売およびアフターサービスによる対価として顧客から受け取ります。運営は、親会社である小松製作所のほか、コマツ産機、コマツNTC、ギガフォトンなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで推移しており、直近の2025年3月期には4兆1044億円に達しています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加傾向にあり、利益率も高い水準を維持しています。全体として、事業規模の拡大とともに収益性も向上していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 2兆1895億円 2兆8023億円 3兆5435億円 3兆8651億円 4兆1044億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 1628億円 3246億円 4764億円 5757億円 6048億円
利益率(%) 7.4% 11.6% 13.4% 14.9% 14.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 1062億円 2249億円 3264億円 3934億円 4396億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い営業利益も増加しており、営業利益率は16.0%と高い水準で推移しています。売上原価率や販管費率の大きな変動はなく、安定した収益構造を維持しながら事業拡大を実現していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3兆8651億円 4兆1044億円
営業利益 1349億円 1497億円
営業利益率(%) 3.5% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1105億円(構成比16.8%)、運送費及び荷造費が815億円(同12.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設機械・車両事業は、販売価格の改善や円安の影響などにより増収増益となり、全社の業績を牽引しています。リテールファイナンス事業や産業機械他事業も増収増益となっており、特に産業機械他事業は大幅な増益を達成しています。全セグメントにおいて好調な業績を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設機械・車両 3兆6152億円 3兆7982億円 5740億円 5989億円 15.8%
リテールファイナンス 1035億円 1232億円 242億円 294億円 23.9%
産業機械他 1956億円 2236億円 103億円 274億円 12.3%
その他・消去 △492億円 △407億円 △28億円 78億円 -%
連結(合計) 3兆8651億円 4兆1044億円 6057億円 6635億円 16.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業である営業活動で獲得した現金を、将来のための投資活動へ積極的に回しつつ、借入金の返済などの財務活動も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4348億円 5172億円
投資CF △2044億円 △2107億円
財務CF △1220億円 △3214億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も55.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ものづくりと技術の革新で新たな価値を創り、人、社会、地球が共に栄える未来を切り拓く」ことを存在意義として定義しています。これを実現するため、「品質と信頼性」を追求し、社会とすべてのステークホルダーからの信頼度の総和を最大化することを「経営の基本」としています。

(2) 企業文化


同社は、世界中の社員が共有すべき価値観として「コマツウェイ」を明文化し、浸透を図っています。また、新中期経営計画においては、価値観の一つである「Ambition 挑戦する」を意識し、ステークホルダーと共に新たな価値の創造に果敢に挑戦する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年度から2027年度までの3カ年を対象とする新中期経営計画を策定し、最終年度である2028年3月期に向けて以下の経営目標を掲げています。

* 売上高成長率:業界水準を超える成長率
* 営業利益率:業界トップレベルの利益率
* ROE:10%以上
* フリー・キャッシュ・フロー(FCF):3年累計で1兆円
* ネットD/Eレシオ(リテールファイナンス事業):6倍以下
* 連結配当性向:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画では、「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」を目指す姿と定義しています。成長戦略として、ソリューション開発や自動化を進める「イノベーションによる価値共創」、成長市場での商品力強化やバリューチェーンビジネス拡大による「成長性と収益性の追求」、DX加速などの「経営基盤の革新」の3本柱を掲げ、持続的な成長を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「コマツウェイ」を土台とした人材育成を継続しつつ、事業成長を支える人材の獲得と活躍推進に取り組んでいます。多様な人材が能力を発揮できるダイバーシティ&インクルージョンの推進、グローバルリーダーの育成、多様な能力開発機会の提供、エンゲージメント向上、そしてデジタル人材やオープンイノベーション推進人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 16.9年 8,591,258円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.0%
男性育児休業取得率 63.1%
男女賃金差異(全労働者) 78.5%
男女賃金差異(正規雇用) 79.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品・ソリューション戦略のリスク


市場や社会のニーズに合致した新製品やソリューションを適時に開発・提供できない場合、競争力を失う可能性があります。また、環境規制の強化や気候変動対応のために多額の費用や設備投資が必要となったり、開発・生産・販売活動に支障が生じたりした場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業環境の変動リスク


事業環境や製品需要は、各地域の経済・市場環境、政治・社会情勢等の影響を受けます。先進国市場の景気変動や新興国市場の不安定な要因、予期せぬ経済環境の悪化などが、受注減少や収益性低下を招く可能性があります。また、関税政策による混乱等も経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) サプライチェーンのリスク


素材市況やエネルギー価格の変動、部品・資材の供給不足、調達先の倒産、国際的な物流混乱などが、製造原価の上昇や生産効率の低下、販売機会の喪失につながる可能性があります。これらの要因によるコスト増加や供給制約が長期化した場合、経営成績に不利益な影響を与える可能性があります。

(4) 戦争・テロ・地政学リスク


世界各地での事業展開において、特定地域における社会的、政治的、軍事的な緊張の高まりが事業に影響を及ぼす可能性があります。地政学リスクによる資源価格変動、輸出入規制、サプライチェーンの混乱、金融・経済への影響などが生じた場合、経営成績に不利益な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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