小松製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小松製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小松製作所は東京証券取引所プライム市場に上場し、建設機械や鉱山機械、産業機械などの製造・販売、リテールファイナンス事業をグローバルに展開する企業です。直近の業績では、販売価格の改善等により売上高は増収となったものの、コストの増加や販売量の減少などにより税引前当期純利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社小松製作所の有価証券報告書(第157期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は US GAAP です。

1. 小松製作所ってどんな会社?


建設機械や鉱山機械などの製造・販売を中心に、ソリューションや販売金融も展開するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1921年5月に竹内鉱業より小松鉄工所を分離独立し、小松製作所として設立されました。1949年5月に東京証券取引所・大阪証券取引所に上場を果たしています。その後、海外での合弁事業や子会社設立を進めるとともに、2017年4月には米国ジョイ・グローバル(現コマツマイニング)を買収するなど、グローバルな事業拡大とM&Aを積極的に推進してきました。

現在の従業員数はグループ全体で67,279名、単体で12,435名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位はSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.11%
日本カストディ銀行(信託口) 6.35%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 2.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長CEOは今吉琢也氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
今吉琢也 代表取締役社長CEO 1987年4月同社入社。財務部長、常務執行役員、中国総代表、専務執行役員等を経て、2025年4月より現職。
小川啓之 取締役会長 1985年4月同社入社。コマツアメリカチャタヌガ工場長、生産本部長、代表取締役社長兼CEO等を経て、2025年4月より現職。
草場泰介 代表取締役 1989年4月同社入社。コマツアメリカ社長兼COO、CTO、開発本部長、常務執行役員等を経て、2026年4月より現職。
堀越健 取締役 1985年4月同社入社。欧州コマツ、財務部長、CFO、代表取締役兼専務執行役員等を経て、2026年4月より現職。
横本美津子 取締役 1985年4月同社入社。ギガフォトン総務部長、サステナビリティ推進本部長、常務執行役員等を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、國部毅(元三井住友銀行代表取締役頭取)、アーサー M.ミッチェル(元ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所外国法事務弁護士)、齋木尚子(元外務省経済局長)、澤田道隆(元花王代表取締役社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設機械・車両」「リテールファイナンス」「産業機械他」の事業を展開しています。

建設機械・車両

掘削機械、積込機械、運搬機械、林業機械、地下鉱山機械などの製品開発、生産、販売、サービスを提供しています。また、スマートコンストラクションや無人ダンプトラック運行システム(AHS)などのソリューションビジネスも展開し、現場の最適化を図っています。

建設・鉱山機械などの製品販売、部品販売、各種ソリューションサービスの提供から収益を得ています。同社やコマツアメリカ、コマツマイニング、欧州コマツ、小松(中国)投資有限公司など多数の連結子会社が運営を行っています。

リテールファイナンス

建設機械や鉱山機械を購入する顧客に対し、一時的な資金負担を平準化する目的で、販売型リースや割賦などの販売金融サービスを提供しています。

顧客への割賦販売や販売型リースに伴う利息収益、およびオペレーティングリース収益を得ています。同社やコマツビジネスサポート、コマツフィナンシャルパートナーシップ、コマツフィナンシャルヨーロッパなどが運営を行っています。

産業機械他

鍛圧機械、板金機械、工作機械、温度制御機器などの産業機械に加え、半導体露光装置用エキシマレーザーなどの製品の研究開発、製造、販売、サービスを行っています。

自動車産業向けの大型プレスや半導体産業向けのエキシマレーザーなどの製品販売およびメンテナンスサービス等から収益を得ています。同社やコマツ産機、コマツNTC、ギガフォトンなどが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が堅調に拡大を続けています。税引前利益は4期連続で増益を達成した後、直近の期間ではコスト増加などの影響を受けて減益に転じました。利益率も11%台から14%台へと上昇基調にありましたが、直近では13.0%となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 28023億円 35435億円 38651億円 41044億円 41328億円
税引前利益 3246億円 4764億円 5757億円 6048億円 5373億円
利益率(%) 11.6% 13.4% 14.9% 14.7% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2249億円 3264億円 3934億円 4396億円 3764億円

(2) 損益計算書


売上高は4兆円規模で推移しており、直近の期間では増収となったものの、営業利益は減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 41044億円 41328億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 1497億円 1150億円
営業利益率(%) 3.6% 2.8%


売上高に対して売上原価が28729億円(構成比70%)、販売費及び一般管理費が6887億円(同17%)を占めており、販売費及び一般管理費のうち研究開発費が1212億円となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設機械・車両事業は販売価格の改善等で売上を維持しましたが、コスト増加や販売量減少により減益となりました。一方、リテールファイナンス事業と産業機械他事業は増収増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設機械・車両 37875億円 37961億円 5989億円 4911億円 12.9%
リテールファイナンス 962億円 1005億円 294億円 366億円 29.0%
産業機械他 2207億円 2361億円 274億円 379億円 15.9%
消去又は全社 - - 78億円 55億円 -
連結(合計) 41044億円 41328億円 6635億円 5712億円 13.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5172億円 4490億円
投資CF -2107億円 -1992億円
財務CF -3214億円 -2085億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も54.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ものづくりと技術の革新で新たな価値を創り、人、社会、地球が共に栄える未来を切り拓く」ことを存在意義として定義し、これを実現するための基本的な考え方として、「品質と信頼性」を追求し、社会とすべてのステークホルダーからの信頼度の総和を最大化することを経営の基本としています。

(2) 企業文化


社員の行動指針として「Safety & Health(安全衛生・健康)、L(コンプライアンス)、Q(品質)、D(納期)、C(コスト)」を掲げ、安全衛生と健康をすべてに優先しています。また、文化や習慣の異なる全世界の社員が共有すべき価値観を「コマツウェイ」として行動様式で表現し、浸透を図っています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画において、財務項目などの経営目標を掲げています。

・ROE:10%以上
・フリー・キャッシュ・フロー(FCF):3年累計1兆円(M&A関連の支出を除く)
・リテールファイナンス事業ROA:1.5%~2.0%
・ネットD/Eレシオ:6倍以下
・連結配当性向:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」をありたい姿と再定義し、イノベーションによる価値共創、成長性と収益性の追求、経営基盤の革新に取り組んでいます。電動化、自動化・遠隔化技術の開発や、スマートコンストラクション等の高度化を通じて、顧客価値の最大化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を新しい価値を生み出す重要な経営資源と位置づけ、経営戦略と連動した人的資本投資を推進しています。「グローバルに多様な人材が一つのチームとして、事業の成長に貢献できる環境の実現」というグローバル人事方針のもと、心身共に安全な職場の実現やダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.7歳 17.1年 9,024,576円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.2%
男性育児休業取得率 67.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.0%
男女賃金差異(有期労働者等) 68.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(グローバル)(17.0%)、女性管理職比率(グローバル)(14.0%)、障がい者雇用率(2.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 戦争・テロ・地政学リスク

グローバルに事業を展開しており、特定地域における社会的、政治的、軍事的な緊張の高まりは事業へ影響を及ぼす可能性があります。多様化する地政学リスクがもたらす資源価格の変動や輸出入規制、サプライチェーンへの影響などが生じた場合、業績に影響を与えるリスクがあります。

(2) 製品・ソリューション戦略

厳しくなる各国の環境規制や気候変動へ対応するため、研究開発等に多くの資源を投入しています。顧客ニーズに合致した製品を適切な時期に開発できない場合や、環境規制への対応のためにさらなる費用や設備投資が必要となった場合、市場競争力の低下や業績への悪影響が生じるリスクがあります。

(3) 事業環境

地域により異なる経済・市場環境や政治・社会情勢により需要が変動します。先進国市場におけるインフラ投資や民間設備投資の動向、新興国市場における資源需要や資源価格の変動、通貨価値の急激な変動など、予期せぬ事業環境の悪化が売上高の減少や収益性の低下につながるリスクがあります。

(4) サプライチェーン

鋼材などの素材価格やエネルギー価格の高騰は、製造原価の増加をもたらします。また、部品・資材の品薄や調達先の倒産、国際輸送の混乱などにより適時の調達・生産が困難となり、生産効率の低下や販売機会を逸するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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