アイダエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイダエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場上場のアイダエンジニアリングは、プレス機械や自動搬送装置などの鍛圧機械の製造・販売・サービスを主力として展開しています。直近の業績では、サービス売上の増加や米国子会社の買収等により増収となり、事業ミックスの改善等も寄与して営業利益も増加する増収増益を達成しました。


※本記事は、アイダエンジニアリング株式会社の有価証券報告書(第91期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイダエンジニアリングってどんな会社?


アイダエンジニアリングは、金属加工に欠かせないプレス機械や成形システムの製造・販売・サービスをグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1917年3月に会田鉄工所として創業し、1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。1970年には現在のアイダエンジニアリングへ社名変更し、1972年以降は米国をはじめカナダ、アジア、欧州、中国などに子会社を設立して海外展開を推進してきました。2025年には米国の自動化・搬送装置メーカーであるHMS Products Co.およびDallas Industriesを買収し、グローバルでの自動機供給体制を強化しています。

現在の従業員数は連結で2,042名、単体で804名です。株主構成は、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は同じく日本カストディ銀行(信託E口)、第3位は保険業務を行う第一生命保険となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.16%
日本カストディ銀行 (信託E口) 7.34%
第一生命保険 4.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)を務めるのは鈴木利彦氏です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木利彦 代表取締役社長最高経営責任者(CEO)開発本部長 2011年同社入社。技術本部長、営業本部長、生産本部長などを経て、2023年4月より現職。
会田仁一 代表取締役会長 1976年同社入社。代表取締役社長、最高経営責任者(CEO)、開発本部長などを歴任し、2018年6月より現職。
鵜川裕光 取締役常務執行役員管理本部長 みずほコーポレート銀行等を経て2014年同社入社。管理本部長等を歴任し、2022年6月より現職。
米内山純一 取締役執行役員営業本部長グローバル事業本部長 東京三洋電機等を経て1996年同社入社。欧州子会社社長等を経て、2025年7月より現職。


社外取締役は、五味廣文(元金融庁長官)、望月幹夫(元IHI常務執行役員)、井口功(元三菱電機専務執行役)、角紀代恵(立教大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国」「アジア」「米州」「欧州」および「その他」事業を展開しています。

日本


アイダエンジニアリングが主体となり、国内において汎用プレス機や高速プレス機などのプレス機械と関連設備の製造・販売・サービスを提供しています。自動車や電機業界などの顧客が主要な対象です。

収益は、顧客へのプレス機械本体の販売代金や、修理・メンテナンス、サービスパーツの販売費用等から得ています。運営は主にアイダエンジニアリングが行っています。

中国


中国市場において、プレス機械の製造・販売および修理やメンテナンスなどの関連サービスを提供しています。

収益は、現地でのプレス機械販売や関連するアフターサービス料金から獲得しています。運営は主に製造を担う会田鍛圧机床有限公司と、販売・サービスを担う会田工程技術有限公司が行っています。

アジア


マレーシアやシンガポール、タイなどのアジア地域でプレス機械の製造・販売およびアフターサービスを展開しています。

収益は、顧客への機械販売やメンテナンス費用から得ています。運営は、製造を担うアイダマニュファクチャリング(アジア) SDN.BHD.や、販売・サービスを担うアイダグレイターアジア PTE.LTD.などが各国で行っています。

米州


米国を中心とした米州地域において、プレス機械の製造・販売および修理・メンテナンスなどのサービスを提供しています。

収益は、現地市場での機械本体の販売やサービス提供への対価として獲得しています。運営はアイダアメリカ CORP.をはじめ、アイダカナダ ,INC.などの子会社が行っています。

欧州


イタリアを中心とする欧州地域において、プレス機械の製造・販売および関連サービスを提供しています。

収益は、顧客への機械販売および修理などの役務提供により得ています。運営は、製造や販売を担うアイダ S.r.l.のほか、ドイツやモロッコ等の販売・サービス子会社が行っています。

その他


各地域の報告セグメントに含まれない事業として、自動化・搬送装置や産業機械用駆動装置の製造・販売を展開しています。

収益は、関連機器の販売等から獲得しています。運営は、産業機械用駆動装置を扱うREJや、米国の自動化・搬送装置メーカーであるHMS Products Co.およびDallas Industriesが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。利益面では一時的な減益を経たのち、直近は連続して増加し、安定した収益性を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 625億円 688億円 727億円 760億円 786億円
経常利益 24億円 17億円 36億円 56億円 57億円
利益率(%) 3.9% 2.5% 4.9% 7.3% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 13億円 13億円 41億円 44億円

(2) 損益計算書


直近の2期間では、増収に伴い売上総利益が増加し、粗利率も改善しています。販売費及び一般管理費は増加したものの、営業利益も堅調に推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 760億円 786億円
売上総利益 160億円 175億円
売上総利益率(%) 21.1% 22.3%
営業利益 55億円 57億円
営業利益率(%) 7.3% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が35億円(構成比30%)、賞与引当金繰入額が4.5億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


米州セグメントはプレス機とサービス売上の増加および米国子会社の買収等により大幅な増収となりましたが、日本や中国、欧州セグメントは汎用プレス機や高速プレス機の売上減少などにより減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 265億円 260億円
中国 106億円 98億円
アジア 72億円 75億円
米州 180億円 218億円
欧州 137億円 136億円
連結(合計) 760億円 786億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 65億円 82億円
投資CF -18億円 -19億円
財務CF -38億円 -44億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「成形が価値創造を生む社会へ」というパーパスを掲げ、「社会的価値と経済的価値のトレードオンを目指す」ことをビジョンとしています。金属など各種素材に対応する独創的な成形システムの提供を通じ、人と社会への貢献を実現することを基本姿勢としています。

(2) 企業文化


「品質にこだわりを」というバリュー(共有する価値観、AIDAらしさ)を掲げています。働く楽しさや歓びを日常生活の一部として感じられる「ワーク・イン・ライフ」思考へのマインド変革を図り、社員が企業と共に成長できる環境づくりを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2030年度までの新たな中期経営計画「AIDA Growth 30」をスタートさせています。

* 売上高:900億円
* 営業利益:81億円

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画では、プレス事業のコア・コンピタンス強化やFA事業の拡大、人的資本経営などの6つの成長戦略を推進します。高速プレス生産の集約やAIを活用したシステムの知能化、DX人財の育成などに取り組み、環境負荷低減と生産性向上を実現します。

* 目標ROE:8%以上
* DOE(株主資本配当比率):3%以上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人財こそが最も重要な財産であると位置づけ、「ワーク・ライフ・バランス」から「ワーク・イン・ライフ」へのマインド変革を図るための環境整備を進めています。多様な人財が専門性や能力を最大限に発揮できる職場づくりと、リスキリングなどの人財育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 15.6年 6,379,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.9%
男女賃金差異(正規雇用) 70.1%
男女賃金差異(パート・有期) 58.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇の取得率(62.5%)、正社員採用者数に占める女性割合(21.1%)、海外従業員比率(51.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際的活動及び海外進出について


米州、欧州、中国などグローバルに事業を展開しているため、予期しない法規制の変更や為替相場の変動、社会的混乱などが生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自動車産業への依存度について


同社グループの自動車産業向けの製品売上高は全体の4分の3以上を占めています。そのため、自動車業界の好不況や設備投資動向が変化した場合、業績に重要な影響を与える可能性があります。

(3) 製品の品質保証について


世界各国の工場で品質管理基準に従い製造していますが、製品の欠陥による大規模なリコールや製造物賠償責任が発生した場合、多額のコスト負担や信用の低下等により業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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