日揮ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日揮ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日揮ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、総合エンジニアリング事業と機能材製造事業を展開しています。直近の業績では、新規案件受注の後ろ倒し等により減収となったものの、国内外の大型プロジェクトの着実な工事遂行により採算が改善し、営業利益は黒字転換、経常利益は大幅な増益を達成しました。


※本記事は、日揮ホールディングスの有価証券報告書(第130期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日揮ホールディングスってどんな会社?


同社は、国内外でプラントなどの総合エンジニアリング事業と機能材製造事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1928年に日本揮発油として創立されました。1952年に触媒製造工場を分離して日揮化学を設立し、1962年に東京証券取引所へ上場しました。1976年に日揮へ社名変更した後、2019年に持株会社体制へ移行し、現在の日揮ホールディングスとなりました。

現在の従業員数は連結で8,154名、単体で245名です。大株主の状況としては、筆頭株主および第2位の株主として資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、第3位には関係会社である日揮商事が位置しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.46%
日本カストディ銀行(信託口) 10.50%
日揮商事 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役会長兼社長Chief Executive Officerは佐藤雅之が務めており、取締役8名のうち社外取締役が4名(50.0%)を占めています。

氏名 役職 主な経歴
佐藤雅之 代表取締役会長兼社長Chief Executive Officer 1979年同社入社。取締役CFOや代表取締役会長を経て、2017年代表取締役会長CEOに就任。2025年4月より現職。
寺嶋清隆 代表取締役副社長執行役員Chief Financial Officer 1981年同社入社。コンプライアンス室長や管理部長等を経て、2018年取締役専務執行役員CFOに就任。2025年4月より現職。
石川正樹 取締役 1985年通商産業省(現経済産業省)入省し、貿易経済協力局長等を歴任。2021年同社執行役員に就任し、2024年6月より現職。
山田昇司 取締役 1983年同社入社。2019年に日揮の代表取締役社長執行役員に就任。2021年6月より同社取締役に就任し、2025年4月より日揮グローバル代表取締役社長執行役員を務める。


社外取締役は、松島正之(元日本銀行理事)、八尾紀子(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)、三島愼次郎(元ジャパンマリンユナイテッド代表取締役社長)、平野未来(シナモン代表取締役社長CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合エンジニアリング事業」「機能材製造事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 総合エンジニアリング事業


石油、石油化学、ガス、LNG、一般化学、原子力、環境保全などに関する装置、設備および施設の計画、設計、調達、建設、試運転役務といったEPCビジネスを提供しています。主な顧客は国内外のエネルギー関連企業や化学メーカーなどです。

顧客から各種プラントや施設の設計・調達・建設に対する契約対価を受け取ります。運営は主に日揮グローバル、日揮などの同社グループ会社が行っています。

(2) 機能材製造事業


触媒分野、ナノ粒子技術分野、電子材料・高性能セラミックス分野などで機能材の製造および販売を行っています。石油精製用触媒や半導体・フラットパネルディスプレイ向けの機能性素材などを幅広く提供しています。

各分野の製品を顧客に販売することで収益を得ています。触媒やナノ粒子技術分野は日揮触媒化成や日揮ユニバーサル、電子材料・高性能セラミックス分野は日本ファインセラミックスなどがそれぞれ事業を展開しています。

(3) その他の事業


総合エンジニアリング事業および機能材製造事業以外の事業領域であり、機器調達、コンサルティング、水処理事業、発電・造水事業などのサービスを提供しています。

各分野でのサービス提供や製品販売を通じて収益を得ています。機器調達は日揮商事、コンサルティングは日本エヌ・ユー・エス、水処理事業は水ingなどがそれぞれ運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向で推移していましたが、直近の期では減収となっています。一方、経常利益は変動が大きく、前々期から前期にかけて落ち込んだものの、当期は大幅に回復し高い水準を記録しています。最終的な当期利益については赤字の期も散見されており、収益性の安定化が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,284億円 6,069億円 8,326億円 8,581億円 7,453億円
経常利益 300億円 506億円 4億円 113億円 582億円
利益率(%) 7.0% 8.3% 0.0% 1.3% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -532億円 24億円 171億円 -11億円 -42億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から減少したものの、売上総利益は大幅に増加し、売上総利益率も大きく改善しています。これに伴い、営業利益も前期の赤字から黒字へと転換しており、本業の収益性が大幅に向上したことが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8,581億円 7,453億円
売上総利益 189億円 641億円
売上総利益率(%) 2.2% 8.6%
営業利益 -115億円 354億円
営業利益率(%) -1.3% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が132億円(構成比46%)、研究開発費が73億円(同25%)を占めています。また、提出会社単体の売上原価においては、外注費が77億円(構成比45%)、材料費が74億円(同44%)を占めています。

(3) セグメント収益


報告セグメントごとの売上高を見ると、主力である総合エンジニアリング事業は前期と比較して減収となっています。一方、機能材製造事業やその他の事業は前期からわずかに増加しており、堅調な推移を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
総合エンジニアリング事業 7,950億円 6,796億円
機能材製造事業 546億円 570億円
その他の事業 85億円 87億円
連結(合計) 8,581億円 7,453億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえるキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 468億円 799億円
投資CF -212億円 -148億円
財務CF -150億円 -110億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.2%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念として「JGC's Purpose and Values」を定めています。パーパス(存在意義)として「Enhancing planetary health」を掲げ、人と地球の健やかな未来づくりに貢献することを目指しています。また、価値観として「挑戦」「創造」「結集」「完遂」の4つの力を定め、「尊重」と「誠実」の2つの誓いを企業活動の拠り所としています。

(2) 企業文化


同社の企業文化は、企業理念の「Values」に根ざしています。「すべての人を尊重し安全を優先する」という尊重の姿勢と、「高い倫理観を持ち誠実に行動する」という誠実さを重視しています。これらの価値観を共有することで、役員や従業員一人ひとりが公正で透明性の高い企業活動を推進し、持続的な成長を実現するための組織風土が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年度から2030年度を対象とする新中期経営計画「BSP2030」を策定し、「深耕の5年」と位置付けています。次なる成長基盤の構築を目指し、以下の財務目標を掲げて経営を推進しています。

- 営業利益:600億円
- 当期純利益:500億円
- ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、新中期経営計画において3つの重点戦略を掲げています。具体的には、EPCビジネスの遂行体制強化やデジタル技術を活用した「総合エンジニアリング事業の持続的な競争力強化」、半導体関連市場での販売拡大を目指す「機能材製造事業の成長加速」、そして新たな事業分野を開拓する「ソリューションビジネスの拡充」です。これらを実現するため、期間中に総額2,800億円の成長投資を計画しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、2030年時点の目指す組織像を「統合力で未来を切り拓きやり遂げるプロ集団」と定め、「自ら変化を起こし続ける人財」の輩出を目指しています。その実現に向け「人財グランドデザイン2030」を策定し、多様な人材の採用や自律成長を促す人材開発、エンゲージメントの向上などを推進しています。また、多様な人材が活き活きと働ける環境づくりにも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 12.8年 9,749,814円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 61.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 69.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理監督者数(63名)、休業災害度数率(0.027)、記録災害度数率(0.13)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) プロジェクトの受注及び遂行に関するリスク


同社の主力である総合エンジニアリング事業は、契約締結から引き渡しまで複数年を要する大規模プロジェクトを扱います。政治・社会情勢の変化や顧客事情による計画変更、中止、延期が発生した場合、代金回収やプロジェクトの採算が悪化し、業績に影響を与える可能性があります。

(2) カントリーリスク


同社は海外の国や地域で事業を展開しており、政情不安、テロ、内乱、経済制裁などのカントリーリスクにさらされています。これらの事象が顕在化した場合、建設工事の遅延や資機材調達の遅れを招き、プロジェクトの採算悪化や機能材製造事業における販売機会の喪失が生じる恐れがあります。

(3) 工事従事者の不足、賃金高騰リスク


プラント建設国における他の建設工事の急増や海外労働者規制などにより工事従事者が不足した場合、賃金の高騰や建設工事の遅延が生じる可能性があります。これにより建設工事費用が増加し、プロジェクトの採算が悪化することで、同社グループの業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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