日揮ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日揮ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、総合エンジニアリング事業と機能材製造事業を主軸としています。2025年3月期の業績は増収ながらも営業損失、経常利益は大幅増益、当期純損失となりましたが赤字幅は縮小しています。


※本記事は、日揮ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第129期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日揮ホールディングスってどんな会社?


エネルギーやインフラ分野のプラント建設などを行う総合エンジニアリング事業と、触媒などの機能材製造事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1928年に日本揮発油として設立され、米国UOP社との提携で技術基盤を確立しました。1962年に東証二部上場、1969年に一部指定を経て、1976年に日揮へ改称しました。2019年には持株会社体制へ移行し、日揮ホールディングスへと商号変更。2022年に東証プライム市場へ移行しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は8,365名、単体従業員数は248名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位はグループ会社の日揮商事です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 18.29%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 12.15%
日揮商事株式会社 5.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表者の役職は代表取締役会長兼社長Chief Executive Officerで、佐藤雅之氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 雅之 代表取締役会長兼社長Chief Executive Officer 1979年入社。CFOや経営統括本部長などを歴任し、2014年代表取締役会長、2017年よりCEOを兼務。2025年4月より現職。
寺嶋 清隆 代表取締役副社長執行役員Chief Financial Officer 1981年入社。法務・コンプライアンス統括室長などを経て、2018年よりCFO。2020年取締役副社長執行役員。2023年日揮コーポレートソリューションズ社長就任。2025年4月より現職。
石川 正樹 取締役 1985年通商産業省入省。貿易経済協力局長などを歴任。2021年同社執行役員、2022年常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
山田 昇司 取締役 1983年入社。2019年日揮社長執行役員。2021年より同社取締役。2025年4月より日揮グローバル代表取締役社長執行役員。


社外取締役は、松島正之(元日本銀行理事)、八尾紀子(TMI総合法律事務所パートナー)、三島愼次郎(元ジャパンマリンユナイテッド社長)、平野未来(株式会社シナモン代表取締役社長CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合エンジニアリング事業」「機能材製造事業」および「その他の事業」を展開しています。

総合エンジニアリング事業


石油、ガス、LNG、化学、原子力、再生可能エネルギー、医薬品、医療、環境保全などに関する装置・設備の計画、設計、調達、建設、試運転役務等のEPCビジネスを提供しています。世界各地のエネルギーやインフラ開発を顧客としています。

収益は、プラントや施設の建設工事請負契約に基づく対価が主となります。運営は、主に海外事業を担う日揮グローバル、国内事業を担う日揮などが担当しています。

機能材製造事業


石油精製・石油化学用触媒、電子材料、ファインセラミックス製品などを製造・販売しています。触媒分野、ナノ粒子技術分野、クリーン・安全分野、電子材料・高性能セラミックス分野、次世代エネルギー分野など多岐にわたります。

収益は、各種触媒や機能性素材、セラミックス製品などの販売対価が主となります。運営は、主に日揮触媒化成や日本ファインセラミックスなどが担当しています。

その他の事業


機器調達、コンサルティング、オフィスサポート、原油・ガス生産販売、水処理、発電・造水、FPSO保有・傭船、SAF製造事業などを行っています。

収益は、機器販売、コンサルティング料、原油・ガス販売収入、水処理・発電事業からの収入などです。運営は、日揮商事、日本エヌ・ユー・エス、日揮ビジネスサービス、水ing、SAFFAIRE SKY ENERGYなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期から2025年3月期にかけて大幅に増加しており、特に2023年3月期以降の伸びが顕著です。利益面では、2022年3月期に大きな損失を計上した後、2023年3月期は黒字回復しましたが、2024年3月期以降は再び利益率が低迷し、2025年3月期は当期純損失となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,340億円 4,284億円 6,069億円 8,326億円 8,581億円
経常利益 255億円 300億円 506億円 4億円 113億円
利益率(%) 5.9% 7.0% 8.3% 0.0% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 51億円 -356億円 307億円 -78億円 -4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は低い水準で推移しています。2025年3月期は売上総利益が増加したものの、販売費及び一般管理費の負担が重く、営業損失を計上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,326億円 8,581億円
売上総利益 107億円 189億円
売上総利益率(%) 1.3% 2.2%
営業利益 -190億円 -115億円
営業利益率(%) -2.3% -1.3%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が141億円(構成比46%)、研究開発費が76億円(同25%)を占めています。売上原価には工事損失引当金戻入額139億円が含まれています。

(3) セグメント収益


総合エンジニアリング事業は海外大型プロジェクトの進捗により増収となりましたが、一部プロジェクトの採算悪化によりセグメント損失となりました。機能材製造事業は半導体市場の回復等により増収増益でした。その他の事業も増収増益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
総合エンジニアリング 7,731億円 7,950億円 -221億円 -146億円 -1.8%
機能材製造 520億円 546億円 73億円 82億円 15.0%
その他 75億円 85億円 20億円 24億円 28.4%
調整額 -40億円 -40億円 -62億円 -75億円 -
連結(合計) 8,326億円 8,581億円 -190億円 -115億円 -1.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであることから、本業で稼いだ資金で投資や借入返済を行っている健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 111億円 468億円
投資CF -202億円 -212億円
財務CF -89億円 -150億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、存在意義(パーパス)として「Enhancing planetary health」を掲げています。これは、人と地球の健やかな未来づくりに貢献することを目指すものです。これを実現するための価値観(Values)とともに「JGC's Purpose and Values」を制定し、企業活動の軸としています。

(2) 企業文化


同社グループ共通のValues(価値観)として、4つのちから「挑戦」「創造」「結集」「完遂」を定め、さらに「尊重」「誠実」を2つの誓いとして明らかにしています。これに基づき、高い倫理観を持ち、安全を優先しながら、多様な人々を尊重し、誠実に行動することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025(BSP2025)」において、2025年度の財務目標を掲げています。しかし、複数の海外プロジェクトでの損失引当等の影響により、利益目標の達成は困難な状況と認識しています。
* 売上高:8,000億円
* 営業利益:600億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:450億円
* 自己資本利益率(ROE):10%

(4) 成長戦略と重点施策


「EPC事業のさらなる深化」「高機能材製造事業の拡大」「将来の成長エンジンの確立」を重点戦略としています。EPC事業では大型プロジェクトの収益力強化や成長市場への拡大を図ります。機能材製造事業では製品ラインナップ拡充や生産能力増強を進め、将来の成長エンジンとしてエネルギートランジションや資源循環分野等のビジネス確立に取り組みます。
* 2025年度の海外大型EPCプロジェクト売上高目標:3,500億円
* 2025年度の成長市場・分野におけるEPC事業売上高目標:3,000億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


2030年時点の組織像「統合力で未来を切り拓きやり遂げるプロ集団」の実現に向け、「人財グランドデザイン2030」を策定しています。若手社員の早期戦力化、キャリア採用者の定着支援、多様な人材の能力発揮を促す「Inclusion & Diversity」の推進などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 12.3年 9,306,344円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 77.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.2%
男女賃金差異(正規) 60.3%
男女賃金差異(非正規) 36.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、休業災害度数率(LTIR)(0.034)、記録災害度数率(TRIR)(0.23)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) プロジェクトの受注及び遂行に関するリスク


総合エンジニアリング事業では、契約から引渡しまで長期間を要する大規模プロジェクトを遂行します。その間の情勢変化や顧客状況の変化による計画変更、中止等が発生した場合、採算が悪化する可能性があります。また、ジョイントベンチャーにおけるパートナー企業の不履行等が追加費用発生につながるリスクもあります。

(2) カントリーリスク


海外での事業展開において、政情不安、戦争、テロ、経済政策の急変等のカントリーリスクが存在します。これらが顕在化した場合、プロジェクトの遅延や中止、売上債権の回収困難等が発生し、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、貿易保険の利用や安全対策の強化等で対応しています。

(3) 自然災害・疫病等に関するリスク


事業活動を行う地域で想定を超える自然災害や感染症の流行が発生した場合、プロジェクトの中断や遅延、事業所の操業停止等が生じる可能性があります。これにより採算悪化や生産能力低下が発生し、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、対応手順の規定化や防災訓練等を実施しています。

(4) 為替変動リスク


海外売上高の多くが外貨建て契約であるため、急激な為替変動が受注、売上、損益に影響を与える可能性があります。これに対し、複数通貨建て契約の締結、海外調達、為替予約等の対策を実施し、リスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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