※本記事は、アマノ株式会社 の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アマノってどんな会社?
「人と時間」「人と空気」をテーマに、就業情報システムや駐車場ゲート、集塵機などで高いシェアを持つニッチトップ企業です。
■(1) 会社概要
1945年に横浜機器として設立され、タイムレコーダーの製造を開始しました。1961年に東証二部に上場し、1966年に現社名へ変更、翌年には東証一部へ上場しました。1990年代初頭には米国企業を買収し海外展開を加速させ、2002年には武蔵電機製作所を買収し清掃機器事業を強化しました。近年はソフトウェアやクラウドサービスへの転換を進めています。
同グループは連結5,541名、単体1,957名の従業員を擁するグローバル企業です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業者の天野修一氏が設立した公益財団法人天野工業技術研究所です。安定した株主構成のもと、堅実な経営体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.92% |
| (公財)天野工業技術研究所 | 8.43% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長は津田博之氏、代表取締役社長は山﨑学氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 津田 博之 | 取締役会長代表取締役 | 1982年入社。関東・中部営業本部長、アマノマネジメントサービス社長、事業総括などを歴任し、2017年より代表取締役社長。2023年4月より現職。 |
| 山﨑 学 | 取締役社長代表取締役 | 1986年入社。総合企画本部長、時間情報事業本部長、アマノ USA ホールディングス会長兼社長、管理総括などを経て、2023年4月より現職。 |
| 秦 芳彦 | 取締役兼常務執行役員営業総括兼事業総括兼国内グループ会社管掌 | 1987年入社。パーキング事業本部長、アマノマネジメントサービス社長、アマノUSAホールディングス副社長などを歴任。2023年4月より現職。 |
| 生駒 進 | 取締役兼常務執行役員海外総括兼海外グループ会社管掌兼アマノUSAホールディングスInc.社長 | 1986年入社。シー・エス・ジェー社長、時間情報事業本部長、クレオ専務取締役などを経て、2025年4月より現職。 |
| 多造 藤徳 | 取締役兼執行役員製造総括兼開発総括 | 1987年入社。開発本部副本部長、イノベーション開発部長、開発本部長、商品開発本部長などを歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、大森通伸(元東京税関長)、渡邉寿美恵(元第一生命保険執行役員)、田村恵子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「時間情報システム事業」および「環境関連システム事業」を展開しています。
■(1) 時間情報システム事業
就業情報システム、給与計算システム、タイムレコーダー等の時間管理機器、および駐車場・駐輪場管理システムを提供しています。オフィスや工場、商業施設など幅広い顧客に対し、労務管理の効率化や駐車場運営の省力化・収益化を支援する製品・サービスを展開しています。
収益は、製品の販売代金に加え、ソフトウェアの保守契約料、クラウドサービスの利用料、駐車場の運営管理受託による手数料などから得ています。運営は主にアマノが行い、情報処理業務等はアマノビジネスソリューションズ、駐車場運営管理はアマノマネジメントサービス等が担っています。海外ではアマノシンシナティなどが展開しています。
■(2) 環境関連システム事業
工場向けの集塵機、粉粒体空気輸送システム、脱臭システム等の環境システムと、業務用掃除機、自動床洗浄機、清掃ロボット等のクリーンシステムを提供しています。製造現場の環境改善やビルメンテナンス業界における清掃作業の効率化・自動化に貢献する製品群です。
収益は、機器およびシステムの販売代金、消耗品の販売、メンテナンスサービス料、エンジニアリング料などから得ています。運営は主にアマノが行い、清掃機器の製造はアマノ武蔵電機、清掃業務の請負等はアマノマネジメントサービスが行っています。米国ではアマノパイオニアエクリプスが展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に右肩上がりで推移しており、特に直近2期は増収傾向が顕著です。利益面でも、経常利益・当期利益ともに増加基調にあり、売上高の伸長に伴って利益率も改善しています。コロナ禍からの回復に加え、製品・サービスの競争力強化が業績拡大に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,136億円 | 1,184億円 | 1,328億円 | 1,529億円 | 1,754億円 |
| 経常利益 | 110億円 | 139億円 | 170億円 | 209億円 | 246億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 11.8% | 12.8% | 13.6% | 14.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 72億円 | 97億円 | 113億円 | 131億円 | 178億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率も改善しており、収益性が高まっています。販管費は増加しているものの、増収効果がそれを上回っており、本業の儲けを示す営業利益はしっかりと確保されています。効率的な事業運営が継続されていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,529億円 | 1,754億円 |
| 売上総利益 | 689億円 | 789億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.1% | 45.0% |
| 営業利益 | 196億円 | 230億円 |
| 営業利益率(%) | 12.8% | 13.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が247億円(構成比44%)、賞与引当金繰入額が24億円(同4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに増収増益となりました。主力の時間情報システム事業は売上・利益ともに大きく伸長し、全社の成長を牽引しています。環境関連システム事業も堅調に推移し、増収増益に貢献しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 時間情報システム事業 | 1,168億円 | 1,358億円 | 190億円 | 228億円 | 16.8% |
| 環境関連システム事業 | 360億円 | 396億円 | 45億円 | 45億円 | 11.4% |
| 調整額 | - | - | -40億円 | -43億円 | - |
| 連結(合計) | 1,529億円 | 1,754億円 | 196億円 | 230億円 | 13.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入返済や配当支払いを行いながら、必要な投資も実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 238億円 | 247億円 |
| 投資CF | -102億円 | -42億円 |
| 財務CF | -182億円 | -174億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「人と時間」「人と空気」の分野で新しい価値を創造し、安心・快適で健全な社会の実現に貢献することを経営理念としています。この理念のもと、全てのステークホルダーに信頼され評価される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来のハードウェアメーカーとしての基盤に加え、市場ニーズの変化に対応し、ソフトウェアやサービスを含めたトータルソリューションを提供する企業へと変革を続ける文化があります。「100年企業への4th Stage」をコンセプトに掲げ、サステナブル経営につながるパラダイムシフトに取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2023年4月から2026年3月までの「第9次中期経営計画」を推進しており、最終年度の数値目標を以下の通り設定しています。
* 売上高:1,800億円
* 営業利益:245億円
* ROE:12%
■(4) 成長戦略と重点施策
「100年企業への4th Stage」をコンセプトに、各事業分野でのDX推進、ソフト系資産やAI等への投資、標準品の機能拡充による競争優位性の強化を図ります。また、人的資本の価値最大化や環境負荷低減といった社会課題の解決にも取り組みます。
* 情報システムのソフト・クラウド事業の拡大
* データセンターを核としたパーキングシステムのシステム提案・運営受託事業の強化
* クリーンシステムのロボット+クラウド事業の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期経営ビジョンに基づき、人的資本の価値最大化を重要課題としています。主体的に考え行動する自律型人材や、高い専門性を持つプロフェッショナル人材の育成を目指し、リスキリングや能力開発を支援します。また、多様性を活かす職場環境の構築やウェルビーイング経営を推進し、個性を尊重し合う風土づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.7歳 | 19.2年 | 7,285,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.4% |
| 男性育児休業取得率 | 56.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 38.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員に占める管理職比率(6.0%)、健康診断受診率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境等の変化による収益への影響
同社グループの業績は時間情報システム事業への依存度が高く、売上高の約75%、営業利益の約78%を占めています。異業種や強力な競争相手の参入により市場優位性が低下した場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。これに対し、競争力のある商品開発やサポート体制の強化を図っています。
■(2) 為替相場の変動
グローバルな事業展開を行っているため、海外での取引を円換算する際に為替変動の影響を受けます。これに対し、必要に応じて為替予約等の実施を検討し、リスク低減に努めています。
■(3) 情報セキュリティ
クラウドビジネス等で顧客の機密情報や個人情報を取り扱っているため、サイバー攻撃等による漏洩が発生した場合、信用低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、情報セキュリティ管理委員会を設置し、暗号化や社員教育等の安全管理措置を徹底しています。
■(4) 海外展開
北米・欧州・アジア等で事業を展開しており、現地の法令変更、政治変動、テロ等の発生により業務不能となるリスクがあります。これに対し、情報収集や四半期ごとの海外グループ会社経営会議での状況確認を行い、リスク低減に努めています。



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