ジェイテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場しており、自動車部品、軸受、工作機械の製造販売を主要事業としています。直近の連結業績は、売上収益が1兆8,844億円で前期比微減となり、事業利益および当期利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社ジェイテクトの有価証券報告書(第125期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ジェイテクトってどんな会社?


自動車のステアリングシステムや軸受、工作機械などを手掛けるトヨタグループの主要企業です。

(1) 会社概要


1921年に光洋精工社として創業し、ベアリング生産を開始しました。2006年に光洋精工と豊田工機が合併し、現在のジェイテクトが誕生しました。2009年にはティムケン社のニードル軸受事業を取得し事業を拡大。2022年に事業ブランドを「JTEKT」へ統一し、現在に至ります。

連結従業員数は45,018人、単体では11,153人が在籍しています。筆頭株主はトヨタグループの中核企業であるトヨタ自動車で24.26%を保有しています。第2位は日本マスタートラスト信託銀行、第3位は日本カストディ銀行となっており、資産管理を行う信託銀行が上位を占めています。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 24.26%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.93%
日本カストディ銀行(信託口) 9.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表者は取締役社長の近藤禎人氏です。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
近藤 禎人 (代表取締役)取締役社長 2016年1月トヨタ自動車常務理事。2024年1月同社顧問を経て、2024年6月より現職。
松本 巧 (代表取締役)取締役経営役員研究開発本部長 2010年8月トヨタ自動車BR-EVシステム開発室長。2015年4月同社執行役員、常務執行役員、常務取締役を経て、2021年1月より現職。
山中 浩一 (代表取締役)取締役経営役員営業本部長調達本部長 1986年4月光洋自動機(現同社)入社。ステアリング事業本部調達部長、執行役員、常務執行役員、常務役員、経営役員を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、熊倉和生(トヨタ自動車調達本部本部長)、池田育嗣(住友ゴム工業特別顧問)、櫻井由美子(公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車」「産機・軸受」「工作機械」の各報告セグメントを展開しています。

(1) 自動車


電動パワーステアリング、油圧パワーステアリング、電子制御4WD用カップリング(ITCC)、トルセン、FCEV向け減圧弁などの自動車関連部品を製造・販売しています。自動車メーカー等への製品供給を通じて、モビリティ社会の安全性や快適性に貢献しています。

主な収益源は、国内外の自動車メーカーに対する製品の販売代金です。主力製品である電動パワーステアリングや駆動部品は、大半を自動車業界向けに販売しています。運営は主にジェイテクトが行うほか、海外においてはJTEKT NORTH AMERICA CORPORATIONなどの現地子会社が製造・販売を担っています。

(2) 産機・軸受


ローラーベアリング、ボールベアリング、ベアリングユニット、その他各種ベアリング、オイルシールなどを製造・販売しています。これらは自動車だけでなく、産業機械や建設機械、農業機械など幅広い産業分野で使用されています。

収益は、様々な産業分野の機械メーカーや代理店への製品販売から得ています。同事業の売上収益の過半は自動車業界向けですが、幅広い顧客層を持っています。運営はジェイテクトのほか、ダイベアから商号変更したジェイテクトプレシジョンベアリングなどの子会社が行っています。

(3) 工作機械


研削盤、マシニングセンタ、切削機、制御機器(IoE関連製品を含む)、工業用熱処理炉などを製造・販売しています。モノづくり設備としての工作機械を提供し、顧客の生産性向上や品質向上に寄与しています。

収益源は、製造業者等への工作機械や制御機器の販売、および据付・試運転等の関連サービス料です。受注は自動車業界からのものが中心となっています。運営はジェイテクトおよびジェイテクトマシンシステム、ジェイテクトサーモシステムなどの子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は第121期から第124期にかけて増加傾向にありましたが、当期は微減となりました。税引前利益は第124期に大きく伸びましたが、当期は大幅な減益となっています。当期利益についても第124期までは増加基調でしたが、当期は減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 12,463億円 14,284億円 16,781億円 18,915億円 18,844億円
税引前利益 154億円 439億円 559億円 725億円 309億円
利益率(%) 1.2% 3.1% 3.3% 3.8% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 207億円 343億円 403億円 137億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上収益はほぼ横ばいで推移していますが、営業利益は減少しました。売上原価率は依然として高く、利益率を圧迫しています。また、当期はその他の費用が増加したことなどが影響し、税引前利益および当期利益が前期と比較して大きく減少する結果となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 18,915億円 18,844億円
売上総利益 2,839億円 2,813億円
売上総利益率(%) 15.0% 14.9%
営業利益 622億円 385億円
営業利益率(%) 3.3% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、その他が1,041億円(構成比48.1%)、給料及び手当が557億円(同25.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、自動車事業は欧州や中国での減収が影響し微減収減益となりました。産機・軸受事業も日本や欧州での減収により減収減益でした。一方、工作機械事業は北米や中国を中心に増収となり、為替影響や原価改善効果もあって増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
自動車 13,478億円 13,360億円 450億円 383億円 2.9%
産機・軸受 3,788億円 3,727億円 127億円 86億円 2.3%
工作機械 2,132億円 2,246億円 147億円 174億円 7.8%
その他 - - - - -
調整額 -483億円 -489億円 4億円 5億円 -
連結(合計) 18,915億円 18,844億円 729億円 649億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金を投資や借入返済に充てている健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,545億円 802億円
投資CF -714億円 -759億円
財務CF -472億円 -521億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「技術をつなぎ地球と働くすべての人を笑顔にする」ことを企業経営と事業運営の軸としています。培った技術で社会課題の解決に貢献することを存在意義とし、2030年までに「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」となることを目指しています。

(2) 企業文化


MVV(Mission, Vision, Value)を経営の軸とし、「Yes for All, by All! ~みんなのためにみんなでやろう~」という価値観のもと、グループの総力を最大限発揮する「全員参加」を重視しています。安全の確保や不正を起こさない職場風土の醸成といったガバナンス強化にも取り組み、社会から信頼される会社であり続けるための改善を続けています。

(3) 経営計画・目標


2030年の目指す姿を実現するため、2024年から2026年度を期間とする第二期中期経営計画を推進しています。「既存事業の成長と新規事業の育成」をテーマに掲げ、効率性と収益性を重視した経営を実現するための重要指標として以下の目標を設定しています。

* ROE:7-8%
* PBR:1倍
* 事業利益率:5-6%

(4) 成長戦略と重点施策


「ソリューションプロバイダーへの変革」をメインドライバーとし、既存製品の高付加価値化と新領域への挑戦を進めます。重点施策として「ソリューションの創出力強化」「競争力の強化」「グローバル体制の再構築」に取り組みます。具体的には、コアコンピタンスプラットフォーム(ココプラ)やソリューション共創センター(ソリセン)を活用し、社会課題解決に向けたソリューション創出を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自己実現できる人づくり」と「挑戦を楽しめる職場づくり」をマテリアリティに掲げ、従業員一人ひとりが自ら学び、主体的に成長する文化の醸成を目指しています。OJT、Off-JT、キャリア開発を柱とした育成プログラムを提供するとともに、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備や、仕事と家庭の両立支援にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 17.3年 7,533,357円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 53.7%
男女賃金差異(全労働者) 76.0%
男女賃金差異(正規) 77.0%
男女賃金差異(非正規) 59.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) デジタル化加速


自動車業界におけるデジタル化の加速により、既存部品の需要が低下するリスクや、新興メーカーの台頭により競争力が低下するリスクがあります。同社は経営層主導でDXを推進し、事業運営の俊敏性を向上させることで対応を図っています。

(2) 人的資本マネジメント


成長戦略の実行に必要な特定人材が不足し、注力分野に十分なリソースを投入できず目標達成が困難になるリスクがあります。人事情報の一元化や人材ポートフォリオの構築、DE&Iの推進によるエンゲージメント向上、ソフトウェア人材の育成強化などを進めています。

(3) サイバー攻撃


サイバー攻撃による事業の中断や、それに伴う顧客の生産ライン停止、機密情報の漏洩などが懸念されます。これに対し、グループ全体での安心・安全なIT基盤の構築や地域単位でのガバナンス体制強化、経営層を巻き込んだ有事の際の訓練などを実施しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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