ジェイテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイテクトは、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、自動車、産機・軸受、工作機械などの各事業に係る製品の製造販売を主軸に展開しています。直近の業績トレンドとしては、自動車や工作機械の販売増加等により増収となった一方で、構造改革費用等の影響により減益となっています。


※本記事は、株式会社ジェイテクトの有価証券報告書(第126期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ジェイテクトってどんな会社?


同社は、自動車部品やベアリング、工作機械等の製造販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1921年に光洋精工社が創設され、ベアリングの生産を開始しました。1941年にトヨタ自動車工業から分離独立して豊田工機が設立され、2006年に豊田工機と光洋精工が合併し、現在のジェイテクトに商号変更しました。2009年にはザ・ティムケン・カンパニーからニードル軸受事業を取得し、2022年に事業ブランドを「JTEKT」へ統一して現在に至ります。

現在の従業員数は連結で43,233名、単体で11,109名です。筆頭株主は事業会社のトヨタ自動車で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 24.26%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.75%
日本カストディ銀行(信託口) 8.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は近藤禎人氏が務めており、社外取締役の比率は20.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
近藤禎人 代表取締役社長 2016年トヨタ自動車常務理事。2024年同社顧問を経て、同年より現職。
山中浩一 代表取締役 1986年光洋自動機(現同社)入社。ステアリング事業本部調達部長、執行役員等を経て2025年より現職。
新家俊明 代表取締役経営役員生産本部長 1985年光洋自動機(現同社)入社。執行役員、子会社社長等を経て2025年より現職。
中西勇太 取締役 2022年トヨタ自動車事業開発本部長兼新事業企画部長、2024年東邦瓦斯社外取締役を経て、2025年より現職。


社外取締役は、池田育嗣(元住友ゴム工業社長)、櫻井由美子(元櫻井由美子公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車」「産機・軸受」「工作機械」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 自動車


電動パワーステアリング、ステアバイワイヤシステム、電子制御4WD用カップリング、減圧弁などの自動車部品を提供し、主に国内外の自動車メーカーを顧客としています。

収益モデルは、自動車メーカー等から製品の販売代金を受け取る形です。運営は主にジェイテクトおよび、ジェイテクトコラムシステム、ジェイテクトギヤシステムなどの子会社が行っています。

(2) 産機・軸受


ローラーベアリング、ボールベアリング、各種ベアリングユニットやオイルシールなどを提供し、産業機械メーカーやアフターマーケット市場を顧客としています。

収益モデルは、顧客への製品販売を通じて代金を受け取る形です。運営は主にジェイテクトおよび、ジェイテクトプレシジョンベアリングなどの子会社が行っています。

(3) 工作機械


研削盤、マシニングセンタ、制御機器、工業用熱処理炉などの工作機械および関連設備を提供し、自動車業界を中心とした多様な製造業を顧客としています。

収益モデルは、完成した製品の供給に加え、据付や試運転などの関連サービスを提供して対価を得る形です。運営は主にジェイテクトおよび、ジェイテクトマシンシステム、ジェイテクトサーモシステムなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は堅調に推移し、直近では円安や自動車・工作機械の販売増加により1兆9000億円を突破しました。一方で税引前利益は構造改革費用の計上等により、直近2期間で減少傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 14284億円 16781億円 18915億円 18844億円 19250億円
税引前利益 439億円 559億円 725億円 31億円 274億円
利益率(%) 3.1% 3.3% 3.8% 1.6% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 207億円 343億円 403億円 137億円 120億円

(2) 損益計算書


売上収益が前年比で約406億円増加し、売上総利益も拡大して利益率が向上しました。しかし、事業構造改善費用などの影響により、営業利益および営業利益率は前年を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 18844億円 19250億円
売上総利益 2813億円 2970億円
売上総利益率(%) 14.9% 15.4%
営業利益 385億円 248億円
営業利益率(%) 2.0% 1.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が573億円(構成比26%)、荷造運搬費が245億円(同11%)、研究開発費が215億円(同10%)を占めています。また、売上原価は売上収益全体の約85%を占めています。

(3) セグメント収益


自動車セグメントは円安や販売増加、原価改善の効果により増益を牽引しました。産機・軸受も構造改革等により増益を確保し、工作機械は堅調な販売により前年水準の利益を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
自動車 13360億円 13697億円 383億円 467億円 3.4%
産機・軸受 3727億円 3679億円 86億円 112億円 3.0%
工作機械 2246億円 2361億円 174億円 174億円 7.4%
調整額 -489億円 -487億円 5億円 3億円 -
連結(合計) 18844億円 19250億円 649億円 757億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 802億円 1085億円
投資CF -759億円 -527億円
財務CF -521億円 -470億円


企業の収益力を測るROEは1.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「技術をつなぎ、地球と働くすべての人を笑顔にする」ことをミッションとして掲げています。社会が直面する様々な課題の解決に事業活動を通じて貢献することを企業の存在意義とし、社会とともに持続的な成長を遂げることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Yes for All, by All! みんなのために、みんなでやろう」を共通の価値観として重視しています。モノづくりとモノづくり設備で培ってきた強みを結集し、グループの総力を最大限発揮する「全員参加」の姿勢で、最適なソリューションを提供し続ける企業文化を推進しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けて「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」となることを目標としています。第二期中期経営計画では以下の数値目標を掲げています。

* ROE:7〜8%
* PBR:1倍
* 事業利益率:5〜6%

(4) 成長戦略と重点施策


「既存事業の成長と新規事業の育成」をテーマとし、既存製品の高付加価値化で生み出した原資をもとに新領域へチャレンジする戦略を推進しています。「ソリューションの創出力強化」「競争力の強化」「グローバル体制の再構築」を重点施策とし、カーボンニュートラルの推進や人と現場中心の経営にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ソリューションプロバイダーへの変革を実現する原動力は人材であると考え、「人と現場中心の経営」を掲げています。従業員の「やりたいこと(Will)」を尊重しつつ、能力の向上や最適配置に努めるほか、高度人材やデジタル人材の育成、多様性が尊重される職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 17.2年 7,732,683円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 84.7%
男女賃金差異(全労働者) 76.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、プラスチック廃棄物のマテリアルリサイクル率(39.7%)、従業員エンゲージメントのeNPS(-63.0)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人的要因による事業停止・停滞


成長戦略の実行に必要な特定人材が不足し、注力分野の目標達成力が弱まるリスクや、代替不能業務が存在し事業の中断につながるリスクがあります。対策として、人事情報の一元化や重点人材の確保、業務属人化の特定などを進めています。

(2) サイバー攻撃による事業継続への影響


サイバー攻撃によって事業が中断し、顧客の生産ラインの停止や機密情報の漏洩による信頼喪失を招くリスクが想定されます。これに対し、グループ全体のセキュリティ基盤の統一や、ルール・推進体制の整備、経営層を含めた訓練の実施等の対策を講じています。

(3) 重要仕入先の経営悪化による供給途絶


人手不足や自動車産業の電動化に伴う需要構造の変化等により、代替困難な仕入先の経営が悪化し、部品供給が途絶するリスクがあります。重要仕入先の状況把握や対話を通じた改善支援、調達先の複数化や代替品の検討といった対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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