テルモ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テルモ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。心臓血管、メディカルケアソリューションズ、血液・細胞テクノロジーの3事業を展開する医療機器メーカーです。当連結会計年度の業績は、売上収益1兆362億円(前期比12.4%増)、営業利益1,577億円(同12.5%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、テルモ株式会社 の有価証券報告書(第110期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. テルモってどんな会社?


医療機器・医薬品の製造販売を行うグローバル企業です。「医療を通じて社会に貢献する」を理念に掲げます。

(1) 会社概要


1921年に赤線検温器として設立され、1963年に日本初の使い捨て注射筒を発売しました。1971年に米国・欧州へ進出し、海外展開を本格化させます。2011年に米国の血液・細胞テクノロジー企業(現テルモBCT)を買収し事業を拡大。2017年には止血デバイス事業等を買収し、心臓血管分野を強化しました。

連結従業員数は30,689名、単体では5,633名です。筆頭株主は信託銀行等の機関投資家で、第3位には事業会社である第一生命保険が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 22.25%
日本カストディ銀行(信託口) 9.23%
第一生命保険 4.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長CEOは鮫島光氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
鮫島 光 代表取締役社長CEO 東亜燃料工業(現ENEOS)、シティバンクを経て2002年入社。心臓血管カンパニープレジデント等を経て2024年4月より現職。
長田 敏彦 取締役専務経営役員 1989年入社。経営企画室長、心臓血管カンパニープレジデント等を経て、現在はイノベーション担当を務める。
高木 俊明 代表取締役会長 1981年入社。工場長、研究開発本部統轄、チーフクオリティーオフィサー等を歴任し、2022年4月より現職。
国元 規正 取締役常務経営役員 1987年入社。秘書室長、欧州・中東・アフリカ地域統轄等を経て、現在はコーポレートバリュープロモーション担当を務める。
広瀬 和紀 取締役顧問 1986年入社。甲府東工場長、チーフマニュファクチュアリングオフィサー等を歴任。
柴﨑 崇紀 取締役(常勤監査等委員) 1986年入社。中国地域代表等を経て2021年6月より現職。


社外取締役は、西秀訓(元カゴメ社長・会長)、小澤敬也(自治医科大学名誉教授)、小木曾麻里(SDGインパクトジャパン社長)、中村雅一(公認会計士)、宇野総一郎(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「心臓血管カンパニー」、「メディカルケアソリューションズカンパニー」、「血液・細胞テクノロジーカンパニー」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 心臓血管カンパニー


カテーテル治療や心臓外科手術に関連する製品を提供しています。主な製品には、血管内治療用カテーテル、ステント、人工肺、人工血管などがあり、医療機関や医師が主な顧客です。

収益は、これらの医療機器の販売により得ています。運営は、同社および海外子会社のテルモメディカル、マイクロベンション、バスクテックなどが担っています。

(2) メディカルケアソリューションズカンパニー


病院内での薬剤投与管理や糖尿病ケア、製薬企業向け製品を提供しています。主な製品には、輸液ポンプ、注射筒、血糖測定システム、薬剤充填済みシリンジなどがあり、医療従事者や患者、製薬企業が顧客です。

収益は、医療機器や医薬品の販売、および製薬企業からの受託製造・技術提携等により得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) 血液・細胞テクノロジーカンパニー


血液採取や成分分離、細胞治療に関連する技術と製品を提供しています。主な製品には、成分採血システム、血液自動製剤システム、細胞増殖システムなどがあり、血液センターや医療機関、研究機関が顧客です。

収益は、機器およびディスポーザブル製品(使い捨てセット)の販売により得ています。運営は主に米国子会社のテルモBCTが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上収益、利益ともに右肩上がりの成長トレンドにあります。特に当期は売上収益が1兆円を突破し、税引前利益、当期利益ともに過去最高水準を更新しました。利益率も安定して高い水準を維持しており、持続的な成長を実現しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 6,138億円 7,033億円 8,202億円 9,219億円 10,362億円
税引前利益 971億円 1,145億円 1,161億円 1,408億円 1,546億円
利益率(%) 15.8% 16.3% 14.2% 15.3% 14.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 773億円 888億円 893億円 1,064億円 1,170億円

(2) 損益計算書


売上収益の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は50%を超える高い水準を維持しており、製品の高付加価値化が進んでいることが伺えます。営業利益も増益となっており、事業規模の拡大と収益性の両立が図られています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 9,219億円 10,362億円
売上総利益 4,792億円 5,607億円
売上総利益率(%) 52.0% 54.1%
営業利益 1,401億円 1,577億円
営業利益率(%) 15.2% 15.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,625億円(構成比43%)、研究開発費が742億円(同19%)を占めています。売上原価の内訳については、有価証券報告書に詳細な記載がありません。

(3) セグメント収益


全ての報告セグメントにおいて増収増益を達成しました。特に主力の心臓血管カンパニーと血液・細胞テクノロジーカンパニーが海外市場を中心に大きく伸長し、全社の業績拡大を牽引しています。メディカルケアソリューションズカンパニーも堅調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
心臓血管カンパニー 5,557億円 6,244億円 1,239億円 1,547億円 24.8%
メディカルケアソリューションズカンパニー 1,976億円 2,112億円 198億円 230億円 10.9%
血液・細胞テクノロジーカンパニー 1,683億円 2,003億円 164億円 265億円 13.2%
調整額 2億円 3億円 -32億円 -7億円 -
連結(合計) 9,219億円 10,362億円 1,568億円 2,034億円 19.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,463億円 2,108億円
投資CF -815億円 -825億円
財務CF -621億円 -1,088億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.2%で市場平均(46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「医療を通じて社会に貢献する」という不変の企業理念を掲げています。この理念に基づき、患者や医療従事者をはじめ広く社会にとって価値ある企業を目指しています。また、社会に対する約束として「Our Promise 私たちの約束」を掲げ、患者の声に耳を傾け、革新的なソリューションを追求し続けることを宣言しています。

(2) 企業文化


社員(アソシエイト)が行動の基礎とする共通の価値観として「コアバリューズ」を定めています。具体的には、「Respect(他者の尊重)」「Integrity(誠実)」「Care(患者さんへの想い)」「Quality(優れた仕事へのこだわり)」「Creativity(イノベーションの追求)」の5つです。また、新しいことに挑戦し成長するマインド「Growth Mindset」を推奨しています。

(3) 経営計画・目標


2021年12月に策定した5カ年成長戦略「GS26」において、成長性、収益性、効率性の目標を掲げています。

* 売上収益:1桁後半の成長
* 営業利益率:20%以上(新規M&Aの影響を除く)
* ROIC:10%以上(新規M&Aの影響を除く)
* ROE:10%以上を堅持

(4) 成長戦略と重点施策


「GS26」では「デバイスからソリューションへ」をビジョンに掲げ、3つの「D」に取り組んでいます。「Delivery」では高機能な生体アクセス・デリバリー技術、「Digital」ではデジタル技術を活用したソリューション、「Deviceuticals」では機器と薬剤の融合による付加価値提供を目指しています。

* 心臓血管カンパニー:ラディアル手技(手首からのカテーテル治療)の全身への普及や、新製品による治療事業の拡大。
* メディカルケアソリューションズカンパニー:病院経営の効率化や糖尿病領域でのデジタル活用などのソリューション提供。
* 血液・細胞テクノロジーカンパニー:原料血漿採取システムの展開や細胞処理領域の拡大。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グローバルでの持続的成長を実現するため、多様なリーダーの育成と組織能力の強化に注力しています。具体的には、グローバル共通の仕組みによるリーダー育成、挑戦を促す「Growth Mindset」の推進、そしてDE&I(多様性、公平性、包摂性)の文化醸成を通じて、アソシエイト一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 15.7年 7,784,646円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 80.9%
男女賃金差異(全労働者) 82.3%
男女賃金差異(正規雇用) 82.6%
男女賃金差異(非正規) 83.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(連結)(30.8%)、経営役員外国人比率(33.3%)、グローバル・キーポジション外国人比率(59.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動に伴う物理的リスク


気候変動による自然災害の激甚化が、同社の生産・物流拠点に物理的な被害をもたらすリスクがあります。工場や倉庫が被災し操業が一時停止した場合、製品供給の遅延や停止が発生し、機会損失や復旧費用の発生により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の高騰と調達リスク


世界的な需要増加や地政学的要因により、原材料やエネルギー価格が高止まりするリスクがあります。また、サプライチェーンの混乱により部材調達が困難になる可能性があります。これらのコスト増加や供給不足は、同社の収益性や生産活動にマイナスの影響を与える可能性があります。

(3) 米国等の通商政策変更リスク


同社はグローバルに事業を展開しており、特に米国市場の比重が高いため、同国における関税政策の変更や通商規制の強化がリスク要因となります。関税引き上げや輸出入制限等の措置が講じられた場合、コスト増や販売機会の減少につながり、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

テルモの転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

テルモの2026年3月期2Q決算は、米州市場の好調により利益面で過去最高を達成。OrganOx社の買収やドイツ拠点の取得など、CDMO・臓器移植分野への構造的なシフトが加速しています。新領域の立ち上げに伴い、グローバルに挑戦できる多様なキャリア機会が広がっています。


【面接対策】テルモの中途採用面接では何を聞かれるのか

医療機器大手、医薬品類も展開するテルモへの転職。中途採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果などを具体的に問われるほか、キャリアシートでは見えてこない「人間性」も見られます。即戦力として、そして一緒に仕事をする仲間としても多角的に評価されるので、事前にしっかり対策しておきましょう。