テルモ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テルモ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するテルモは、医療機器や医薬品の製造販売をグローバルに展開するリーディングカンパニーです。心臓血管分野や血液・細胞テクノロジーなど多彩な事業を手がけ、直近の業績では売上収益が前期比で増収、税引前利益も増益を達成しており、堅調な成長トレンドを維持しています。


※本記事は、テルモ株式会社の有価証券報告書(第111期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. テルモってどんな会社?


医療機器や医薬品の製造販売を通じ、世界中の患者と医療現場に価値を提供するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1921年に赤線検温器として設立されて体温計を発売し、1974年に現在のテルモへ商号を変更しました。1985年に東京証券取引所第一部に上場を果たし、グローバル化を積極的に推進しています。2025年には英国オーガノックスを買収し、新たにオーガンテクノロジーズ事業を報告セグメントとして追加しました。

従業員数は連結で31,185名、単体で5,736名が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位には事業会社である第一生命保険が名を連ねており、安定した経営基盤と資本構成を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 22.30%
日本カストディ銀行(信託口) 9.50%
第一生命保険 3.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは鮫島光氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鮫島 光 代表取締役社長CEO 1988年東亜燃料工業入社。2002年テルモ入社。心臓血管カンパニープレジデントなどを経て、2024年より現職。
高木 俊明 代表取締役会長 1981年テルモ入社。愛鷹工場長や取締役常務執行役員などを歴任し、2022年より現職。
長田 敏彦 取締役専務経営役員イノベーション担当コーポレートR&D、知的財産部、臨床開発部、レギュラトリーアフェアーズ部、テルモメディカルプラネックス、テルモベンチャーズ 1989年テルモ入社。経営企画室長や心臓血管カンパニープレジデントなどを経て、2024年より現職。
国元 規正 取締役常務経営役員コーポレートバリュープロモーション担当総務渉外部、法務コンプライアンス部、コーポレートコミュニケーション部、国内営業統括部、テルモ・コールセンター、EHSマネジメント部 1987年テルモ入社。秘書室長や欧州・中東・アフリカ地域統轄などを経て、2023年より現職。
柴崎 崇紀 取締役(常勤監査等委員) 1986年テルモ入社。中国地域代表や泰尓茂投資等の董事長兼総経理などを経て、2021年より現職。


社外取締役は、西秀訓(元カゴメ社長)、小澤敬也(自治医科大学客員教授)、小木曾麻里(SDGインパクトジャパン社長)、宇野総一郎(長島・大野・常松法律事務所パートナー)、林敬子(早稲田大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「心臓血管カンパニー」、「メディカルケアソリューションズカンパニー」、「血液・細胞テクノロジーカンパニー」および「オーガンテクノロジーズ事業」の4つの事業を展開しています。

(1) 心臓血管カンパニー


カテーテル等の血管内治療に用いる機器や、心臓外科・体外循環領域の人工心肺装置、大動脈瘤治療用のステントグラフトなどを世界中の医療機関に提供しています。

医療現場への製品販売等を通じて収益を得ています。事業の運営は、テルモのほか米国マイクロベンションなどの各種子会社がグローバルに展開しています。

(2) メディカルケアソリューションズカンパニー


院内の医療機器・データ管理を支援するホスピタルケア、糖尿病などの慢性疾患向けライフケア、製薬会社向けのファーマシューティカルソリューションを展開しています。

医療機関向けの機器・消耗品販売や、製薬会社へのデバイス提供・開発製造受託を通じて収益を得ています。主にテルモを中心に事業を運営しています。

(3) 血液・細胞テクノロジーカンパニー


血液センター向けの血液自動製剤システムや成分採血システムをはじめ、細胞治療に関連する処理・増殖システム、原料血漿採取システムなどを提供しています。

医療機関や血液センターなどへの機器本体およびディスポーザブル(使い捨て)製品の販売から収益を得ています。主に米国テルモBCTが事業運営を行っています。

(4) オーガンテクノロジーズ事業


同社が新たに参入した臓器移植関連分野であり、常温機械灌流技術を用いた革新的な臓器保存デバイスを世界中の医療現場に提供しています。

移植医療機関などに対する臓器保存用機器および関連消耗品の販売等を通じて収益を得ています。英国オーガノックスなどの子会社を通じて事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上収益と各種利益ともに右肩上がりの成長を継続しています。グローバルな医療需要の拡大を背景に、各カンパニーの主要製品が海外を中心に好調に推移し、増収増益のトレンドが定着しています。利益率も14%〜16%台の高水準で安定して推移しており、堅実な収益構造を構築しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 7,033億円 8,202億円 9,219億円 10,362億円 11,319億円
税引前利益 1,145億円 1,161億円 1,408億円 1,546億円 1,783億円
利益率(%) 16.3% 14.2% 15.3% 14.9% 15.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 888億円 893億円 1,064億円 1,170億円 1,359億円

(2) 損益計算書


売上収益は海外事業の順調な伸長により増加し、売上総利益も着実に拡大しています。売上総利益率は50%以上の高水準を維持しており、営業利益率も15%台と安定しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 10,362億円 11,319億円
売上総利益 5,607億円 5,947億円
売上総利益率(%) 54.1% 52.5%
営業利益 1,577億円 1,763億円
営業利益率(%) 15.2% 15.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,748億円(構成比43%)、研究開発費が769億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて、海外を中心に需要が拡大し売上を牽引しています。主力である心臓血管カンパニーが増収増益を達成し、血液・細胞テクノロジーカンパニーも北米事業の好調で大きく利益を伸ばしました。新たに加わったオーガンテクノロジーズ事業も順調に利益に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
心臓血管カンパニー 6,244億円 6,764億円 1,547億円 1,640億円 24.2%
メディカルケアソリューションズカンパニー 2,112億円 2,161億円 230億円 216億円 10.0%
血液・細胞テクノロジーカンパニー 2,003億円 2,310億円 265億円 336億円 14.5%
オーガンテクノロジーズ事業 -億円 80億円 -億円 17億円 21.3%
調整額 3億円 3億円 -7億円 -15億円 -%
連結(合計) 10,362億円 11,319億円 2,034億円 2,194億円 19.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2,108億円 2,309億円
投資CF -825億円 -3,441億円
財務CF -1,088億円 1,555億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「医療を通じて社会に貢献する」という不変の企業理念を掲げています。また、患者の声に真摯に耳を傾け、世界中の患者の生活の質向上を目指してイノベーションを追求する「Our Promise 私たちの約束」を社会への約束として定めており、医療課題の解決を通じた価値創造を目指しています。

(2) 企業文化


社員(アソシエイト)が行動の基礎とする共通の価値観として「コアバリューズ」を定めています。他者の尊重(Respect)、企業理念を胸に(Integrity)、患者さんへの想い(Care)、優れた仕事へのこだわり(Quality)、イノベーションの追求(Creativity)の5つを重視し、高い倫理観に基づいた行動を実践する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


「GS26」という5カ年成長戦略を掲げ、「デバイスからソリューションへ」という中長期ビジョンの実現に向けた経営を行っています。成長性、収益性、資本効率性において明確な数値目標を設定し、事業の拡大と企業価値の向上に取り組んでいます。

* 売上収益:1桁後半の成長
* 営業利益率:20%以上
* ROIC:10%以上
* ROE:10%以上を堅持

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として「3つのD(Delivery、Digital、Deviceuticals)」の実現に注力しています。低侵襲治療や個別化医療の推進、医薬品とデバイスの融合(Deviceuticals)による付加価値の向上を図るとともに、M&Aや提携を活用したデジタル技術の導入を進め、生産体制のグローバル最適化により収益基盤を強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略の実行を支える基盤として、「変革の実現」と「グローバル経営の実現」を人材戦略の柱に据えています。多様なバックグラウンドを持つリーダーの育成や、挑戦と成長を促す「Growth Mindset」、多様性を重視する「DE&I」を推進し、事業成長を持続的に支える組織能力の強化と最適な人材配置を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.3歳 15.6年 8,216,621円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.2%
男性育児休業取得率 88.3%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 83.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 84.2%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 81.8%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経営役員外国人比率(30.4%)、グローバル・キーポジション外国人比率(67.0%)、管理職中途採用比率(23.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の医療政策・法規制の変更


世界各国での医療費抑制策や法規制の強化により、製品の販売価格引き下げや許認可の遅延等が生じた場合、事業戦略や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) グローバル事業における地政学・カントリーリスク


海外事業を広く展開しているため、各国の政治情勢の悪化、テロや紛争、経済制裁などの地政学的リスクが顕在化した場合、サプライチェーンの分断や市場環境の悪化を招くリスクがあります。

(3) 製品の品質・安全性に関するリスク


医療機器および医薬品を取り扱うため、予期せぬ副作用や品質不良による製品回収等が発生した場合、社会的信用の低下や多額の費用負担が生じ、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 企業買収に伴うリスク


持続的な成長に向けて企業買収を推進していますが、買収後の事業計画が想定通りに進まない場合、のれんの減損損失が発生し、財務状況や経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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