富士電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京・名古屋・福岡の各証券取引所に上場し、エネルギー、インダストリー、半導体、食品流通事業を展開する重電大手です。直近の業績は、エネルギー需要の増大やデータセンター向け設備の伸長、価格改定などが寄与し、売上高、営業利益、純利益がいずれも前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、富士電機株式会社 の有価証券報告書(第149期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富士電機ってどんな会社?


エネルギー・環境技術を核に、発電設備からパワー半導体、自動販売機まで幅広いインフラ関連事業を展開しています。

(1) 会社概要


1923年、古河電気工業とドイツのシーメンス社との資本・技術提携により設立されました。1935年には通信機部門を分離して富士通信機製造(現富士通)を設立しています。その後、重電、家電、計測器、半導体等へ事業を拡大し、2011年には子会社の富士電機システムズを吸収合併して現在の体制となりました。

同グループは連結子会社105社、関連会社12社により構成され、連結従業員数は27,391人、単体では10,939人です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は同じく資産管理を行う日本カストディ銀行、第3位は米国のステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニーです。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.00%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 9.62%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 3.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役取締役会長CEO(最高経営責任者)には北澤通宏氏が、代表取締役取締役社長COO(最高執行責任者)には近藤史郎氏が就任しています。社外取締役の比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
北澤 通宏 代表取締役取締役会長CEO(最高経営責任者)指名・報酬委員会委員 1974年入社。富士電機デバイステクノロジー専務、同社社長等を経て2010年富士電機社長。2022年4月より現職。
近藤 史郎 代表取締役取締役社長COO(最高執行責任者)執行役員社長指名・報酬委員会委員 1984年入社。技術・事業戦略本部技術戦略室ゼネラルマネージャー、技術開発本部長等を経て2022年4月より現職。
宝泉 徹 取締役執行役員専務半導体事業本部長 1983年入社。電子デバイス事業本部長等を歴任し、2021年4月半導体事業本部長。2022年6月より現職。
鉄谷 裕司 取締役執行役員常務インダストリー事業本部長 1986年入社。パワエレシステムインダストリー事業本部長等を経て、2023年10月より現職。
河野 正志 取締役執行役員専務エネルギー事業本部長 1986年入社。生産・調達本部長、パワエレエネルギー事業本部長等を経て、2023年10月より現職。
荒井 順一 取締役 1982年入社。経営企画本部長等を歴任し、2016年6月より現職。


社外取締役は、丹波俊人(元伊藤忠商事副社長)、富永由加里(元日立ソリューションズ常務)、立藤幸博(元三菱製紙社長)、野城智也(高知工科大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー」「インダストリー」「半導体」「食品流通」および「その他」事業を展開しています。

エネルギー


地熱・水力などの発電プラント、変電システム、無停電電源装置(UPS)、受配電・制御機器などを提供しています。電力会社や産業向けの大規模なインフラ設備が中心です。

製品・システムの販売対価や保守サービス料が主な収益源です。運営は主に富士電機、および富士電機機器制御、富士電機マニュファクチャリング(タイランド)社などの連結子会社が行っています。

インダストリー


インバータ、モータ、FAシステム、計測制御システム、鉄道車両用システム、放射線機器などを提供しています。工場の自動化や社会インフラの効率化を支える製品群です。

製品販売およびエンジニアリングサービスの対価が主な収益源です。運営は主に富士電機、および富士電機アイティ、富士電機ITソリューションなどの連結子会社が行っています。

半導体


産業用・自動車用のパワー半導体を提供しています。電力の変換や制御を行うデバイスで、省エネや電動化に不可欠な製品です。

製品の販売対価が主な収益源です。運営は主に富士電機、および富士電機パワーセミコンダクタ、富士電機津軽セミコンダクタなどの連結子会社が行っています。

食品流通


飲料・食品自動販売機、店舗設備機器、金銭機器などを提供しています。コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの流通店舗向け設備も扱っています。

製品の販売対価および関連サービスの利用料が主な収益源です。運営は主に富士電機、および富士電機リテイルサービス、三重富士などの連結子会社が行っています。

その他


不動産業、保険代理業、旅行業、金融サービス、印刷・情報サービス、人材派遣サービスなどを展開しています。

サービスの提供対価や手数料が主な収益源です。運営は主に富士電機フィアス、富士オフィス&ライフサービスなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は8000億円台後半から1兆1000億円台へと順調に拡大しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに右肩上がりの傾向にあり、特に直近では利益率も向上しており、収益性の高い体質への転換が進んでいることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,759億円 9,102億円 10,094億円 11,032億円 11,234億円
経常利益 504億円 793億円 878億円 1,078億円 1,188億円
利益率(%) 5.8% 8.7% 8.7% 9.8% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 216億円 333億円 460億円 535億円 880億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいから微増傾向にあります。営業利益も増加しており、原材料価格高騰などの影響を吸収しつつ、増収効果や原価低減などが寄与して利益率の改善が図られています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 11,032億円 11,234億円
売上総利益 3,033億円 3,179億円
売上総利益率(%) 27.5% 28.3%
営業利益 1,061億円 1,176億円
営業利益率(%) 9.6% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料諸手当が961億円(構成比48%)、研究開発費が323億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は「エネルギー」「半導体」「食品流通」の各セグメントで売上が増加しました。特に半導体は電動車向けの需要増などが寄与しています。一方、「インダストリー」は低圧インバータの需要減などで減収となりましたが、プラントやシステム向けの需要は堅調でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
エネルギー 3,389億円 3,477億円
インダストリー 4,010億円 3,967億円
半導体 2,227億円 2,335億円
食品流通 1,055億円 1,093億円
その他 351億円 362億円
調整額 - -
連結(合計) 11,032億円 11,234億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は「健全型」です。本業の営業活動でキャッシュを稼ぎ出し、それを投資活動や借入金の返済に充てるという、安定した資金循環となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 849億円 1,449億円
投資CF -624億円 -634億円
財務CF -459億円 -862億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「地球社会の良き企業市民として、地域、顧客、パートナーとの信頼関係を深め、誠実にその使命を果たします」という理念のもと、「豊かさへの貢献」「創造への挑戦」「自然との調和」を掲げて経営を行っています。

(2) 企業文化


エネルギー・環境技術の革新により安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献すること、グローバルで事業を拡大し成長する企業を目指すこと、そして多様な人材の意欲を尊重しチームで総合力を発揮することを経営方針として重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」において、「利益重視経営による更なる企業価値向上」を基本方針に掲げています。

* 売上高:1兆2,500億円
* 営業利益:1,400億円
* 営業利益率:11.2%
* ROE:12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「収益力の更なる強化」「成長戦略の推進」「経営基盤の強化」を重点戦略としています。エネルギーの脱炭素化や省エネ、電化のニーズ拡大を背景に、パワー半導体の能力増強や、再エネ・系統安定化関連の受注拡大、製販一体化によるインダストリー事業の強化を推進しています。

* 2025年度売上高目標:1兆1,400億円
* 2025年度営業利益目標:1,180億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮します」という経営方針のもと、人権尊重、多様な人材の活躍推進、働きがいの向上を重要課題としています。プロフェッショナルな人材の育成に注力し、積極的に社員の教育・研修を実施するとともに、キャリア採用拡大等により優秀人材の確保に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.9歳 20.5年 8,104,009円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 28.5%
男女賃金差異(全労働者) 69.5%
男女賃金差異(正規雇用) 70.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、会社満足度(3.8pt)、ウェルビーイング指数(3.6pt)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営戦略・事業戦略・事業環境


成長が見込める事業への集中投資を行っていますが、特に半導体分野は製品サイクルが短く競争が激しいため、投資回収ができない可能性があります。また、環境規制の強化による一部事業への批判や、感染症等による経済活動制限が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 調達・手配


原材料価格の高騰リスクに対し対策を講じていますが、円安や需給逼迫により素材・原材料価格が大幅に上昇した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替変動


為替予約等によりリスク軽減を図っていますが、海外売上比率が高く、米ドルを中心とした対円為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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