日本電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電気(NEC)は、東京証券取引所プライム市場に上場する大手電機メーカーです。ITサービス事業と社会インフラ事業を主軸に、システム構築やネットワークインフラを提供しています。直近の業績は、ITサービス事業の好調や社会インフラ事業の伸長により営業利益が増加し、減収ながら増益を達成しました。


※本記事は、日本電気株式会社 の有価証券報告書(第187期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日本電気ってどんな会社?

ITサービスと社会インフラを柱に、生体認証やAI技術で世界をリードする電機メーカーです。

(1) 会社概要

1899年、米国ウェスタン・エレクトリック社との合弁により設立されました。1943年に住友通信工業へ社名変更しましたが、1945年に現社名へ復帰しています。1949年に東京証券取引所に上場しました。その後、C&C(コンピュータと通信の融合)を提唱し、2014年にNECフィールディング、2025年にNECネッツエスアイを完全子会社化するなど、グループ再編を進めています。

同グループは、国内外に249社の連結子会社を持ち、連結従業員数は104,194名、単体では22,271名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第3位には日本電信電話(NTT)が名を連ねており、資本提携関係にあります。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.78%
日本カストディ銀行(信託口) 8.69%
日本電信電話 4.88%

(2) 経営陣

同社の役員は男性26名、女性4名(執行役含む)の計30名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表執行役社長兼CEOは森田隆之氏が務めています。取締役会における社外取締役比率は61.5%です。

氏名 役職 主な経歴
森田隆之 取締役 代表執行役社長兼 CEO 1983年入社。CGO(チーフグローバルオフィサー)やCFOを経て、2021年より現職。
藤川修 取締役 代表執行役 Corporate EVP兼 CFO 1988年入社。事業イノベーション戦略本部長などを経て、2023年より現職。
新野隆 取締役 1977年入社。CSO、CIO、代表取締役執行役員社長兼CEOなどを歴任し、2022年より現職。
松倉肇 取締役 1985年入社。CSO、CHRO、CLCOなどを歴任し、2025年4月より取締役 Senior Advisor。
小幡忍 取締役 1985年入社。CCO、CLCO、常勤監査役などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、クリスティーナ・アメージャン(一橋大学大学院名誉教授)、岡昌志(元ソニーフィナンシャルグループ社長・報酬委員長)、岡田恭子(元資生堂常勤監査役)、望月晴文(元経済産業事務次官・指名委員長)、岡田譲治(元三井物産副社長CFO・監査委員長)、山田義仁(オムロン会長)、佐藤慎次郎(元テルモ社長)、長田志織(元ヤンマーホールディングス取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ITサービス事業」、「社会インフラ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ITサービス事業

企業や官公庁、金融機関向けに、システム構築(SI)、コンサルティング、保守サポート、アウトソーシング、クラウドサービスなどを提供しています。また、PCやサーバーなどのシステム機器や、業務効率化のためのソフトウェア・サービスも手掛けています。

収益は、顧客である企業や団体から受け取るシステム構築費用、保守・運用サービス料、ソフトウェアライセンス料、機器販売代金などから構成されています。運営は、同社のほか、NECフィールディング、NECソリューションイノベータ、アビームコンサルティングなどの子会社が行っています。

(2) 社会インフラ事業

通信事業者向けにコアネットワークや携帯電話基地局、光伝送システムなどを提供するほか、航空宇宙・防衛領域におけるシステム機器やSIも手掛けています。また、通信事業者向けの運用支援システム(OSS)やビジネス支援システム(BSS)などのソフトウェア・サービスも展開しています。

収益は、通信事業者や政府機関等からのインフラ構築費用、機器販売代金、ソフトウェア利用料、保守サービス料などから得ています。運営は、同社のほか、NECネッツエスアイや米国のNetcracker Technology Corporationなどの子会社が行っています。

(3) その他

上記セグメントに含まれない事業として、特定のシステム機器の開発・製造・販売などを行っています。これには、海外現地法人による一部の事業活動や、グループ全体の技術開発・知的財産関連の活動などが含まれています。

収益は、顧客への機器販売やサービス提供に伴う対価として得ています。運営は、NECプラットフォームズや、NEC Corporation of Americaなどの海外現地法人が担っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上収益は3兆円前後で推移しており、直近では微減となっています。一方、利益面では税引前利益、当期利益ともに増加傾向にあり、利益率も改善しています。特に2025年3月期は、売上収益が減少したものの、各段階利益は前期を上回る結果となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 2兆9,940億円 3兆141億円 3兆3,130億円 3兆4,773億円 3兆4,234億円
税引前利益 1,578億円 1,444億円 1,677億円 1,850億円 2,398億円
利益率(%) 5.3% 4.8% 5.1% 5.3% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,496億円 1,413億円 1,145億円 1,495億円 1,752億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上収益はわずかに減少しましたが、売上原価の低減により売上総利益は増加しています。また、販売費及び一般管理費も抑制されたことで、営業利益は大幅に増加し、営業利益率は向上しました。本業の収益性が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 3兆4,773億円 3兆4,234億円
売上総利益 1兆59億円 1兆606億円
売上総利益率(%) 28.9% 31.0%
営業利益 1,880億円 2,565億円
営業利益率(%) 5.4% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が1,159億円(構成比15%)、技術研究費が744億円(同10%)を占めています。売上原価においては、材料費、人件費、外注費が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益

ITサービス事業は国内外で好調に推移し増収増益となりました。社会インフラ事業も防衛領域などが伸長し増収増益でした。一方、その他事業は減収減益となりました。全社としてはITサービスと社会インフラの好調が業績を牽引しましたが、日本航空電子工業の非連結化等の影響で全体では減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期)
ITサービス事業 1兆9,628億円 2兆892億円
社会インフラ事業 1兆832億円 1兆1,481億円
その他 4,926億円 2,546億円
調整額 -614億円 -684億円
連結(合計) 3兆4,773億円 3兆4,234億円 1,880億円 2,565億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入金の返済も進めている健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2,712億円 3,444億円
投資CF -760億円 -1,312億円
財務CF -1,555億円 -1,040億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは「NEC Way」を掲げています。その中の「Purpose(存在意義)」として、「Orchestrating a brighter world」をもとに、豊かな人間社会に貢献することを宣言しています。また、「Principles(行動原則)」として、「ベタープロダクツ・ベターサービス」等の創業の精神やインテグリティ、イノベーションの追求を示しています。

(2) 企業文化

社員一人ひとりの行動基準として「Code of Values」を定めています。「視線は外向き、未来を見通すように」「思考はシンプル、戦略を示せるように」「心は情熱的、自らやり遂げるように」「行動はスピード、チャンスを逃さぬように」「組織はオープン、全員が成長できるように」という5つの行動様式を重視しています。

(3) 経営計画・目標

「2025中期経営計画」を推進しており、EBITDA成長率を戦略の中核指標、エンゲージメントスコアを文化の中核指標と位置づけています。また、売上収益、調整後営業利益、Non-GAAP営業利益、ROICなども経営目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策

国内ITサービス事業では「BluStellar」を中核とし、高収益モデルへのシフトを加速します。また、NECネッツエスアイの完全子会社化を通じ、自治体や中堅・中小企業向けDX事業を強化します。海外ではデジタル・ガバメントおよびファイナンス領域に注力し、統括機能の欧州移転やオフショア活用により収益性を高める方針です。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「Employer of Choice - 選ばれる会社」を目指し、HR方針「挑戦する人の、NEC。」のもと、人とカルチャーの変革に取り組んでいます。ジョブ型人材マネジメントの浸透により適時適所適材を実現し、多様な人材の活躍を推進します。また、市場競争力の高い報酬体系の構築や、株式報酬制度の拡充により、優秀な人材の獲得と若手層の強化・育成をはかります。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 16.6年 9,631,033円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.6%
男性育児休業取得率 50.6%
男女賃金差異(全労働者) 75.9%
男女賃金差異(正規雇用) 74.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(42%)、DX人材のべ人数(11,935名)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 適正な製品・サービスの提供

国内外で多岐にわたる製品・サービスを提供しており、サプライチェーンもグローバルに展開しています。品質・安全性の管理や調達取引先も含めた信頼を維持できない場合、法的責任の追及や社会的信用の低下により、事業活動に大きな影響を与える可能性があります。

(2) サイバーセキュリティ

サイバー攻撃の高度化やクラウド活用による情報漏えいリスクなどに対し、ゼロトラストセキュリティプラットフォームの構築や体制強化を行っています。しかし、顧客や取引先のサイバーセキュリティリスクに適切に対処できない場合、法的責任や信用の低下を招き、事業に影響を及ぼすおそれがあります。

(3) 人的資本経営

優秀な人材の獲得・維持は事業目標達成に不可欠です。人材の流出や採用難が生じた場合、事業活動に影響を与える可能性があります。これに対し、採用強化や育成プログラムの整備、ジョブ型雇用の導入、エンゲージメント向上施策などを推進し、リスク低減と機会創出に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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