※本記事は、日本電気株式会社の有価証券報告書(第188期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 日本電気ってどんな会社?
ITサービス事業と社会インフラ事業を中核とし、幅広いソリューションを提供する総合ITベンダーです。
■(1) 会社概要
同社は1899年に米国企業等の発起により設立され、1949年に東京証券取引所に上場しました。1958年に国産初のトランジスタ式電子計算機を完成させるなど、日本のIT産業を長年牽引してきました。近年はグループ再編を推進し、2014年にNECフィールディング、2025年にNECネッツエスアイを完全子会社化しています。
従業員数は連結で101,800名、単体で21,934名です。大株主の筆頭は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位はNTTとなっており、信託銀行や通信事業会社等が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.37% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.84% |
| NTT | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性21名、女性4名の計25名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表執行役社長兼 CEOの森田隆之氏が経営を牽引しています。社外取締役の比率は高く、ガバナンス体制が強化されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森田 隆之 | 取締役 代表執行役社長兼 CEO | 1983年入社。事業開発本部長などを経て2018年代表取締役副社長兼CFO。2021年代表取締役社長兼CEOを務め、アビームコンサルティング取締役会長を兼任。2023年より現職。 |
| 雨宮 邦和 | 代表執行役副社長兼 CFO | 1991年入社。第三金融ソリューション事業部長などを経て2021年執行役員常務。2023年執行役 Corporate EVPを務め、2026年より現職。 |
| 藤川 修 | 取締役 執行役副社長兼 COO | 1988年入社。事業イノベーション戦略本部長等を経て2021年執行役員常務兼CFO。2023年取締役代表執行役 Corporate EVP兼CFOを務め、2026年より現職。 |
| 新野 隆 | 取締役 | 1977年入社。金融ソリューション事業本部長、CSO、代表取締役社長兼CEOなどを歴任。2021年代表取締役副会長を務め、2022年より現職。 |
社外取締役は、岡昌志(元ソニーフィナンシャルグループシニアアドバイザー・報酬委員長)、望月晴文(元経済産業事務次官・指名委員長)、岡田譲治(元日本監査役協会会長・監査委員長)、山田義仁(オムロン取締役会長)、佐藤慎次郎(テルモ顧問)、西村美香(Gilde Healthcare Partners, Operational Partner)、谷津朋美(谷津法律会計事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ITサービス事業」「社会インフラ事業」および「その他」事業を展開しています。
■ITサービス事業
システム構築やコンサルティングなどのシステムインテグレーション、保守サポート、アウトソーシングおよびクラウドサービス、システム機器やソフトウェアなどを提供しています。多様な業種の顧客に対し、先進技術を活用してビジネス変革を導くデジタルトランスフォーメーションを継続的に支援しています。
顧客からのシステム開発費用、コンサルティングフィー、保守運用やクラウドの利用料を収益源としています。事業の運営は同社のほか、NECプラットフォームズ、NECフィールディング、NECソリューションイノベータやアビームコンサルティングなどのグループ子会社各社が行っています。
■社会インフラ事業
コアネットワークや携帯電話基地局、光伝送システムなどのネットワークインフラ、通信事業者向けソフトウェア・サービスのほか、航空宇宙・防衛・海洋システム領域におけるシステム機器やシステム構築、保守サポートを提供しています。国の安全保障やデジタルインフラを守るソリューションを展開しています。
通信事業者や官公庁などの顧客からのインフラ構築費用、システム機器の販売代金、ソフトウェアのライセンス料や運用保守料を収益源としています。事業の運営は同社を中心に行い、北米におけるソフトウェア事業などはNetcracker Technology Corporationなどのグループ子会社が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、システム機器の開発、製造、販売事業などを展開しています。また、グループ全体の事業活動を横断的に支援するため、施設管理や人材サービス、シェアードサービスなどの共通業務を提供し、経営基盤の効率化と高度化を図っています。
顧客からのシステム機器販売代金のほか、グループ内の施設管理料や業務受託料を収益源としています。事業の運営はNECファシリティーズやNECビジネスインテリジェンスのほか、米国や英国、シンガポール、中国などの海外地域統括会社各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上収益は安定した成長を続けており、3兆円規模から3兆5,000億円超へと拡大しています。税引前利益も順調に増加しており、特に直近の事業年度では利益率が11.1%に大きく向上し、収益力が大幅に強化されていることがわかります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 30,141億円 | 33,130億円 | 34,773億円 | 34,234億円 | 35,827億円 |
| 税引前利益 | 1,444億円 | 1,677億円 | 1,850億円 | 2,398億円 | 3,982億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 5.1% | 5.3% | 7.0% | 11.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,413億円 | 1,145億円 | 1,495億円 | 1,752億円 | 2,702億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率を維持しつつ、営業利益が大幅に伸長しており、営業利益率は10.0%に到達しました。全体として収益性の高い事業運営が実現されています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 34,234億円 | 35,827億円 |
| 売上総利益 | 6,037億円 | 6,309億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 17.6% |
| 営業利益 | 2,565億円 | 3,599億円 |
| 営業利益率(%) | 7.5% | 10.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が1,170億円(構成比15%)、技術研究費が785億円(同10%)、業務委託費が762億円(同9%)を占めています。また、売上原価の主な内訳は、人件費が1兆212億円(構成比43%)、材料費が9,349億円(同39%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力であるITサービス事業は、国内の官公庁向け案件やデジタルトランスフォーメーション需要を背景に堅調な伸びを見せ、大幅な増益を達成しました。社会インフラ事業も防衛領域やネットワーク分野が好調に推移し、全セグメントにおいて増収を記録するなど、グループ全体の業績を力強く牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ITサービス事業 | 24,614億円 | 25,109億円 | 2,518億円 | 3,367億円 | 13.4% |
| 社会インフラ事業 | 8,356億円 | 9,384億円 | 605億円 | 743億円 | 7.9% |
| その他 | 1,389億円 | 1,464億円 | -30億円 | -41億円 | -2.8% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -221億円 | -200億円 | -% |
| 連結(合計) | 34,234億円 | 35,827億円 | 2,872億円 | 3,868億円 | 10.8% |
同社は、営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,444億円 | 4,385億円 |
| 投資CF | -1,312億円 | 34億円 |
| 財務CF | -1,040億円 | -4,180億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「Orchestrating a brighter world」をもとに、豊かな人間社会に貢献する姿を存在意義(Purpose)として掲げています。また、社会価値創造Vision「Empower Humanity ~世界に革新と安心を届ける」を策定し、AIをはじめとする先進テクノロジーを通じて社会に革新をもたらし、人間性を最大限に発揮できる社会の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
行動の原点として「NEC Way」を規定し、「創業の精神『ベタープロダクツ・ベターサービス』」「常にゆるぎないインテグリティと人権の尊重」「あくなきイノベーションの追求」を行動原則(Principles)として掲げています。また、一人ひとりの行動基準(Code of Values)により、視線を外に向け、思考をシンプルにし、情熱とスピード感を持って挑戦する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「2030中期経営計画」を策定し、財務面では本源的な事業の収益性と成長性を測る指標を重視し、非財務面では持続的な成長の基盤となる企業文化の変革と進化を目指しています。
* 2030年度におけるNon-GAAP営業利益率15%以上
* Non-GAAP営業利益2倍(2025年度比)
* Non-GAAP1株当たり純利益(EPS)成長率年平均15%以上
* エンゲージメントスコアをグローバル上位25パーセンタイル水準に到達
■(4) 成長戦略と重点施策
ITサービス事業では、IT・データ・AIを用いた価値の具体化とビジネスモデルへの変革を推進し、自社で実証した価値を「BluStellar(ブルーステラ)」として体系化して提供します。海外では買収企業との融合によりデジタル領域を強化します。社会インフラ事業では、海底ケーブルシステムや国内の防衛領域での技術的優位性を追求し、経済安全保障への貢献と市場シェアの拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
最大の経営資源を「人」と位置づけ、価値を創る「人・文化」への転換を図り、AIネイティブ企業への変革を通じて経営基盤の高度化を実現します。「変わり続ける強い個人・組織」への転換を目指し、心理的安全性と多様性を基盤としたインクルーシブな組織の実現、従業員の成長への戦略的投資、ジョブ型人材マネジメントの進化を推進し、適時適所適材による組織力の強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.1歳 | 17.3年 | 9,939,349円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.1% |
| 男性育児休業取得率 | 85.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 80.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(48%)、役員に占める女性または外国人の割合(17.2%)、DX人材のべ人数(13,492名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 適正な製品・サービスの提供
製品やシステム、サービスが多岐にわたり、サプライチェーンもグローバルに展開しています。品質上の問題やプロジェクト管理の不備が発生した場合、顧客の事業継続や社会インフラに重大な影響を及ぼし、回収措置や補償、対外的な信用失墜を招き、経営に悪影響を与えるリスクがあります。
■(2) サイバーセキュリティ
AI技術やクラウドサービスの利用拡大に伴い、サイバー攻撃が高度化・巧妙化しています。情報漏えいや業務停止、サービスの提供支障が発生した場合、顧客の事業継続に影響を及ぼし、経済安全保障上の問題にも直結するため、企業の信頼失墜や企業価値の低下につながるリスクがあります。
■(3) 人的資本と労働環境
優秀な人材の流出や採用難は事業に重要な影響を与えます。また、AIの進展に伴うスキル転換の遅れや、長時間労働による健康被害、ハラスメント等の労働環境問題が発生した場合、従業員のエンゲージメントや生産性の低下、企業の社会的評価の悪化を招き、事業目標の達成が困難になるリスクがあります。



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