※本記事は、株式会社沖電気工業 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 沖電気工業ってどんな会社?
1881年創業の老舗情報通信機器メーカーで、通信インフラ、金融・航空等の社会システムやプリンター事業等を展開しています。
■(1) 会社概要
1881年に明工舎として創業し、1949年に沖電気工業を設立、1951年に東京証券取引所へ上場しました。1994年にプリンター事業を分社化(後に再吸収)し、2008年には半導体事業を譲渡するなど事業ポートフォリオの変革を進めています。近年では2022年のプライム市場移行を経て、社会インフラを支えるソリューション提供に注力しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は13,906名、単体では4,612名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位は従業員持株会となっており、特定の事業会社による支配色は薄く、機関投資家や従業員による保有比率が高い構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 15.44% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.77% |
| 沖電気グループ従業員持株会 | 2.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員は森 孝廣氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は50%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鎌上 信也 | 取締役会長 | 1981年入社。システム機器事業本部長、常務執行役員、代表取締役社長執行役員兼最高経営責任者などを歴任し、2023年4月より現職。 |
| 森 孝廣 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年入社。株式会社沖データ代表取締役社長、沖電気工業執行役員、コンポーネント&プラットフォーム事業本部ビジネスコラボレーション推進本部長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 寺本 禎治 | 代表取締役副社長執行役員 | 1985年富士銀行入行。みずほフィナンシャルグループ専務執行役員などを経て、2021年同社入社。統合営業本部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 片桐 勇一郎 | 取締役専務執行役員 | 1984年入社。ソリューションシステム事業本部長、株式会社OKIソフトウェア代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、淺羽 茂(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)、斎藤 保(元株式会社IHI代表取締役会長)、川島 いづみ(早稲田大学社会科学総合学術院教授)、木川 眞(元ヤマトホールディングス株式会社代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「パブリックソリューション」「エンタープライズソリューション」「コンポーネントプロダクツ」「EMS」および「その他」事業を展開しています。
■パブリックソリューション事業
道路、航空、消防・防災、防衛に関連するシステムや機器、通信キャリア向け通信機器などの製造・販売、システム構築・ソリューション提供を行っています。社会インフラを支える官公庁や通信事業者などが主な顧客です。
収益は、製品の販売代金やシステム構築・ソリューション提供の対価、保守サービス料などから得ています。運営は主に沖電気工業が行うほか、株式会社OKIソフトウェアなどの子会社も関与しています。
■エンタープライズソリューション事業
ATM、現金処理機、営業店端末、予約発券端末などの製品製造・販売や、工事・保守サービスを提供しています。主な顧客は金融機関や流通・交通機関などで、店舗業務の効率化や自動化を支援しています。
収益源は、機器の販売代金や工事・保守サービス料、ATM監視・運用サービス料などです。運営は沖電気工業およびOKIクロステック株式会社などが担っています。
■コンポーネントプロダクツ事業
エッジデバイス(IoT)、センサーネットワーク、PBX、ビジネスホン、コンタクトセンターシステム、LEDプリンターなどの製品製造・販売を行っています。オフィスや製造現場など幅広い顧客に向けて機器やサービスを提供しています。
収益は、製品の販売やクラウドサービス利用料などから構成されています。運営は沖電気工業を中心に、OKI DATA MANUFACTURING (THAILAND) CO., LTD.などの海外生産子会社や販売会社が行っています。
■EMS事業
設計・生産受託サービス、プリント配線板、ケーブル・電極線などの製造・販売を行っています。医療機器や産業機器メーカーなどからの委託を受け、高度なモノづくり技術を提供しています。
収益は、受託生産や製品販売の対価として顧客から受領しています。運営は沖電気工業のほか、OKIサーキットテクノロジー株式会社や沖電線株式会社などが担当しています。
■その他
上記セグメントに含まれない用役提供や、将来事業創出に向けた活動を行っています。
収益は、用役提供の対価などです。運営は沖電気工業およびグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第99期以降増加傾向にあり、当期は4,525億円まで拡大しました。利益面では、第99期に経常損失を計上しましたが、第100期に黒字転換し、当期も黒字を維持しています。ただし、当期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ減少しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,929億円 | 3,521億円 | 3,691億円 | 4,219億円 | 4,525億円 |
| 経常利益 | 88億円 | 77億円 | -3億円 | 183億円 | 168億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 2.2% | -0.1% | 4.3% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8億円 | 21億円 | -63億円 | 236億円 | 137億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上高は増加し、売上総利益も増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益はほぼ横ばいとなりました。売上総利益率は若干改善していますが、営業利益率は前期から低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,219億円 | 4,525億円 |
| 売上総利益 | 1,054億円 | 1,134億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.0% | 25.1% |
| 営業利益 | 187億円 | 186億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が300億円(構成比32%)、支払手数料が127億円(同13%)、研究開発費が110億円(同12%)を占めています。売上原価には研究開発費は含まれていません。
■(3) セグメント収益
パブリックソリューション事業は大幅な増収増益となり、エンタープライズソリューション事業は減収減益ながらも高水準の利益を確保しました。コンポーネントプロダクツ事業は増収増益で改善が見られましたが、EMS事業は市況低迷により減収となり営業損失を計上しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| パブリックソリューション | 940億円 | 1,305億円 | 44億円 | 141億円 | 10.8% |
| エンタープライズソリューション | 1,801億円 | 1,798億円 | 220億円 | 131億円 | 7.3% |
| コンポーネントプロダクツ | 734億円 | 758億円 | 6億円 | 29億円 | 3.9% |
| EMS | 739億円 | 659億円 | 11億円 | -8億円 | -1.2% |
| その他 | 4億円 | 4億円 | -11億円 | -15億円 | -324.3% |
| 調整額 | - | - | -83億円 | -92億円 | - |
| 連結(合計) | 4,219億円 | 4,525億円 | 187億円 | 186億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
健全型:営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、本業の儲けで投資を行いながら借入返済も進めている健全な状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 247億円 | 393億円 |
| 投資CF | -143億円 | -196億円 |
| 財務CF | -157億円 | -179億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業以来の「進取の精神」を受け継ぎ、ミッションクリティカルな社会インフラを支える商品・サービスの提供を通じて、地球上のすべての人々の生活の基盤を向上させることを使命としています。「社会の大丈夫を作っていく。」企業として、情報社会の発展と世界の人々の快適で豊かな生活の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来の「進取の精神」を脈々と受け継ぎ、常に現場の顧客の課題に寄り添う姿勢を重視しています。止まることが許されない重要な社会インフラを支える責任感を持ち、誠実な企業活動を実践する文化があります。また、全員参加型イノベーションや、多様な人材が前向きに挑戦できる組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2025」では、「成長へ舵を切り、縮小均衡から脱却する」を基本方針とし、2019年度水準への業績回復と財務基盤の回復、将来事業の創出をテーマに掲げています。
* 売上高:4,500億円
* 営業利益:180億円
* 自己資本比率:30%
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2025」に基づき、パブリックソリューション等の成長事業の拡大とEMS事業の収益力回復、エンタープライズソリューション等の安定化事業での効率化を進めています。将来事業創出として、CFB(Crystal Film Bonding)技術を用いたフォトニクスやパワー半導体の量産化準備、シリコンバレー拠点の活用によるオープンイノベーションを推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資本と位置づけ、多様な人材が前向きに挑戦できる環境整備と成長支援に取り組んでいます。経営戦略実現のため、女性活躍推進や外部人材獲得による多様性の確保、若手・中堅社員への自律的な成長機会の提供、健康経営や育児両立支援など安心・安全な職場環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.2歳 | 19.1年 | 7,810,663円 |
※平均年間給与は賞与及び時間外手当を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、肥満者率(30.7%)、ストレスチェック受検率(88.8%)、運動習慣定着率(26.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 世界の政治経済の動向
海外市場での売上が一定割合を占めるため、各地域の政治経済状況の変化、エネルギー不足、物価上昇、サプライチェーンの混乱等が業績に影響を与える可能性があります。また、各国の金融引き締めによる景気後退や規制変更もリスク要因です。これに対し、状況のモニタリングや調達先の拡大等で対応しています。
■(2) カントリーリスク
海外に多数の拠点を有しており、感染症による混乱、クーデターや紛争、自然災害等のリスクがあります。これにより生産や物流が停滞し事業に影響が及ぶ可能性があります。リスク顕在化時には代替ルートの確保等の対応を行うほか、採算性等から継続困難と判断した場合は撤退も検討する方針です。
■(3) 外国為替の影響
海外事業展開や生産を行っているため、為替変動の影響を受けます。特に米ドルやユーロの変動は営業利益に影響を与える可能性があります。これに対し、為替予約やマリー取引等によるリスクヘッジを実施し、影響の抑制に努めています。
■(4) 金融市場・金利変動
有利子負債を有しており、金融市場や信用力の変動による金利上昇が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、保有する株式や年金資産の価値変動リスクもあります。金利スワップ取引の活用や健全な借入レベルの維持、保有株式の縮減等により影響の抑制を図っています。



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