※本記事は、山洋電気株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 山洋電気ってどんな会社?
冷却ファンやサーボモータ等の精密電気機器を製造・販売し、世界のトップブランド構築を目指すメーカーです。
■(1) 会社概要
1927年に創業し、電気部品の輸入販売を開始しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2013年に市場第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。2024年4月には、経営基盤と事業体制の強化を目的として社内カンパニー制を導入しました。
連結従業員数は3,646名、単体では1,181名です。筆頭株主は「協同興業」という法人で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には外国法人が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 協同興業 | 15.47% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.99% |
| INTERTRUST TRUSTEES CAYMAN LIMITED AS TRUSTEE OF JAPAN-UP UNIT TRUST | 9.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名(うち監査役2名)の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表者は会長の山本茂生氏と社長の児玉展全氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 児玉 展全 | 代表取締役社長執行役員 | 1978年入社。クーリングシステム、サーボシステム、パワーシステム各事業部長を歴任。2014年専務執行役員、2018年代表取締役副社長を経て、2020年6月より現職。 |
| 山本 茂生 | 代表取締役会長執行役員 | 1983年入社。1991年常務取締役、1994年代表取締役社長を経て、2020年6月より現職。 |
| 中山 千裕 | 取締役専務執行役員 | 1988年入社。クーリングシステム事業部事業部長などを経て、2020年4月より現職。カンパニー統括、殻を破る活動、財務を担当。 |
| 松本 吉正 | 取締役専務執行役員 | 1983年入社。海外営業部部長、営業本部本部長などを経て、2023年4月より現職。営業部門統括、グループ会社を担当。 |
社外取締役は、栗原慎(元TI Automotive Japan社長)、三宅雄大(弁護士)、宮城典子(元りそなビジネスサービス専務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「サンエースカンパニー」「エレクトロニクスカンパニー」「モーションカンパニー」および「その他」事業を展開しています。
■(1) サンエースカンパニー
冷却ファン「San Ace」などの設計・製造・販売を行っています。通信装置、サーバ、電源装置などの冷却用途として、情報通信機器メーカーや産業機器メーカーなどに製品を提供しています。
製品の販売対価として顧客から収益を得ています。運営は主に山洋電気(親会社)が行っており、製造はフィリピンや中国の子会社等が、販売は各国の販売子会社等が担当しています。
■(2) エレクトロニクスカンパニー
無停電電源装置(UPS)「SANUPS」、サーボアンプ、ステッピングドライバなどの設計・製造・販売を行っています。金融機関やデータセンタ等のバックアップ電源や、産業機械の制御用途として利用されています。
製品の販売対価として顧客から収益を得ています。運営は主に山洋電気(親会社)が行っており、製造・販売体制についてはグループ各社と連携して事業を展開しています。
■(3) モーションカンパニー
サーボモータ、ステッピングモータ「SANMOTION」などの設計・製造・販売を行っています。半導体製造装置、ロボット、工作機械などの駆動源として、産業機械メーカー等に製品を提供しています。
製品の販売対価として顧客から収益を得ています。運営は主に山洋電気(親会社)が行っており、長野県上田市の工場やフィリピン子会社等で製造を行っています。
■(4) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、電気機器の販売や電気工事などを行っています。産業用電気機器、制御機器、電気材料の販売や、一般産業向けおよび鉄鋼業界向けの電気設備工事などを手掛けています。
機器販売および工事請負の対価として顧客から収益を得ています。運営は主に連結子会社の山洋工業などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2023年3月期までは売上・利益ともに拡大基調にありましたが、直近2期間は減収減益傾向にあります。特に当期は、通信装置やロボット等の需要低調が響き、利益率も低下しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 775億円 | 1,011億円 | 1,208億円 | 1,129億円 | 978億円 |
| 税引前利益 | 50億円 | 118億円 | 142億円 | 133億円 | 80億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 11.7% | 11.8% | 11.8% | 8.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 39億円 | 90億円 | 114億円 | 105億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の減少に伴い、売上総利益および営業利益が縮小しました。売上総利益率は若干低下していますが、営業利益率は8.1%を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,129億円 | 978億円 |
| 売上総利益 | 289億円 | 251億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.6% | 25.7% |
| 営業利益 | 118億円 | 79億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付が94億円(構成比53%)、その他費用が35億円(同20%)、試験研究費が29億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで減収となりました。特にモーションカンパニーは半導体製造装置やロボット向け需要の低迷により大幅な減収減益となりました。サンエースカンパニーやエレクトロニクスカンパニーも需要減により利益を落としています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| サンエースカンパニー | 430億円 | 381億円 | 86億円 | 69億円 | 18.0% |
| エレクトロニクスカンパニー | 238億円 | 211億円 | 15億円 | 5億円 | 2.3% |
| モーションカンパニー | 404億円 | 330億円 | 16億円 | 3億円 | 0.9% |
| その他 | 79億円 | 75億円 | 1億円 | 3億円 | 3.7% |
| 調整額 | -22億円 | -19億円 | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 1,129億円 | 978億円 | 118億円 | 79億円 | 8.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は「健全型」です。本業で得た資金(営業CFプラス)の範囲内で投資(投資CFマイナス)を行い、借入金の返済(財務CFマイナス)を進めている、財務的に安定した状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 215億円 | 158億円 |
| 投資CF | -65億円 | -37億円 |
| 財務CF | -107億円 | -97億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私たち山洋電気グループは、すべての人々の幸せをめざし、人々とともに夢を実現します。」という企業理念を掲げています。この理念を通じて、人間社会における存在価値を高めることを目指しています。
■(2) 企業文化
企業理念遂行のため、社会・環境、顧客、協力会社、投資家、同業者、社員の6つのステークホルダーに対する経営理念と行動規範を定めています。また、「殻を破る」をテーマに、新しいものややり方を創出し、どんな変化も得意にできる企業体質を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2021年4月から5カ年の「第9次中期経営計画」を推進しており、「殻を破る」ことと「世界のトップブランド」の構築を目指しています。中長期的には以下の数値目標を掲げています。
* ROE 10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「殻を破る」をテーマに、新市場の開拓や新製品開発、新ビジネスの創出を推進しています。2024年4月からは社内カンパニー制を導入し、各カンパニーの独立性を高め、意思決定の迅速化を図っています。また、「狭くて深い」市場から「広くて深い」市場への展開を目指しています。
* フィリピン第4工場の本格稼働による生産体制強化
* 中国・成都への新会社設立による販売・支援強化
* 生産技術エンジニアリングサービスの開始による新ビジネス拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員一人ひとりが仕事を通じて自己実現を図れる会社を目指しています。人材の採用や評価においては、性別や国籍等による差別をせず、能力と成績を公平・公正に評価することを方針としています。また、グローバル経営推進のため、現地人材の経営層や管理職への登用を積極的に行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.8歳 | 16.8年 | 6,319,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.9% |
| 男性育児休業取得率 | 46.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康リスク値が低い職場比率(95.6%)、有所見率(70.4%)、運動習慣者比率(22.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動のリスク
主要な販売市場である工作機械、ロボット、半導体製造装置などの業界は景気動向の影響を受けやすく、国内外の景気が低迷した場合、設備投資の抑制などにより受注が減少し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 急速な技術革新のリスク
急速な技術革新や顧客ニーズの変化により、既存製品の陳腐化が進み、競合優位性が損なわれる可能性があります。技術やニーズの変化に適切に対処できない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) グローバル展開におけるリスク
海外市場での事業拡大において、地政学的要因、法規制、税制などの変化に起因するリスクが存在します。これらに適切に対処できない場合や多額の対策費用が発生した場合、グローバル展開および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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