※本記事は、フタバ産業株式会社の有価証券報告書(第112期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フタバ産業ってどんな会社?
自動車部品や外販設備などの製造販売をグローバルに展開し、ものづくり技術で社会に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1935年に関東重工業として設立され、1946年に現在のフタバ産業へ社名変更しました。1948年に自動車部品の生産を開始し、これを主力事業として成長を遂げました。1968年の名証上場を経て、1986年には東証および名証第一部への上場を果たし、グローバルでの生産拠点拡充を進めています。
現在の従業員数は連結で10,104名、単体で4,036名です。筆頭株主は主要な販売先であり資本関係を有する事業会社のトヨタ自動車で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には同社の取引先等で構成されるフタバ協力会持株会が名を連ねており、事業を支える関係者による保有が見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 31.48% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.03% |
| フタバ協力会持株会 | 3.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は魚住吉博氏が務めており、取締役における社外取締役の割合が高い体制となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 魚住吉博 | 代表取締役社長 | 元トヨタ自動車中国本部副本部長、広汽トヨタ自動車取締役社長。2022年6月より現職。 |
| 横田利夫 | 代表取締役 | 同社排気系開発部部長、技術本部長、事業開発本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 今井英樹 | 取締役 | 元トヨタ自動車BR経理情報高度化推進室グループ長。同社経理・財務本部長等を経て現職。 |
社外取締役は、市川昌好(元豊田合成副社長)、宮部義久(現トヨタ自動車元町工場長)、山本英男(元小糸製作所常務執行役員)、末永久美子(弁護士・大江橋法律事務所カウンセル)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「中国」「アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。
■日本
自動車等車両部品、環境機器部品および外販設備などの製造販売を行っています。主な顧客はトヨタ自動車をはじめとする国内外の自動車メーカーです。
自動車メーカーなどからの製品販売代金を主な収益源としています。運営は同社およびフタバ九州などの子会社が行い、製造ならびに直接販売を担っています。
■北米
北米地域において自動車等車両部品の製造販売を行っています。現地に進出している日系自動車メーカーなどを主要な顧客として製品を供給しています。
顧客からの自動車部品の販売代金を収益源としています。運営はFICアメリカやFIOオートモーティブカナダなどの現地子会社が行い、各地域での販売網を構築しています。
■欧州
欧州地域において自動車等車両部品の製造販売を行っています。現地の自動車メーカーの生産拠点に対して、部品の安定供給を担っています。
製品の販売による代金が主な収益源です。運営はフタバマニュファクチャリングUKやフタバチェコといった欧州の現地子会社が担い、事業活動を展開しています。
■中国
中国地域において自動車等車両部品の製造販売を行っています。世界最大の自動車市場である同国において、自動車メーカーのニーズに応える製品を提供しています。
製品の販売代金を収益源としています。運営は広州双叶汽車部件や天津双叶協展機械などの中国現地子会社が行い、現地での製造と直接販売を推進しています。
■アジア
中国を除くアジア地域において自動車等車両部品の製造販売を行っています。インドやインドネシアなどの新興国市場を中心に、自動車メーカーへ部品を供給しています。
部品の販売代金を主な収益源としています。運営はFMIオートモーティブコンポーネンツやフタバインダストリアルインドネシアなどの現地子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が増減を伴いながら推移する一方、利益面では収益性の改善が進んでいます。原材料価格や為替の変動などの影響を受けつつも、合理化の推進や価格転嫁の効果により、経常利益率は上昇傾向にあり、安定した利益水準を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5721億円 | 7081億円 | 7958億円 | 7071億円 | 6779億円 |
| 経常利益 | 78億円 | 78億円 | 185億円 | 133億円 | 208億円 |
| 利益率(%) | 1.4% | 1.1% | 2.3% | 1.9% | 3.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 57億円 | 107億円 | 128億円 | 129億円 | 110億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が減少した一方で、売上総利益と営業利益は増加しています。支給品単価の変動等の影響を除く実質売上高の増加や、継続的な原価低減、価格改定の取り組みが奏功し、各段階の利益率が向上していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7071億円 | 6779億円 |
| 売上総利益 | 458億円 | 493億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.5% | 7.3% |
| 営業利益 | 152億円 | 187億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が104億円(構成比34%)、運賃及び荷造費が73億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、欧州とアジアで増収となった一方、日本、北米、中国では減収となりました。欧州やアジアでは生産台数の増加が寄与しましたが、北米等では為替影響や材料建値の下降などが影響し、地域ごとに明暗が分かれる結果となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 3174億円 | 3085億円 |
| 北米 | 2063億円 | 1778億円 |
| 欧州 | 616億円 | 681億円 |
| 中国 | 705億円 | 626億円 |
| アジア | 513億円 | 610億円 |
| 連結(合計) | 7071億円 | 6779億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の優良企業といえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 248億円 | 383億円 |
| 投資CF | -232億円 | -264億円 |
| 財務CF | -104億円 | -64億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、パーパス・ミッション・バリューに基づき、「環境」「安心」「豊かな生活」の分野で価値を提供していくことを存在理由として掲げています。社会が大きく変わる中でも、新しい価値の創出に挑戦し続け、持続可能な社会に向けて貢献していくことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
従業員一人ひとりが働きがいを感じ、その能力を発揮してグループ一丸となって取り組む「全員活躍」の実現を重視する文化があります。また、「FUTABA WAY」や「フタバ行動指針」に基づく高い倫理観と、公正で透明な企業活動を実践する行動様式を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値の向上を目指して、2025年度から2027年度までを計画期間とする中期経営計画を策定しています。財務体質の強化や資本収益性の向上を重要指標に据え、グローバルでの安定的成長を見据えた活動を進めています。
* 営業利益率(対支給品を除く売上高) 5.0%
* ROE(自己資本利益率) 10.0%以上
* 工場のCO2排出量 2030年度(2019年度比) 50%以上削減
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画を「成長投資の期間」と位置づけ、既存事業の成長、新規事業の事業化、経営基盤の強化に取り組んでいます。ボデー系部品の開発力向上や、排気系部品の電動化ニーズに合わせたシステム開発を進めるとともに、インドなど成長市場での拠点拡大と事業基盤強化に注力しています。
* ボデー系部品事業:売上拡大に向けた開発・能力向上
* 排気系部品事業:電動化ニーズに合わせた新たなシステム開発
* 新規事業:開発を加速し早期事業化
* インド事業:成長市場での拠点拡大と事業基盤強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「人への投資(人的資本の強化)」を最重要テーマに掲げ、「人材マネジメント改革」と「人事制度改革」を推進しています。採用・育成から適材適所の配置までを丁寧に行い、従業員一人ひとりが活き活きと働き、期待を上回る価値を生み出せる「全員活躍」の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.9歳 | 16.0年 | 6,821,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 78.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 74.0% |
| 男女賃金差異(正規従業員) | 72.8% |
| 男女賃金差異(非正規従業員) | 83.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) トヨタ自動車への依存リスク
同社グループは、売上高の大半を自動車等車両部品が占めており、特にトヨタ自動車向けの依存度が高い事業構造となっています。同社の生産動向や購買政策の変更などがあった場合、グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資材調達に関するリスク
生産に必要な資材については、品質やコストの維持・改善を図りつつ安定調達に努めています。しかし、地政学的緊張の高まりや紛争などに起因して、資材の調達遅延や調達コストの増加が発生し、生産活動が停滞した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 自動車の電動化に関するリスク
自動車業界は電気自動車(BEV)への切り替えなど、電動化への動きが急速に進んでいます。この変化への対応が遅れた場合、既存および新規ビジネスの機会を逸する懸念があります。そのため、電動車向け関連部品の研究開発や新規事業への取り組みを推進しています。



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