※本記事は、株式会社ミツバ の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミツバってどんな会社?
自動車用ワイパーモーターやスターターモーター等の電装品を主力とし、グローバルに事業を展開する独立系自動車部品メーカーです。
■(1) 会社概要
1946年に群馬県桐生市で株式会社三ツ葉電機製作所として設立され、自転車用発電ランプの生産から始まりました。1988年に東京証券取引所第二部へ上場し、翌1989年に同第一部へ指定替えとなりました。1996年に現在の株式会社ミツバへ商号変更しています。2007年には自動車電機工業株式会社を吸収合併し、事業基盤を拡大しました。
2025年3月31日現在の連結従業員数は21,887名(単体3,270名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)、第2位は取引銀行である株式会社横浜銀行、第3位はミツバ取引先企業持株会となっています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名(社外取締役)の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は日野貞実氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 日野 貞実 | 代表取締役社長 社長執行役員品質保証管掌事業統括 | 株式会社DTSを経て2009年同社入社。営業統括、情報システム統括、四輪事業責任者などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 武 信幸 | 代表取締役副社長執行役員管理統括経営企画統括 | 1981年同社入社。経営企画統括、環境管理統括、総務・人事統括、財務統括などを歴任し、2020年6月より現職。 |
| 杉山 雅彦 | 取締役常務執行役員財務統括 | 1986年株式会社横浜銀行入行。同行執行役員、中部地域本部長などを経て2020年5月同社入社。2021年4月より現職。 |
| 北田 勝義 | 取締役相談役 | 1976年同社入社。常務執行役員、事業統括、品質保証管掌、代表取締役社長などを経て2024年6月より現職。 |
| 今井 秀夫 | 取締役(監査等委員) | 1976年自動車電機工業株式会社(現同社)入社。品質保証統括、内部監査担当などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、段谷繁樹(元双日株式会社副会長執行役員)、丹治宏彰(元HOYA株式会社取締役執行役最高技術責任者)、中井陽子(ルーチェ法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「輸送用機器関連事業」、「情報サービス事業」および「その他」事業を展開しています。
**(1) 輸送用機器関連事業**
四輪車および二輪車向けのワイパーシステム、スターターモーター、ファンモーター、パワーウインドウモーターなどを製造・販売しています。自動車メーカー等の顧客に対し、安全性や快適性を提供する製品を供給しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受領します。運営は、株式会社ミツバ、株式会社タツミ、東日本ダイカスト工業株式会社、アメリカン・ミツバ・コーポレーションなどの国内外の子会社が担っています。
**(2) 情報サービス事業**
システムインテグレーションサービス、システム開発、ソフトウエア開発などを提供しています。自治体や民間企業などの顧客に対し、情報システムの構築や運用支援を行っています。
収益は、システムの開発費用やサービスの利用料として顧客から受領します。運営は、主に株式会社両毛システムズが行っています。
**(3) その他事業**
自動車部品・用品の開発・販売(市販品)、受託代行事業、電気工事業、土木建設業などを展開しています。一般消費者やグループ会社向けに多様なサービスを提供しています。
収益は、製品販売や工事代金、業務受託料として受領します。運営は、株式会社ミツバサンコーワ、株式会社オフィス・アドバン、株式会社三興エンジニアリングなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第76期から増加傾向にあり、第80期には3,494億円に達しています。利益面では第76期、第78期に赤字を計上しましたが、第79期以降は黒字化し、利益率も回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,692億円 | 2,865億円 | 3,195億円 | 3,442億円 | 3,494億円 |
| 経常利益 | 87億円 | 75億円 | 60億円 | 223億円 | 198億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 2.6% | 1.9% | 6.5% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 1億円 | 12億円 | 137億円 | 119億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。一方で、販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は前期比で微減となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,442億円 | 3,494億円 |
| 売上総利益 | 525億円 | 543億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.2% | 15.5% |
| 営業利益 | 212億円 | 209億円 |
| 営業利益率(%) | 6.1% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運搬費保管料が80億円(構成比23.9%)、役員報酬・給料・賞与が71億円(同21.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別では、主力の輸送用機器関連事業が売上高の大半を占めていますが、利益率は情報サービス事業やその他事業の方が高い傾向にあります。情報サービス事業とその他事業は増収となりましたが、その他事業は減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 輸送用機器関連事業 | 3,227億円 | 3,228億円 | 186億円 | 182億円 | 5.6% |
| 情報サービス事業 | 162億円 | 203億円 | 18億円 | 22億円 | 10.6% |
| その他事業 | 52億円 | 62億円 | 7億円 | 6億円 | 9.5% |
| 連結(合計) | 3,442億円 | 3,494億円 | 212億円 | 209億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動により資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化し、財務活動で資金調達や株主還元を行っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権・棚卸資産の減少、仕入債務の増加により、プラスとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や自己株式の取得による支出が主な要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 415億円 | 380億円 |
| 投資CF | -52億円 | -69億円 |
| 財務CF | -138億円 | -339億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界の人々に喜びと安心を提供する」ことを理念として掲げています。技術をドライビングフォースとして新たな価値を生み出し、市場の創造に挑戦し続けること、そして一人ひとりの社員が企業革新の担い手となり成長し、人と企業が共に生かされる経営を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、理念の共有化・浸透を図り、行動のベクトルを合わせることを基本方針としています。経営や商品・サービスの品質向上により選ばれる企業集団を目指し、積極的な事業展開を進めています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度よりスタートした中期経営計画では、「モビリティ社会の期待に応え持続的成長企業へ」をスローガンとしています。「ミツバビジョン2030」の実現に向け、①モビリティ進化への対応、②経営基盤の強化、③財務体質の健全化を柱とする3つの経営方針を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「モビリティ進化への対応」として、電動化ニーズの高まりを機会と捉え、コア技術であるモーター技術と制御技術の進化・融合により新規ビジネスチャンスの拡大を図ります。特にインド等の成長国でのシェア拡大を目指します。また、グローバル品質コストの最適化や生産供給体制の再構築による経営基盤の強化、成長分野への経営資源シフトによる安定した事業ポートフォリオの確立を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、「人を活かし、人に生かされる企業となる」を経営理念の一つとして掲げ、人材の多様性(ダイバーシティ)の確保と育成を重視しています。「ミツバグループ人権労働方針」を制定し、差別やハラスメントの防止、働きやすい労働環境の提供、安全衛生、健康増進、エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.9歳 | 19.5年 | 5,708,866円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 2.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 57.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 69.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 68.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 75.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(100%)、リスキリング受講率(94%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
**(1) 経済状況・為替の変動**
原材料やエネルギーコストの高騰、新興国通貨の急激な変動、外貨建て調達資材の価格上昇などのリスクがあります。これらに対し、原材料使用量の削減、売価への反映、カーボンニュートラル活動によるエネルギー効率化、為替予約などの対策を行っています。
**(2) 自然災害・感染症等**
自然災害による事業停止や操業率低下、サプライチェーンの分断などのリスクがあります。グローバル生産管理体制による最適マネジメント、材料調達のセカンドソース開拓、生産拠点の分散化、BCP(事業継続計画)の策定と訓練などを実施しています。
**(3) カントリーリスク**
進出先における法規制や通商政策の変更、政治・経済状況の変化、戦争・テロなどのリスクがあります。グローバル生産管理体制による最適マネジメント、重点管理リスクの絞り込みとシナリオ分析、定期的なモニタリングによる迅速な経営判断を行っています。



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