ミツバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミツバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミツバは東京証券取引所プライム市場に上場し、ワイパーやスターターモーターなどの輸送用機器関連事業と情報サービス事業を主力としています。直近の業績は、中国エリアの四輪事業の不振による影響等で売上高は3486億円と微減でしたが、アジアや南米での二輪事業の好調に支えられ、営業利益は239億円と増益を確保しています。


※本記事は、株式会社ミツバの有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ミツバってどんな会社?


同社グループは、自動車用ワイパーシステムやモーター製品等の製造を中心とした輸送用機器関連事業をグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


同社は1946年3月に三ツ葉電機製作所として設立され、自転車用発電ランプの生産販売からスタートしました。1956年にワイパーモーターの生産販売を開始して事業を拡大し、1988年2月に東京証券取引所市場第二部へ上場、翌1989年に同市場第一部へ指定替えを果たしました。1996年10月に現在のミツバへ商号変更しています。直近では2025年4月にタツミを完全子会社化するなど、経営基盤の強化と事業再編を進めています。

現在、同社グループは連結で21,202名、単体で3,328名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社の横浜銀行、第3位はミツバ取引先企業持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.49%
横浜銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) 4.78%
ミツバ取引先企業持株会 4.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は日野貞実氏が務めています。社外取締役の比率は37.5%(8名中3名)です。

氏名 役職 主な経歴
日野 貞実 代表取締役社長社長執行役員品質保証管掌事業統括 2003年4月DTS入社。2009年7月同社入社。四輪事業責任者や事業統括などを経て、2024年6月より現職。
武 信幸 代表取締役副社長執行役員管理統括経営企画統括 1981年4月同社入社。常務執行役員などを経て2020年4月副社長執行役員に就任。同年6月代表取締役となり、2021年4月より現職。
山崎 武志 取締役専務執行役員事業副統括事業統括担当 1981年4月同社入社。第一事業責任者や電動化ソリューション事業責任者などを経て、2025年6月より現職。
杉山 雅彦 取締役常務執行役員財務統括 1986年4月横浜銀行入行。執行役員営業本部副本部長などを経て、2020年5月同社入社、常務執行役員に就任。同年6月より現職。
今井 秀夫 取締役(監査等委員) 1976年3月自動車電機工業(現同社)入社。品質保証統括などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、段谷繁樹(元日商岩井代表取締役副社長執行役員)、丹治宏彰(元旭テック代表執行役社長)、中井陽子(ルーチェ法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸送用機器関連事業」、「情報サービス事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 輸送用機器関連事業


四輪車向けのワイパーシステムやパワーウインドウモーター、二輪車向けのスターターモーターといった自動車用電装部品の製造および販売を行っています。顧客は国内外の自動車メーカーや二輪車メーカーなどです。
収益源は、これらメーカーへの製品販売を通じた対価です。運営は同社のほか、タツミ、アメリカン・ミツバ・コーポレーションなど、日本、米州、アジア、欧州などに展開する国内外の子会社が幅広く担っています。

(2) 情報サービス事業


地方自治体や学校、エネルギー事業者などに向けたシステムインテグレーションサービス、システム開発、ソフトウェア開発などを提供しています。
収益源は、顧客からのシステム開発代金やサービス提供に対する対価です。この事業の運営は、主に子会社である両毛システムズが中心となって推進しています。

(3) その他事業


自動車部品や用品の開発・販売のほか、電気工事業、土木建設業、さらには企業内託児施設の運営などの事業を展開しています。
収益源は、電気・建築・土木工事の代金や市販商品の販売対価などです。運営はミツバサンコーワ、三興エンジニアリング、オフィス・アドバンなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定的に3000億円台を維持しており、一時的な落ち込みを経て直近2期間は経常利益、当期利益ともに回復基調にあります。特に2026年3月期の経常利益は239億円となり、収益性の向上が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2865億円 3195億円 3442億円 3494億円 3486億円
経常利益 75億円 60億円 223億円 198億円 239億円
利益率(%) 2.6% 1.9% 6.5% 5.7% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 -5億円 128億円 154億円 100億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上総利益と営業利益はそれぞれ増加し、利益率も改善しています。コスト削減や採算性の向上が営業利益の増加に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3494億円 3486億円
売上総利益 543億円 570億円
売上総利益率(%) 15.5% 16.3%
営業利益 209億円 239億円
営業利益率(%) 6.0% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬・給料・賞与が75億円(構成比23%)、運搬費保管料が69億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の輸送用機器関連事業が売上高の大部分を占めており、ほぼ横ばいで推移しています。一方、情報サービス事業は地方自治体のシステム対応などの需要を捉え、堅調に売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
輸送用機器関連事業 3228億円 3201億円
情報サービス事業 203億円 233億円
その他事業 62億円 52億円
連結(合計) 3494億円 3486億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 380億円 286億円
投資CF -69億円 -117億円
財務CF -339億円 -173億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ミツバは、ミツバを愛しささえる人々とともに、社会と環境に調和した技術の創造を通して、世界の人々に喜びと安心を提供する」という企業理念を掲げています。電動化への最適ソリューションで脱炭素社会の実現に貢献し、共に成長し続ける企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


「技術」をドライビングフォースとし、新たな価値を生み出し、市場の創造に挑戦し続ける文化を重視しています。一人ひとりの社員が企業革新の担い手となることによって成長し、「人を活かし、人に生かされる」経営を目指す価値観が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「モビリティ社会の期待に応え持続的成長企業へ」をスローガンとする中期経営計画を推進しています。環境と財務の両面から具体的な目標を設定し、グループ一丸となって持続的成長を目指しています。

* 2030年にScope1,2グループCO2排出量を50%削減(2018年度比)
* 2031年3月期までに連結配当性向30%水準の達成

(4) 成長戦略と重点施策


モビリティ進化への対応、経営基盤の強化、財務体質の健全化を柱としています。自動車業界の電動化ニーズの高まりをビジネスチャンスと捉え、コア技術であるモーター技術と制御技術の進化・融合によりCASE対応を進めます。また、新規ビジネス室を新設し、自動車関連以外の成長ビジネス獲得も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を活かし、人に生かされる企業となる」を経営理念の一つとし、多様性(ダイバーシティ)の実現を重視しています。経営戦略と連動した人材マネジメントを進め、能力開発・育成体系の高度化や適材適所の実現により、組織力の最大化と従業員エンゲージメントの向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 19.1年 5,964,590円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 54.1%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.0%
男女賃金差異(パート・有期) 76.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ労災発生件数(15件)、健康診断受診率(100%)、グループ障がい者雇用率(3.0%)、階層別教育研修受講終了率(97.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車電装部品業界の競争激化

メガサプライヤーや海外ローカルサプライヤーとの価格競争、さらには異業種からの新規参入などにより、競争環境が激化するリスクがあります。これに対し、コンピタンス技術の磨き上げによる差別化や新商品創出を進めています。

(2) サプライチェーンに関わるカントリーリスク

戦争やテロの発生、予期しない法規制や通商政策の変化により社会的・経済的混乱が生じるリスクがあります。グローバルでの需給調整や代替材の検討などを通じ、サプライチェーン統制の強化を図っています。

(3) 情報セキュリティリスク

サイバー攻撃によって生産の停止や重要な機密情報の漏洩が発生するリスクがあります。サイバー攻撃に対するセキュリティの強化に加え、情報セキュリティに関する社内教育や重要なシステムのバックアップ・冗長化などの対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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