リコー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リコー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リコーは東京証券取引所プライム市場に上場し、デジタルサービスやオフィス向け画像機器などのデジタルプロダクツ事業を展開しています。直近の業績は、オフィスサービス事業の成長や企業価値向上プロジェクトの効果により、売上収益および税引前利益ともに増収増益を達成しており、収益性の改善が進んでいます。


※本記事は、株式会社リコーの有価証券報告書(第126期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. リコーってどんな会社?

オフィス向け複合機をはじめとする画像機器の開発・生産と、ワークプレイス全体の変革を支援するデジタルサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要

同社は1936年に理研感光紙として設立され、1949年に株式を公開しました。1963年に現在のリコーに商号を変更しています。直近ではデジタルサービス領域の強化を進めており、2022年にスキャナーやITインフラ構築を手がけるPFUを買収し連結子会社化しました。さらに2024年には東芝テックと複合機等の開発・生産を担う合弁会社エトリアを組成するなど、事業基盤の再構築を積極的に行っています。

現在の連結従業員数は75,635名、単体では4,596名となっています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位には外資系金融機関の関連会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.00%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) 7.85%
日本カストディ銀行(信託口) 5.77%

(2) 経営陣

同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役CEOは大山晃氏が務めており、経営の透明性を高めるために社外取締役を5名選任しています。

氏名 役職 主な経歴
大山 晃 代表取締役CEO 1986年同社入社。欧州販売事業本部長等を経て、CFO、CMOを歴任。2021年リコーデジタルサービスビジネスユニットプレジデント。2023年より現職。
山下 良則 取締役 会長指名委員 1980年同社入社。米州関連会社社長等を経て、2014年ビジネスソリューションズ事業本部長。2017年代表取締役社長執行役員CEOに就任。2025年より現職。
川口 俊 取締役CFO 1986年同社入社。米州関連会社CFOや社長等を歴任。リコーリース執行役員等を経て、2021年同社財務統括部長。2022年CFOに就任。2023年より現職。


社外取締役は、横尾敬介(ソナー・アドバイザーズ会長)、谷定文(時事総合研究所顧問)、石村和彦(産業技術総合研究所理事長)、石黒成直(TDK会長・指名委員長)、武田洋子(三菱総合研究所常務研究理事)です。

2. 事業内容

同社グループは、デジタルサービス、デジタルプロダクツ、グラフィックコミュニケーションズ、インダストリアルソリューションズおよびその他の事業を展開しています。

(1) デジタルサービス

オフィス向け複合機やプリンター等の画像機器および消耗品の提供をはじめ、ITサービスやワークフロー全体の変革を支援するオフィスサービスをグローバルな顧客基盤に向けて提供しています。
複合機などの販売代金や保守サービス料金、ITサービスの利用料などを顧客から受け取る収益モデルです。運営は主に同社およびリコージャパン、米州・欧州などの各地域の販売子会社が行っています。

(2) デジタルプロダクツ

世界トップシェアを有するオフィス向け複合機をはじめ、プリンターやスキャナーなどの画像機器の開発と生産を行っています。また、デジタルによるコミュニケーションを支えるエッジデバイスの製造やOEM供給にも取り組んでいます。
製品の販売代金やOEM供給による対価を収益源としています。設計および開発は同社やエトリアが行い、生産はエトリアやリコーインダストリー、PFUなどの国内外の生産子会社が担当しています。

(3) グラフィックコミュニケーションズ

印刷業を営む顧客向けに多品種少量印刷に対応可能なデジタル印刷関連の製品を提供する商用印刷事業と、建材や家具、壁紙など多様な印刷を可能とする産業用インクジェットヘッド等を扱う産業印刷事業を展開しています。
印刷機器の販売代金や、インクなどの消耗品代金、保守サービス料金を顧客から受け取ります。運営は同社およびリコーインダストリー等の生産子会社、国内外の各販売子会社が担っています。

(4) インダストリアルソリューションズ

製造、流通、物流、医療の現場で使われるバーコードラベル用の感熱紙や熱転写リボンなどを製造・販売するサーマル事業と、製造業向けの自動化設備や自動車業界向けの精密部品を扱う産業プロダクツ事業を展開しています。
感熱紙などの消耗品販売、および自動化設備や精密部品の販売代金を収益源としています。生産および販売は同社ならびにリコーエレメックス、米州・欧州・中国等の関連子会社が行っています。

(5) その他

360度カメラにソフトウェアやクラウドサービスを組み合わせ、不動産や建設等の現場のデジタル化に寄与するSmart Vision事業のほか、新規事業やデジタルカメラ関連事業などを展開しています。
カメラ本体の販売代金や、クラウドサービスの利用料などを顧客から受け取ります。運営は同社およびリコーイメージング、リコークリエイティブサービスなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあり、オフィスサービス事業の成長等により増収を続けています。税引前利益は一時的な増減があるものの、直近では高収益なサービスポートフォリオの拡大や業務効率化の進展により過去5年で最も高い水準となり、収益性の改善が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 17,586億円 21,342億円 23,490億円 25,279億円 26,083億円
税引前利益 444億円 813億円 682億円 701億円 923億円
利益率(%) 2.5% 3.8% 2.9% 2.8% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 304億円 544億円 442億円 457億円 557億円

(2) 損益計算書

売上高は前年から増加しており、営業利益も大幅な増益となっています。オフィスサービス事業におけるストック収益の積み上げや、企業価値向上プロジェクトの推進によるコスト構造の見直しが利益水準の改善に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 25,279億円 26,083億円
売上総利益 1,657億円 1,714億円
売上総利益率(%) 6.6% 6.6%
営業利益 638億円 907億円
営業利益率(%) 2.5% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が375億円、業務委託費が232億円、給与及び賃金が219億円を占めています。

(3) セグメント収益

デジタルサービスはITサービスやアプリケーションの好調により増収ですが、システム統合等の一時費用により減益となりました。デジタルプロダクツは合弁会社設立に伴う製品販売等により増収増益です。インダストリアルソリューションズはコストダウン等により黒字転換を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
デジタルサービス 19,301億円 19,885億円 323億円 280億円 1.4%
デジタルプロダクツ 1,571億円 1,864億円 287億円 316億円 16.9%
グラフィックコミュニケーションズ 2,927億円 2,840億円 232億円 186億円 6.6%
インダストリアルソリューションズ 1,122億円 1,062億円 △18億円 25億円 2.3%
その他 358億円 431億円 △56億円 △34億円 -7.8%
連結(合計) 25,279億円 26,083億円 638億円 907億円 3.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,369億円 1,581億円
投資CF △794億円 △725億円
財務CF △456億円 △831億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

創業の精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」の三愛精神を根本とし、「“はたらく”に歓びを」を使命と目指す姿に定めています。AI技術等の発展によって働き方が変わる状況においても、人に寄り添い変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくることを目指しています。

(2) 企業文化

同社は「リコーウェイ」を企業活動の基礎となる理念・価値観として定めており、企業倫理と遵法の精神に基づく透明性の高い経営を重視しています。また、主体性と挑戦を尊重し、世界中のすべての社員が敬意をもって尊重され、多様な価値観を受け入れるインクルーシブな企業文化の醸成を推進しています。

(3) 経営計画・目標

「中期経営戦略’26」において、5年先の目指す姿から逆算するバックキャスティングの考え方を取り入れています。株主資本コストを上回るROEの早期実現を最優先の財務目標と位置づけ、2030年度目標としてROE10%以上を設定しています。
・ROE目標:10%以上(2030年度)
・ROIC目標:7%以上
・ストック利益:15%以上の成長

(4) 成長戦略と重点施策

デジタルサービスの会社として進化を続け、顧客のワークプレイスにおいて自社と他社のサービスやソフトウェアを組み合わせるインテグレーターを目指しています。また、グローバルでの経費構造改革とアセットライト化を進め、収益性と資本効率の向上を図ります。
・ストック利益の積み上げによる収益性向上
・継続的なコスト構造の見直し
・人材の活性化と再配置

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は人的資本を経営戦略の重要要素と位置づけ、「企業価値向上に寄与する企業文化の醸成」を軸に、事業成長を支える人材ポートフォリオの最適化と個人の能力を最大限に発揮させる施策を両輪で推進しています。また、リコー式ジョブ型人事制度の深化やデジタル人材の育成を通じ、自律的な成長を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.4歳 20.0年 9,061,743円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性の育児休業取得率 93.3%
男女の賃金の差異(全労働者) 80.8%
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 78.6%
男女の賃金の差異(パート・有期雇用労働者) 86.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グローバルのエンゲージメントスコア(3.89)、国内のデジタルスキルレベル2以上の人数(6,811人)、プロセスDXシルバーステージ認定者育成率(54.0%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 収益構造の移行に係るリスク

事業環境の変化を踏まえ、事業ポートフォリオの再構築と成長分野への戦略的投資により収益構造の移行を進めています。しかし、構造改革やコスト最適化が計画通りに進まない場合や、印刷量の減少が加速した際に成長事業で十分に補完できない場合、収益性の改善に遅れが生じ、企業価値に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 人材の確保・育成・管理リスク

デジタルサービスの会社への変革には人材が不可欠であり、要員計画に基づくスキルのギャップ解消を目指しています。将来の経営人材の計画的な育成や、高度なデジタル技術人材の確保・育成・リスキリングが十分に進まない場合、事業ポートフォリオの変革が停滞し、同社の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) デジタルテクノロジーの活用と推進に係るリスク

生成AIやデジタルツインなどの先端技術の活用を進める中で、情報管理や倫理面でのガバナンスが十分に機能しないリスクがあります。社内外への情報漏洩や誤情報に基づく意思決定、倫理基準を逸脱した利用が発生した場合、製品やサービスの信頼性が低下し、ブランド価値や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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