リコー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リコー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、事務機器・光学機器メーカーです。デジタルサービス、デジタルプロダクツ、グラフィックコミュニケーションズ事業などを展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比7.6%増の2兆5,279億円、営業利益が同2.9%増の638億円と、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社リコー の有価証券報告書(第125期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. リコーってどんな会社?


複合機やプリンターなどの事務機器を主力としつつ、デジタルサービスの会社への変革を進めるグローバル企業です。

(1) 会社概要


1936年に理研感光紙として設立され、1963年にリコーへ商号変更しました。1949年に株式を公開し、1955年に小型卓上複写機の製造販売を開始しました。その後、国内外でOA機器販売会社の買収を進め、2022年に東証プライム市場へ移行しました。近年では2022年にPFUを買収し、2024年には東芝テックと合弁会社エトリアを組成しています。

連結従業員数は78,665名、単体では5,041名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は投資ファンドの受託者であるSUNTERA (CAYMAN) LIMITED、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.55%
SUNTERA(CAYMAN)LIMITED AS TRUSTEE OF ECM MASTER FUND 5.20%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役 社長執行役員・CEOは大山晃氏で、取締役会における社外取締役の比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
大山 晃 代表取締役CEO 1986年入社。欧州販売事業本部長、CFO、CMOなどを経て、2023年4月より現職。
山下 良則 取締役 会長 1980年入社。総合経営企画室長、副社長執行役員、代表取締役社長CEOなどを経て、2025年4月より現職。
川口 俊 取締役CFO 1986年入社。経理本部経理部長、リコーリース取締役専務執行役員などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、横尾敬介(産業革新投資機構社長CEO)、谷定文(元時事通信社常務)、石村和彦(元AGC社長・指名委員長)、石黒成直(元TDK社長)、武田洋子(三菱総合研究所研究理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルサービス」、「デジタルプロダクツ」、「グラフィックコミュニケーションズ」、「インダストリアルソリューションズ」および「その他」事業を展開しています。

デジタルサービス


オフィス向け複合機・プリンター等の画像機器や消耗品の販売・保守、およびITサービスを提供しています。全世界の顧客基盤をベースに、ワークフローの変革や働き方改革を支援するオフィスサービスを展開しています。

収益は、機器や消耗品の販売代金、保守サービス料、ITソリューションの対価として顧客から受領します。運営は主にリコージャパンや海外の販売子会社であるRICOH USA, INC.、RICOH EUROPE HOLDINGS PLCなどが行っています。

デジタルプロダクツ


オフィス向け複合機、プリンター、スキャナー等の画像機器やエッジデバイスの開発・生産を行っています。これらは世界トップシェアを有し、デジタルコミュニケーションを支える製品群です。

収益は、グループ内の販売会社やOEM供給先への製品販売によって得ています。運営は主に同社や、東芝テックとの合弁会社であるエトリア、子会社のPFUなどが行っています。

グラフィックコミュニケーションズ


商用印刷および産業印刷事業を展開しています。商用印刷では多品種少量印刷に対応するデジタル印刷機を、産業印刷では建材や家具など多様な媒体への印刷を可能にするインクジェットヘッドやプリンターを提供しています。

収益は、印刷業者や産業界の顧客からの製品・消耗品の購入代金およびサービス料です。運営は同社およびリコーインダストリーなどが担っています。

インダストリアルソリューションズ


サーマル事業と産業プロダクツ事業があります。食品用ラベルや配送ラベル等のサーマルペーパー、熱転写リボン、および光学技術を活かした産業設備や精密機器部品を製造・販売しています。

収益は、ラベルメーカーや産業機器メーカー等の顧客への製品販売から得ています。運営はリコーエレメックスやリコーインダストリアルソリューションズ、RICOH ELECTRONICS, INC.などが行っています。

その他


360度カメラとソフトウェアを組み合わせたSmart Vision事業や、社会課題に対応する新規事業、カメラ関連事業(デジタルカメラ等)を展開しています。

収益は、一般消費者や企業からの製品購入代金およびクラウドサービス利用料等です。運営はリコーイメージングやリコークリエイティブサービスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は2021年3月期を底に4期連続で増加しており、直近の2025年3月期には2兆5,279億円に達しました。利益面では、2021年3月期に赤字を計上しましたが、翌期以降は黒字回復し、安定した利益を確保しています。直近では増収に伴い税引前利益も増加傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 16,821億円 17,586億円 21,342億円 23,490億円 25,279億円
税引前利益 -410億円 444億円 813億円 682億円 701億円
利益率(%) -2.4% 2.5% 3.8% 2.9% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -327億円 304億円 544億円 442億円 457億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は若干低下しています。一方、営業利益は前期比で増加し、営業利益率は概ね横ばいを維持しています。販売費及び一般管理費の増加も売上成長に伴う範囲内となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 23,490億円 25,279億円
売上総利益 8,201億円 8,686億円
売上総利益率(%) 34.9% 34.4%
営業利益 620億円 638億円
営業利益率(%) 2.6% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が5,109億円(構成比62.4%)、減価償却費及び無形資産償却費が634億円(同7.7%)を占めています。売上原価については詳細な内訳データがありません。

(3) セグメント収益


デジタルプロダクツ事業は、生産調整からの回復やエトリア組成の効果により大幅な増収増益となりました。デジタルサービス事業も増収ですが、構造改革費用等の影響で減益となりました。グラフィックコミュニケーションズは増収増益を達成しました。一方、インダストリアルソリューションズとその他事業は営業赤字となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
デジタルサービス 18,528億円 19,301億円 408億円 323億円 1.7%
デジタルプロダクツ 959億円 1,571億円 174億円 287億円 18.3%
グラフィックコミュニケーションズ 2,621億円 2,927億円 155億円 232億円 7.9%
インダストリアルソリューションズ 1,117億円 1,122億円 -3億円 -18億円 -1.6%
その他 2,633億円 3,585億円 -105億円 -56億円 -1.6%
調整額 -4,096億円 -4,490億円 -8億円 -130億円 -
連結(合計) 23,490億円 25,279億円 620億円 638億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金で借入返済を進めつつ、投資も行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,256億円 1,369億円
投資CF -978億円 -794億円
財務CF -829億円 -456億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「“はたらく”に歓びを」を「使命と目指す姿」と定めています。“はたらく”に寄り添い変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループが変わらずに大切にしている価値観は、創業の精神である「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」からなる「三愛精神」です。これを基礎とし、「リコーウェイ」として企業活動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


2023年4月からスタートした第21次中期経営戦略では、「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供するデジタルサービスの会社」となることを中長期目標として掲げています。

* 2025年度売上高目標:2兆5,600億円
* 2025年度親会社の所有者に帰属する当期利益目標:560億円

(4) 成長戦略と重点施策


「プロセスオートメーション」「ワークプレイスエクスペリエンス」「ITサービス」の3つを注力領域と定めています。また、企業価値向上プロジェクトとして、本社改革、事業の「選択と集中」の加速、オフィスプリンティング事業の構造改革、オフィスサービス事業の利益成長の加速に取り組んでいます。

* 翌連結会計年度の営業利益見込み:130億円(関税政策の影響を含む)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自律」「成長」「“はたらく”に歓びを」の3つを柱とする人的資本戦略を策定しています。社員の自律と成長を促し、働くことを通じて得られる体験を積み重ねることで、デジタルサービスの会社への変革を加速させます。ジョブ型人事制度の導入やデジタル人材の育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.4歳 20.0年 8,602,008円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.7%
男性育児休業取得率 97.6%
男女賃金差異(全労働者) 80.6%
男女賃金差異(正規雇用) 78.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 84.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リコーデジタルスキルレベル2以上の人数(国内)(4,658人)、プロセスDXシルバーステージ認定者育成率(34.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) デジタルサービスの会社としての収益構造の移行


デジタルサービスの会社として成長するための収益構造変革において、印刷量の減少加速をオフィスサービス事業等の成長でカバーしきれず、収益性の向上が実現できないリスクがあります。これにより、中期の財務目標の達成に遅れが生じ、企業価値の低迷につながる可能性があります。

(2) デジタル技術の活用とデータ利活用の促進


デジタル技術(AI等)とデータを活用するデジタル戦略の推進加速に向け、実践型デジタル人材の育成やデータ利活用の推進、オペレーショナルエクセレンスの実現等を継続して行わなければ、グループの業績や成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報セキュリティ対応強化


サイバー攻撃の増加・高度化に伴い、NIST SP800-171等の国際基準への準拠が求められています。未準拠の場合の事業影響や、製品・サービスのセキュリティ対策不備によるインシデント発生、サイバー攻撃によるシステム停止、個人情報漏洩等のリスクがあり、制裁金の支払いや社会的信用の低下を招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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