※本記事は、丸紅株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 丸紅ってどんな会社?
五大総合商社の一角として、食料やアグリ、電力事業に強みを持つ企業です。世界中に拠点を持ち、トレードと事業投資を両輪として多角的にビジネスを展開しています。
■(1) 会社概要
1949年に設立され、翌1950年に上場しました。1955年に髙島屋飯田を合併、1973年には南洋物産を合併し規模を拡大。2001年には伊藤忠商事と鉄鋼製品事業を統合し伊藤忠丸紅鉄鋼を設立しました。2016年に本店を東京日本橋へ、2021年には大手町へ移転しています。
連結従業員数は51,834名、単体では4,304名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位はカストディ業務を行う外国銀行等、第3位も信託銀行と、機関投資家や資産管理会社が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.55% |
| ビーエヌワイエム アズ エージーテイ クライアンツ 10 パーセント | 10.14% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性4名(提出日現在)の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表取締役会長は柿木真澄氏です。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柿木 真澄 | 代表取締役会長 | 1980年入社。電力・インフラ部門長、電力・プラントグループCEO等を歴任。2019年より社長を務め、2025年4月より現職。 |
| 古谷 孝之 | 代表取締役専務執行役員 CFO | 1987年入社。経営企画部長、デジタル・イノベーション部長等を経て、2020年よりCFO。2023年4月より現職。 |
| 國分 文也 | 取締役 名誉顧問 | 1975年入社。資源・エネルギーグループ管掌役員、米州支配人等を経て、2013年より社長、2019年より会長を務めた。2025年4月より現職。 |
| 寺川 彰 | 取締役 特別顧問 | 1981年入社。化学品部門長、食料・アグリ・化学品グループCEO、生活産業グループCEO等を歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、翁百合(株式会社日本総合研究所理事長)、木寺昌人(元フランス国駐箚特命全権大使)、石塚茂樹(元ソニーグループ副会長)、安藤久佳(元経済産業事務次官)、波多野睦子(東京科学大学理事・副学長)、南壮一郎(ビジョナル代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ライフスタイル」「フォレストプロダクツ」「情報ソリューション」「食料第一」「食料第二」「アグリ事業」「化学品」「金属」「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」「航空・船舶」「金融・リース・不動産」「建機・産機・モビリティ」「次世代事業開発」「次世代コーポレートディベロップメント」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ライフスタイル
衣料品、フットウェア、生活用品、タイヤ、ゴム資材などを取り扱っています。アパレルやスポーツ用品の企画・製造・販売から、タイヤの卸売・小売、ゴム原料のトレードまで多岐にわたります。
主な収益は商品の販売収入です。運営は同社および丸紅インテックス、丸紅ファッションリンクなどの子会社が行っています。
■(2) フォレストプロダクツ
製紙原料(チップ・パルプ)、板紙、衛生紙、洋紙、バイオマス燃料などの製造・販売を行っています。また、植林事業や住宅資材の販売も手掛けています。
主な収益は製品の販売収入です。運営は同社および興亜工業、丸紅フォレストリンクスなどの子会社が行っています。
■(3) 情報ソリューション
ICT分野におけるネットワーク事業、システムソリューション事業、モバイル販売事業、および物流分野でのフォワーディングや物流センター運営を行っています。
主な収益は通信サービスの利用料、システム構築対価、端末販売収入、物流業務受託料などです。運営は同社およびアルテリア・ネットワークス、MXモバイリングなどの子会社が行っています。
■(4) 食料第一
コーヒー、飲料原料、菓子、乳製品、農水産物などの食品原料や加工食品を取り扱っています。原料調達から製品の企画・開発、卸売までを担います。
主な収益は商品の販売収入です。運営は同社および丸紅食料、山星屋などの子会社が行っています。
■(5) 食料第二
穀物、飼料原料、畜産物などを取り扱っています。世界的な穀物集荷・販売網を持ち、配合飼料の製造や畜肉の生産・加工・販売も行っています。
主な収益は商品の販売収入です。運営は同社およびウェルファムフーズ、日清丸紅飼料、Creekstone Holdingなどの子会社が行っています。
■(6) アグリ事業
農業資材(肥料、農薬、種子など)の製造・販売および関連サービスを提供しています。特に北米や欧州、南米などで事業を展開しています。
主な収益は農業資材の販売収入およびサービス料です。運営は同社およびHelena Agri-Enterprisesなどの子会社が行っています。
■(7) 化学品
石油化学品、電子材料、機能化学品、飼料添加剤などを取り扱っています。伝統的なトレードに加え、ライフサイエンス分野などへの投資も行っています。
主な収益は商品の販売収入です。運営は同社および丸紅ケミックス、丸紅プラックスなどの子会社が行っています。
■(8) 金属
鉄鋼原料(鉄鉱石、原料炭)、非鉄軽金属(銅、アルミニウム)の開発・トレードを行っています。また、鉄鋼製品の加工・販売やリサイクル事業も手掛けています。
主な収益は資源権益からの配当や持分法投資損益、商品の販売収入です。運営は同社および丸紅テツゲンなどの子会社が行っています。
■(9) エネルギー
石油、天然ガス、LNGの探鉱・開発・生産およびトレードを行っています。また、原子燃料サイクル関連や環境価値の取引も手掛けています。
主な収益は資源権益からの配当や持分法投資損益、商品の販売収入です。運営は同社および丸紅エネルギーなどの子会社が行っています。
■(10) 電力
国内外での発電事業(IPP)および電力卸売・小売、送変電設備の請負などを行っています。再生可能エネルギーの開発にも注力しています。
主な収益は売電収入、電力小売料金、工事請負代金などです。運営は同社および丸紅新電力、SmartestEnergyなどの子会社が行っています。
■(11) インフラプロジェクト
上下水道、交通インフラ、産業プラントなどの開発・運営・投資を行っています。また、海外インフラファンドの運営も手掛けています。
主な収益は事業からの配当や持分法投資損益、工事請負代金、ファンド運営手数料などです。運営は同社および丸紅プロテックスなどの子会社が行っています。
■(12) 航空・船舶
航空機・エンジンのリースや部品トレード、商船の保有・運航・売買・仲介を行っています。また、防衛・宇宙関連機器も取り扱っています。
主な収益はリース料、用船料、商品の販売収入、手数料などです。運営は同社および丸紅エアロスペース、MMSLジャパンなどの子会社が行っています。
■(13) 金融・リース・不動産
航空機・自動車・貨車などのリース、自動車販売金融、不動産開発・運営、ファンド運営、保険仲介などを行っています。
主な収益はリース料、金利収入、不動産販売・賃貸収入、手数料などです。運営は同社および丸紅都市開発、丸紅セーフネットなどの子会社が行っています。
■(14) 建機・産機・モビリティ
建設機械、鉱山機械、産業機械、工作機械の販売・サービスおよびファイナンスを提供しています。また、モビリティ関連の事業投資も行っています。
主な収益は機械の販売収入、サービス料などです。運営は同社および丸紅テクノシステムなどの子会社が行っています。
■(15) 次世代事業開発
ヘルスケア、次世代産業基盤、ウェルネスなどの分野で、新たなビジネスモデルの開発や事業投資を行っています。
主な収益は商品の販売収入やサービスの対価です。運営は同社および丸紅コンシューマーブランズなどの子会社が行っています。
■(16) 次世代コーポレートディベロップメント
東南アジアや米国を中心とした消費者向けビジネスへの投資を行っています。また、スタートアップ投資を行うベンチャーキャピタルも運営しています。
主な収益は投資先からの配当やキャピタルゲイン、商品の販売収入です。運営は同社および丸紅ベンチャーズなどの子会社が行っています。
■(17) その他
グループ会社向けの金融サービスや管理業務などを行っています。
主な収益は受取利息や業務受託手数料などです。運営は同社および丸紅フィナンシャルサービスなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は2022年3月期以降、高い水準を維持しています。資源価格の高騰などにより2023年3月期に過去最高益を記録した後、反動減が見られましたが、2025年3月期は再び増収増益基調に戻っています。当期利益も高水準で推移しており、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 63,324億円 | 85,086億円 | 91,905億円 | 72,505億円 | 77,902億円 |
| 税引前利益 | 2,817億円 | 5,288億円 | 6,517億円 | 5,671億円 | 6,292億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 6.2% | 7.1% | 7.8% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2,233億円 | 4,243億円 | 5,430億円 | 4,714億円 | 5,030億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上収益は約5,400億円増加し、売上総利益も約800億円増加しました。これに伴い売上総利益率はほぼ横ばいですが、高水準を維持しています。営業利益は販管費の増加等により微減となりましたが、持分法投資損益や金融収益等の貢献により、税引前利益および当期利益は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 72,505億円 | 77,902億円 |
| 売上総利益 | 10,658億円 | 11,466億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.7% | 14.7% |
| 営業利益 | 2,763億円 | 2,723億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が4,713億円(構成比54.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
アグリ事業や食料第二などの食料関連、およびエネルギー事業が売上規模で大きく貢献しています。利益面では、金属事業が最大の利益を稼ぎ出しており、次いでエネルギー、電力事業が続いています。フォレストプロダクツや化学品なども堅調に推移していますが、インフラプロジェクトや次世代コーポレートディベロップメントなど一部セグメントでは損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ライフスタイル | 2,065億円 | 2,065億円 | 84億円 | 84億円 | 4.1% |
| フォレストプロダクツ | 2,457億円 | 2,457億円 | 152億円 | 152億円 | 6.2% |
| 情報ソリューション | 4,008億円 | 4,008億円 | 91億円 | 91億円 | 2.3% |
| 食料第一 | 9,499億円 | 9,499億円 | 139億円 | 139億円 | 1.5% |
| 食料第二 | 10,601億円 | 10,601億円 | 99億円 | 99億円 | 0.9% |
| アグリ事業 | 14,383億円 | 14,383億円 | 457億円 | 457億円 | 3.2% |
| 化学品 | 6,009億円 | 6,009億円 | 136億円 | 136億円 | 2.3% |
| 金属 | 6,592億円 | 6,592億円 | 1,235億円 | 1,235億円 | 18.7% |
| エネルギー | 9,073億円 | 9,073億円 | 693億円 | 693億円 | 7.6% |
| 電力 | 4,797億円 | 4,797億円 | 660億円 | 660億円 | 13.8% |
| インフラプロジェクト | 318億円 | 318億円 | -23億円 | -23億円 | -7.2% |
| 航空・船舶 | 1,571億円 | 1,571億円 | 396億円 | 396億円 | 25.2% |
| 金融・リース・不動産 | 542億円 | 542億円 | 591億円 | 591億円 | 109.0% |
| 建機・産機・モビリティ | 5,552億円 | 5,552億円 | 161億円 | 161億円 | 2.9% |
| 次世代事業開発 | 201億円 | 201億円 | 7億円 | 7億円 | 3.5% |
| 次世代コーポレートディベロップメント | 328億円 | 328億円 | -22億円 | -22億円 | -6.7% |
| その他 | -95億円 | -95億円 | 173億円 | 173億円 | -% |
| 連結(合計) | 77,902億円 | 77,902億円 | 5,030億円 | 5,030億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、その範囲内で投資活動と財務活動(借入返済や配当支払)を行っている「健全型」です。本業でしっかりと現金を稼ぎ出し、将来への投資と株主還元をバランスよく実施している状態と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4,425億円 | 5,979億円 |
| 投資CF | -3,344億円 | -3,953億円 |
| 財務CF | -2,542億円 | -1,220億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是「正・新・和」の精神に則り、公正明朗な企業活動を通じ、経済・社会の発展、地球環境の保全に貢献する、誇りある企業グループを目指すことを経営理念としています。社会・環境課題を先取りし、ソリューションを提供することで、ステークホルダーと共に新たな価値を創造することを使命としています。
■(2) 企業文化
「志」「挑戦」「論戦」「行動」等を重視する「丸紅スピリット」や、グループ全体で共有する「丸紅行動憲章」に基づき、高い倫理観を持った個人の集合体として、社会に対して価値を提供し続ける企業風土の醸成を目指しています。既存の枠組みにとらわれず、縦のラインを超えて横に繋がり、新たな価値を創造することを推奨しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度に向けた長期的な経営戦略の第3段階として、中期経営戦略「GC2027」を策定しています。ROEの維持・向上とPERの向上により時価総額を拡大し、2030年度までに時価総額10兆円超を目指しています。
* 連結純利益(2027年度):6,200億円以上
* 基礎営業キャッシュ・フロー(3ヵ年累計):20,000億円
* ROE:15%
* 総還元性向:40%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
企業価値向上に向けた3つの成長ドライバーとして、「既存事業の磨き込み・拡張」「成長への資本配分・投資戦略」「Global crossvalue platformの追求」を掲げています。既存事業の収益力強化に加え、成長領域や高付加価値事業への重点投資を行い、グループの総合力を活かした価値創造を推進します。
* グリーン戦略の推進:2050年ネットゼロ達成に向けた脱炭素・循環経済への貢献
* 戦略プラットフォーム型事業への注力:「成長領域×高付加価値×拡張性」を有する事業への投資
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Global crossvalue platform」を追求するため、人材を最大の資本と位置づけ、「ミッション本位・実力本位」の人事制度を徹底しています。多様な人材が「集い、活き、繋がる」環境を整備し、個人の挑戦と成長を組織の実行力向上に結びつける戦略を推進しています。特に女性活躍推進や健康経営に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 17.9年 | 17,087,936円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.2% |
| 男性育児休業取得率 | 95.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 60.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 41.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 世界経済・市場環境の変動リスク
グローバルに事業を展開しているため、各国の経済情勢、地政学リスク、商品市況(資源価格等)、為替、金利などの変動が業績に影響を与える可能性があります。特に資源・エネルギー価格の変動は、関連事業の収益や資産価値に直接的な影響を及ぼします。
■(2) 投資・信用リスク
事業投資や取引先の信用状態悪化による損失リスクがあります。投資案件においては、事業計画の未達や撤退に伴う損失が発生する可能性があります。また、取引先の債務不履行により貸倒損失が発生するリスクもあります。これらに対し、厳格な審査やモニタリングを実施しています。
■(3) 環境・社会・コンプライアンスリスク
気候変動対応などの環境規制強化や、人権問題などの社会的要請への対応が不十分な場合、事業活動への制約やレピュテーションの毀損を招く可能性があります。また、広範な法令・規制の遵守が求められ、違反が生じた場合の法的制裁や信用低下のリスクがあります。



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