※本記事は、豊田通商株式会社 の有価証券報告書(第104期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 豊田通商ってどんな会社?
トヨタグループの総合商社として、モビリティ分野を中心に金属、化学品、食品など多岐にわたる事業をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1948年に日新通商として設立され、1956年に豊田通商へ商号変更しました。2006年にトーメンと合併し事業規模を拡大。2012年にフランスのCFAO社を買収し、2016年に完全子会社化することでアフリカ事業を強化しました。2022年には国内最大の風力発電事業者であるユーラスエナジーホールディングスを完全子会社化するなど、再生可能エネルギー分野へも注力しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は69,111人、単体従業員数は2,467人です。筆頭株主は事業上の密接な関係にあるトヨタ自動車で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位はトヨタグループの源流企業である豊田自動織機となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 21.69% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.48% |
| 豊田自動織機 | 11.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名(社外取締役含む)の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表者は取締役副社長の岩本秀之氏です。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩本 秀之 | 取締役(代表取締役)副社長CFO(Chief Financial Officer)極CEO(Chief Executive Officer) | 1985年トーメン入社。豊田通商経営企画部長、執行役員、常務執行役員、CFOなどを経て2025年4月より現職。 |
| 富永 浩史 | 取締役(代表取締役)CSO(Chief Strategy Officer)極CEO(Chief Executive Officer) | 1985年豊田通商入社。経理企画部長、執行役員、常務執行役員、CSOなどを経て2021年6月より現職。 |
| 村上 晃彦 | 取締役会長 | 1982年トヨタ自動車工業入社。トヨタ自動車専務役員、執行役員などを経て2022年1月豊田通商入社。同年6月より現職。 |
| 貸谷 伊知郎 | 取締役副会長 | 1983年豊田通商入社。自動車企画部長、執行役員、社長などを歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、Didier Leroy(トヨタモーターヨーロッパ取締役会長)、井上ゆかり(日本ケロッグ合同会社代表職務執行者社長)、松田千恵子(東京都立大学教授)、山口悟郎(京セラ代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メタル+(Plus)」「サーキュラーエコノミー」「サプライチェーン」「モビリティ」「グリーンインフラ」「デジタルソリューション」「ライフスタイル」「アフリカ」および「その他」事業を展開しています。
■(1) メタル+(Plus)
自動車用鋼板・アルミ板、特殊鋼板、条鋼鋼管、電磁鋼板、建材などを取り扱っています。これらの商品の加工、製造、処理、販売を行っており、自動車産業をはじめとする製造業を支えています。
収益は、主に顧客への商品販売代金や加工・処理に伴う手数料から得ています。運営は豊田通商のほか、豊田スチールセンター、豊通鉄鋼販売、Guangqi Toyotsu Steel Processing Co., Ltd.などの関係会社が行っています。
■(2) サーキュラーエコノミー
非鉄金属地金、レアアース、自動車構成用部品、再生樹脂、有機化学品、添加剤などを主要取扱品目としています。リサイクルや再資源化を含む加工・製造・販売を通じて、循環型社会の構築に貢献しています。
収益は、各種原材料やリサイクル製品の販売、加工サービス料などから得ています。運営は豊田通商のほか、豊通マテリアル、豊通ケミプラスなどの関係会社が担っています。
■(3) サプライチェーン
ロジスティクス、モビリティパーツ製造・組付、アクセサリー開発、テクノパーク運営、空港運営などを手掛けています。物流機能の提供や部品供給を通じてサプライチェーンの最適化を図っています。
収益は、物流サービス料、製品販売代金、施設運営収入などから得ています。運営は豊田通商のほか、国内外の物流関連子会社等が事業を推進しています。
■(4) モビリティ
乗用車、商用車、産業車輌等の販売や、補給部品の輸入・販売、車両架装、販売金融、車両組み立て事業を行っています。グローバルな販売網を通じてモビリティ関連ビジネスを展開しています。
収益は、車両や部品の販売代金、金融サービス料などから得ています。運営は豊田通商のほか、Toyota Tsusho South Pacific Holdings Pty Ltdなどの海外販売会社が行っています。
■(5) グリーンインフラ
風力・太陽光等の再生可能エネルギー発電事業や、電力・空港・港湾等のインフラ事業、建設機械等の販売を行っています。脱炭素社会の実現に向けたインフラ構築を推進しています。
収益は、売電収入、設備・機械の販売代金などから得ています。運営は豊田通商のほか、ユーラスエナジーホールディングス、豊通マシナリーなどが担っています。
■(6) デジタルソリューション
半導体・電子部品、自動車用組込みソフト、情報通信機器の販売や、ネットワーク構築、サイバーセキュリティ対策などを手掛けています。エレクトロニクスとIT技術を融合したソリューションを提供しています。
収益は、製品販売代金、システム構築・保守料、サービス利用料などから得ています。運営は豊田通商のほか、ネクスティ エレクトロニクス、エレマテック、トーメンデバイスなどが行っています。
■(7) ライフスタイル
穀物、食品、繊維製品、衣料、介護・医療用品、保険代理店事業、建設・住宅資材などを取り扱っています。人々の生活に密着した商品・サービスの提供を行っています。
収益は、商品販売代金、手数料収入などから得ています。運営は豊田通商のほか、各国の事業会社が行っています。
■(8) アフリカ
アフリカ全土において、自動車販売、医薬品製造・販売、再生可能エネルギー開発、リテール事業などを多角的に展開しています。現地に根差したビジネスを通じて地域社会の発展に寄与しています。
収益は、商品・製品の販売代金、サービス料などから得ています。運営は主にフランスの子会社CFAO SASおよびその傘下の現地法人が行っています。
■(9) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、全社的な管理・支援機能や特定のセグメントに属さない事業を行っています。
収益は、各事業活動に伴う対価から得ています。運営は豊田通商および機能支援を行う関係会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は6兆円台から10兆円台へと大きく伸長しています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加傾向にあり、特に当期利益は5期連続で黒字を確保し、右肩上がりで推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 6兆3093億円 | 8兆0280億円 | 9兆8486億円 | 10兆1890億円 | 10兆3096億円 |
| 税引前利益 | 2214億円 | 3301億円 | 4271億円 | 4696億円 | 5369億円 |
| 利益率(%) | 3.5% | 4.1% | 4.3% | 4.6% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1346億円 | 2222億円 | 2842億円 | 3314億円 | 3625億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上収益は微増ながら10兆円台を維持し、売上総利益も増加しています。営業利益および営業利益率も前期を上回っており、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 10兆1890億円 | 10兆3096億円 |
| 売上総利益 | 1兆0524億円 | 1兆1211億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.3% | 10.9% |
| 営業利益 | 4416億円 | 4972億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が3465億円(構成比56.2%)、その他が942億円(同15.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は「アフリカ」や「モビリティ」など多くのセグメントで増益となりました。「グリーンインフラ」や「メタル+(Plus)」も利益を伸ばしています。「サーキュラーエコノミー」は減益となりましたが、全体としては連結利益の増加に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| メタル+(Plus) | 1兆9407億円 | 1兆9087億円 | 361億円 | 435億円 | 2.3% |
| サーキュラーエコノミー | 1兆7247億円 | 1兆7773億円 | 500億円 | 469億円 | 2.6% |
| サプライチェーン | 1兆2300億円 | 1兆2436億円 | 455億円 | 493億円 | 4.0% |
| モビリティ | 9810億円 | 1兆0180億円 | 560億円 | 574億円 | 5.6% |
| グリーンインフラ | 8015億円 | 8179億円 | 279億円 | 366億円 | 4.5% |
| デジタルソリューション | 1兆2433億円 | 1兆3473億円 | 297億円 | 307億円 | 2.3% |
| ライフスタイル | 6911億円 | 5450億円 | 118億円 | 154億円 | 2.8% |
| アフリカ | 1兆5677億円 | 1兆6494億円 | 691億円 | 795億円 | 4.8% |
| その他 | 89億円 | 25億円 | 53億円 | 32億円 | 130.8% |
| 調整額 | - | - | 0億円 | -0億円 | - |
| 連結(合計) | 10兆1890億円 | 10兆3096億円 | 3314億円 | 3625億円 | 3.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金を使って投資を行い、借入金の返済等も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5421億円 | 5119億円 |
| 投資CF | -2196億円 | -1238億円 |
| 財務CF | -2633億円 | -3090億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」という企業理念を掲げています。オープンでフェアな企業活動、社会的責任の遂行、地球環境の保全に取り組み、全てのステークホルダーに満足される付加価値を提供することを基本理念としています。
■(2) 企業文化
同社グループ固有の価値観や信念、日々の行動原則である「豊田通商DNA」を重視しています。また、基本理念に基づき、現場・現物・現実を重視する「現地・現物・現実」の精神や、チームパワーを発揮する風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2030年までにGHG排出量(Scope1、2)を2019年比で50%削減し、2050年には実質カーボンニュートラルとする目標を掲げています。また、ROE目標値13%以上をリスクコスト率の目線として設定し、企業価値向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「Global Vision」の下、「Be the Right ONE」を目指す姿として掲げ、成長戦略を推進しています。モビリティを中心としたCore Value領域、資源循環などのSocial Value領域、再生可能エネルギーなどのNature Value領域での事業拡大と、これらを掛け合わせた新事業の創出に取り組んでいます。
* GHG排出量(Scope1、2)を2030年までに2019年比50%削減
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財の強化」と「人財の活躍推進」を柱とし、事業戦略と連動した人事戦略を推進しています。経営人財・事業創造人財の育成、適所適材の配置、多様な人材が活躍するDE&Iの推進、健康経営の実践を通じて、人的資本の価値最大化と「People Company Toyotsu」の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 17.0年 | 13,202,952円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 8.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 61.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 61.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 60.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 40.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) カントリーリスク
同社グループは海外の多岐にわたる地域で事業を行っており、各国の政治・経済情勢の変化、法規制、社会不安等の影響を受ける可能性があります。リスク管理を行っていますが、事業遂行の遅延や不能により、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 世界マクロ経済環境の変化
自動車関連商品や各種商品の製造・販売等の事業を展開しているため、日本及び関係諸国の経済状況の影響を受けます。世界的な景気後退による消費や設備投資の低迷が生じた場合、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定の販売先への依存
収益のうちトヨタ自動車グループへの比率が18.6%を占めており、同グループとの取引動向が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 事業投資リスク
多数の連結子会社や持分法適用会社を通じて事業拡大を図っていますが、事業環境の変化や不測の事態により投資先企業の価値が毀損した場合、投資損失の発生や追加資金の負担が生じ、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。



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