※本記事は、豊田通商株式会社の有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 豊田通商ってどんな会社?
金属、自動車、インフラ、食料など多角的な事業をグローバルに展開する総合商社です。
■(1) 会社概要
1948年7月に日新通商として設立され、1956年に現在の豊田通商に社名を変更しました。1977年に東京証券取引所に上場を果たし、2006年にはトーメンと合併して事業基盤を拡大しました。近年は、2012年のCFAO SASの株式取得や、2022年のユーラスエナジーホールディングスの完全子会社化など、グローバル展開と新規事業領域の強化を進めています。
現在の連結従業員数は74,927名、単体では2,466名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業会社のトヨタ自動車で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は事業会社の豊田自動織機です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 21.69% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.16% |
| 豊田自動織機 | 11.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長CEOは今井斗志光氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 今井斗志光 | 取締役社長(代表取締役)CEO | 1988年4月入社。販売品質強化部長、執行役員、トヨタ自動車常務役員、同社副社長などを経て2025年6月より現職。 |
| 岩本秀之 | 取締役(代表取締役)副社長CFO | 1985年4月トーメン入社。同社経営企画部長、執行役員、取締役CFOなどを経て2026年4月より現職。 |
| 綿貫辰哉 | 取締役(代表取締役)副社長本部CEO | 1990年4月入社。同社人事部長、執行役員、極CEOなどを経て2025年6月より現職。 |
| 村上晃彦 | 取締役会長 | 1982年4月トヨタ自動車工業入社。同社常務役員、富士重工業専務執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
社外取締役は、Didier Leroy(元トヨタモーターヨーロッパ取締役社長)、井上ゆかり(元日本ケロッグ合同会社代表職務執行者社長)、松田千恵子(首都大学東京教授)、山口悟郎(元京セラ代表取締役社長)、磯貝友紀(元世界銀行民間部門開発専門官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メタル+(Plus)」「サーキュラーエコノミー」「サプライチェーン」「モビリティ」「グリーンインフラ」「デジタルソリューション」「ライフスタイル」「アフリカ」および「その他」事業を展開しています。
■メタル+(Plus)
自動車用鋼板、アルミ板、特殊鋼板、ステンレス鋼板などの加工・製造・処理・販売を行っています。主な顧客は自動車メーカーを中心とした製造業です。
収益源は鋼材や金属製品の販売による収益です。運営は同社および豊田スチールセンターなどの子会社が行っています。
■サーキュラーエコノミー
非鉄金属地金、貴金属地金、廃自動車や部品のリサイクル、合成樹脂やゴムなどの製造・販売を行っています。資源の有効活用を通じた循環型社会の構築を支えています。
収益源は原材料やリサイクル資源、化学品の販売収益です。運営は同社および豊通マテリアル、豊通ケミプラスなどの子会社が行っています。
■サプライチェーン
ロジスティクス、モビリティパーツの製造・組み付け、モビリティアクセサリーの開発・設計、空港運営や環境ソリューションなどのサービスを提供しています。
収益源は部品の販売や物流・インフラサービスの提供による収益です。運営は同社および豊通物流、共和産業などの子会社が行っています。
■モビリティ
乗用車、商用車、二輪車、産業車両などの輸出入や販売周辺事業、車両組み立て事業をグローバルに展開しています。世界各国に広がる販売ネットワークを活用しています。
収益源は新車および中古車の販売、部品販売、関連サービスによる収益です。運営は同社およびToyota Tsusho South Pacific Holdingsなどの子会社が行っています。
■グリーンインフラ
風力・太陽光などの再生可能エネルギー発電事業や、自動車産業を中心とした製造・物流設備、建設機械の販売、電力・港湾などのインフラ事業を展開しています。
収益源は電力の販売や機械設備の販売による収益です。運営は同社およびユーラスエナジーホールディングス、豊通マシナリーなどの子会社が行っています。
■デジタルソリューション
自動車用構成部品、半導体、モジュール製品の販売や、自動車用組み込みソフト、ネットワーク構築、サイバーセキュリティなどのITサービスを提供しています。
収益源は電子部品やIT製品の販売、システム開発や保守・運用によるサービス収益です。運営は同社およびネクスティ エレクトロニクスなどの子会社が行っています。
■ライフスタイル
飼料原料、穀物、加工食品から、繊維製品、介護・医療関連用品、総合病院事業、ホテルレジデンス事業まで、人々の生活に密着した幅広い製品・サービスを提供しています。
収益源は食品や資材の販売、および医療・宿泊関連のサービス収益です。運営は同社およびNovaAgriなどの子会社が行っています。
■アフリカ
アフリカ地域において、新車・中古車の販売やアフターサービス、再生可能エネルギー開発、医薬品の生産・卸売、リテール事業の開発などを総合的に展開しています。
収益源は車両販売、電力供給、医薬品などの製品販売およびサービス提供による収益です。運営はCFAO SASやAeolus SASなどの子会社が行っています。
■その他
グループ全体の経理、財務、人事、総務、コンピューター運営・管理などの職能業務を担い、各事業部門を後方から支援しています。
収益源はグループ各社からの業務受託手数料などです。運営は主に豊通ヒューマンリソースなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は順調に拡大しており、特に直近では大幅な成長を記録しています。税引前利益も毎期増加を続けており、利益率も概ね安定した向上傾向を示し、最終的な利益も着実に成長しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 80280億円 | 98486億円 | 101890億円 | 103096億円 | 115619億円 |
| 税引前利益 | 3301億円 | 4271億円 | 4696億円 | 5369億円 | 5649億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 4.3% | 4.6% | 5.2% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2222億円 | 2842億円 | 3314億円 | 3625億円 | 3705億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は増加傾向にあり、事業規模の拡大が確認できます。それに伴い、売上総利益や営業利益も堅調に推移しており、本業での安定した稼ぐ力を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 103096億円 | 115619億円 |
| 売上総利益 | 1303億円 | 1456億円 |
| 売上総利益率(%) | 1.3% | 1.3% |
| 営業利益 | 4972億円 | 5452億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 4.7% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が3,906億円(構成比55%)、支払手数料が894億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
多くのセグメントで自動車販売の増加や部品の取り扱い拡大により増収増益となっています。一方で、一部のインフラ事業などでは一過性の損失要因により減益となっている事業も見られます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| メタル+(Plus) | 19087億円 | 18100億円 | 435億円 | 432億円 | 2.4% |
| サーキュラーエコノミー | 17773億円 | 22210億円 | 469億円 | 448億円 | 2.0% |
| サプライチェーン | 12436億円 | 12886億円 | 493億円 | 528億円 | 4.1% |
| モビリティ | 10180億円 | 11433億円 | 574億円 | 640億円 | 5.6% |
| グリーンインフラ | 8179億円 | 9210億円 | 366億円 | 179億円 | 1.9% |
| デジタルソリューション | 13473億円 | 16590億円 | 307億円 | 340億円 | 2.0% |
| ライフスタイル | 5450億円 | 5881億円 | 154億円 | 207億円 | 3.5% |
| アフリカ | 16494億円 | 19283億円 | 795億円 | 940億円 | 4.9% |
| 連結(合計) | 103096億円 | 115619億円 | 3625億円 | 3705億円 | 3.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5119億円 | 4612億円 |
| 投資CF | -1238億円 | -281億円 |
| 財務CF | -3090億円 | -333億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も43.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
Missionである「未来の子供たちにより良い地球を届ける」の実現を目指し、地球課題の解決と事業成長の両立を図っています。またVisionとして掲げる「Be the Right ONE(唯一無二の存在)」のもと、同社ならではの価値創出を追求し、ステークホルダーから選ばれ続ける企業を目指しています。
■(2) 企業文化
Valuesとしての「豊田通商DNA(Humanity、Gembality、Beyond)」を全ての事業活動の基盤とし、一人ひとりの行動につなげることで、グループ一体となった競争力の発揮と中長期的な成長の実現を図っています。現場に密着し、自ら考え行動する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2028年3月期までの中期経営計画において、次元上昇による企業価値向上を目標に掲げています。具体的な指標としてPBRを重視し、収益性・資本効率性を示すROEと、成長期待値を示すPERの両面から改善を図ることで、PBRの向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略、財務・資本戦略、人財・組織戦略、サステナビリティ戦略の4つの次元上昇を通じて、持続的な成長を実現します。モビリティを中心とした基盤ビジネスだけでなく、サーキュラーエコノミーやアフリカのビジネスに対しても積極的に投資を行い、多様な選択肢を提供し続ける存在を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期ビジョンとして「躍動する生命体組織」の実現を目指し、多様な人財の自律的な挑戦や協業を促しています。世界基準の高い視座を持つ経営リーダーの育成や、次世代経営者の育成プログラムを実施し、社員一人ひとりの成長を事業の創出・成長へとつなげることで、人的資本の強化と事業戦略の実行を一体的に推進する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.0歳 | 16.7年 | 14,213,845円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.5% |
| 男性育児休業取得率 | 91.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 60.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 43.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の採用比率(26.7%)、グローバルポストにおける後継者準備割合(100.0%)、社員を活かす環境(70%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) カントリーリスク
海外の多岐の地域にわたり事業展開しているため、各国の政府による規制や政治的不安などのリスクがあります。貿易保険等でリスク低減を図っていますが、環境悪化により債権回収や事業遂行が困難となる可能性があります。
■(2) 世界マクロ経済環境の変化
国内および海外における各種商品の販売を主要事業としているため、世界的な景気後退に伴う個人消費や設備投資の低迷が、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定の販売先への依存
収益のうちトヨタ自動車グループへの収益が占める比率が20.0%となっています。そのため、同グループとの取引動向が、同社グループの経営成績および財政状態に直接的な影響を及ぼすリスクが存在します。
■(4) 事業投資リスク
国内外に多くの関係会社を有し、既存事業の拡大や新規事業への参入を目指して戦略的投資を行っています。しかし、事業環境の変化や不測の事態により投資先企業の価値が低迷した場合、投資資金の喪失や追加支援が必要となる可能性があります。



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