※本記事は、株式会社サンリオ の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンリオってどんな会社?
ハローキティをはじめとするキャラクター商品の企画・販売、ライセンス事業、テーマパーク運営を行うグローバルエンターテイメント企業です。
■(1) 会社概要
1960年、株式会社山梨シルクセンター設立。1973年に現在の株式会社サンリオへ改称しました。1974年に自社開発キャラクター商品の販売を開始し、1990年には東京都多摩市にテーマパーク「サンリオピューロランド」をオープンしました。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は1,445名、単体従業員数は797名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は清川商事、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.10% |
| 清川商事株式会社 | 8.30% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長は辻朋邦氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 辻 朋邦 | 代表取締役社長経営管理本部担当デザイン本部担当デジタル事業本部担当 | 2014年入社。企画営業本部担当執行役員、専務取締役等を経て2020年7月より現職。サンリオエンターテイメント代表取締役会長、ココロ代表取締役会長を兼務。 |
| 中塚 亘 | 専務取締役専務執行役員社長室担当経営戦略本部担当人事本部担当グローバル戦略室担当ブランド管理本部担当グローバルサステナビリティ推進室担当 | 2021年入社。常務執行役員社長室担当、常務取締役、経営管理本部担当等を経て2024年6月より現職。 |
| 大塚 泰之 | 専務取締役専務執行役員営業本部担当 | デロイトトーマツコンサルティング執行役員を経て2021年入社。常務執行役員物販事業本部長、常務取締役等を経て2024年6月より現職。 |
| 岸村 治良 | 専務取締役 | 三菱東京UFJ銀行執行役員を経て2014年入社。取締役経営戦略統括副本部長、常務取締役、常務執行役員等を経て2022年6月より現職。 |
| 齋藤 陽史 | 常務取締役常務執行役員デジタルメディア&スポーツライセンス本部担当 | ソニー入社後、NAMCO USA INC.社長を経て2021年入社。常務執行役員海外事業本部担当、Sanrio Inc.CEO等を経て2022年6月より現職。 |
| 秋山 有子 | 取締役 | グーグル合同会社デバイスマーケティング本部長等を経て2023年入社。常務執行役員グローバル・デジタルマーケティング本部本部長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、笹本裕(DAZN Japan Investment 合同会社 CEO)、山中雅恵(ロート製薬株式会社取締役)、David Bennett(Tenstorrent Inc. COO)、鴨田視寿子(弁護士法人RITA総合法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「欧州」「北米」「南米」「アジア」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内において、ギフト商品、グリーティングカード、出版物の企画・販売や、キャラクターの商品化権許諾・管理を行っています。また、テーマパーク「サンリオピューロランド」「ハーモニーランド」の運営や、ロボットの販売・賃貸も行っています。顧客は一般消費者やライセンシー企業です。
収益は、直営店等での商品販売による売上、ライセンシーからのロイヤリティ収入、テーマパークの入場料・物販・飲食売上、ロボットの販売・賃貸収入等から構成されています。運営は主にサンリオが行い、テーマパーク運営は株式会社サンリオエンターテイメント、ロボット事業は株式会社ココロが担当しています。
■(2) 欧州
欧州地域(主にイタリア・フランス・スペイン・ドイツ・英国)において、ギフト商品の企画・販売および商品化権の許諾・管理を行っています。主な顧客は現地のライセンシー企業や小売店です。
収益は、ライセンシーからのロイヤリティ収入や商品販売による売上が中心です。運営はSanrio GmbH、Sanrio Global Ltd.、Mister Men Ltd.、THOIPなどの現地連結子会社が行っています。
■(3) 北米
北米地域(主に米国)において、ギフト商品の企画・販売および商品化権の許諾・管理を行っています。玩具、アパレル、ヘルス&ビューティーなどのカテゴリーで展開しており、顧客は量販店や専門店、ライセンシー企業です。
収益は、商品販売による売上およびライセンシーからのロイヤリティ収入が主な源泉です。運営は現地連結子会社であるSanrio, Inc.が行っています。
■(4) 南米
南米地域(主にブラジル・チリ・ペルー・メキシコ)において、ギフト商品の企画・販売および商品化権の許諾・管理を行っています。アパレル、文具、バッグ、企業特販などのカテゴリーで展開しています。
収益は、主にライセンシーからのロイヤリティ収入や商品販売による売上からなります。運営はSanrio Do Brasil Comercio e Representacoes Ltda.やSanrio Chile SpA.などの現地連結子会社が行っています。
■(5) アジア
アジア地域(主に香港・台湾・韓国・中国・シンガポール)において、ギフト商品の企画・販売および商品化権の許諾・管理を行っています。トイ&ホビー、アパレル、企業特販などが好調に推移しています。
収益は、商品販売による売上およびライセンシーからのロイヤリティ収入が中心です。運営は三麗鴎股イ分有限公司、Sanrio(Hong Kong)Co., Ltd.、Sanrio Korea Co., Ltd.、三麗鴎(上海)国際貿易有限公司などの現地連結子会社が行っています。
■(6) その他
報告セグメントに含まれない事業として、自動車等の賃貸、損害保険代理業務等を行っています。
収益は、賃貸料収入や保険手数料などが該当します。運営は主にサンリオおよび関連会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は411億円から1,449億円へと急激に拡大しています。利益面では、2021年3月期には赤字を計上していましたが、翌期に黒字転換し、以降は増益基調が続いています。特に直近の2025年3月期は利益率36.9%と高い収益性を達成し、V字回復から成長軌道に乗っていることが伺えます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 411億円 | 528億円 | 726億円 | 1,000億円 | 1,449億円 |
| 経常利益 | -17億円 | 33億円 | 137億円 | 283億円 | 535億円 |
| 利益率(%) | -4.2% | 6.3% | 18.9% | 28.3% | 36.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -40億円 | 34億円 | 82億円 | 176億円 | 417億円 |
■(2) 損益計算書
前期から当期にかけて、売上高は大きく増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は70%台と高い水準を維持しています。営業利益率も大幅に向上しており、収益性の高いビジネスモデルへの転換が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,000億円 | 1,449億円 |
| 売上総利益 | 721億円 | 1,099億円 |
| 売上総利益率(%) | 72.1% | 75.8% |
| 営業利益 | 270億円 | 518億円 |
| 営業利益率(%) | 27.0% | 35.8% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が175億円(構成比30%)、役員報酬及び給料手当が107億円(同19%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の売上原価が大半を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上高が増加しており、特に欧州と北米の伸び率が高くなっています。利益面でも全セグメントが増益となっており、日本セグメントが利益の過半を稼ぎ出していますが、北米やアジアも利益貢献度を高めています。全体として地域を問わず好調な業績推移となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 690億円 | 860億円 | 197億円 | 366億円 | 42.6% |
| 欧州 | 24億円 | 62億円 | 3億円 | 16億円 | 25.7% |
| 北米 | 124億円 | 275億円 | 28億円 | 89億円 | 32.3% |
| 南米 | 10億円 | 18億円 | 2億円 | 5億円 | 30.6% |
| アジア | 151億円 | 234億円 | 60億円 | 68億円 | 28.9% |
| 合計 | 1,000億円 | 1,449億円 | 270億円 | 518億円 | 35.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスであることから「改善型」に分類されます。本業でキャッシュを獲得しつつ、資産売却等による収入もあり、借入返済や配当支払いに充てている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 222億円 | 408億円 |
| 投資CF | -35億円 | 83億円 |
| 財務CF | 157億円 | -169億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は48.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「みんななかよく」を企業理念として掲げています。また、「One World, Connecting Smiles.」というビジョンのもと、一人でも多くの人を笑顔にし、幸せの輪を広げていくことを目指しています。世界中のすべての人と社会に寄り添う取り組みを通じて、次世代に続く笑顔を共創することを方針としています。
■(2) 企業文化
創業以来、「人は一人では生きていけない」という思いのもと、お互いに思いやりを持って、支え合い、助け合う心を大切にしています。この精神に基づき、ソーシャル・コミュニケーション・ギフト商品やキャラクタービジネスを展開しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営計画「不確実な成長から、安定・永続成長へ」(2025年3月期~2027年3月期)を策定しています。この計画では、ボラティリティ(業績の変動性)の小さい事業体制を確立することを経営課題とし、グローバルでの長期安定成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、欧米での話題性向上や成長のストック化、IP属性の拡張を掲げています。具体的には、「マーケティング・営業戦略の見直しによるグローバルでEvergreenなIP化」として、ブランディング変革や現地クリエイティブ強化を推進します。また、「グローバル成長基盤の構築」のため、北米・アジア等の事業拡大や財務・ガバナンス体制の強化を図ります。さらに、「IPポートフォリオ拡充とマネタイズ多層化」により、グッズ以外の付加価値提供や新規IP創造を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「One World, Connecting Smiles.」のビジョンに基づき、従業員が自分らしく働き成長できる環境づくりを目指しています。グローバル成長基盤構築のため、「グローバル人材」「クリエイティブ人材」の創出を掲げ、戦略的ジョブローテーションや海外人材交流強化、研修プログラム高度化を推進しています。また、DE&I推進を重要軸とし、多様なキャリアや働き方を支える制度整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 14.7年 | 9,425,641円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 44.4% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 44.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 30.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、上級管理職の女性比率(33.9%)、Scope1-2にかかるGHG排出量(981.2t-CO2eq)、Scope3にかかるGHG排出量(188,496.8t-CO2eq)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) キャラクタービジネスについてのリスク
同社グループの業績はキャラクターの人気や需要に依存しており、消費者の嗜好変化の影響を受けやすくなっています。特に「ハローキティ」を中心とする少数キャラクターへの依存度が高いため、主要キャラクターの人気低下等が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競合他社との競争激化や新規参入による人気低下のリスクもあります。
■(2) 経営戦略及び経営計画についてのリスク
中期経営計画に基づき各種施策を実行していますが、経済・市場環境の変化やコストコントロールの未達成、他社の動向等により、計画を達成できない可能性があります。また、状況に応じて事業戦略の調整を行う可能性もあります。
■(3) 新キャラクター開発力及び人材の確保等事業リスク
長期的に安定した人気を得るキャラクターの開発・育成を目指していますが、これらが成功する保証はありません。また、キャラクター開発を支える重要な人材の獲得競争が激化しており、優秀な人材の確保や維持が困難になった場合、開発力が低下し、業績に影響を与える可能性があります。



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