※本記事は、株式会社オリエンタルランドの有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オリエンタルランドってどんな会社?
■(1) 会社概要
同社は1960年に設立され、1983年に東京ディズニーランドを開業しました。1996年に東京証券取引所市場第一部へ株式を上場しています。2001年には東京ディズニーシーおよび東京ディズニーシー・ホテルミラコスタを開業しました。直近では2024年に新テーマポートのファンタジースプリングスを新設しています。
従業員数は連結で11,207名、単体で6,528名です。筆頭株主は事業会社の京成電鉄で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には事業会社の三井不動産が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 京成電鉄 | 20.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.57% |
| 三井不動産 | 5.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は高橋渉氏が務めています。役員のうち社外取締役が占める割合は約38.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙野由美子 | 代表取締役会長(兼)CEO | 1980年同社入社。ミリアルリゾートホテルズ代表取締役社長や同社会長等を歴任。2019年同社取締役副社長執行役員を経て2023年より現職。 |
| 加賀見俊夫 | 代表取締役取締役会議長 | 1958年京成電鉄入社。1995年同社代表取締役社長を経て、2005年より同社代表取締役会長(兼)CEOに就任。2023年より現職。 |
| 高橋渉 | 代表取締役社長(兼)COO社長執行役員 | 1981年同社入社。イクスピアリ代表取締役社長や同社執行役員、取締役常務執行役員を歴任し、2025年より現職。 |
| 金木有一 | 取締役常務執行役員オペレーション本部長 | 1989年同社入社。2014年執行役員、2019年常務執行役員および取締役常務執行役員を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、花田力(元京成電鉄社長)、茂木友三郎(キッコーマン取締役名誉会長 取締役会議長)、田尻邦夫(元デサント社長)、菊池節(元京葉瓦斯代表取締役副社長)、渡邉光一郎(元第一生命保険社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「テーマパーク」および「ホテル」の報告セグメントと「その他」事業を展開しています。
■テーマパーク
テーマパーク事業では、東京ディズニーランドおよび東京ディズニーシーの経営・運営を行い、アトラクションやショーの体験価値の提供、商品および飲食の販売を行っています。顧客は国内外の幅広い層のゲストです。
収益源は、ゲストが支払うパークチケット代、商品や飲食の購入代金などです。これらの事業運営は、親会社であるオリエンタルランドを中心に、関連する子会社等によって行われています。
■ホテル
ホテル事業では、ディズニーホテルなどの経営および運営を行い、顧客に対してホテル宿泊サービスや飲食などの付加価値を提供しています。
収益源は、宿泊客から受け取る客室利用料やホテル内での飲食代などです。これらのホテルの運営は、主に子会社であるミリアルリゾートホテルズが行っています。
■その他
その他事業では、舞浜エリアを中心としたイクスピアリの経営・運営や、ディズニーリゾートラインのモノレールの経営・運営などを行っています。
収益源は、商業施設におけるテナント料や売上歩合、乗客からのモノレール運賃などです。これらの運営は、それぞれ子会社であるイクスピアリや舞浜リゾートラインが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近では新テーマポートの稼働などが寄与して過去最高を記録しています。一方で、経常利益や当期利益は直近でわずかに減少しており、人件費や諸経費の増加が利益率を押し下げる要因となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,757億円 | 4,831億円 | 6,185億円 | 6,794億円 | 7,045億円 |
| 経常利益 | 113億円 | 1,118億円 | 1,660億円 | 1,733億円 | 1,696億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 23.1% | 26.8% | 25.5% | 24.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 99億円 | 715億円 | 1,100億円 | 1,156億円 | 1,150億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しているものの、売上総利益はほぼ横ばいにとどまり、売上総利益率は低下しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も減少しており、コストの増加が利益面を圧迫している状況が伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,794億円 | 7,045億円 |
| 売上総利益 | 2,732億円 | 2,730億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.2% | 38.7% |
| 営業利益 | 1,721億円 | 1,684億円 |
| 営業利益率(%) | 25.3% | 23.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・手当が231億円(構成比22.0%)、業務委託費が173億円(同16.5%)を占めています。また売上原価においては、施設更新関連費や業務委託費を含むその他の営業費が2,176億円(同51.1%)、人件費が881億円(同20.7%)、商品売上原価が714億円(同16.8%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力であるテーマパークセグメントは、ゲスト1人当たり売上高の増加により増収となりましたが、各種経費の増加が影響して減益となりました。一方、ホテルセグメントは客室単価の上昇や新ホテルの通期稼働により増収増益を達成し、高い利益率を確保して全体業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| テーマパーク | 5,521億円 | 5,683億円 | 1,404億円 | 1,305億円 | 23.0% |
| ホテル | 1,105億円 | 1,190億円 | 305億円 | 369億円 | 31.0% |
| その他 | 168億円 | 171億円 | 6億円 | 5億円 | 2.8% |
| 連結(合計) | 6,794億円 | 7,045億円 | 1,721億円 | 1,684億円 | 23.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で安定的な資金を稼ぎ出しながら、外部からの資金調達も併用して積極的な投資を行っている積極型です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も67.5%と市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,954億円 | 1,813億円 |
| 投資CF | -2,531億円 | -1,721億円 |
| 財務CF | -269億円 | 386億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供する」という企業使命のもと、日本国民だけでなく海外の人々からも愛され、親しまれる企業であり続けることを目指しています。あらゆるステークホルダーから信頼と共感を集め、キャッシュ・フローの最大化を達成することで、企業価値の長期持続的な向上を図っています。
■(2) 企業文化
同社は、約40年にわたり受け継がれてきた「従業員全員が一丸となってゲストサービスに取り組む姿勢」を重視しています。人の喜びを自分の喜びと感じるマインドや、年齢・ジェンダー・役職に関わらず互いに称えあう文化が根付いており、「Award of Excellence」や「サンクスデー」などの独自の施策を通じて、モチベーション高く意欲的に仕事に取り組める風土を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は「持続的な社会への貢献」と「長期持続的な成長」を両立するサステナビリティ経営を推進しており、2035年に目指す姿として「あなたと社会に、もっとハピネスを。」を掲げています。具体的な財務目標として、以下を設定して事業の着実な成長を図っています。
・2029年度時点で営業キャッシュ・フロー3,000億円レベル
・2035年度時点で売上高1兆円以上
・ROEは2024中期経営計画期間よりさらに上の水準
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の国内市場の縮小に備え、テーマパーク事業やホテル事業において従来の枠組みにとらわれない新たな付加価値の創出に取り組んでいます。既存アトラクションのリニューアルに加え、新たな体験価値を提供するクルーズ事業への参入など、盤石な集客基盤の構築と新規事業による収益モデルの確立を進めています。また、ESGマテリアリティへの対応やコーポレート・ベンチャー・キャピタルの活動拡大を通じて事業構造の進化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の価値を創出するうえで人材が不可欠と考え、「価値創造に繋がる人材力の向上と人材確保」を掲げています。多様な業務経験を通じてパフォーマンスを最大化できる人材の育成、エンゲージメント向上のための対話を基盤とした組織文化の構築、多様な働き方を推進する職場環境の改善など、従業員の成長基盤と働く安心感を確立する重点戦略を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.8歳 | 10.1年 | 6,051,217円 |
※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.8% |
| 男性育児休業取得率 | 91.6% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 78.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 95.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員女性比率(57.0%)、有給休暇取得率(社員99.5%)、月の所定外労働時間(14時間05分)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要マーケットの変化
テーマパーク事業の来園者は国内ゲストが多くを占めているため、少子化に伴う人口減少や経済環境の変化が入園者数および売上高の減少につながる可能性があります。同社はハード・ソフト面での価値向上やインバウンド集客の強化、さらにはクルーズ事業などの新規領域への参入を進めることで、多様な需要の獲得を図っています。
■(2) 従業員エンゲージメントの変化
同社のリゾート運営は多くの従業員のホスピタリティによって支えられています。人事制度や職場環境において適切な対応が取れず従業員のエンゲージメントが低下した場合、提供するサービスの質が下がり、企業ブランドや業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、働きがいの見える化や学習機会の拡充などの成長支援策を講じています。
■(3) 気候変動や酷暑による事業継続への影響
主力事業であるテーマパークは屋外での体験が多く、気温の上昇や異常気象の増加によって運営の制限を強いられるリスクがあります。夏季における事業継続が困難になる事態を防ぐため、快適性向上のための施設改善や夜間券の拡充など、安全と集客を両立する施策を実施するとともに、天候に左右されにくい新規事業の検討を進めています。
■(4) クルーズ事業の開業遅延
新たな成長の柱として2028年度の就航を目指すクルーズ事業において、造船スケジュールの遅延やサプライヤーの経営難などにより開業が大幅に遅れた場合、経営戦略や業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は造船会社や専門機関と密に連携し、運航経験を持つ企業からの助言を得ながら開業準備を推進しています。



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