木曽路 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 木曽路 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

木曽路は、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、しゃぶしゃぶ・日本料理店を中心とした飲食事業を展開する企業です。直近の業績は、慶事・祝事需要の深耕や季節限定メニューの拡充により増収、原価低減と業務効率化により営業増益を確保しましたが、純利益は減益となっています。


木曽路転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社木曽路の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 木曽路ってどんな会社?


しゃぶしゃぶ・日本料理店を中心とした飲食店を展開し、上質な食文化を提供する企業です。

(1) 会社概要


1950年設立の小川商店を存続会社とし、1966年に「しゃぶしゃぶ 木曽路」第1号店を出店しました。1987年に名証二部、2000年に東証二部へ上場し、翌年に両市場の一部へ指定されています。2021年に大将軍を子会社化して焼肉部門を強化し、2022年に東証プライム市場および名証プレミア市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結1,364名、単体1,359名体制で事業を運営しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は取引先などで構成されるとみられる木曽路共栄会、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.86%
木曽路共栄会 3.54%
日本カストディ銀行(信託口) 1.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は中川晃成氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
吉江 源之 代表取締役会長(代表取締役) 1977年4月同社入社。専務取締役、代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。
中川 晃成 代表取締役社長(代表取締役) 大阪ガス入社後、キンレイ外食カンパニーCEO、KRフードサービス社長等を経て、2025年6月より現職。
松岡 利朗 常務取締役人事総務本部長兼人事部長 1987年4月同社入社。人材開発部長、人事本部長、東日本本部長等を経て、2025年4月より現職。
大橋 浩 常務取締役事業サポート本部長 1987年4月同社入社。企画部長、管理統括本部長兼経営企画部長等を経て、2025年10月より現職。
中根 昌秋 取締役営業統括本部長 2003年12月同社入社。木曽路名古屋営業部長、東京第二営業部長等を経て、2026年2月より現職。
新實 曜子 取締役(監査等委員)(常勤) 1989年9月同社入社。購買開発部長、コンプライアンス委員会部長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、松井常芳(元東邦ガスリビング代表取締役会長)、伊藤邦昭(明輝商会代表取締役社長)、熊田登与子(熊田法律事務所パートナー弁護士)、平野善得(元有限責任監査法人トーマツ代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、飲食店としての事業がほとんどを占める単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 木曽路部門


しゃぶしゃぶと日本料理を提供する「木曽路」を運営しています。慶事や祝事などのハレの日需要を中心に、上質なおもてなしや季節限定メニューを提供し、一般消費者や企業の会食ニーズに対応しています。

店舗での飲食提供により、顧客から飲食代金を受け取る収益モデルです。事業の運営は同社が主体となって行っています。

(2) 焼肉部門


特選和牛の「大将軍」および国産牛焼肉の「くいどん」を運営しています。幅広い層の顧客に対して高品質な焼肉を提供しており、ランチメニューの充実や高付加価値メニューの展開を通じて新規客層の開拓にも取り組んでいます。

店舗での飲食提供により、顧客から飲食代金を受け取る収益モデルです。同社が主体となって店舗運営を行っています。

(3) その他部門


居酒屋「大穴」、鶏料理「とりかく」、和食旬彩処「鈴のれん」、からあげ専門店「からしげ」の経営に加え、食肉の加工販売や物販、不動産賃貸事業を展開し、多様な食のニーズに対応しています。

飲食代金のほか、食肉卸売や物販を通じた販売代金、不動産賃貸収入を得ています。飲食および物販事業は同社が運営し、食肉の加工販売事業は建部食肉産業が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は、継続的な増収基調にあります。経常利益も順調に黒字転換から利益水準を切り上げていますが、当期純利益については前期に計上された特別利益の反動などもあり、当期は減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 368億円 459億円 530億円 532億円 546億円
経常利益 18億円 -5億円 23億円 28億円 29億円
利益率(%) 4.9% -1.1% 4.3% 5.2% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 -7億円 1億円 32億円 17億円

(2) 損益計算書


継続的な増収に加えて、売上総利益率は安定的に推移しています。原価低減や業務効率化の取り組みにより、営業利益率も改善傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 532億円 546億円
売上総利益 363億円 373億円
売上総利益率(%) 68.2% 68.4%
営業利益 27億円 29億円
営業利益率(%) 5.1% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が167億円(構成比48%)、賃借料が40億円(同12%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14億円 54億円
投資CF -16億円 -18億円
財務CF -11億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「よろこびの食文化の創造」すなわち「お客様の感動が私たちの喜びとし、日本一質の高い外食企業を目指す」という経営理念を掲げています。「食べる」ことを単なる栄養摂取にとどめず、潤いのある人生の喜びとしてとらえ、ひとつの文化にまで高めることを目指しています。

(2) 企業文化


経営理念の実現に向け、①食材は常に上質のものを使う、②商品に他店にない特長を持たせる、③落ち着ける店舗をつくる、④常に良いサービスを心がける、⑤お値打ち感のある価格設定をするという価値観を重視しています。顧客起点経営に徹し、チームで成果を創出する企業文化の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


成長性と収益性の追求を通じて企業価値の向上を実現していく方針であり、「売上高成長率」および「売上高経常利益率」を経営の目標指標として掲げています。また、資本効率に関する目標の設定と適宜見直し、株価を意識した経営の実現に向けた具体的な計画や取り組みも検討しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「伝統を未来につなぐために」という経営方針に基づき、既存事業の収益力強化と生産性向上を推進します。木曽路部門におけるハレの日需要の深耕に加え、焼肉部門を第2の柱として育成します。また、新規出店や既存業態の改良、M&Aなどの成長投資を模索し、中長期的な企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と位置付け、人的資本への投資を通じて企業価値の向上を図る人的資本経営を推進しています。計画的な人材採用と育成、職種や役割に応じた専門性とマネジメント能力の向上、多様な人材が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備、従業員エンゲージメントの向上を基本方針としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.8歳 12.5年 5,572,773円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.7%
男性育児休業取得率 47.4%
男女賃金差異(全労働者) 72.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 116.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主力業態への依存
売上全体の大部分を主力業態であるしゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」が占めています。予期せぬ事情によって同業態の売上が著しく減少した場合、他商品の売上で補うことが困難になり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 店舗物件等の保証金等回収リスク
賃借による出店を基本としており、賃貸人に敷金・保証金や建設協力金を預託しています。預託先の経済的破綻等により回収不能となる場合や、中途解約により返還されない事態が生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 原材料の調達と価格変動リスク
原材料仕入額において、肉類、野菜、魚介類が大部分を占めています。異常気象や大規模災害、安全性問題の発生等により、これらの食材の調達が広範囲かつ長期にわたり阻害された場合、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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