木曽路 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 木曽路 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

木曽路は東証プライム・名証プレミア上場企業。しゃぶしゃぶ・日本料理店「木曽路」を主力に、焼肉店や居酒屋等を全国展開する飲食チェーンです。2025年3月期は、人流回復やインバウンド需要の取り込み、価格改定効果等により増収となり、各利益項目も大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社木曽路の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は日本基準です。

1. 木曽路ってどんな会社?


木曽路は、しゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」を中心に、焼肉、居酒屋等の飲食店を全国に展開する企業です。

(1) 会社概要


1952年に名古屋市で「株式会社まつば喫茶」として設立され、1966年に「民芸風しゃぶしゃぶ 木曽路」1号店を出店しました。1987年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、2001年には東証・名証一部に指定されています。2021年には焼肉事業強化のため「株式会社大将軍」を完全子会社化し、その後吸収合併しました。

2025年3月31日時点の従業員数は連結1,342名、単体1,337名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は従業員持株会等の「木曽路共栄会」です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.06%
木曽路共栄会 3.81%
日本カストディ銀行(信託口) 2.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は吉江源之氏、代表取締役社長は中川晃成氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
吉江 源之 代表取締役会長(代表取締役) 1977年同社入社。専務取締役を経て、1993年より代表取締役社長。2006年より代表取締役会長。2016年から会長兼社長を務めた後、2025年6月より現職。
中川 晃成 代表取締役社長(代表取締役) 1989年大阪ガス入社。キンレイ外食カンパニーCEO、KRフードサービス社長、ジェイグループホールディングス社長を経て、2021年同社入社。2025年6月より現職。
松岡 利朗 常務取締役人事総務本部長 兼人事部長 1987年同社入社。人材開発部長、執行役員人事本部長などを歴任。2011年取締役就任。2025年4月より現職。
大橋  浩 常務取締役東日本本部長 兼立地開発本部長 1987年同社入社。執行役員企画部長、取締役管理統括本部長などを歴任。2024年8月より現職。
中根 昌秋 取締役営業統括本部長 兼木曽路営業本部長 2003年同社入社。木曽路名古屋営業部長、執行役員東京第二営業部長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、松井常芳(元東邦ガス専務執行役員)、伊藤邦昭(明輝商会代表取締役社長)、熊田登与子(弁護士)、平野善得(公認会計士・元有限責任監査法人トーマツ代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「木曽路部門」「焼肉部門」および「その他部門」事業を展開しています。

木曽路部門


主力事業として、しゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」を運営しています。厳選された上質な牛肉と伝統の味を提供する和食レストランとして、ハレの日需要や接待、宴会など幅広い顧客層に利用されています。

収益は、来店客からの飲食代金およびサービス料です。運営は主に木曽路が行っています。

焼肉部門


特選和牛を提供する「大将軍」および国産牛焼肉の「くいどん」を運営しています。高品質な焼肉メニューを提供し、ファミリー層から宴会需要まで対応しています。

収益は、来店客からの飲食代金です。運営は主に木曽路が行っています。

その他部門


居酒屋の「大穴」「とりかく」、和食の「鈴のれん」、からあげ専門店の「からしげ」などを運営しています。また、しぐれ煮や胡麻だれ類の物販、不動産賃貸、食肉加工販売も行っています。

収益は、飲食代金、商品販売代金、不動産賃貸収入などです。運営は主に木曽路および子会社の建部食肉産業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2022年3月期にかけてはコロナ禍の影響で厳しい状況でしたが、2023年3月期以降は売上高が回復傾向にあります。2025年3月期は売上高532億円となり、経常利益も28億円まで伸長しました。当期純利益も32億円と大幅な黒字を計上し、利益率も大きく改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 311億円 368億円 459億円 530億円 532億円
経常利益 -36億円 18億円 -5億円 23億円 28億円
利益率(%) -11.5% 4.9% -1.1% 4.3% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -56億円 6億円 -7億円 1億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高は微増ながら、営業利益および営業利益率は前年から改善しています。売上総利益率はほぼ横ばいですが、営業利益率は4.2%から5.1%へと上昇しており、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 530億円 532億円
売上総利益 361億円 363億円
売上総利益率(%) 68.1% 68.2%
営業利益 22億円 27億円
営業利益率(%) 4.2% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が162億円(構成比48%)、賃借料が39億円(同12%)を占めています。売上原価においては、肉類が65億円(売上原価の39%)を占める主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


木曽路部門は微増収となり、全体の売上の約8割を占める主力事業として堅調に推移しました。焼肉部門は退店等の影響により減収となりました。その他部門は、居酒屋業態の回復等により増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
木曽路部門 - 422億円
焼肉部門 - 79億円
その他部門 - 34億円
調整額 - -4億円
連結(合計) 530億円 532億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の儲け(営業CF)で借入金の返済(財務CF)を行いつつ、設備投資(投資CF)も自己資金の範囲内で実施しており、財務体質が健全な状態(健全型)と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 42億円 14億円
投資CF -25億円 -16億円
財務CF -44億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.9%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「よろこびの食文化の創造」を経営理念として掲げています。「お客様の感動が私たちの喜びとし、日本一質の高い外食企業を目指す」ことを目標とし、食事を単なる栄養摂取ではなく、潤いのある人生の喜びや文化にまで高めることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「QSC(品質・サービス・清潔)」の向上や「おもてなし」の心を重視する文化を持っています。常に上質な食材の使用、他店にない商品特長、落ち着ける店舗空間、良いサービスの提供、お値打ち感のある価格設定を通じて、顧客に外食の楽しさと人生の喜びを提供することに全力を注いでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は成長性と収益性の追求を通じて企業価値向上を目指しており、経営の目標指標として以下の2点を掲げています。

* 売上高成長率
* 売上高経常利益率

(4) 成長戦略と重点施策


今後は中核である「木曽路部門」を拡大しつつ、市場変化に対応したビジネスモデルの構築と経営基盤の拡充を図ります。特に「焼肉部門」を第2の柱として業容拡大を目指します。また、コンプライアンス徹底や食の安全・安心の追求、DXによる生産性向上、海外展開やM&A、新業態開発の検討も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成と教育訓練に重点を置き、接客・調理・管理の各分野で研修を充実させています。女性、外国人、中途採用者を含む多様な人材が技術を身につけキャリアアップできる仕組みを構築し、適材適所の配置と定着を図っています。また、マイスター制度の拡充によりスキルの明確化を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.9歳 11.5年 5,410,759円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.5%
男性育児休業取得率 17.7%
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規雇用) 76.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 95.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業績の季節変動について


同社グループの主力商品である「しゃぶしゃぶ」は冬季に需要が高まるため、売上高および営業利益が下半期に偏重する傾向があります。暖冬などの気象条件によっては、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 店舗物件等に係る敷金、保証金及び建設協力金回収に関するリスク


店舗等の賃貸借契約に際し、多額の敷金・保証金や建設協力金を差し入れています。貸主の経済的破綻等により回収不能となる場合や、契約期間満了前の中途解約時に返還されない場合があり、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 自然災害、事故災害及び疫病に関するリスク


店舗網が関東・東海・関西等の大都市圏に集中しているため、これらの地域で地震等の自然災害や感染症が発生した場合、営業中断や設備被害により業績に大きな影響が出る可能性があります。また、被災設備の修復費用や減損損失が発生するリスクもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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