※本記事は、株式会社コメリ の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コメリってどんな会社?
全国に「パワー」「ハード&グリーン」等を展開するホームセンター大手で、農業・園芸分野に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1952年に米穀商米利商店として創業し、1977年にホームセンター事業へ進出しました。1994年に東証二部へ上場し、1997年に東証一部へ指定替えとなりました。2003年には大型店の「パワー」業態1号店を開店し、2021年にはタイ王国に1号店を出店するなど、国内外で事業を拡大しています。
同グループの連結従業員数は3,953人、単体では3,632人です。筆頭株主は株式会社米利で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位にも信託銀行が名を連ねており、創業者の捧雄一郎氏も主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 米利 | 33.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.70% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長最高経営責任者は捧雄一郎氏です。社外取締役比率は約41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 捧 雄一郎 | 代表取締役社長最高経営責任者 | 1988年4月同社入社。北星産業、ビット・エイ等の社長を経て、2014年6月より現職。 |
| 田邊 正 | 取締役常務執行役員 | 1981年3月同社入社。商品本部長、オペレーション担当などを経て、2018年9月よりオペレーション担当兼海外事業統括兼コンプライアンス担当。 |
| 早川 博 | 取締役常務執行役員 | 1985年8月同社入社。秘書室GM、経営企画室GMなどを経て、2024年4月より財務経理・経営企画・関係会社・広報担当。 |
| 保坂 直志 | 取締役常務執行役員 | 1994年3月同社入社。店舗企画部GMなどを経て、2020年6月より開発建設担当。 |
| 鈴木 勝志 | 取締役執行役員 | 1988年3月同社入社。ドットコム事業部GM、新事業推進担当兼DX担当などを経て、2024年7月よりEC・カード担当。 |
| 森 茂行 | 取締役執行役員 | 1993年3月同社入社。業務改革推進室GM、総務部GMなどを経て、2024年7月より組織開発・人事総務担当兼組織開発室GM。 |
| 住吉 正二郎 | 取締役(常勤監査等委員) | ケーヨー常務取締役を経て2002年同社入社。商品本部長などを歴任し、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、松田修一(早稲田大学名誉教授)、和田裕(公立大学法人長岡造形大学名誉教授)、菊地美佐子(元三井物産フォレスト代表取締役社長)、藤田善六(弁護士)、武石聡之(ORMコンサルティング代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホームセンター事業」および「その他」事業を展開しています。
■ホームセンター事業
金物・工具、資材・建材、園芸・農業用品の販売を行っています。店舗ブランドとして、低価格と品揃えの「コメリパワー」、プロ向けの「コメリPRO」、利便性を追求した「コメリハード&グリーン」、インテリア用品の「アテーナ」を展開し、地域特性に合わせた店舗網を構築しています。
収益は一般消費者やプロ顧客への商品販売によって得ています。運営は主にコメリが行い、物流業務は北星産業、システム開発・運用はビット・エイ、クレジットカード・保険代理店業務はコメリキャピタル、リフォーム工事はコメリクリエイトなどが担当しています。
■その他事業
LPガス・ガソリン・灯油等の燃料販売、書籍等の販売、および不動産賃貸業を行っています。これらはホームセンター事業を補完する役割も担っています。
収益は燃料や書籍の販売代金、および不動産賃貸料から得ています。運営は、燃料販売を行うライフコメリ、書籍販売を行うムービータイム、中国で不動産賃貸を行う大連米利海辰商場有限公司などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は3,700億円台から3,800億円台で安定して推移しています。経常利益は2021年3月期をピークに減少傾向にありましたが、直近では下げ止まり横ばいとなっています。当期純利益も同様の傾向を示しており、利益率も低下傾向から横ばいで推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,857億円 | 3,761億円 | 3,794億円 | 3,708億円 | 3,792億円 |
| 経常利益 | 304億円 | 282億円 | 258億円 | 222億円 | 222億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 7.5% | 6.8% | 6.0% | 5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 204億円 | 179億円 | 171億円 | 137億円 | 137億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構造を見ると、売上高は増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は30.6%で安定しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、営業利益は微増を確保しており、営業利益率は5.9%となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,708億円 | 3,792億円 |
| 売上総利益 | 1,134億円 | 1,161億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.6% | 30.6% |
| 営業利益 | 221億円 | 224億円 |
| 営業利益率(%) | 6.0% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が373億円(構成比35%)、賃借料が137億円(同13%)、減価償却費が126億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上を見ると、主力であるホームセンター事業が増収となり、全体を牽引しています。その他事業は微減となりましたが、全体の売上構成比は非常に小さく、影響は限定的です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ホームセンター事業 | 3,661億円 | 3,746億円 |
| その他 | 46億円 | 46億円 |
| 連結(合計) | 3,708億円 | 3,792億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済、配当に回している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 214億円 | 231億円 |
| 投資CF | -154億円 | -182億円 |
| 財務CF | -33億円 | -53億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「企業とは人々の幸せのために存在すべきものであり、それでこそ社会から支持され、存続することができる」という経営理念を掲げています。この理念に基づき、「遅れた分野の流通近代化」を実現するために、金物・工具、資材・建材分野と園芸、家庭菜園、農業資材分野を核カテゴリーと捉え、流通改革に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、経営要諦として「人は事業の最も大切な柱である」と掲げ、人材を重要な経営資源と捉えています。創業の精神である「不易流行」を継承し実践できる人材を育成するため、「賢和塾」を中心とした教育カリキュラムを整備しています。また、従業員の人権を尊重し、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりや、現場でのマイスター制度などを通じた専門性の向上を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「2026年3月期-2028年3月期 中期経営計画」を策定し、2028年3月期の目標として以下の数値を掲げています。
* 営業収益:4,500億円
* 営業利益:320億円
* ROA(総資本経常利益率):8.0%以上
* ROE:8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、生産から販売までのトータルコーディネーションにより、良い商品をより安く提供することを目指しています。「出店戦略」「商品力の強化」「マス化を可能にするグローバル物流」「B2Bの仕組みづくり」などを重点施策としています。
* 出店の拡大:パワー、PRO、ハード&グリーン等の各種フォーマットによる船団方式の出店を行い、ドミナントエリアを形成します。
* 物流機能の拡充:物流センターを拡充し、物流の内製化・効率化を進めます。
* 商品力の強化:PB商品の開発推進やカテゴリーブランドの育成を行います。
* プロ需要獲得:パワー及びPROの出店推進や、JAとの協業を含めた農業支援モデルを構築します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人は事業の最も大切な柱である」という経営要諦に基づき、性別・国籍・年齢等に関係なく多様な人材が能力を発揮できる環境整備を進めています。「賢和塾」を中心とした教育や、ジョブ・ローテーションによるキャリアアップ、女性採用の強化と管理職登用を推進しています。また、DX投資により業務フローを進化させ、生産性向上と従業員の働きがい向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.3歳 | 12.3年 | 4,956,007円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.2% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 47.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 101.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育研修投資額(18.7億円)、2025年4月入社女性社員比率(32.5%)、マイスター取得人数(1級786人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出店・閉店について
「大規模小売店舗立地法」等の規制や住民との調整により出店が遅延したり、建築コストが増加したりする可能性があります。また、人口減少による市場縮小や人件費上昇等により店舗運営が困難となり閉店が発生する場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は損益分岐点の低い店舗づくりやドミナント戦略を推進しています。
■(2) 気候変動について
園芸・農業用品など季節性の高い商品を多く扱っているため、冷夏や暖冬などの天候不順により売上が減少したり、在庫過剰が発生したりするリスクがあります。同社は商品展開時期の調整や在庫管理を行い、気候変動に対応した商品開発や販売施策を推進することで、機会ロスの防止と収益確保に努めています。
■(3) 流通ネットワーク障害について
自然災害、システム障害、感染症拡大等により物流や情報システムが停止した場合、商品の供給遅延や店舗運営に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。特に海外からの調達においてロックダウン等の影響を受けるリスクもあります。同社は物流網や情報システムの整備を進めるとともに、リスク発生時の対応体制を構築しています。
■(4) 競合について
ホームセンター業界では店舗の大型化や業種・業態を超えた競争が激化しています。競合他社の大型店出店等により、同社店舗の売上シェアが低下する可能性があります。同社は新規出店や既存店改装、PB商品開発、人材教育投資による接客力向上などを通じて差別化を図り、地域一番店を目指す戦略をとっています。



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