七十七銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

七十七銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・札証上場。銀行業務を中心に、リース業務やクレジットカード業務などの金融サービスを展開する地方銀行です。直近の業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加、国債等債券売却益の増加などにより、経常収益、経常利益、当期純利益がいずれも増加し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社七十七銀行 の有価証券報告書(第141期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 七十七銀行ってどんな会社?


東北地方最大手の地方銀行として、銀行業務を中心にリースやクレジットカード等の総合金融サービスを展開しています。

(1) 会社概要


1932年に七十七銀行、東北実業銀行、五城銀行が合併して設立されました。1972年に株式を上場し、1978年には七十七信用保証を設立しました。2016年に共同利用システム(MEJAR)の利用を開始し、同年には七十七リースなどの関連会社を完全子会社化しました。2025年にはシンガポールに現地法人を設立しています。

連結従業員数は2,537名、単体では2,291名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には生命保険会社が名を連ねています。また、地元企業の東北電力も大株主の一角を占めており、地域経済との深い結びつきがうかがえます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.43%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 7.53%
明治安田生命保険相互会社 4.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名、計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役頭取は小林英文氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
氏家照彦 (代表取締役)取締役会長 1969年日本興業銀行入行。1993年七十七銀行入行、取締役営業開発部長などを経て2005年取締役副頭取、2010年取締役頭取に就任。2018年6月より現職。
小林英文 (代表取締役)取締役頭取 1981年入行。総合企画部長、取締役本店営業部長、常務取締役などを歴任。2017年取締役副頭取を経て、2018年6月より現職。
小林寛 (代表取締役)専務取締役 1991年入行。総合企画部長、執行役員総合企画部長を経て2023年常務取締役。2024年6月より現職。
井深修一 常務取締役卸町支店長兼中央市場支店長 1989年入行。市場国際部長、執行役員石巻支店長などを経て、上席執行役員本店営業部長兼芭蕉の辻支店長兼南町通支店長などを歴任。2023年6月より現職。
黒田隆士 常務取締役 1990年入行。コンサルティング営業部長、執行役員人事部長などを歴任。2023年6月より現職。
小田島祥之 常務取締役 1992年入行。名掛丁支店長兼仙台駅前支店長、執行役員営業統轄部長を経て、2024年6月より現職。
青木一洋 常務取締役資金証券部長 1992年入行。資金証券部長、執行役員資金証券部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、奥山恵美子(元仙台市長)、大滝精一(元東北大学経済学部長)、小山茂典(元トーキン社長)、福田一雄(元日本銀行仙台支店長)、山浦正井(元仙台市副市長)、牛尾陽子(元藤崎取締役)、三浦直人(元トークネット社長)、遠藤信哉(元宮城県副知事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業務」および「リース業務」等のセグメントで事業を展開しています。

(1) 銀行業務


預金、貸出、有価証券投資、内国・外国為替、社債受託、代理業務、国債や投資信託・保険商品の窓口販売、信託業務などを行っています。法人や個人、地方公共団体などを主要な顧客としています。

収益源は、貸出金利息や有価証券利息配当金、各種手数料などです。運営は主に七十七銀行が行っています。

(2) リース業務


顧客に対して、情報関連機器や産業機械、輸送用機器などのリースを行っています。

収益源は、リース契約に基づくリース料収入です。運営は連結子会社の七十七リースが行っています。

(3) その他


信用保証、クレジットカード、金融商品取引、調査研究、コンサルティング、ファンド運営、人材紹介などの事業を行っています。

収益源は、信用保証料、クレジットカード手数料、業務委託手数料などです。運営は、七十七信用保証、七十七カード、七十七証券などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、経常収益は直近2期で大きく伸長しています。利益面も順調に拡大しており、当期は経常利益・当期純利益ともに過去最高水準となっています。好調の要因は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加です。国債等債券損益などのマイナス要因はあったものの、資金運用収支の大幅な増加がそれを上回り、収益性を大きく押し上げています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 1,200億円 1,182億円 1,221億円 1,506億円 1,716億円
経常利益 251億円 330億円 358億円 442億円 563億円
利益率(%) 20.9% 27.9% 29.3% 29.4% 32.8%
当期純利益(親会社株主帰属) 165億円 222億円 251億円 298億円 393億円

(2) 損益計算書


経常収益が前期比で大きく増加する中、本業の粗利を示す連結業務粗利益も堅調に伸びています。さらに、人件費等の減少により営業経費が前期の544億円から525億円へと減少(改善)したことも寄与し、最終的な経常利益の大幅な増益へとつながっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(売上高相当) 1,506億円 1,716億円
連結業務粗利益(粗利相当) 853億円 912億円
業務粗利益率(%) 56.6% 53.1%
経常利益(営業利益相当) 442億円 563億円
経常利益率(%) 29.4% 32.8%


2025年3月期の営業経費525億円のうち、給料・手当が231億円(構成比約44%)を占めており、労働集約的な性質も持つ銀行業としてのコスト構造が見て取れます。

(3) セグメント収益


「銀行業務」の単一セグメントですが、「サービスごとの経常収益」を見ると、中核である「貸出業務」と「有価証券」が収益の柱として力強く伸びているほか、「リース業務」も前期比で20%以上の増収となるなど、各サービスで堅調に推移していることがわかります。

区分(サービス別) 経常収益(2024年3月期) 経常収益(2025年3月期)
貸出業務 520億円 605億円
有価証券 615億円 685億円
投資業務 117億円 118億円
リース業務 253億円 308億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFが大幅なマイナス(当期は-3,372億円)となっていますが、これは主に「貸出金の増加(=企業等への融資拡大という積極的な資金運用)」によるものです。地域に対する資金供給や金融仲介機能を発揮した結果であり、健全な事業拡大の証として前向きに評価できるポイントです。

また、投資CFは有価証券の売却・償還等によりプラスを計上し、財務CFは株主還元の強化(配当金の支払額増加等)によってマイナス幅が拡大しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -1,037億円 -3,372億円
投資CF 802億円 691億円
財務CF -78億円 -108億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期実績で6.68%となっており、同社が掲げる中長期目標の「7%以上」に向けて着実に改善を進めているフェーズにあります。財務の安定性・安全性を測る連結自己資本比率についても10.60%であり、必要とされる水準(目標値10%程度)を十分にクリアする強固な財務基盤を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、地域社会の繁栄のために最良のソリューションで感動と信頼を積み重ね、ステークホルダーとともに宮城・東北から活躍のフィールドを切り拓いていく「リーディングカンパニー」を目指すことを基本方針としています。

(2) 経営文化


創業より受け継がれる「行是」として、「奉仕の精神の高揚」「信用の向上」「和協の精神の涵養」を掲げています。銀行の発展は地域社会の繁栄とともにあることを認識し、信用を重んじ、和協の精神を職務遂行の根幹としています。

(3) 経営計画・目標


2021年度から2030年度までの10年間を計画期間とする「Vision 2030」を策定しています。財務基盤の強化として、2030年度の「なりたい姿」を以下の通り掲げています。

* 当期純利益(連結):450億円
* ROE(連結):7%以上
* 自己資本比率(連結):10%程度(10.0%~10.5%)
* コアOHR:40%以下

(4) 成長戦略と重点施策


「Vision 2030」に基づき、4つの基本戦略を推進しています。地域への十分な資金供給と金融仲介機能の発揮に加え、グループ一体でのコンサルティング機能を強化し、顧客の資産形成や経営改善を支援します。また、コンプライアンス意識の啓蒙やガバナンス体制の強化にも取り組みます。

* 宮城・東北の活性化(インフラ投資、スタートアップ支援等)
* 地域のお客さまの課題解決(金融×コンサルティング、DX推進支援等)
* ステークホルダーへの還元(事務レス促進、株主還元方針の策定等)
* 気候変動・災害への対応(脱炭素支援、環境配慮型店舗等)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を価値創造の源泉である「人的資本」と位置づけ、「顧客・地域に役立つ人材」および「企業変革に資する人材」の育成を目指しています。人材ポートフォリオ戦略による適材適所、人材育成戦略による自律的キャリア形成支援、多様性推進戦略による女性・シニア活躍、ウェルビーイング推進戦略による健康経営などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.9歳 16.0年 7,602,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.4%
男性育児休業取得率 92.3%
男女賃金差異(全労働者) 36.8%
男女賃金差異(正規雇用) 59.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.8%)、定着率(入行3年退職者割合)(90.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ALM運営の難化


金利上昇局面における預金獲得競争の激化による調達コストの急増や、急激な金利上昇・相場変動による債券評価額の減少などが業績を悪化させる可能性があります。

(2) 同業・異業種との競合激化


人口減少やIT普及、規制緩和等を背景に、業態を超えた競争が激化しています。この中で相対的な競争優位性を失った場合、収益力が低下するリスクがあります。

(3) グループガバナンスの複雑化


事業領域の拡大に伴い新たなリスクが生じる可能性があります。また、グループ事業が進展せず「リーディングカンパニー」の実現性が低下する恐れや、人材のミスマッチ等により有能な人材の確保・育成が遅れるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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