※本記事は、東日本旅客鉄道株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
東日本旅客鉄道は、運輸事業を核に、流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他の事業をグループ各社とともに展開しています。主に関東および東北地方の1都16県で鉄道事業を運営し、駅数は1,632駅、営業キロは7,302.2kmに及びます。
単体従業員数は39,598名、連結従業員数は70,623名です。セグメントは運輸事業、流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他の事業の4つです。
主な国内グループ会社は、ビューカード、JR東日本クロスステーション、ジェイアールバス関東(旅客自動車運送事業)、総合車両製作所(鉄道車両製造事業)などです。
同社グループは、鉄道事業を持続的に運営するため、津軽線(蟹田・三厩間)および久留里線(久留里・上総亀山間)の鉄道事業を2027年4月に廃止し、新たな交通モードへの転換を進めることを発表しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
東日本旅客鉄道は、広範な事業領域を持つ同社グループにおいて、社員一人ひとりの力を重視した人材戦略を推進しています。社員の「働きがい」と「働きやすさ」を高めることで、グループ全体の持続的な成長を目指す方針です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
東日本旅客鉄道では、平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高い傾向にあります。これは、社員が長期的にキャリアを築きやすい環境であることを示しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,191,696円 |
| 平均勤続年数 | 17.1年 |
| 平均年齢 | 39.8歳 |
| 単体従業員数 | 39,598人 |
| 連結従業員数 | 70,623人 |
| 単体のグループ内比率 | 56.1% |
東日本旅客鉄道および同社グループの連結子会社は、確定給付型の制度(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)として確定給付企業年金制度および退職一時金制度を設けています。また、確定拠出型の制度(会社が拠出した資金を従業員が運用する)として確定拠出年金制度を設けています。これらの制度は国内のグループ会社に適用されています。
退職一時金制度がありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、当連結会計年度末における退職給付債務は4,891億円、年金資産は131億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
東日本旅客鉄道グループは、「社員一人ひとりの力」を成長の原動力と位置づけ、グループ経営ビジョン「勇翔2034」の実現に向けて人材戦略を推進しています。社員のエンゲージメント向上とイノベーション創出を目的とした「DEI」、および社員の健康を重視する「健康経営」を土台として強化に取り組んでいます。
事業運営体制の見直しを通じて、「地域に密着した事業運営」「スピード感のある経営」「社員の活躍フィールドの拡大」を実現し、社員が経営の主役としてチャレンジできる環境を創出しています。また、国鉄由来の人事・賃金制度を抜本的に改正し、社員の業務への取り組みや成長、その成果を賃金に反映させることで、チャレンジ意欲を後押しする方針です。2026年4月には、年間の人件費を300億円程度増やし、すべての社員において改正時から65歳までの総収入を増額する見直しを行っています。
具体的には、基本給を「職務能力給」に改め、昇給額を職責に応じて区分し、社員の業務への取り組みと成長、成果をきめ細かく反映する制度を導入しています。さらに、業務に資する資格取得への手当加算や、鉄道事業を担う社員の役割に応じた業務手当の新設、居住地基準の住宅等手当への見直しも行われています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。正規労働者全体では男女間で賃金の額の差異が生じていますが、その差異は女性の平均勤続年数が男性と比較して5年程度短いことや、育児休職等の影響があること、一部の年齢層では女性社員数が少ないこと等によるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 9.0% |
| 男性労働者の育児休業・休暇取得率(正規労働者) | 80.3% |
| 男性労働者の育児休業・休暇取得率(非正規労働者) | 0.0% |
| 女性労働者の育児休業・休暇取得率(正規労働者) | 100.0% |
| 女性労働者の育児休業・休暇取得率(非正規労働者) | 0.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 88.9% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規労働者) | 86.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(非正規労働者) | 61.7% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ ㈱ビューカード
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 10.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率(正規労働者) | 100.0% |
| 女性労働者の育児休業取得率(正規労働者) | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 61.6% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規労働者) | 61.4% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(非正規労働者) | 53.7% |
▼ ㈱JR東日本クロスステーション
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 11.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率(正規労働者) | 96.4% |
| 女性労働者の育児休業取得率(正規労働者) | 100.0% |
| 女性労働者の育児休業取得率(非正規労働者) | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 63.2% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規労働者) | 80.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(非正規労働者) | 98.1% |
▼ ㈱ルミネ
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 39.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率(正規労働者) | 100.0% |
| 女性労働者の育児休業取得率(正規労働者) | 78.3% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 73.5% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規労働者) | 75.1% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(非正規労働者) | 61.4% |
多様性・登用
東日本旅客鉄道グループは、多様な人材の活躍を推進しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 経験者採用数(単体) | 252名 |
| 経験者採用数(連結) | 1,005名 |
| 管理者に占める経験者採用比率(単体) | 20.9% |
| 管理者に占める経験者採用比率(連結) | 24.2% |
| 採用者に占める女性比率 | 30.1% |
| 10事業年度前及びその前後の年度に採用された女性社員の定着率 | 80.2% |
| 障がい者雇用率(単体) | 2.58% |
| 外国籍在籍社員数(単体) | 16か国・地域114名 |
| 外国籍社員採用者数(単体) | 22名 |
| 外国籍社員採用者数(連結) | 91名 |
| 重点成長分野への人材配置(連結) | 1,292名 |
育児・介護支援
育児、介護などと仕事の両立支援を推進しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休職等取得率(単体) | 80.3% |
| 男性育児休職等取得率(連結) | 81.1% |
健康・安全
社員の健康推進と安全な職場づくりに取り組んでいます。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 定期健康診断受診率(単体) | 100% |
| ストレスチェック受検率(単体) | 95.4% |
人材育成・エンゲージメント
社員の能力伸長と活躍フィールドの拡大、働きがい向上を目指しています。
| 指号 | 数値 |
|---|---|
| エンゲージメント調査ポジティブ回答率(単体) | 62.5% |
| 自律的なキャリア形成に資する応募型の研修等に挑戦する社員に占める女性比率 | 20.4% |
| 社員の能力伸長及び活躍フィールド拡大に資する研修や通信教育講座等の受講者数(単体) | 10,656名 |
| 職場主体の研修実績(単体) | 1,975件 |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
東日本旅客鉄道グループは、鉄道事業を基盤としつつ、駅や沿線での生活サービスを多角的に展開しています。人々の移動と暮らしを支える幅広い事業を通じて収益を上げています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、運輸事業、流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他の事業の4つのセグメントで構成されています。鉄道事業を核に、駅や沿線における多様なサービスを提供することで、安定的な収益基盤を構築しています。各事業は相互に連携し、グループ全体の価値向上を目指しています。
運輸事業
鉄道事業を中心とした旅客運送事業を展開しており、旅行業、清掃整備業、駅業務運営業、建設・設備工事業、鉄道車両製造事業、鉄道車両メンテナンス事業なども手掛けています。収益は、鉄道の利用増に伴う運輸収入の増加から得ています。運営は、ジェイアールバス関東、東京モノレール、JR東日本びゅうツーリズム&セールス、JR東日本環境アクセス、JR東日本ステーションサービス、総合車両製作所、JR東日本テクノロジーなどが行っています。
流通・サービス事業
小売・飲食業、卸売業、貨物自動車運送事業、広告代理業などの生活サービス事業を展開しています。駅を交通の拠点から、人・モノ・コトがつながる暮らしのプラットフォームへと転換する「Beyond Stations構想」を推進しています。収益は、エキナカ店舗の売上増加などから得ています。運営は、JR東日本クロスステーション、JR東日本東北総合サービス、JR東日本商事、ジェイアール東日本物流、ジェイアール東日本企画などが行っています。
不動産・ホテル事業
ショッピングセンター運営事業、オフィスビル等の貸付業、ホテル業、これらを展開する不動産の開発・販売事業などの生活サービス事業を展開しています。大規模ターミナル駅開発や沿線開発を通じて、地域とともに街の魅力を高める「くらしづくり(まちづくり)」を推進しています。収益は、不動産販売の売上増に加え、オフィス賃貸収入やショッピングセンター・ホテルの売上増加から得ています。運営は、ルミネ、アトレ、ジェイアール東日本都市開発、JR東日本ビルディング、日本ホテル、仙台ターミナルビル、JR東日本ビルテック、JR東日本不動産などが行っています。
その他の事業セグメント
クレジットカード事業等のIT・Suica事業、情報処理業などを展開しています。Suicaの利用シーンの拡大と、シームレスでストレスフリーな移動の実現、さらに「生活のデバイス」への進化を通じた新たな体験価値の創造に向けて「Suicaの当たり前を超えます~Suica Renaissance~」を推進しています。収益は、ICカード事業関連の売上増加から得ています。運営は、ビューカード、JR東日本メカトロニクス、JR東日本情報システム、JR東日本エネルギー開発、JR東日本コンサルタンツなどが行っています。
同社グループの売上高は本邦の外部顧客へのものが大半を占めており、海外比率は低い傾向にあります。特定の顧客への収益集中は見られません。
| セグメント | 営業収益(2025年3月期) | 営業収益(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 運輸事業 | 1兆9,458億円 | 2兆458億円 |
| 不動産・ホテル事業 | 4,454億円 | 5,132億円 |
| 流通・サービス事業 | 3,938億円 | 4,161億円 |
| その他の事業セグメント | 1,026億円 | 1,095億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
東日本旅客鉄道グループの過去5期間の業績を見ると、営業収益は一貫して増加傾向にあります。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、第35期に損失を計上しましたが、その後は順調に回復し、継続的に増加しています。直近の当連結会計年度では、すべての利益項目が増加しており、堅調な業績推移を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 1兆9,790億円 | 2兆4,055億円 | 2兆7,301億円 | 2兆8,876億円 | 3兆847億円 |
| 経常利益 | △1,795億円 | 1,109億円 | 2,966億円 | 3,216億円 | 3,516億円 |
| 経常利益率 | △9.1% | 4.6% | 10.9% | 11.1% | 11.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △949億円 | 992億円 | 1,964億円 | 2,243億円 | 2,478億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △83.90 | 87.79 | 173.82 | 198.29 | 219.42 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
東日本旅客鉄道グループの従業員1人あたりの営業収益は前期から増加しており、従業員1人あたりの営業利益も同様に増加しています。これらの指標の改善は、同社グループの収益体質の強化と組織効率の向上が進んでいることを示唆しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり営業収益(連結) | 41.5百万円 | 43.7百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 5.4百万円 | 5.9百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
東日本旅客鉄道グループは、堅実な財務基盤を維持しつつ、将来の成長に向けた積極的な投資を進めている段階です。キャッシュ・フローの状況からは、本業で生み出した資金を上回る規模の投資が行われていることがうかがえます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
東日本旅客鉄道グループの自己資本比率は、非製造業のプライム市場平均と比較して高い水準にあります。ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均に近い水準で推移しており、効率的な資本活用が行われていることが示されています。手元資金も増加傾向にあり、不測の事態への耐性も確保されている状況です。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 2兆8,722億円 | 3兆601億円 |
| 自己資本比率 | 28.1% | 28.2% |
| ROE(自己資本利益率) | 8.0% | 8.4% |
| 現金及び預金 | 2,337億円 | 2,622億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
東日本旅客鉄道グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加などにより、前連結会計年度から増加し、資金の流入を示しています。これは本業で安定的に資金を生み出していることを示しています。一方で、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出が増加したことなどにより、前連結会計年度から流出額が増加しています。運輸事業における大規模地震対策やホームドア整備、車両新造、不動産・ホテル事業における大規模開発など、将来の成長に向けた積極的な投資が行われている状況です。
結果として、フリー・キャッシュ・フローはマイナスとなっており、本業で得た資金を上回る投資を実施している成長投資フェーズにあることがうかがえます。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行や金融機関からの借入により、前連結会計年度から流入額が増加しています。これは、大規模な成長投資を支えるための資金調達が行われていることを示しており、同社グループが将来の事業拡大と収益力向上に注力している状況がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 7,323億円 | 7,651億円 |
| 投資CF | △7,834億円 | △8,776億円 |
| 財務CF | 37億円 | 1,387億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △512億円 | △1,125億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、鉄道事業において他の交通機関との競合が激化しており、人口減少や働き方の変化による輸送量の減少が収益に影響を与える可能性があります。また、生活ソリューション事業においても既存・新規事業者との競合リスクがあります。国内外の経済情勢の変化や金利・為替・物価の動向も、同社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、採用難による人材不足が事業運営に影響を与える可能性を認識しています。安定した人材確保に向けたグループ全体での採用活動に取り組んでいます。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
東日本旅客鉄道は、すべての社員が安心と感動を持続的に生み出し、ステークホルダーの信頼に応えることを目指しています。社員一人ひとりの力を最大限に活かし、社会の進運を支える企業グループとしての成長を追求しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループの経営の基本方針であるグループ理念は、「全社員で安心と感動を持続的に生み出し、ステークホルダーの信頼に応え、すべての人の心豊かな生活を実現します」と掲げられています。グループ経営ビジョン「勇翔2034」では、「安全」をグループ全体の経営のトッププライオリティとし、社員が新たな価値創造の「主役」であると位置づけています。
鉄道を中心としたモビリティと生活ソリューションの二軸それぞれの成長と、それらが生み出すシナジーを通じて「安心」と「感動」を実現することを目指しています。また、「ヒト起点」での「ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)」を目標とし、事業活動で得られた価値をステークホルダーに還元する「四方良しの経営」を推進しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、「信頼」をすべての事業の基盤と位置づけています。グループガバナンスの確立に向けて、「健全な企業風土」、「必要な体制やルール」、「活発なコミュニケーション」をベースとした改善策を実行しています。グループ社員が法令・企業倫理等を遵守し、誠実に行動するための「JR東日本グループの『決意と約束』」を制定し、心理的安全性の高い職場づくりを進めています。
人財戦略の土台として「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」と「健康経営」を重視し、「多様性」「革新性」「柔軟性」の3つの基本方針を推進しています。2026年3月には「JR東日本グループDEIポリシー」を策定し、育児や介護と仕事の両立支援、女性社員や障がいのある社員、外国籍社員、LGBTQ+社員等への理解促進に取り組んでいます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、一連の輸送トラブルや不適切事象を重く受け止め、安全・安定輸送の強化向上とグループ全体のガバナンスの改善・強化を最重要課題としています。コンプライアンスの確保とガバナンスの改善・強化に継続して取り組むことで、「信頼」をより強固なものにしていきます。
2026年7月には、地域に密着した36の事業本部での事業運営体制に改正し、「お客さま第一」と「地域密着」の事業運営を実現するとともに、社員の働き方を変革する方針です。また、「勇翔2034」の実現に向け、安全、CX(Customer eXperience)、人材、イノベーション、財務・投資の戦略を策定し、グループ一体で取り組んでいます。2026年度を「AI・DX元年」と位置づけ、イノベーションを加速させていく計画です。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
東日本旅客鉄道は、取締役会が経営の基本方針や戦略を審議し、業務執行の監督を行う体制を構築しています。監査等委員会設置会社として、透明性、公正性、迅速な意思決定を重視したコーポレート・ガバナンスを推進しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、機関投資家が主要な株主として名を連ねています。JR東日本グループ社員持株会も上位株主として存在し、従業員による株式保有も資本構成の特徴の一つです。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.60% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.62% |
| JR東日本グループ社員持株会 | 3.69% |
| みずほ銀行 | 2.76% |
| 日本生命保険相互会社 | 1.91% |
なお、同社は2024年4月1日付で普通株式1株につき3株の割合で分割を行っています。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
東日本旅客鉄道の役員は16名(男性11名・女性5名)で構成され、女性役員比率は31.3%です。代表取締役社長は喜㔟陽一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 喜㔟 陽一 | 代表取締役社長 | 1989年4月同社入社。人事部長、総合企画本部経営企画部長、事業創造本部長、マーケティング本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 渡利 千春 | 代表取締役副社長 社長補佐(全般)、鉄道事業本部長、安全統括管理者 | 1988年4月同社入社。鉄道事業本部安全企画部長、横浜支社長、北海道旅客鉄道取締役などを経て、2023年6月より現職。 |
| 伊藤 敦子 | 代表取締役副社長 社長補佐(全般)、グループ経営戦略本部長 | 1990年4月同社入社。財務部長、総合企画本部経営企画部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 池田 裕彦 | 代表取締役副社長 社長補佐(全般)、イノベーション戦略本部長、新幹線担当、サービス担当 | 1991年4月同社入社。鉄道事業本部サービス品質改革部長、新幹線統括本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 中川 晴美 | 常務取締役 マーケティング本部長、品川開発担当、地方創生担当、観光担当、人財戦略部担当 | 1991年4月同社入社。千葉支社長、鉄道事業本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 内田 英志 | 常務取締役 鉄道事業本部副本部長(運輸車両)、安全企画部担当 | 1992年4月同社入社。八王子支社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 深澤 祐二 | 取締役会長 | 1978年4月日本国有鉄道入社。1987年4月同社入社。人事部長、代表取締役副社長、代表取締役社長などを経て、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、河本宏子氏(元全日本空輸取締役専務執行役員)、岩本敏男氏(元NTTデータ代表取締役社長)、野田由美子氏(ヴェオリア・ジャパン合同会社取締役会長)、大橋弘氏(東京大学大学院経済学研究科教授・東京大学副学長)、樹下尚氏(元警察庁刑事局長・常勤監査等委員)、森公高氏(日本公認会計士協会会長・森公認会計士事務所所長・監査等委員)、小池裕氏(元最高裁判所判事・監査等委員)、天谷知子氏(元金融庁金融国際審議官・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、社外取締役8名を含む16名の取締役で構成されています。独立した立場から経営を監督し、業務執行全般の監査・監督を行うことで、コーポレート・ガバナンス体制の強化を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
東日本旅客鉄道の役員報酬は、基本報酬と業績連動報酬を組み合わせた体系となっています。取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く)に対しては、役位に応じた基本報酬に加え、グループの経営成績や株主還元、ESGに関する取り組みなどを総合的に評価した業績連動報酬が支給されます。社外取締役(監査等委員である取締役を除く)には、その職責に鑑み、業績連動報酬は支給されず、基本報酬のみが支給される仕組みです。
なお、総額には期中に退任した役員の報酬が含まれます。また、取締役(監査等委員である取締役を除く)の基本報酬の金額には、子会社における不祥事に伴う報酬返上額を含んでいます。
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