三菱倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三菱倉庫 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、倉庫・港湾運送・国際運送取扱等の物流事業と、ビル賃貸・マンション販売等の不動産事業を展開しています。2025年3月期は、物流・不動産両事業での増収に加え、不動産販売や投資有価証券売却益等により、増収増益を達成しました。


※本記事は、三菱倉庫株式会社 の有価証券報告書(第222期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三菱倉庫ってどんな会社?


倉庫事業を中核とした総合物流企業であり、オフィスビル賃貸などの不動産事業も展開する歴史ある企業です。

(1) 会社概要


1887年に有限責任東京倉庫会社として設立され、1918年に現在の三菱倉庫へ商号変更しました。1931年には日本初のトランクルームサービスを開始し、1949年に東京証券取引所へ上場しています。2010年には富士物流を連結子会社化し物流機能を強化しました。近年では2023年に米国Cavalier Logisticsグループを連結子会社化し、医薬品物流事業のグローバル展開を加速させています。

連結従業員数は5,004名、単体では1,009名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には資本関係のある明治安田生命保険が名を連ねています。第4位の三菱地所とは、同じ三菱グループとして不動産事業での取引関係があります。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 18.63%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 9.00%
明治安田生命保険相互会社 7.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.0%です。代表取締役社長は斉藤秀親氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
斉 藤 秀 親 代表取締役社長 1987年同社入社。大阪支店長、国際輸送事業部長を経て、2023年4月より現職。
藤 倉 正 夫 取締役会長 1982年同社入社。大阪支店長、代表取締役社長を経て、2023年6月より現職。
前 川 昌 範 代表取締役常務執行役員 1986年同社入社。総務部長兼広報室長兼人事部長などを経て、2025年4月より現職。
木 村 宗 徳 取締役常務執行役員 1987年同社入社。横浜支店長、業務部長、国際輸送事業部長などを経て、2025年4月より現職。
山 尾   聡 取締役常務執行役員 1983年同社入社。業務部長、大阪支店長を経て、2023年4月より現職。


社外取締役は、若林辰雄(元三菱UFJ信託銀行社長)、北沢利文(元東京海上日動火災保険社長)、内藤忠顕(元日本郵船社長)、庄司哲也(元NTTコミュニケーションズ社長)、木村和子(金沢大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「不動産事業」を展開しています。

物流事業


倉庫事業、陸上運送事業、港湾運送事業、国際運送取扱事業を行っています。倉庫での貨物保管・荷役、トラックによる輸配送、港湾での船舶への積込・取卸、国際間の複合一貫輸送など、サプライチェーン全体をカバーする総合物流サービスを顧客に提供しています。

収益は、荷主企業からの保管料、荷役料、運送料、通関料などで構成されています。運営は、同社および富士物流、菱倉運輸、ユニトランスなどの国内子会社に加え、米国三菱倉庫会社、欧州三菱倉庫会社などの海外現地法人が担っています。Cavalier Logisticsグループも本セグメントに含まれます。

不動産事業


ビル等の賃貸・管理、駐車場・商業施設の運営、マンション分譲を中心とする不動産販売を行っています。東京・江戸橋や神戸・ハーバーランドなどの所有地を活用し、オフィスビルや商業施設、住宅を展開しています。また、データセンター対応ビルの開発も進めています。

収益は、テナントからの賃貸料や管理料、およびマンション購入者からの分譲収入等です。運営は同社が主体となり、ダイヤビルテック、横浜ダイヤビルマネジメントなどの子会社が施設の管理・保守業務を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
営業収益(または売上高) 2,137億円 2,572億円 3,006億円 2,545億円 2,841億円
経常利益 160億円 232億円 300億円 244億円 186億円
利益率(%) 7.5% 9.0% 10.0% 9.6% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 392億円 179億円 272億円 278億円 319億円


直近5期間の業績を見ると、営業収益は2023年3月期まで拡大基調にありましたが、2024年3月期には海上運賃下落等の影響で減収となりました。2025年3月期は物流・不動産両事業の伸長により再び増収に転じています。経常利益は2023年3月期をピークに減少傾向ですが、当期利益は特別利益の計上などにより高水準を維持しています。

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を分析します。営業収益は前期比で増加し、売上総利益および営業利益も増加しました。一方で、経常利益は持分法による投資損失の計上などにより減少しています。当期純利益は投資有価証券売却益や固定資産処分益などの特別利益が増加したことで増益となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,545億円 2,841億円
売上総利益 322億円 364億円
売上総利益率(%) 12.7% 12.8%
営業利益 189億円 203億円
営業利益率(%) 7.4% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給与が68億円(構成比42%)、減価償却費が15億円(同10%)を占めています。売上原価においては、作業運送委託費が1,199億円(構成比48%)と最も大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


物流事業は、Cavalier Logisticsグループの通期寄与や輸出入貨物の取扱増加により増収となりましたが、営業利益はコスト増等により減益となりました。不動産事業は、分譲マンション販売収入の増加や新規施設の稼働により大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
物流事業 2,175億円 2,377億円 146億円 139億円 5.8%
不動産事業 386億円 478億円 109億円 137億円 28.7%
調整額 △16億円 △14億円 △65億円 △72億円 -
連結(合計) 2,545億円 2,841億円 189億円 203億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、運転資金や成長のための設備投資資金を主に事業活動から生じる自己資金で賄い、必要に応じて金融機関からの借入や社債発行で資金調達を行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や資金留保等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産や投資有価証券の取得による支出がありましたが、売却収入等により増加に転じました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払い、社債の償還等により減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 418億円 296億円
投資CF △315億円 155億円
財務CF △149億円 △442億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「いつもを支える。いつかに挑む。」”Supporting Today, Innovating Tomorrow.”をグループパーパスとして制定しています。また、「トータルロジスティクスと街づくりを世界で展開し、社会のいつもを支え、非連続な成長を実現する」を「MLC2030ビジョン」として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、誠実かつ公正な企業活動を遂行することを「行動基準」として定めています。また、求める人材像として「信義を守り、誠実かつ公正に行動する」「自律的に行動する」「環境変化に対して柔軟に対応する」「高い専門性を発揮し創造的に活動する」「チームワークを保ち周囲と協力する」といった価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年度を最終年度とする長期ビジョンに向けた経営計画[2025-2030]を推進しています。最終フェーズとして、持続的な成長と企業価値の向上を目指しており、2030年度の財務目標を設定しています。

* 事業利益:630億円程度
* 純利益:410億円程度
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


経営計画[2025-2030]において、5つの成長戦略を掲げています。「物流事業の飛躍」ではトータルロジスティクスサービスの強化、「不動産事業の進化」では資産回転型ビジネスの本格稼働等を推進します。「海外事業の拡大」ではASEAN、北米、インドを重点領域とし、「先端技術の活用」や「グループ経営基盤の強化」にも取り組みます。

財務戦略としては、2030年までにDOE4%以上、機動的な自己株式取得、政策保有株式の縮減を進め、純資産を4,000億円前後の水準でコントロールする方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「成長のための人的資本経営の推進」をマテリアリティの一つに掲げています。人材を資本と捉え、企業内大学「MLCアカデミー」での専門性の高い人材育成や、多様な人材の活躍推進に注力しています。また、健康経営やワーク・ライフ・バランスの充実、エンゲージメントの向上に取り組み、社員が能力を最大限発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.7歳 16.0年 9,127,324円


※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 38.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規雇用) 68.0%
男女賃金差異(非正規) 71.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変動


物流事業における国内外の景気変動や顧客の物流合理化、不動産事業における賃貸オフィス市場の需給バランスや市況動向などが業績に影響を与える可能性があります。人手不足やインフレによるコスト増加も懸念材料です。

(2) 事業用資産の自然災害による被災


倉庫や賃貸ビル等の事業用資産について耐震対策や保険付保を行っていますが、大規模な地震、台風、水害等の自然災害が発生した場合、保険でカバーしきれない損害が生じ、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 投資有価証券等の評価損


政策保有株式や関係会社株式を保有しており、時価変動の影響を受けます。2025年3月期には、ベトナムの持分法適用関連会社の業績悪化に伴い、多額の投資損失を計上しました。今後も投資先の業績や市場環境によっては減損処理等が必要となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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