クレスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クレスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、ITサービス事業およびデジタルソリューション事業を主軸に展開しています。直近の業績は、企業のDX投資需要を取り込み、売上高は前期比11.4%増、親会社株主に帰属する当期純利益は18.2%増と増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社クレスコ の有価証券報告書(第37期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クレスコってどんな会社?


同社は、アプリケーション開発や基盤構築を行うITサービスと、AI・クラウド等のデジタルソリューションを提供する独立系システムインテグレーターです。

(1) 会社概要


同社は1988年4月に設立され、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場、翌2001年には市場第一部へ指定替えとなりました。グループ再編にも積極的で、2022年7月には子会社3社を統合しクレスコ・ジェイキューブを発足、2024年4月にはITインフラに強みを持つジェット・テクノロジーズの全株式を取得し連結子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。

同グループは連結従業員数2,999名、単体1,424名の体制です。筆頭株主は創業者の親族が代表を務めるとみられる有限会社イワサキコーポレーション、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は個人株主の浦崎雅博氏です。

氏名 持株比率
有限会社イワサキコーポレーション 17.60%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.50%
浦 崎 雅 博 6.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は冨永 宏氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
根 元 浩 幸 代表取締役会長 1988年同社設立時に入社。ソリューション本部長、ビジネスソリューション事業本部長などを歴任。2014年代表取締役社長、2016年代表取締役社長執行役員を経て、2022年4月より現職。
冨 永  宏 代表取締役社長社長執行役員 1990年同社入社。経営管理本部長、サービスコンピテンシー統括本部長などを歴任。2021年取締役専務執行役員を経て、2022年4月より現職。
杉 山 和 男 取締役 1990年同社入社。財務経理本部長、コーポレート統括本部長などを歴任。2022年取締役専務執行役員を経て、2025年4月より現職。
髙 石   哲 取締役(常勤監査等委員) 2015年同社入社。グループ事業推進本部長、コーポレート統括本部副本部長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、福井順一(元共同通信社常務取締役)、佐藤幸恵(ケミストリー代表取締役社長)、佐野みゆき(元パソナHS常務執行役員)、佐藤治夫(元ニッセイ情報テクノロジー執行役員)、前川昌之(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITサービス事業」および「デジタルソリューション事業」を展開しています。

ITサービス事業


金融、製造、流通・サービス等の幅広い業界の顧客に対し、システム開発、IT基盤構築、組込みシステム開発などのITサービスを提供しています。また、ITコンサルティングや保守・運用サービスも行っています。

主な収益源は、顧客との準委任契約、派遣契約、請負契約に基づくシステム開発やエンジニアリングサービスの対価です。運営は主にクレスコ、クレスコ・イー・ソリューション、アイオス、メクゼス、クレスコ・ジェイキューブ、エニシアス、クレスコ・ネクシオ、ジェット・テクノロジーズ等のグループ各社が行っています。

デジタルソリューション事業


企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するため、AI、クラウド、RPA、セキュリティ等の先端技術を活用したソリューションや自社製品を提供しています。顧客のDX実現に向けたコンサルティングから導入支援までを手掛けます。

主な収益源は、ライセンス販売、製品販売、サブスクリプション利用料、および導入支援や保守サービスの対価です。運営は主にクレスコ、クレスコ・デジタルテクノロジーズ等のグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な右肩上がりを続けており、直近5期間で約1.5倍に拡大しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに増加傾向にあり、利益率は10%台後半を安定して維持しています。企業のDX投資需要を背景に、順調な成長軌道を描いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 397億円 445億円 484億円 528億円 588億円
経常利益 41億円 48億円 51億円 57億円 63億円
利益率(%) 10.3% 10.8% 10.6% 10.7% 10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 25億円 22億円 37億円 44億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は20.0%程度で推移しており、原価管理が安定していることが窺えます。営業利益率は10%前後を確保しており、収益性は底堅い状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 528億円 588億円
売上総利益 103億円 118億円
売上総利益率(%) 19.6% 20.0%
営業利益 51億円 60億円
営業利益率(%) 9.7% 10.2%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が22億円(構成比38.3%)、のれん償却額が3億円(同5.9%)を占めています。売上原価においては、労務費や外注費が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


ITサービス事業、デジタルソリューション事業ともに増収となっています。特にデジタルソリューション事業は売上高の伸び率が高く、新たな収益の柱として成長しています。利益面では、ITサービス事業が増益となる一方、デジタルソリューション事業は減益となっており、利益率はITサービス事業の方が高い水準にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ITサービス事業 489億円 541億円 66億円 77億円 14.2%
デジタルソリューション事業 38億円 47億円 2.3億円 1.7億円 3.6%
調整額 - - -17億円 -19億円 -
連結(合計) 528億円 588億円 51億円 60億円 10.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 48億円
投資CF 15億円 -23億円
財務CF -7.2億円 -21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、長期ビジョン「CRESCO Group Ambition 2030」を掲げ、「人が想い描く未来、その先へ」というスローガンのもと、最高のテクノロジーと絆で「わくわくする未来」を創造することを目指しています。顧客とともに持続的に成長し、社会を前進させることをミッションとしています。

(2) 企業文化


同社は「サステナビリティに関する基本方針」において、人間はみな平等であるという立場から、能力以外の差別を無くし、技術の追求を中心とした自由で活気のある経営を実践することを重視しています。また、社員が共に喜びと誇りを持ち、自己の能力を最高に発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2026」において、2026年度を最終年度とする財務目標を設定しています。具体的には以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:700億円
* 連結営業利益率:11.5%
* 連結ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2026」では、7つの成長戦略を推進しています。顧客との共創型モデルの確立、品質リーダーシップの発揮、人的資本経営の推進に加え、技術・デジタルソリューションの拡張や事業連携の促進によりビジネスエコシステムの拡大を図ります。また、グループ内のデジタル変革や一体経営の強化により、経営効率化とシナジー創出を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本経営推進」を掲げ、多様な人財が活躍する人財ポートフォリオの構築を目指しています。ITプロフェッショナルとしての「資質」「人間力」「技術力」「仕事力」を高める育成を行うとともに、DX推進人財や高度専門人財の育成を強化しています。また、エンゲージメントの向上や健康経営、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を通じて、社員が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.6歳 11.1年 6,622,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 68.2%
男女賃金差異(全労働者) 80.7%
男女賃金差異(正規雇用) 80.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 92.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間研修時間40時間到達率(41.2%)、エンゲージメントスコア(65.8点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サービスリスク


ソフトウェア開発・保守等のサービスにおいて、顧客からの仕様変更や予期せぬ技術的ミスマッチにより追加工数が発生し、不採算プロジェクトとなる可能性があります。また、納品物の不具合による損害賠償請求を受けるリスクもあり、経営成績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報漏洩・システムリスク


サイバー攻撃や過失等により、第三者の秘密情報や資産が漏洩・消失した場合、損害賠償責任や信用の低下を招く恐れがあります。同社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 災害等リスク


大規模な自然災害や疫病の発生により、事業継続に必要な情報システムへの被害や従業員の安全確保が困難になるなど、事業活動が停滞または停止する可能性があります。これにより、経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 開発人材の獲得に関するリスク


ITエンジニアの不足が続く中、計画通りに人材を確保できず、協力会社との連携も円滑に進まない場合、プロジェクトの遂行やサービス提供に支障が生じる可能性があります。これは、同社グループの成長や経営成績に影響を与える重要なリスク要因です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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