クレスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クレスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クレスコは東京証券取引所プライム市場に上場し、主にエンタープライズシステムや金融システムの開発等のITサービス事業および、AIやクラウド等のデジタルソリューション事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比10.1%増の647億円、営業利益が同10.4%増の66億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、クレスコの有価証券報告書(第38期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クレスコってどんな会社?


多様な業界向けにITシステム開発やDX支援ソリューションを提供する独立系システムインテグレーターです。

(1) 会社概要


1988年にソフトウェア開発を目的としてクレスコを設立。2001年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年にプライム市場へ移行しました。近年は積極的なM&Aを進め、2024年にジェット・テクノロジーズ、2025年にエイプスやアイエステクノポートなどの企業をグループに迎え入れています。

同社グループの従業員数は連結で3,188名、単体で1,498名です。筆頭株主は創業者が代表を務める有限会社イワサキコーポレーションで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
イワサキコーポレーション 17.96%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.90%
浦崎雅博 6.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は冨永宏氏が務めています。社外取締役の比率は55.6%(9名中5名)です。

氏名 役職 主な経歴
根元浩幸 代表取締役会長 1988年設立に伴い入社。各種事業部長や本部長を歴任し、2014年より代表取締役社長。2022年より現職。
冨永宏 代表取締役社長社長執行役員 1990年入社。事業部長や経営戦略本部長等を歴任し、2021年に取締役専務執行役員。2022年より現職。
寺村孝幸 取締役常務執行役員 1991年入社。事業部長や本部長を歴任し、2025年より常務執行役員経営戦略担当。同年より現職。
髙石哲 取締役(常勤監査等委員) 2015年入社。グループ事業推進本部等の要職を務め、2021年より現職。


社外取締役は、福井順一(元日本不動産銀行広報部長)、佐藤幸恵(ケミストリー代表取締役社長)、佐野みゆき(元NTTヒューマンソリューションズ常務執行役員)、佐藤治夫(元ニッセイ情報テクノロジー執行役員)、前川昌之(公認会計士税理士前川昌之事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITサービス事業」および「デジタルソリューション事業」を展開しています。

ITサービス事業


エンタープライズ、金融、製造などの幅広い顧客向けに、コンサルティングからシステムの企画、開発、保守まで総合的なサービスを提供しています。システムエンジニアを派遣する準委任・派遣契約と、顧客の要求仕様に合わせたシステムを構築・納品する請負契約を組み合わせて展開しています。

準委任・派遣契約では提供した役務の工数等に応じた対価を、請負契約ではシステム納品等の成果物に対する対価を顧客から受け取ります。運営は主にクレスコおよび、クレスコ・イー・ソリューションやアイオスなどの連結子会社が行っています。

デジタルソリューション事業


顧客のDX実現を支援するため、クラウド、AI、ロボティクス、セキュリティなどの製品やサービスからなるソリューション群を提供しています。自社および他社のソフトウェア製品やライセンスの販売に加え、それらの導入支援や保守サポートを総合的に提供しています。

収益源は、製品やライセンスの販売代金に加え、継続的な保守サービスによる利用料や、導入に伴う役務提供の対価などです。運営は主にクレスコをはじめ、アイエステクノポートやエイプスなどのソリューションに強みを持つグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高および経常利益は安定して右肩上がりの成長を続けています。積極的なM&Aやデジタルソリューション分野での需要拡大が寄与し、直近の売上高は5年間で約1.5倍に拡大しました。利益率も10%台後半の高水準を維持しており、着実な収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 445億円 484億円 528億円 588億円 647億円
経常利益 48億円 51億円 57億円 63億円 70億円
利益率(%) 10.8% 10.6% 10.7% 10.7% 10.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 22億円 28億円 33億円 42億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益や営業利益も堅調に増加しています。売上総利益率は20%台を、営業利益率も10%台を維持しており、安定した収益性を保ちながら事業を拡大していることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 588億円 647億円
売上総利益 118億円 131億円
売上総利益率(%) 20.0% 20.3%
営業利益 60億円 66億円
営業利益率(%) 10.2% 10.2%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が11億円(構成比17%)、賞与引当金繰入額が1.1億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるITサービス事業は、エンタープライズ分野におけるアプリケーション開発支援業務の増加などにより堅調に推移しています。一方、デジタルソリューション事業は、クラウドやAI関連のライセンス販売や導入支援が大きく伸び、加えて積極的なM&Aの効果も寄与したことで、売上高が前期比で約2倍に急拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エンタープライズ 221億円 240億円
金融 172億円 174億円
製造 149億円 139億円
ITサービス事業合計 541億円 554億円
デジタルソリューション事業 47億円 93億円
連結(合計) 588億円 647億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の資金の流れを示すキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した利益で借入金の返済や配当支払いを行い、将来に向けた投資も手元資金で賄っている「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 48億円 53億円
投資CF -23億円 -13億円
財務CF -21億円 -40億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「クレスコ憲章」を掲げ、「人間中心、実力本位の会社である」「自由、若さ、夢をもつ会社である」「最高の技術を発揮する会社である」「皆が経営する会社である」「世界で生きる会社である」という5つの行動指針のもと事業を展開しています。また、長期ビジョン「CRESCO Group Ambition 2030」において、「人が想い描く未来、その先へ」「最高のテクノロジーと絆で”わくわくする未来”を創造します」という使命を掲げています。

(2) 企業文化


「サステナビリティに関する基本方針」の中で、「企業活動の成長が世界の人々の幸福に可能な限り最大の貢献をすること、そしてそこに働く人々が共に喜びと誇りをもち、自己の能力を最高に発揮できること」を使命としています。人間はみな平等であるとの立場から、性別、学歴、国籍などあらゆる差別を無くし、技術の追求を中心とした自由で活気のある経営を行う文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


長期グループビジョンの具現化に向けた3つのステップとして、現在は第2ステップとなる「中期経営計画2026(挑戦:2024年度~2026年度)」を推進しています。「顧客とともに持続的に成長し、社会を前進させる」ことを基本方針とし、2026年度における以下の財務目標の達成を目指しています。

* 連結売上高:700億円
* 連結営業利益率:11.5%
* 連結ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


目標達成のため、生成AIやクラウド、セキュリティ等の「デジタルソリューション事業」の強化と積極的なM&Aに注力しています。また、従来の受託型から課題解決型・未来創造型への転換による「共創型モデルの確立」、全方位型の「品質リーダーシップ発揮」、AI活用を前提とした「人的資本経営推進」などを重点戦略として実行し、事業全体の利益率向上と持続的な成長を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本価値の最大化」を目標に掲げ、顧客のIT基盤整備から成長サポートへと提供価値を拡大できるITプロフェッショナルの育成を推進しています。特に、生成AIを業務に取り込めるDX推進人財の強化や、次世代マネジメントの育成、キャリア開発支援などに注力し、ダイバーシティ採用や外国人採用による多様な人財の獲得と、活躍できる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.2歳 11.9年 6,713,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.6%
男性育児休業取得率 131.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 48.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(74.1%)、年間研修時間40時間到達率(27.6%)、エンゲージメントスコア(66.5点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サービスリスク


ソフトウェア開発や保守等のサービスにおいて、顧客からの仕様変更要求や予期せぬ技術的なミスマッチによる不採算プロジェクトの発生、納品物の不具合に伴う損害賠償等のリスクがあります。同社は品質・プロセス統括本部を中心に品質マネジメントを推進し、リスクの未然防止に努めています。

(2) 情報漏洩・システムリスク


サイバー攻撃や過失等により、第三者の秘密情報や資産が漏洩・消失した場合、損害賠償責任の発生や信用の低下を招くリスクがあります。同社はコンプライアンスチェックの定期実施やセキュリティ事故発生時の体制整備により、悪影響を最小限にとどめる対策を講じています。

(3) 開発人材の獲得に関するリスク


システム開発において、計画通りにITエンジニアを獲得できず、協力会社と適切な連携がとれない場合、プロジェクトの遂行やサービス提供に支障が生じるリスクがあります。同社は働き方改革を伴う採用活動の強化や、外国人採用、オフショア開発の拡大により人材不足に対応しています。

(4) 事業投資および資金運用に関するリスク


事業領域の拡大に向けたM&Aやアライアンス投資において、当初想定したシナジー効果を発揮できない場合や、運用する金融商品の価値が市場変動によって下落した場合、のれんや有価証券の評価損が発生し、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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