リクルートホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リクルートホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リクルートホールディングスは東証プライム市場に上場し、HRテクノロジー、人材派遣、マーケティング・マッチング・テクノロジーの3事業を展開しています。業績は好調で、売上収益と各利益が共に増加する増収増益のトレンドを維持しています。グローバル市場での人材マッチングと業務支援SaaSの提供を推進しています。


※本記事は、株式会社リクルートホールディングスの有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. リクルートホールディングスってどんな会社?


人材マッチングプラットフォームと業務支援SaaSを展開するグローバルIT企業です。

(1) 会社概要


1960年に大学新聞広告社として創業し、就職情報誌等の提供を開始しました。1990年代には紙メディアからインターネットへの移行を進め、2012年に米国企業を買収しHRテクノロジー事業へ本格参入しました。2014年に東京証券取引所へ上場し、グローバル規模でのマッチングソリューションを展開しています。

従業員数は連結で45,586名、単体で130名です。大株主の上位は、資産管理業務を行う信託銀行などが占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.81%
日本カストディ銀行(信託口) 7.17%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 3.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役会長は峰岸真澄氏、代表取締役社長は出木場久征氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
出木場 久征 代表取締役社長 兼 Chief Executive Officer 同社入社後、情報誌のネットメディア化を牽引。Indeed, Inc.の買収を推進しCEO等を歴任。2021年より現職。
峰岸 真澄 代表取締役会長 兼 取締役会議長 同社入社後、SUUMOブランドを構築。代表取締役社長 兼 CEOとして事業ポートフォリオ再編を実現。2021年より現職。
瀬名波 文野 取締役 兼 常務執行役員 兼 Chief Operating Officer 同社入社後、英国人材派遣会社の業績改善に貢献。Indeed, Inc.のChief of Staff等を歴任。2021年より現職。
Rony Kahan 取締役 2004年にIndeed, Inc.を共同設立し、President & ChairmanやCEOを歴任し成長させた。2018年より現職。


社外取締役は、泉谷直木(元アサヒグループホールディングス代表取締役会長)、小寺剛(元ソニー・インタラクティブエンタテインメント社長)、本田桂子(元世界銀行グループ多数国間投資保証機関長官CEO)、Katrina Lake(Stitch Fix, Inc. Founder and CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HRテクノロジー事業」「人材派遣事業」「マーケティング・マッチング・テクノロジー事業」を展開しています。

HRテクノロジー事業


求職者と企業をつなぐオンライン求人マッチング・採用プラットフォーム「Indeed」や「Glassdoor」を運営しています。AIやテクノロジーを活用し、グローバル規模で採用プロセスの効率化と高速化を支援しています。

企業クライアントからの有料求人広告の掲載や、サブスクリプション型のソーシング機能の利用料、人材紹介における採用成立時の手数料等を収益源としています。運営は主にIndeed, Inc.やインディードリクルートパートナーズなどの子会社が行っています。

人材派遣事業


日本国内および欧州、米国、豪州において、事務職、製造業務、軽作業、各種専門職等の人材を企業へ派遣するサービスを提供しています。各地域に営業拠点を構え、地域に密着したローカルマッチングを行っています。

派遣スタッフの稼働実績や就業期間に応じた派遣料金を企業クライアントから受け取り収益としています。運営はリクルートスタッフィングやスタッフサービス、欧米や豪州の各海外子会社が行っています。

マーケティング・マッチング・テクノロジー事業


美容(HotPepper Beauty)、旅行(じゃらん)、飲食(HotPepperグルメ)、住宅(SUUMO)等の情報プラットフォームと、AirレジやAirペイなどの業務・経営支援SaaSを提供し、企業クライアントの生産性向上を支援しています。

企業クライアントからの期待アクション数に応じた掲載料や流通取引総額に連動した手数料、SaaSの利用料を収益源としています。運営は主に同社およびリクルートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において、売上収益は順調に拡大を続けており、力強い成長軌道を描いています。税引前利益および利益率も一時的な変動はあったものの、全体として右肩上がりのトレンドを示しており、収益力の向上が確認できます。当期利益も継続して増加しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2兆8,717億円 3兆4,295億円 3兆4,165億円 3兆5,575億円 3兆6,974億円
税引前利益 3,827億円 3,678億円 4,262億円 5,271億円 6,446億円
利益率(%) 13.3% 10.7% 12.5% 14.8% 17.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2,968億円 2,698億円 3,537億円 4,085億円 4,969億円

(2) 損益計算書


売上収益と売上総利益が共に増加しており、売上総利益率は高い水準を維持しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も大きく向上しており、効率的なコストコントロールと高収益化が進んでいることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3兆5,575億円 3兆6,974億円
売上総利益 2兆856億円 2兆1,882億円
売上総利益率(%) 58.6% 59.2%
営業利益 4,905億円 6,306億円
営業利益率(%) 13.8% 17.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が7,020億円(構成比46%)、広告宣伝費が2,821億円(同18%)、業務委託費が2,446億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のHRテクノロジー事業をはじめ、すべての報告セグメントで売上収益が増加しました。特にHRテクノロジー事業とマーケティング・マッチング・テクノロジー事業が売上拡大を牽引しており、各事業分野でのサービスの利用拡大やマネタイズの進化が寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
HRテクノロジー 1兆3,723億円 1兆4,584億円
人材派遣 1兆6,670億円 1兆7,034億円
マーケティング・マッチング・テクノロジー 5,395億円 5,647億円
調整額 -213億円 -292億円
連結(合計) 3兆5,575億円 3兆6,974億円


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済等を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6,104億円 6,694億円
投資CF -611億円 -497億円
財務CF -8,805億円 -7,435億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.5%であり、いずれも市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


基本理念として「私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す」を掲げています。また、ビジョンとして「Follow Your Heart」、ミッションとして「まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。」を定めています。

(2) 企業文化


同社は、大切にする価値観(バリューズ)として「新しい価値の創造」「個の尊重」「社会への貢献」を重視しています。常識を疑い変わり続けることを楽しむ姿勢や、一人ひとりの好奇心から生まれる情熱に投資する文化、そしてすべての企業活動を通じて持続可能で豊かな社会に貢献する組織風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期的な利益成長と企業価値および株主価値の最大化に向け、新規事業投資や研究開発、M&A等の成長投資を機動的かつ積極的に実行することを方針としています。そのため、主な経営指標として「EBITDA+S」を設定しており、その達成度を役員の報酬に連動させることで目標達成を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


戦略として「Simplify Hiring」「Help Businesses Work Smarter」「Prosper Together」を推進しています。HRマッチング市場における採用プロセスの効率化や、日本国内での企業クライアントの生産性向上を支援するとともに、ステークホルダーとの共存共栄を通じた持続的な成長に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員の意欲を最大化することを経営の重要テーマとし、インクルージョン&ビロンギングの向上や、内発的動機を引き出す社内環境の整備、人材育成に取り組んでいます。従業員一人ひとりの違いを尊重し、好奇心から生まれるアイデアや情熱に投資することで、新たなサービスや事業を生み出す組織文化の醸成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 9.3年 11,624,997円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 55.0%
男性育児休業取得率 113.2%
男女賃金差異(全労働者) 85.8%
男女賃金差異(正規) 86.5%
男女賃金差異(非正規) 134.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、同社グループの従業員に占める女性の割合(55.3%)、同社グループの管理職に占める女性の割合(45.7%)、上級管理職に占める女性の割合(24.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) データセキュリティとプライバシー

個人ユーザーや企業クライアントの個人情報および機密情報を大量に保有しており、サイバー攻撃やシステムの欠陥、人為的ミスによってデータが流出・不正使用されるリスクがあります。事案が発生した場合、損害賠償や行政処分を受け、社会的信用やブランド価値が毀損される可能性があります。

(2) マクロ環境と雇用情勢の変動

人材マッチング事業は各国の景気や経済情勢、雇用環境の変化に大きく影響を受けます。採用需要の低下や労働者派遣の需要減少が継続する場合、売上収益が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、マーケティング事業でも消費低迷による広告宣伝費の削減が懸念されます。

(3) テクノロジーの進化と競合激化

技術革新のサイクルが速く、AIなどの新技術の導入や対応が遅れた場合、競争力が低下するリスクがあります。また、資金力のある巨大テクノロジー企業や新規参入企業との競争が激化しており、ユーザーのニーズに的確に対応できない場合、市場シェアの喪失や収益性の低下を招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

リクルートホールディングスの転職研究 2026年3月期決算に見るキャリア機会

リクルートホールディンの2026年3月期決算は、売上収益3.9%増の3兆6,973億円、EBITDA+Sは17.0%増の7,943億円と堅調に伸長。「Simplify Hiring」を掲げAI実装や事業間シナジーを加速する同社において、「なぜ今転職なのか」「どの事業でどんな役割を担えるのか」を最新データから整理します。


【面接対策】リクルートR&Dスタッフィングの中途採用面接では何を聞かれるのか

製造系技術派遣会社のリクルートR&Dスタッフィングへの転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめ転職を成功させましょう。


【面接対策】リクルートゼクシィなびの中途採用面接では何を聞かれるのか

対面のサービスで全国に店舗を展開しているリクルートゼクシィなびへの転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。


【面接対策】リクルートコミュニケーションズ(RCO)の中途採用面接では何を聞かれるのか

リクルート全事業のマーケティング、制作をおこなうリクルートコミュニケーションズへの転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。


【面接対策】リクルートテクノロジーズの中途採用面接では何を聞かれるのか

IT・ネットマーケティングテクノロジー開発をおこなう、リクルートテクノロジーズへの転職。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われるほか、「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として評価されるので事前にしっかり対策をして転職を成功させましょう。