カルビー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カルビー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カルビーは東京証券取引所プライム市場に上場しており、ポテト系や小麦系、コーン系等のスナック菓子およびシリアル食品の製造販売を主要事業として展開しています。直近の連結業績では、売上高は増加したものの、減価償却費等の固定費増加やインフレによる費用増の影響を受け、営業利益や経常利益は減益となっています。


※本記事は、カルビーの有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カルビーってどんな会社?


ポテト系・小麦系等のスナック菓子やシリアル食品の製造販売を中心に、国内外で事業を展開する食品メーカーです。

(1) 会社概要


1949年に設立され、1955年にカルビー製菓へ社名変更しました。1964年に「かっぱえびせん」、1975年にポテトチップスを発売し、2011年に株式を上場しています。近年では、2025年に米国Hodo, Inc.を子会社化し、大豆加工食品などの新規領域にも進出しています。

同社グループの従業員数は連結で6,974名、単体で3,711名です。筆頭株主は資本提携先であるPepsiCo,Inc.の子会社FRITO-LAY GLOBAL INVESTMENTS B.V.であり、第2位は一般社団法人幹の会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
FRITO-LAY GLOBAL INVESTMENTS B.V. 22.01%
一般社団法人幹の会 14.38%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.0%です。代表取締役社長兼 CEOは江原信氏です。社外取締役は11名中5名が就任しています。

氏名 役職 主な経歴
江原 信 代表取締役社長兼 CEO 1981年伊藤忠商事入社。ジョンソン・エンド・ジョンソンを経て2011年同社入社。ジャパンフリトレー社長や海外カンパニープレジデントなどを歴任。2023年4月より現職。
井本 朗 取締役副社長執行役員兼 CPO 1987年同社入社。品質保証本部長、生産カンパニープレジデント、カルビージャパンリージョンプレジデントなどを歴任。2026年4月より現職。
笙 啓英 取締役副社長執行役員兼 CSO 1989年伊藤忠商事入社。2013年同社入社。海外第一事業本部長、海外カンパニープレジデントなどを歴任。2026年4月より現職。


社外取締役は、宮内義彦(元オリックス社長)、桐山一憲(元P&Gジャパン社長)、杉田浩章(早稲田大学大学院教授)、鈴木貴子(元エステー社長)、ウェイウェイ・ヤオ(ペプシコインターナショナルビバレッジ フランチャイズ&グレーターチャイナ プレジデント)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品製造販売事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) スナック菓子


ポテト系、小麦系、コーン系等のスナック菓子の製造および販売を行っており、国内外の幅広い消費者を顧客としています。国内だけでなく北米、英国、インドネシア、中国などの海外市場でも多様なニーズに応えるスナック製品を提供しています。

製品の販売による収益を主な収益源としています。国内の製造販売は主に同社およびジャパンフリトレーが担い、一部製造はカルビー・イートークが行っています。海外ではCalbee America, Inc.やCalbee Group (UK) Ltdなどが製造販売を行っています。

(2) シリアル食品およびその他食品


自然素材を活かしたシリアル食品の製造販売に加え、ばれいしょや甘しょの調達・販売、豆腐および大豆加工食品の製造販売を展開しています。健康志向の高まる市場へ向けて付加価値の高い食品を提供しています。

製品および農産物等の販売を収益源としています。シリアル食品の製造販売は主に同社が行い、海外ではカルビー(杭州)食品有限公司などが販売を担います。ばれいしょはカルビーポテトなどが、甘しょはカルビーかいつかスイートポテトが、大豆加工食品はHodo, Inc.が展開しています。

(3) その他事業(物流事業)


食品製造販売事業を支えるための物流事業を展開しています。グループ全体の効率的な製品供給や原材料の輸送など、サプライチェーンの最適化を目的とした物流サービスを提供しています。

グループ内の物流業務受託による手数料などを主な収益源としています。物流事業の運営は、カルビーロジスティクスが主に担っており、ホワイト物流の推進などを通じて輸配送の効率化や安定的な物流網の確保を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで推移しており、堅調な事業拡大が伺えます。一方、経常利益は原材料価格の高騰や設備投資等による固定費の増加といった要因から増減を繰り返しており、直近では減益傾向にあります。利益率もやや低下傾向にあり、収益性の向上が今後の課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2454億円 2793億円 3030億円 3226億円 3402億円
経常利益 269億円 235億円 312億円 298億円 271億円
利益率(%) 11.0% 8.4% 10.3% 9.3% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 206億円 139億円 236億円 191億円 146億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上総利益率は低下しており、原材料費や製造コストの上昇が影響していることがわかります。また、営業利益も減益となっており、営業利益率も低下傾向にあります。積極的なマーケティングやプロモーション活動による販管費の増加なども利益を圧迫する要因となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3226億円 3402億円
売上総利益 1099億円 1108億円
売上総利益率(%) 34.1% 32.6%
営業利益 291億円 262億円
営業利益率(%) 9.0% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が192億円(構成比23%)、給料・雑給が175億円(同21%)を占めています。また、当期の総製造費用においては、材料費が914億円(構成比65%)、経費が263億円(同19%)、労務費が226億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「食品製造販売事業」の単一セグメントですが、製品別に見るとスナック菓子の売上が全体の多くを占めています。当期はばれいしょの収量減の影響があったものの、価格改定効果やコーン・豆系等のスナックの販売伸長により、スナック菓子全体で増収となりました。また、シリアル食品等のその他食品も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
スナック菓子 3076億円 3237億円
その他食品 510億円 537億円
その他 18億円 19億円
リベート等控除 -378億円 -391億円
連結(合計) 3226億円 3402億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスの「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 391億円 356億円
投資CF -286億円 -262億円
財務CF 25億円 -170億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは、自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしに貢献します。」という企業理念を掲げています。創業以来、自然素材の力を軸に新たな価値を創造し、社会課題の解決と経済価値の創出を両立させることで、社会に貢献し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


利他の精神が企業文化の基盤として根付いています。従業員一人ひとりが自身の持ち場で強みや持ち味を最大限に発揮し、前後の工程にも気を配りながら、共に働く仲間と独自の価値を創り上げることを重視しています。多様な人財がお互いを尊重し、協働しながら切磋琢磨することで成長し続ける組織風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2035年に実現したい姿を見据えた成長戦略「Accelerate the Future」において、資本効率を重視した中長期的な企業価値向上を目指しています。財務健全性を維持しつつ、自己資本比率55%程度を中長期の最適資本構成と位置づけ、資本コストの低減とROIC-WACCスプレッドの最大化を目標に掲げています。

* 5年間の株主還元として毎期3円以上の増配となる累進配当の実施
* 2031年3月期までにDX人財500名体制の構築

(4) 成長戦略と重点施策


日本のスナック菓子メーカーから世界の「SNACKING COMPANY」へと進化するため、国内事業の収益力向上と海外事業の成長、成長領域への投資による事業ポートフォリオ変革を進めます。北米を中心とした戦略的M&Aや重点投資を通じて非連続な成長を実現し、グローバルでの価値創出を加速させます。

* 海外事業や新カテゴリにおけるM&A等へ1,000億円以上の投資
* 国内外の事業成長のための成長投資へ1,100億円以上の投資

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全員活躍」を人的資本に関する最上位方針として掲げ、人財を競争優位性の源泉であり持続的な成長を支える最重要経営基盤と位置付けています。多様な人財が強みを活かし、貢献と成長を通して幸せと誇りを感じながら活躍できる環境の実現を目指します。失敗を恐れず挑戦できる風土醸成や、自律的なキャリア形成を支援する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.2歳 12.6年 6,856,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.4%
男性育児休業取得率 102.5%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 81.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.9%


また、同社は「人的資本に関する考え方および取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性執行役員・本部長比率(19.0%)、障がい者雇用率(2.94%)、平均有給休暇取得率(84.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の安全性に関するリスク


食品メーカーとして安全で安心な製品の提供は最重要の責任です。品質に問題が生じ、製品の安全性に疑義が持たれた場合には、製品の回収や販売の中止を余儀なくされる恐れがあります。お客様からの信頼低下により、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料や資材の調達リスク


ポテトチップス等の主原料である国産ばれいしょについて、天候不順や生産農家の減少、病害虫の発生等により十分な量が確保できないリスクがあります。また、輸入原料や資材の価格高騰や調達ルートの変更が生じた場合、コスト増加を通じて同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 国内の製品供給が滞るリスク


運送・物流業界の「2024年問題」や労働人口の減少により、輸配送車両の不足が懸念されています。同社は自動化やAIを活用したサプライチェーンの改革等を進めていますが、適切な費用で車両を確保できない場合や輸配送費が想定以上に上昇した場合、製品供給が滞り経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) グローバル人財確保に関するリスク


海外事業の拡大を下支えするため、採用・配置・育成を仕組み化した「グローバルタレントマネジメント」を推進し、人財の確保に努めています。しかし、雇用情勢の変化により必要なグローバル人財を十分に採用できない場合や育成に遅れが生じた場合、事業戦略の実行に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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