カルビー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カルビー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、ポテト系、小麦系、コーン系等のスナック菓子およびシリアル食品の製造販売を主要事業としています。直近の業績は、国内での価格・規格改定効果や海外事業の伸長等により、売上高、親会社株主に帰属する当期純利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、カルビー株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カルビーってどんな会社?


自然素材を活かしたスナック菓子やシリアル食品のトップメーカーとして、国内外で事業を展開しています。

(1) 会社概要


1949年に松尾糧食工業として広島で設立され、1964年に「かっぱえびせん」を発売しました。2009年には米国PepsiCo, Inc.と資本提携を行い、ジャパンフリトレーを完全子会社化しています。2011年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後、2020年にはポテトかいつか(現カルビーかいつかスイートポテト)を子会社化するなど、事業拡大を続けています。

同社グループの従業員数は連結で5,138名、単体で2,290名です。筆頭株主は米国PepsiCo, Inc.の子会社で、資本提携関係にあります。第2位は一般社団法人、第3位は信託銀行の信託口となっており、事業会社や機関投資家が名を連ねています。

氏名 持株比率
FRITO-LAY GLOBAL INVESTMENTS B.V. (常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部) 21.41%
一般社団法人幹の会 14.56%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長兼CEOは江原 信氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
江原  信 代表取締役社長兼 CEO 伊藤忠商事、ジョンソン・アンド・ジョンソンを経て2011年同社入社。ジャパンフリトレー社長、海外カンパニープレジデント等を歴任。2023年4月より現職。
井本 朗 取締役専務執行役員兼 CPO 1987年同社入社。品質保証本部長、生産カンパニープレジデント等を経て、2025年4月より現職。
笙 啓英 取締役専務執行役員兼 CSO 伊藤忠商事を経て2013年同社入社。海外事業本部長、海外カンパニープレジデント等を歴任。2025年4月より現職。


社外取締役は、茂木 友三郎(キッコーマン取締役名誉会長 取締役会議長)、福島 敦子(ヒューリック取締役)、宮内 義彦(オリックス シニア・チェアマン)、ワンユエン・タン(Hillhouse Group パートナー)、桐山 一憲(for GL代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。

食品製造販売事業(スナック菓子)


ポテトチップスやじゃがりこ、かっぱえびせん等のポテト系、小麦系、コーン系、豆系スナック菓子を製造・販売しています。国内および海外の幅広い消費者を顧客としています。

製品の販売による代金を収益としています。国内では同社およびジャパンフリトレー、海外ではCalbee America, Inc.(米国)、Calbee Group (UK) Ltd(英国)、PT. Calbee-Wings Food(インドネシア)などが製造販売を行っています。

食品製造販売事業(シリアル食品)


オーツ麦やドライフルーツ等を主原料とする「フルグラ」を中心としたシリアル食品を製造・販売しています。健康志向の消費者や朝食需要を主なターゲットとしています。

製品の販売による代金を収益としています。製造販売は主に同社が行い、中国においてはカルビー(杭州)食品有限公司などが販売を行っています。

食品製造販売事業(その他食品)


ばれいしょや甘しょ(さつまいも)等の農産物の調達および販売、加工品の製造販売を行っています。原材料としての供給や、素材菓子としての販売を行っています。

農産物や加工品の販売による代金を収益としています。運営は、ばれいしょに関してはカルビーポテト、甘しょに関してはカルビーかいつかスイートポテトが行っています。

その他事業(物流)


グループ製品の物流業務を担っています。効率的な物流体制の構築と運営を行い、製品の安定供給を支えています。

物流業務の受託による対価を収益としています。運営はカルビーロジスティクスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間において増加傾向にあり、第76期には3,226億円に達しました。利益面では、経常利益は変動が見られるものの、第76期は298億円を確保しています。当期純利益は第74期に一時落ち込みましたが、その後回復し、第76期は191億円となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,667億円 2,454億円 2,793億円 3,030億円 3,226億円
経常利益 275億円 269億円 235億円 312億円 298億円
利益率(%) 10.3% 11.0% 8.4% 10.3% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 166億円 206億円 139億円 236億円 191億円

(2) 損益計算書


直近2期間において売上高は増加し、売上総利益も増加していますが、売上総利益率はほぼ横ばいとなっています。営業利益は増加しましたが、営業利益率は微減となりました。販売費及び一般管理費の増加が利益率に影響を与えている可能性がありますが、全体として増収に伴う利益額の増加が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,030億円 3,226億円
売上総利益 1,020億円 1,099億円
売上総利益率(%) 33.6% 34.1%
営業利益 273億円 291億円
営業利益率(%) 9.0% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が177億円(構成比22%)、給料・雑給が165億円(同20%)、広告宣伝費が75億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


食品製造販売事業の単一セグメントであるため、事業別の増減について分析します。国内食品製造販売事業は、価格・規格改定効果や需要獲得により売上が伸長しました。海外食品製造販売事業は、中華圏で減収となったものの、北米や英国、インドネシア等での伸長により全体として増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
食品製造販売事業 3,030億円 3,226億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金の一部を投資活動に回しつつ、借入等の財務活動でも資金を調達しており、事業拡大に向けた投資を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 244億円 391億円
投資CF -353億円 -286億円
財務CF 169億円 25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創立以来の「自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしに貢献する」という企業理念を掲げています。この理念のもと、中長期的な社会課題に対応し、事業機会を捉えて次なる成長に向けた変革を進めています。

(2) 企業文化


同社グループは、自然素材を活かした製品づくりを通じて社会課題を解決することを存在意義としています。「サステナビリティ経営」を重視し、顧客や取引先などのステークホルダーとの共創を行いながら、持続的な事業成長と持続可能な社会の実現の両立を目指す価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けたビジョンのもと、成長戦略「Change 2025」(2024年3月期~2026年3月期)を推進しています。財務目標として以下の数値を掲げています。

* オーガニック売上成長率:+4~6%
* 連結営業利益成長率:+6~8%
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「海外市場と新たな食領域を、成長の軸として確立する」ことを目指し、事業構造改革を推進しています。国内コア事業ではブランド強化とDXによる収益力強化を図り、海外では北米・中国を中心に日本発ブランドの展開を拡大します。また、アグリビジネスや食と健康事業などの新規領域にも注力し、将来的な事業ポートフォリオの転換を進めています。

* 成長投資:800億円程度(国内外設備投資、M&A等)
* 効率化投資:600億円程度(ESG対応、自動化・省力化等)
* 株主還元:250億円程度

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全員活躍」を掲げ、多様な人財が強みを活かし、組織・社会への貢献と自身の成長を通じて幸せと誇りを感じる状態を目指しています。経営・グローバル・DX人財の育成強化、キャリア自律の支援、心理的安全性の高い組織風土の醸成を方針とし、失敗を恐れず挑戦できる環境づくりや、多様性を尊重したDE&I経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.6歳 13.9年 8,199,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.1%
男女賃金差異(正規雇用) 81.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性執行役員・本部長比率(19.5%)、障がい者雇用率(2.80%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の安全性に関するリスク


食品メーカーとして安全・安心な製品の提供は最重要責務です。品質保証体制の構築やトレーサビリティの確保に努めていますが、万一品質問題が発生し、製品の回収や販売中止に至った場合、社会的信用の失墜や経営成績への悪影響が生じる可能性があります。

(2) 原材料や資材の調達リスク


主原料であるばれいしょ等は天候不順や病害虫(ジャガイモシストセンチュウ等)の影響を受けやすく、調達量の確保が困難になるリスクがあります。また、海外からの輸入原料・資材についても、価格高騰や地政学的リスクによる調達難が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 気候変動によるリスク


気候変動による気温上昇や気象パターンの変化は、ばれいしょ等の原材料の収量や品質に影響を与える可能性があります。また、炭素税の導入や消費者の環境意識の変化、自然災害の激甚化による工場被災やサプライチェーン寸断のリスクもあり、これらは経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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