日立製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日立製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京、名古屋市場に上場する総合電機メーカーです。デジタル、グリーンエナジー、インダストリー等の幅広い事業をグローバルに展開しています。直近の業績は、売上収益が9兆7834億円と前期比微増、親会社株主に帰属する当期利益は6157億円で増益となり、堅調な推移を見せています。


※本記事は、株式会社日立製作所 の有価証券報告書(第156期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日立製作所ってどんな会社?


優れた自主技術と製品開発で社会課題を解決する、日本を代表するグローバルな社会イノベーション企業です。

(1) 会社概要


1910年に久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場として発足し、1920年に独立しました。2016年にデジタルソリューション「Lumada」事業を開始し、デジタルシフトを加速させました。2020年にはスイスABB社のパワーグリッド事業を買収して日立エナジーを発足させるなど、グローバル事業の強化と事業ポートフォリオの再編を推進しています。

同社グループ(連結)の従業員数は282,743名、同社(単体)は25,892名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。また、第8位には日本生命保険相互会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.23%
日本カストディ銀行(信託口) 5.91%
ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 3.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性39名、女性4名の計43名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表執行役 執行役社長兼CEOは德永俊昭氏です。社外取締役比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
德永 俊昭 取締役報酬委員 代表執行役執行役社長兼CEO統括 1990年同社入社。生活・エコシステム事業統括本部長、執行役専務等を経て、2025年4月より現職。
東原 敏昭 取締役会長指名委員 代表執行役取締役会長全般 1977年同社入社。日立プラントテクノロジー社長、同社社長兼CEO等を経て、2022年4月より現職。
松村 祐土 代表執行役執行役常務法務、輸出管理、コンプライアンス戦略、経営オーディット、知的財産戦略担当 1998年弁護士登録。森・濱田松本法律事務所マネージングパートナー等を経て、2025年4月より現職。
阿部 淳 代表執行役執行役副社長社長補佐(デジタルシステム&サービス事業、デジタル戦略担当)デジタルシステム&サービス事業担当 1984年同社入社。サービス&プラットフォームビジネスユニット制御プラットフォーム統括本部長等を経て、2024年4月より現職。
ブリス・コッホ 代表執行役執行役副社長社長補佐(コネクティブインダストリーズ事業担当)コネクティブインダストリーズ事業担当 ABB社幹部等を経て2017年同社入社。日立オートモティブシステムズ社長&CEO等を経て2024年4月より現職。
加藤 知巳 代表執行役執行役専務財務戦略、年金、投資戦略、IR戦略、リスクマネジメント担当 1986年同社入社。財務統括本部グループ財務戦略本部長等を経て、2024年4月より現職。
長谷川 雅彦 代表執行役執行役専務マーケティング・営業戦略、地域戦略(日本/中国)、渉外、コーポレートコミュニケーション戦略担当 1987年同社入社。関西支社長、執行役常務等を経て、2022年4月より現職。
井原 勝美 取締役会議長指名委員長監査委員報酬委員 ソニー副社長等を経て2018年6月より現職。
ラヴィ・ヴェンカテイサン 取締役 Microsoft India会長等を経て2020年7月より現職。
桜井 恵理子 取締役指名委員 東レ・ダウコーニング会長兼CEO等を経て2025年6月より現職。
菅原 郁郎 取締役指名委員監査委員 経済産業事務次官等を経て2022年6月より現職。
イザベル・デシャン 取締役 Unilever社幹部等を経て2024年6月より現職。
西島 剛志 取締役監査委員報酬委員 横河電機社長・会長等を経て2025年6月より現職。
ジョー・ハーラン 取締役報酬委員 3M社幹部、Dow Chemical社副会長等を経て2018年6月より現職。
山本 高稔 取締役報酬委員長 モルガン・スタンレー証券MD、カシオ計算機常務等を経て2016年6月より現職。
ヘルムート・ルートヴィッヒ 取締役監査委員 Siemens社幹部等を経て2020年7月より現職。
西山 光秋 取締役監査委員長(常勤) 同社執行役専務、日立金属会長兼CEO等を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、井原勝美(元ソニー副社長)、ラヴィ・ヴェンカテイサン(元Microsoft India会長)、桜井恵理子(元東レ・ダウコーニング会長)、菅原郁郎(元経済産業事務次官)、イザベル・デシャン(Rio Tinto幹部)、西島剛志(元横河電機会長)、ジョー・ハーラン(元Dow Chemical副会長)、山本高稔(元カシオ計算機常務)、ヘルムート・ルートヴィッヒ(元Siemens CIO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルシステム&サービス」「グリーンエナジー&モビリティ」「コネクティブインダストリーズ」および「その他」事業を展開しています。

デジタルシステム&サービス


システムインテグレーション、コンサルティング、クラウドサービス等のデジタルソリューションや、ストレージ、サーバ等のITプロダクツ、ソフトウェア、ATMなどを提供しています。主な顧客は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業や金融機関、官公庁などです。

収益は、顧客からのシステム構築対価、サービス利用料、製品販売代金などから構成されます。運営は、同社および日立システムズ、日立ソリューションズ、GlobalLogic Worldwide Holdings、日立ヴァンタラなどが担っています。

グリーンエナジー&モビリティ


パワーグリッド、再生可能エネルギー、原子力などのエネルギーソリューションと、鉄道システムを提供しています。脱炭素社会の実現を目指す電力会社やエネルギー関連企業、および鉄道事業者が主な顧客です。

収益は、エネルギー・鉄道インフラの構築、製品販売、保守サービス料などから得ています。運営は、同社およびHitachi Energy、Hitachi Rail、日立パワーソリューションズ、日立プラントコンストラクションなどが担っています。

コネクティブインダストリーズ


ビルシステム(エレベーター等)、生活・エコシステム(家電・空調)、計測分析システム(半導体製造装置等)、産業・流通ソリューション、水・環境ソリューション、産業用機器を提供しています。顧客は製造業、ビルオーナー、医療機関、一般消費者など多岐にわたります。

収益は、製品の販売代金、システム構築対価、メンテナンスサービス料などから構成されます。運営は、同社および日立ビルシステム、日立グローバルライフソリューションズ、日立ハイテク、日立産機システムなどが担っています。

その他


不動産の管理・売買・賃貸や、その他の事業を展開しています。グループ内の福利厚生施設の管理や、地域統括会社による製品販売なども含まれます。

収益は、不動産の賃貸料や管理手数料、製品販売などから得ています。運営は、日立リアルエステートパートナーズ、および米州、アジア、欧州などの各地域統括会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は過去5期間で変動が見られますが、直近では9兆円台後半で推移しています。税引前利益は8000億円台から9000億円台で安定的に推移しており、直近の2025年3月期には9627億円となりました。当期利益も5000億円から6000億円台を維持しており、全体として安定した収益基盤を築いていることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 8兆7292億円 10兆2646億円 10兆8812億円 9兆7287億円 9兆7834億円
税引前利益 8444億円 8393億円 8199億円 8258億円 9627億円
利益率(%) 9.7% 8.2% 7.5% 8.5% 9.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 5016億円 5835億円 6491億円 5899億円 6157億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期から微増の9兆7834億円となりました。売上総利益は増加し、売上総利益率も2.3ポイント改善しています。営業利益に相当する項目はIFRSのため表示がありませんが、コスト構造の改善や高付加価値化が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9兆7287億円 9兆7834億円
売上総利益 2兆5821億円 2兆8208億円
売上総利益率(%) 26.5% 28.8%
営業利益 - -
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が783億円(構成比4.2%)、外注経費が845億円(同4.6%)、研究開発費が549億円(同3.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて、前期比で売上収益の変動が見られます。特にグリーンエナジー&モビリティは大幅な増収となりましたが、売却に伴うオートモティブシステムの減少が全体に影響しています。利益面では、グリーンエナジー&モビリティやコネクティブインダストリーズが貢献しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
デジタルシステム&サービス 2兆5987億円 2兆8326億円 3334億円 3974億円 14.0%
グリーンエナジー&モビリティ 3兆0523億円 3兆9155億円 1992億円 3690億円 9.4%
コネクティブインダストリーズ 3兆0580億円 3兆1632億円 3207億円 3620億円 11.4%
その他 5078億円 4975億円 68億円 124億円 2.5%
調整額 -6524億円 -6254億円 9108億円 1兆1408億円 -
連結(合計) 9兆7287億円 9兆7834億円 9182億円 1兆1418億円 11.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ利益を使って借入金を返済しつつ、投資も手元資金の範囲内でコントロールしている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 9566億円 1兆1722億円
投資CF -1315億円 -5737億円
財務CF -1兆0249億円 -4241億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として掲げています。この理念のもと、顧客に対してより高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、創業の精神である「和」「誠」「開拓者精神」を大切にしています。これらは、議論を尽くして一旦決まれば一致協力する「和」、他者からの信頼を得るために誠心誠意を尽くす「誠」、そして未知の領域に果敢に挑戦する「開拓者精神」を表しており、これらを日立グループ・アイデンティティとして共有しています。

(3) 経営計画・目標


同社は新経営計画「Inspire 2027」を策定し、2027年度に向けて以下の経営指標を目標として掲げています。

* 売上収益年成長率(2024年度-2027年度 CAGR):7-9%
* Adjusted EBITA率(2027年度):13-15%
* キャッシュフローコンバージョン(2027年度):90%超
* 投下資本利益率(ROIC)(2027年度):12-13%
* Lumada事業売上収益比率:80%(長期目標)
* Lumada事業Adjusted EBITA率:20%(長期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「Lumada」をコアに社会インフラを革新し、デジタルセントリックな企業への変革を目指しています。データセンター、eモビリティ、スマートシティ、ヘルスケアの4領域を戦略事業領域と定め、グループのリソースを結集した戦略SIBビジネスユニットを新設し、新事業の創出に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財」を重要な経営資本と位置づけ、多様な人財が国・地域・事業体を超えてOne Teamで活躍できる組織体制の構築を目指しています。「People(Talent)」「Mindset(Culture)」「Organization」を戦略の柱とし、経営リーダーの育成、デジタル人財の確保・育成、ジョブ型人財マネジメントの推進などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 18.7年 9,613,890円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.5%
男性育児休業取得率 71.9%
男女賃金差異(全労働者) 69.8%
男女賃金差異(正規雇用) 71.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 56.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、デジタル人財数(107,000人)、従業員エンゲージメントスコア(71.5%)、役員層における女性比率(15.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境および地政学リスク


同社の事業は世界経済や特定の国・地域の経済・地政学的情勢の影響を受けます。景気後退による需要低下や、紛争・緊張の高まりによる経済活動の制約が、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、多様な事業と地域のポートフォリオ経営やリスク評価による迅速な対応を図っています。

(2) 為替相場の変動リスク


グローバルに事業展開しているため、為替変動が円建ての経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。現地通貨建ての取引による売上低下やコスト上昇、資産・負債の評価額変動などがリスク要因です。これに対し、先物為替予約や通貨スワップ、地産地消戦略の推進などでリスク低減に努めています。

(3) サプライチェーンのリスク


原材料や部品の不足、価格高騰、自然災害による供給網の寸断などが生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。また、調達パートナーにおける人権侵害等の問題もリスクとなります。これに対し、調達先の多様化、長期契約、BCPの策定、調達パートナーへの監査や理解促進などの対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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