【財務分析】海外売上比率8割のファナック 米中貿易摩擦で業績に大ブレーキ

【財務分析】海外売上比率8割のファナック 米中貿易摩擦で業績に大ブレーキ

工作機械用コンピュータ数値制御(CNC)と産業用ロボットで世界トップシェアを誇るファナック。海外売上比率が約8割と他社と一線を画す経営戦略をとっていますが、米中貿易戦争の影響で2019年3月期は減収減益。2020年3月期の出足も悪く、早くも通期業績予想の下方修正を発表しています。財務分析により会社の課題を整理します。


損益計算書(PL):減収減益傾向が止まらず

ファナックの2019年3月期決算は減収減益。売上高は6355億6800万円で前期比12.5pt減。営業利益は1632億9700万円で同28.9pt減と大きく減らしています。

売上原価は前期比7.2%減で、粗利率が3.4pt改善しましたが、販管費が前期比4.0pt増となって営業利益の引き下げ要因となりました。

決算短信によると、期の初めはおおむね堅調に推移したものの、米中貿易摩擦の影響も相まって、中国向け需要が減少したことが業績悪化要因とのことです。

なお、販管費の増加要因についての言及はありませんでした。

なお、2019年7月29日発表の2020年3月期の第1四半期決算は、売上高が前年同期比26.4%減の1346億円、営業利益は同47.5%の285億円となっています。営業利益率は21.2%で、前年同期比8.6pt減。米中貿易摩擦の影響が引き続き暗い影を落としています。

セグメント分析:中国向けロボマシンが大幅減

財務諸表上はファナックは単一セグメントで、FAの総合サプライヤとして「自動化による生産システムに使用される CNC システムと CNC システムの技術をベースとしたその応用商品の開発、製造、販売」を手がけています。

ただし、決算報告資料などでは「FA」「ロボット」「ロボマシン」「サービス」の4つの部門の売上高を公開しています。

出典:2018年度決算説明会資料

全般的に前期比で売上が減少していますが、スマートフォン製造に使われる小型切削加工機の有力な取引相手であった中国の需要が大幅減少したため、ロボマシン部門の売上高が前期比39.5%減となりました。

地域別売上高をみると、国内(前期比9.2%増)と欧州(同10.7%増)では前期比で増収となっていますが、米中貿易摩擦の震源である中国(同44.0%減)と米国(同11.2%減)での減収が業績に大きく響きました。

貸借対照表(BS):無借金経営、高い安全性

2019年3月期の純資産は1兆4451億4600万円で、前期比1.5%減となっています。 

負債項目をみると、固定負債が451億2700万円(前期比35.9%減)流動負債は1350億6700万円(同29.3%減)と減少しており、純資産とともに減少させています。

ファナックは長く有利子負債残高ゼロの無借金経営を続けており、株主資本比率は88.5%で全業種平均47.8%を大きく上回る株主資本比率。国内上場企業のトップ10に入る健全経営企業です。

短期的な支払い能力を測る流動比率は672.0%で、安全水域である200%を大きく上回って高い安全性を確保しています。

ファナックは2014年度から株主還元策を強化しています。連結配当性向を30%から60%に引き上げ、継続して自己株式取得を実施。2019年3月期には、普通配当(1株当たり477.21円)に併せ、特別配当(1株当たり525.90円)を出しており、連続配当性向が126.1%となりました。

配当の支払いは純資産の増加を妨げ、自己株式取得は純資産の減少につながります。しかし、株主還元を重視しながらもファナックは純資産を維持しており、かなり堅実な財務経営ができているといえるでしょう。

キャッシュフロー計算書(CF):現金を稼ぐ力が強い

営業活動によるキャッシュ・フローは前期比1%増の1777億3800万円です。決算短信によると「売上債権が減少したことによるもの」が主因です。

投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス1233億4300万円で、同5.3%減っています。「有形固定資産の取得によって支出は増加したが、定期預金の払戻が定期預金の預入を上回り、収入が増えた」ことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローはマイナス1728億6800万円と、同85.7%増でした。「配当金の支払額が増加したこと」が要因です。

営業CFマージンは28.0%で、前期比3.8ポイント増。電気機器業界の平均6.3%を大きく上回っています。現金の稼ぐ力を年々強化しています。

財務CFが前期比で大幅向上していますが、特別配当があった影響であり、急激な増加は一過性のものと思われます。しかしながら安定した配当を支払う背景には、堅実に現金を稼ぐ力をつけてきたファナックの経営努力が垣間見えます。

資本効率分析:ROE・ROAともに業界平均以上

親会社株主に帰属する当期純利益は、足踏み状態となっており、2019年3月期は1541億6300万円で、前期比15.3%減です。

当期純利益の減少もあって、株主のお金を使って利益を生み出す効率を測るROE(自己資本利益率)は11%で、前期比2ポイント減となりました。しかし、電気機器業平均の4.2%を大きく上回っています。

すべての資産を使って利益を生み出す効率を測るROA(総資産利益率)は9%で、同2ポイント減。こちらも電気機器業平均の5.3%を上回っています。

まとめ:ネガティブ予想をさらに下方修正

米国と中国向け需要によって高い収益性と安全性で成長してきたファナックとしては、今後の試金石となる1年となりそうです。

ファナックは、2020年3月期決算に対してネガティブな予想を出しています。売上高は前期比15.5%減の5369億円、営業利益は同53.6%減の757億円、当期純利益は同59.6減の623億円と前期よりも大幅に悪い決算予想となっています。

かなり悲観的な前提で試算したはずの業績予想ですが、現実はさらに悪化。2020年3月期の第1四半期決算は、前述の通り大ブレーキがかかっています。

通期予想は、売上高が前期比17.5%減の5242億円、営業利益は同56.3%減の713億円に設定。4月発表予想から、売上高は127億円、営業利益は44億円の下方修正となっています。

しかし株価は乱高下しながらも踏みとどまっており、株式市場からの一定の信頼が感じられます。

最近1年間のファナックの株価の推移(2019年10月1日現在)

この記事の執筆者

アナリストになる夢を持ち、証券会社で営業をしながら日々頑張ってます。


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