三菱地所株式会社(以下「三菱地所」)といえば、三井不動産と並ぶ不動産業界の双璧です。通称「丸ビル」「新丸ビル」に代表されるような東京・丸の内エリアの開発をはじめ、国内外の各所で100年以上まちづくりを行ってきました。ニューヨーク・ロンドンなど、近年は海外でも意欲的に不動産事業を展開しています。
また、日本初のFinTech拠点を設立してこれまで得られなかった層からの賃貸収入獲得に成功しているほか、スタートアップ企業やベンチャーキャピタルに積極的に投資。
老舗ながら新規事業や海外進出にも意欲的な三菱地所について、本記事で研究していきましょう。
三菱地所の事業概要~どんな事業をしているのか
■丸の内のビル事業は主に賃貸収入を得る「保有型」
まずは、三菱地所が行っている事業をみていきましょう。
三菱地所グループの事業は幅広く、「ビル事業」「生活産業不動産事業」「住宅事業」「海外事業」「投資マネジメント事業」「ホテル・空港事業」「設計監理事業」「不動産サービス事業」「その他の事業」の9セグメントに分類されています。そのなかでも特に収益が多いのは、ビル事業と住宅事業です。
ビル事業は、全体の営業収益の約4割を占めています(2019年3月期)。三菱地所は「丸の内の大家」とも称され、東京・丸の内エリアに約30棟のビルを保有しています。交通利便性が高く、時価総額上位の企業を多く抱える丸の内に土地や自社ビルを持っていることは、非常に大きな同社の強みといえるでしょう。最近では、2018年11月に「二重橋スクエア」を擁する「丸の内二重橋ビル」がオープンしたことでも話題になりました。
ビジネスモデルとしては、丸の内では主にビルを開発して賃貸収入を得る「保有型事業」を展開しています。丸の内以外の全国の主要ビジネスエリアでは、開発物件を売却してキャピタルゲイン(売買差益)を得る「回転型事業」が主流です。また、ビルの運営・管理を行う「ノンアセット事業」もビル事業に含まれています。
住宅事業に関しては、分譲から賃貸、管理、仲介、リフォームまで幅広く手がけており、なかでも分譲住宅事業は約50年の実績があります。分譲マンションのブランドは「ザ・パークハウス(The Parkhouse)」、賃貸マンションのブランドは「ザ・パークハビオ(The Parkhabio)」で、ともに品質が高いことで知られています。
三菱地所の業績・財務状況~業績はどうか
■全体の業績と財務状況
次に、グループ連結の業績(2019年3月期)をみていきましょう。営業収益(売上高)は前年度比6%増の1兆2632億円、営業利益(本業の儲け)は同比8%増の2291億円でした。親会社株主に帰属する当期純利益は12%増の1346億円で、3期連続で最高益を更新しています。
なお、こうした業績や市況を受けて、三菱地所は2019年5月14日に同社初の1000億円分の自社株買いの実施を発表しました。これまでは都市開発などの成長投資を優先してきましたが、資本効率を重視してROE(自己資本利益率)向上にむけて動き出しています。
■セグメント別の業績と現在の取り組み
次に、2019年3月期のセグメント別の業績トピックもみていきましょう。
住宅事業が絶好調
住宅事業は、営業利益304億2800万円(前年度比28%増)で着地。国内の分譲マンションは減収減益でしたが、賃貸マンションの売却収入や利益の増加などにより、非常に好調でした。
生活産業不動産事業も好調
商業施設や物流施設などを開発する生活産業不動産事業も伸びをみせました。営業利益は325億6000万円で、前年度比15.9%増。売却利益の増加や「東京流通センター物流ビルB棟」の通期稼働などにより、増収増益になっています。
主力のビル事業は微増
ビル事業は、営業利益1476億9100万円で、前年度比0.3%増という結果でした。物件売却の収入や利益は減少しましたが、賃料相場の上昇などが影響して賃貸収入・利益が増加し、増収増益となっています。
三菱地所の事業戦略~今後の展開は
■全体の事業戦略と事業計画
では、今後の事業戦略も確認しておきましょう。
三菱地所には、丸の内エリアのオフィスビル事業を中心に確固たる収益基盤がありますが、2020年3月期までの中期経営計画では、
・同社のノウハウをいかした海外事業の拡大
・物件売却後にフィービジネス(手数料を得る業務)を継続受注する回転型投資の活性化
なども推進し、利益化に向けて動いていく計画です。
また、全社横断の投資枠として1000億円(中期経営計画期間の合計額)を用意。時代の変化に合わせたビジネスモデル革新に向けて、
・最先端のベンチャー企業の誘致
・古いビルのリノベーション
・地方空港運営ビジネス
・IT化したサービスの提供
といった新たな取り組みを数多く推進。大々的な投資により「脱・丸の内の大家」も見据えています。
■セグメント別の事業戦略
セグメント別の事業戦略として、2019年3月期に大きく営業利益を伸ばした住宅事業についてもみておきましょう。
海外の分譲事業については、マレーシア・タイなどのアジア諸国で事業を拡大中。
国内の分譲事業においては、都心への人口流入などを見込んで、都内近郊で「ザ・パークワンズ(The ParkOne's)」という資産形成用マンションを展開。ニーズを確実に捉えて対応していきます。
三菱地所の年収~報酬はどれぐらいか
■平均年収1200万円超え
まず三菱地所の平均年収ですが、2019年3月期の有価証券報告書には、平均年間給与額は、1247.6万円と記載されています。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した年代別年収レンジは、20歳代で870〜970万円、30歳代で1070〜1170万円、40歳代で1230〜1330万円となっています。
三菱地所の新卒の初任給は、
学部卒:260,000円 (2019年4月入社予定)
院卒:300,000円 (2019年4月入社予定)
となっています。
昇給は年1回、賞与は6月・12月の年2回で、家族手当や住宅補助費なども支給されます。
三菱地所では2000年に定期昇給を廃止しており、能力の伸びに応じた昇給制度や成果主義賞与制度を導入。半期ごとに上長と行うMBO(目標管理)面談などに基づき、公正に評価することを明言しています。
口コミをみると、「実力による加算部分は大きくない」という声もあり、完全な実力主義を求める人には向かないかもしれませんが、給与の高さや安定性に満足する声は多くみられました。
■不動産系職種の年収実態(30代前半/男性/プロパティマネージャー)
年収口コミ
給与水準自体はかなり良いと思う。経営基盤が固いので賞与も…(続きを見る)
具体的な年収額をお知りになりたい場合は、キャリコネの給与明細投稿をご覧ください。
三菱地所社員の給与明細(キャリコネ)
管理部門でも20代前半と後半で倍以上の差
20代前半管理部門(非管理職)の 給与明細
20代後半管理部門(非管理職)の 給与明細
同じ30代でも職種で500万円以上違う!
30代広告宣伝職(非管理職)の 給与明細
30代不動産系職(非管理職)の 給与明細
三菱地所の年収について詳しく解説した記事も合わせてお読みください
三菱地所の働く環境~働きやすさはどうか
三菱地所で働いていく上で大切なことのひとつに「働く環境はどうなのか」があります。キャリコネに寄せられた口コミを元に、制度や環境の中から特徴的なものを3つ紹介します。
フレックス&時短勤務で子育てや介護と両立しやすい
まず、三菱地所ではワークライフバランスを実現するための制度が多数用意されています。
例えば、フレックスタイム制度を利用する場合、
コアタイム(制度適用者が出勤義務のある時間帯)は10時~15時とし、 フレキシブルタイム(制度適用者がその選択により労働することができる時間帯)は 始業時間帯6時~10時、終業時間帯15時~20時
とあります。
「朝早く出社し、早めに退社して子どものお迎えに」「ラッシュ時間を避けて遅めに出社」といった具合に、個々のニーズに合った働き方が可能です。また、フレックスタイム制度と育児・介護のための短時間勤務制度を併用することもできます。
社員の口コミでも、ワークライフバランス施策に満足する声がみられました。
5年ごとのリフレッシュ休暇など充実した休暇制度
次に、休暇制度についてみていきましょう。
口コミでは、「部署によっては休日出勤がある」との声もありましたが、「自分の好きなタイミングでまとまって休める」といった声がみられました。あえて大型連休を避けて旅行の計画を立てることも可能なようです。
なお、年次有給休暇や年末年始休暇、夏季休暇のほかに、勤続5年ごとに付与される「リフレッシュ休暇」(特別有給休暇)もあります。オンオフの切り替えがしやすい環境です。
退職した社員の再雇用制度も
一般的に、配偶者の転勤で退職せざるを得ない……というケースはよく聞かれます。そうしたケースに対応できるように、三菱地所では配偶者の転勤を理由に退職後、5年以内であれば利用できる再雇用制度も。口コミをみても、実際に利用されているようです。
ベビーシッター費用の助成制度や産休・育休が取りやすい環境も整っており、公式サイトによれば、
2017年度の育児休暇取得後の復職率は100% 、復職1年後の定着率も100%
とのこと。ライフイベントを経ても働き続けやすい環境であることを物語っています。
■営業職の残業時間の実態(20代/男性/代理店営業)
残業時間口コミ
先方都合等で、年に数回休日出勤する事がありましたが、残業については極端に多くは無く、繁忙期以外では…(続きを見る)
三菱地所の職種~どんな職種があるのか
■ジョブローテーションを前提に職種の指定なく採用
子会社も含めた三菱地所グループでは幅広くキャリア採用が行われていますが、ここでは「三菱地所」の正社員募集に限ってみていきましょう。
ジョブローテーションがあることを前提に、総合職としてポジションの指定なく募集されています。応募にあたっては、2001年~2016年の間に四年制大学卒業という制限があります(2019年7月現在)。
公式サイトの募集要項によれば、
総合職としてオフィスビル/商業施設/マンション/物流施設/ホテル等の開発企画・プロジェクト推進・テナントリーシング・プロパティマネジメント、空港ターミナル運営、経営企画・経理・法務・人事等の一般管理等の業務を担当。
とあります。
社会人経験が3年以上あれば、不動産業務の経験は問われません。むしろ、他業界での経験をいかして新たなビジネスチャンスを生み出せる人材を求めています。
なお、例えばマンションの販売や品質管理業務などに興味がある場合は「三菱地所レジデンス」、オフィス・商業施設の運営管理などに携わりたい場合は「三菱地所プロパティマネジメント」……といった具合に、必要に応じてグループ会社のキャリア採用ページをチェックしましょう。
三菱地所の採用試験~面接に合格する方法は
■競合他社との違いもしっかり研究
三菱地所のキャリア採用は、筆記試験(適性検査と能力検査)と書類審査を通過してから1次面接へ進むという流れになっています。
採用予定人数については、
予定人数は定めていません。
とのこと。
口コミをチェックすると、面接では、
「なぜ三菱地所なのか?」
「三菱地所の物件のなかで好きなものは?」
「都内で開発した物件を知っているか?」
「他社との違いは?」
といった質問をされた人もいました。
同社の事業内容に関する理解を深めるのはもちろんのこと、競合他社との違いを調べておくことも重要な面接準備といえるでしょう。実際に物件に足を運び、肌で感じることも大切です。
■30歳男性/人事部【結果:内定辞退】
最後に~三菱地所を転職先としておすすめする理由
ここまで三菱地所について詳しくみてきましたが、転職者におすすめしたい理由は以下の3点です。
・ライフスタイルの変化にも対応しやすい充実した福利厚生制度
・ビル事業などの堅牢な収益源に裏打ちされた安定した給与
・新規事業にチャレンジする機会にも恵まれた環境
ワークライフバランスを重視したい人も安心できる環境が整っており、確固たる経営基盤があるため給与も安定。また、革新期を迎えており、新規事業に携わるチャンスも多い時期といえます。興味のある人は、ぜひ挑戦してみましょう。