日本総研の採用面接前に知っておきたいこと
■社風への理解
日本総合研究所(以下、日本総研)は、1969年の設立以来、幾度かの合併を経て、2003年に三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBC)に合流し、100%子会社として現在に至ります。
事業は大きく3分野(シンクタンク、コンサルティング、ITソリューション)にわかれています。日本総研というと、日本の5大シンクタンクに名を連ねる会社ですが、事業比率で見るとITソリューションが大きく、三井住友銀行をはじめとしたSMBCグループ内の金融系システム開発・運用保守、外部では交通系システム開発など大規模案件を手がけています。
このような背景があるためか、口コミを見ていくと、システムエンジニアやプロジェクトマネージャー職に従事する人の投稿が多く見られます。
社風については親会社の影響が大きいようで、「銀行業界文化」いう口コミが多く、「年功序列」が残っている点をあげる人もいます。「全社による納会」や、各部署のメンバーで構成された「社員会」があり、仕事とは別に観劇などのイベントを企画することもあります。そのような点からも、同社には昭和的な日本企業の文化が続いている面があるといえるでしょう。
職場の雰囲気について、SI(システムインテグレーション)部門に従事する人の口コミには、「おおむね平和で仲が良い」「社内結婚も少なくない」というものが見られます。繁忙期には残業時間が増えるものの、休日出勤はほぼないようです。また金融系システム開発の仕事は継続性があるため、業務・雇用ともに安定しており、常にチームで取り組む仕事だけにコミュニケーションの取れた職場環境であることが考察されます。
一方、シンクタンクやコンサルティング部門は「個人商店的な面が強い」という口コミが見られます。同社の公式サイトに「研究員紹介」というメニューがあり、社を代表する研究員のプロフィールや研究テーマなどを閲覧することができます。このことから、コンサルティングやインキュベーション業務に従事する人は、会社の広告塔としての役割も担っていると考えられます。プロフェッショナルで個性的な人が多く在籍している、活気のある職場が想像できます。
■選考は何次まで?
同社の中途採用におけるプロセスは、書類選考の後、1次面接→適性テスト(SPI)→2次面接を経て内定と、新卒採用とほぼ同様です。
内定までの期間については口コミを見ると、1~2週間と短期であった人もいれば、3カ月以上という人もいて、かなり差があることがわかります。長期となった人の理由として、転職エージェントを介して応募していたという点が考えられます。
転職をキャリアアップと捉えている人の中には、在職中に転職エージェントに登録して、仕事の合間に転職活動をする人が見られます。このような場合、在職先に転職活動をしていることを伝えず、仕事に影響を及ぼさないよう配慮をしていると、選考期間が長くなってしまう可能性があります。
日本総研の中途採用は公式サイトからエントリーできますが、同社のように高キャリアを求められる職種の場合は、エージェントの担当コンサルタントに調整をしてもらい、現職とバランスを取りながらじっくり進めるという方法も、賢明な転職方法であるといえるでしょう。
■ 面接内容の傾向は?
面接での質問は、「志望動機」「自分を動物に例えたら何か。その理由は?」「当社に入社したら何がしたいか」など、オーソドックスな内容が多いようです。しかし、転職理由については「なぜ前職を辞めたのか」「辞める必要性はなかったのではないか?」など、深掘りをされたという口コミが多く見られます。この点は応募職種に関係なく、しっかり回答できるように準備しておきましょう。前職への不満はマイナスの印象を与えてしまいます。また、一次面接のときに給与の話をすることは避けましょう。
コンサルティング職で応募した人の中には、「現在(前職)の仕事の課題をSWOT分析して」という興味深い質問をされた人がいます。おそらくコンサルタントの必須スキルであるマーケティング力やプレゼンテーション力、柔軟な対応力を見極めるためでしょう。このような場面に出くわすこともあるので、実務に近い緊張感をもって臨む必要があります。
日本総研の面接攻略法(面接対策)
■SMBC Group Next Stageを理解した上で自己分析をする
日本総研の面接を受ける前に、企業戦略SMBC Group Next Stageを理解しておきましょう。
同社はSMBC Groupの1社ですので、単独での明確な経営理念や中長期計画などは見あたりません。このような場合は、親会社のものを見ていきましょう。
基本方針にはそれぞれ詳細がありますので、面接までに熟読し、理解しておきましょう。特にしっかり踏まえておきたいのは、日本総研のビジネスに関係してくる「Focus」の部分です。
上図のように、7つの戦略事業領域はデジタル技術などにより業務の効率化を図り付加価値を高める「デジタライゼーション」によって解決していくことが示されています。また、すでに強みとして構築されている分野、これから強化していきたい分野も明確に表されています。
上記を踏まえた上で、日本総研の社長メッセージを読んでみましょう。下記に一部を引用しておきます。これらを紐づけてみると、同社が親会社の戦略を受けて事業展開をしていることが見えてきます。
現代のグローバリゼーションとデジタライゼーションは国境を易々と越えたシナジーを次々と発生させ、全く新しいサービスや産業による厳しい競争環境を創り出しています。また、人口が減少し、高齢化が進むなか、旧来の社会・経済システムを根本から見直し、デジタライゼーションによって効率的なものに変革させることは大きな課題です。
私たちはこれからもお客様と目標を共有し共に歩みを進めることで、「新たな顧客価値の共創」を実践します。
上記を理解した上で、公式サイトの「経営コラム」「経済・政策レポート」「採用情報」などにも目を通しておき、自己分析を行いましょう。社会課題の解決にデジタライゼーションは不可欠です。SI職であれば、同社が目指すITソリューションを担えるだけの高いモチベーションと探求心を持つ人材であることをアピールできるとよいでしょう。
コンサルティング職やインキュベーション職の場合は、面接の場がいわば自己プレゼンとなることが考えられます。さまざまなことを論理的に分析でき、プレゼンする力があること、さらにプロフェッショナルとしての自覚と知的好奇心、チャレンジ精神を持つ人材であることをアピールできるとよいのではないかと思います。
■「なぜ日本総研に転職したいのか」の明確化には他社研究が必要
同社を志望する人であれば、「なぜ日本総研なのか」という質問をされることは想定しているかと思います。新卒採用の際にも同様の質問があったことでしょう。しかし中途採用の場合は新卒採用のときよりも明快な回答が求められるため、競合となりえる企業との比較研究を行っておくことが重要です。
SI職の場合、金融系システム開発を手掛けている会社との比較が一つのポイントとなります。同社の親会社は旧財閥系の銀行ですので、国内のメガバンク系SI会社との比較を行うとともに、近年は証券系の企業などがFinTech(フィンテック。ファイナンス・テクノロジーの略。ICTなどのテクノロジーによる革新的な金融サービスのこと)を手掛けていることから、銀行業界以外の企業も調べておくことをおすすめします。
コンサルティング職やインキュベーション職の人は、5大シンクタンクにあがる企業は必ず押さえておきましょう。その際、同社の強みと、今後強化していく分野を踏まえた上で他社との比較を行うことがポイントです。具体的には下記の4企業を参考にしてみるとよいでしょう。
- 野村総合研究所
- 三菱総合研究所
- みずほ情報総研
- SBIホールディングス株式会社
日本総研の採用面接で実際に聞かれた質問内容
日本総研が目指している方向性や、どういった人材を欲しがっているのかが企業研究を通じて分かってきたのではないでしょうか。日本総合研究所の場合、給与水準は一般的に見ると高めです。よって中途採用者に求めるのは、ハイクラス人材であると言えるでしょう。このことから、同社の要請に応えていく心構えと実力がある「期待の人材」と印象づけられるよう、さまざまなエピソードを準備しておくとよいでしょう。
面接経験者が実際に聞かれた質問をご紹介します。これらの質問をされたらどのように答えるか、しっかりと考えながら面接対策しておきましょう。
[・女性/研究開発] 【結果:入社】
[20代前半・男性/システムエンジニア] 【結果:入社】
[30代後半・男性/経営幹部] 【結果:一次面接で不採用】
[20代後半・男性/システムエンジニア] 【結果:入社】
日本総研の採用面接に向けて
日本総研の採用面接を受けるにあたって、ぜひ押さえておきたい重要なことをご紹介してきました。面接対策として準備しておきたいのは、以下の3つです。
- 銀行業界の企業文化や部門ごとに異なる社風を理解し、それに適応できる人材であることをアピールする
- SMBCグループの中期経営計画と同社の社長メッセージを紐解き、これに沿った自己分析をして、自己PRにつなげていく
- 他社研究を通して同社の強みを明確にし、「なぜ日本総研か」の問いに迷うことなく回答できるようにする
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編集ライター業の傍ら、大学や企業でインターシップ支援・キャリア支援を行う(企業研究方法・マーケティング・面接対策・マナー講座等)。インディーズの音楽シーンで活動していたという異色の経歴を持つ。