コロワイドが大戸屋HDに行った「株主提案」の内容
2019年10月にコロワイドが、大戸屋の創業家から株式18.67%を取得したことから始まった今回の一件。話し合いの場が何度か設けられたものの合意には至らず、2020年4月14日にコロワイドが大戸屋HDに対して株主提案[PDF]を行っています。
内容は「取締役12名の選任」について。コロワイドの役員2名と現大戸屋HD役員の2名、それに社外取締役(非業務執行取締役含む)8名の取締役候補者12名を一括して取締役に選任することを求め、大戸屋HDの経営権を掌握することをねらったものです。
株主提案についてコロワイドは、現在の経営陣のもとで大戸屋HDの業績は悪化し続けているが、コロワイドグループと協業することで、次のようなシナジー効果により、年間6億円以上の収益改善を達成できると主張しています。
- ① 仕入条件の統一によるコスト低減
- ② セントラルキッチンの活用
- ③ 物流網の共通化によるコスト低減
- ④ 新店立地・業態転換候補の共有化
- ⑤ ノウハウの結集
さらに2月28日に大戸屋HDが発表した「経営改善経計画(骨子)」[PDF]について「合理的根拠、現実性を大きく欠く」と疑問視。株主提案が株主総会で可決承認されれば、大戸屋グループを連結子会社化し、事業再建を図るとともに、コロワイド自身が中期経営計画に掲げている「給食事業」で協業し、自社の価値を向上させたい考えを示しています。
大戸屋HDの株主や従業員の反応は
コロワイドによる株主提案の後ろ盾として示したのが、3月23日から大戸屋HDの株主に対して行ったアンケートの結果です。前述の株主提案によると、全株主数24734名のうち24092名に発送し、有効回答数18891名のうち9割を超える株主から「大戸屋HDのコロワイドグループ入り」について賛同が得られたとしています。
これを受けて大戸屋HDは、5月25日に反対意見[PDF]を公表。コロワイドの提案するセントラルキッチンの利用などコスト削減に偏った施策は、大戸屋が創業以来守ってきた「美味しくかつ健康に資する料理を提供する」という経営理念や基本方針を蔑ろにするおそれがあり、コロワイド側にのみ多くのメリットが発生する一方、大戸屋HDの企業価値の源泉を損なうものであるとして反発しています。
さらに、子会社化についても、具体的な経営理念や戦略、子会社化の具体的な方法・条件などの十分な情報開示がないとしたうえで、大戸屋の企業価値、株主の利益を向上させるのは、コロワイドの子会社となることではなく、大戸屋自身が策定した「中期経営計画」を現経営陣が責任をもって推進していくことだと主張しました。
これに対してコロワイドは、5月25日に大戸屋HDの株主に対する「株主総会における議決権行使に関するお願い」を、翌26日には「当社株主提案への反対意見に関する当社見解及び不正確な情報に対する注意喚起のお知らせ」[PDF]を公表しています。
対する大戸屋HDも5月29日に「当社委任状による議決権行使のお願い」を公表。6月5日には株主提案に対する「当社従業員」[PDF]および「当社フランチャイズ加盟店」[PDF]の意見表明に関するお知らせを公表しています。
両社は現在、議決権行使の方法を説明する資料を公開し、議決権行使書面などの記入の仕方などについて詳細に説明。自社の提案を支持する回答を得ようとしています。
なお、大戸屋HDの大株主の上位には、取引先や金融機関、大戸屋従業員会などが並び、コロワイドの株主提案に反対するものと思われます。しかしこれら「固定票」が所有株式数全体に占める割合は1割にも届きません(2019年3月末時点)。
一方、所有株式数の84.59%は「個人その他」が占めており、ここからコロワイドに譲渡された創業家の株式18.67%を除くと66.28%。この「浮動票」の行方が決議のカギを握るものと思われます。
大戸屋HDの弱点:高すぎる目標と「見えない達成への道筋」
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公認会計士試験合格。過去には監査法人勤務も。数字アレルギーを克服し、次に目指すは数字に強いアナウンサー。
『企業の財務データには過去にその企業が何を考え、どう行動したかが現れていると知ってから、数字が血の通ったものに見えるようになりました。分かりやすく丁寧な解説を心がけます。』